就業規則の誤りやすいポイント(年次有給休暇)

2022/11/28|1,744文字

 

<モデル就業規則>

年次有給休暇について、モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、次のように規定しています。

 

【年次有給休暇】

第22条 採用日から6か月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、10日の年次有給休暇を与える。その後1年間継続勤務するごとに、当該1年間において所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、下の表のとおり勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。 

勤続

期間

6か月

1年

6か月

2年

6か月

3年

6か月

4年

6か月

5年

6か月

6年

6か月

以上

付与

日数

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

 

2 前項の規定にかかわらず、週所定労働時間30時間未満であり、かつ、週所定労働日数が4日以下(週以外の期間によって所定労働日数を定める労働者については年間所定労働日数が216日以下)の労働者に対しては、下の表のとおり所定労働日数及び勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。

 

週所定

労働日数

1年間の

所定労働日数

勤    続    期    間

6か月

1年

6か月

2年

6か月

3年

6か月

4年

6か月

5年

6か月

6年6か月以上

4日

169日~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

121日~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

73日~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

48日~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

(以下省略)

 

週所定労働日数が5日以上の従業員のみの職場では、上段の簡単な表だけが適用されます。

そして、週所定労働日数が4日以下の従業員がいる職場では、下段の複雑な表が必要になってきます。

 

<誤りやすいポイント>

モデル就業規則第22条第2項の「前項の規定にかかわらず、週所定労働時間30時間未満であり、かつ、週所定労働日数が4日以下(週以外の期間によって所定労働日数を定める労働者については年間所定労働日数が216日以下)の労働者に対しては、」という規定が、分かりにくいのかも知れません。

原則として、上段の簡単な表が適用されます。

しかし例外的に、次の2つの条件の両方を満たしている従業員については、下段の複雑な表を適用します。

 

・週所定労働時間が30時間未満

・週所定労働日数が4日以下

 

裏を返せば、週所定労働日数が4日であっても、週所定労働時間が30時間以上であれば、上段の簡単な表が適用されるということです。

 

<運用の誤りと対処法>

週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上のパート社員に、下段の複雑な表を適用してしまっているパターンがあります。

これは運用上の誤りですから、すぐに運用を改める必要があります。

また、年次有給休暇の付与日数が誤っていた従業員には、付与日数が少なかったことのお詫びとともに正しい残日数を通知しなければなりません。

 

<規定の誤りと対処法>

もっと重症なのは、就業規則そのものに、「週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上のパート社員には、上段の簡単な表が適用される」という規定が漏れているパターンです。

残念ながら、弁護士の先生や、同業の社労士の先生が作った就業規則にも、こうした誤りを発見することがあります。

これは、労働基準法第39条第3項に違反していますから、就業規則を変更し、就業規則変更届を所轄の労働基準監督署長に提出する必要があります。

しかも、変更届を見れば、これまでの運用が誤っていたことが明らかですから、運用の誤りを是正したうえで、変更届を提出するという手順にしなければなりません。

 

<複雑なルールは避けたい>

場合分けのある複雑なルールは、定着しにくいものです。

社内に独自のルールを定める場合には、なるべく単純なものをお勧めします。

労働基準法は、最低限の基準を定めて使用者に守らせ、労働者を保護する趣旨です。

逆に、基準を上回るルールを定めることは禁止されていません。

ですから、社内の混乱を避けるため「週所定労働日数が4日の従業員には、週所定労働時間にかかわらず、一律に上段の簡単な表を適用する」という規定にすることは許されます。

社内の実情に応じ、こうしたことも検討されてはいかがでしょうか。

実のところ、知らず知らずのうちに、こうした運用にしている会社も多いのです。

 

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