パワハラを受け退職させられそうなとき

2022/11/29|1,193文字

 

<対象となるケース>

パワハラを受けて精神的に参ってしまい、まともに出勤できない状態にされ、退職を迫られてやむなく応じ、自己都合退職扱いにされるという場合の上手な闘い方です。

あってはならないケースですが、パワハラの定義すら就業規則に無い会社では、誰もパワハラを止めることができず犠牲者が跡を絶ちません。

 

<最初に思いつくのは>

こんなとき、被害者が精神的に回復すると、あのパワハラ上司を訴えてやろうという気持ちになりがちです。

しかし、パワハラそのものを理由として損害賠償を請求しようとするならば、労働者の側でパワハラの存在や被った損害額を証明しなければなりません。

 

<証明責任(挙証責任)>

裁判で訴える側がAという事実の存在を主張し、訴えられた側がその存在を否定したとします。

裁判所は、どちらが真実か証明がつかないからといって、裁判を拒否できません。

そこで、あらかじめ法令やその解釈によって、Aという事実の証明について、訴える側と訴えられた側のどちらが責任を負うかが決まっています。

そして、その責任を負う人が証明に失敗すると、自分の主張が通らないという不利な扱いを受けるのです。

 

<パワハラを証明することの困難>

パワハラで損害賠償を請求するというのは、法律上は加害者に対する不法行為責任の追及ということになります。

そして、その証明責任は被害者である労働者にあるのです。

上司が人前で殴ったり蹴とばしたりすれば、証人がいるでしょう。

しかし目撃者が、退職した労働者のために証言してくれるとは限りません。

ましてや電話でのやり取りや、会議室で2人きりで話していてどなられたことなどは、とうてい証明できないでしょう。

 

<視点を変えれば>

このケースでは、パワハラの問題もあるのですが、不当解雇の側面もあります。

労働者が不当解雇を主張し、解雇は無効であって会社に行けなかった間の賃金の補償や慰謝料を会社に求めた場合には、少なくとも不当解雇ではなかったことについて、会社が証明責任を負います。

具体的には、解雇が客観的に合理的な理由を欠いていたり、社会通念上相当であると認められない場合には、会社がその権利を濫用したものとして、その解雇を無効とするという規定があります。〔労働契約法第16条〕

ですから、労働者が不当解雇を主張すれば、会社はその解雇に客観的に見て合理的な理由があったことを証明しなければなりません。

また、世間一般の常識から考えて、解雇したのもやむを得ないといえるケースだったことを証明しなければなりません。

会社は両方の証明に成功しなければ、裁判で負けてしまうのです。

 

<結論として>

訴えるにしても訴えられるにしても、やり方次第で損得が出てしまいます。

また、紛争解決の手段は訴訟だけではありません。

何を主張して、どう戦ったらよいのか、報酬を支払ってでも弁護士や社労士に相談する意味はここにあります。

 

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