懲戒処分・人事考課・人事異動

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<重ねての制裁>

ある社員が不都合な言動を理由に、懲戒処分を受けたとします。

この社員が、昇進・昇給や賞与の金額に影響する人事考課で、一段低い評価にされたとします。

しかも、さえない部署への左遷も行われたとしましょう。

このように、たった1つの不都合な言動を理由に、懲戒処分も人事考課も人事異動も重ねて行うことに問題はないのでしょうか。

 

<法律の規定>

使用者が労働者を懲戒できる場合でも、その労働者の行為の性質、態様、その他の事情を踏まえて、客観的に合理的な理由を欠いているか、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効となります。〔労働契約法第15条〕

しかし、人事考課や人事異動の有効性について規定する法令は見当たりません。

これらは、基本的に会社の裁量に任されていて、裁判所がその不当性や違法性を判断することは困難だからです。

 

<懲戒処分と人事考課>

人事考課には、会社ごとに独自の考課基準があります。

個人の業績、所属部門の業績、発揮能力、勤務態度、経営理念への共感度、行動指針の体現度、社内ルールの順守など、その内容は様々です。

たとえば、勤務先の近所の飲食店で酒に酔って店長をどなりつけたので、譴責(けんせき)処分を受けたとします。厳重注意を受け、始末書を提出したわけです。

この場合、人事考課の基準の中に「勤務地近隣との関係を良好に保つこと」といったものがあれば、その部分について低い評価となるでしょう。

しかし、「譴責処分を受けたのだから全項目について一段低い評価」というのは不当です。

またたとえば、勤務先の会社が経営しているお店で、酒に酔って店長をどなりつけたのなら、かなり事情が変わってきます。

人事考課基準の中に「社内での協調性」「他部門への協力」「顧客からの信頼」といったものは、一般的に含まれているでしょうから、評価が低くなる可能性は高いでしょう。

それでも、考課者のその社員に対する印象が悪くなったので低い評価になるということは避けるべきです。

 

<懲戒処分と人事異動>

人事異動については、会社の裁量がかなり広いといえます。適材適所により、会社全体の生産性を上げる必要があるからです。

ですから、懲戒処分の原因となった言動との関係で現在の職務がふさわしくないと認められ異動が行われるような場合には、不当とはいえない場合が多いものです。

たとえば、経理担当者が会社の金銭を500円横領した場合、重い懲戒処分の対象とはならないかもしれませんが、経理以外の部署に異動させるのが適切といえます。

しかし、勤続年数が長く会社に貢献している営業部長が、経費を500円ごまかしただけで役職を外されるような異動は明らかに不当でしょう。

 

<目的との関係で>

懲戒処分、人事考課、人事異動、それぞれに目的が違います。

懲戒処分を受けたことを理由に、人事考課や人事異動の目的とは関係なく、当然のように制裁的な人事考課や人事異動が行われるのは不当です。

ただ、こうした会社の行為の不当性を証明し、社員から会社に損害賠償の請求をするのは、証拠集めが困難なためむずかしいことも事実です。

 

2019.07.20. 解決社労士 柳田 恵一