採用内定取消と内定辞退

2022/06/12|994文字

 

<採用内定の性格>

採用内定の法的性格は、それぞれの具体的な事情により異なりますが、採用内定通知のほかに労働契約締結のための意思表示をすることが予定されていない場合には、採用内定により始期付解約権留保付労働契約が成立したと認められます。

 

始期付=働き始める時期が決まっていること

解約権=契約を無かったことにできる権利

留保付=効力を残して持ち続けること

始期付解約権留保付労働契約=すぐに働き始めるのではなくて、いつから働き始めるかが決められていて、しかも、場合によっては契約を無かったことにできる権利が残されたまま成立している労働契約

 

<内定取消>

採用内定取消は解雇に当たり、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合には、権利を濫用したものとして無効となります。〔労働契約法第16条〕

採用内定取消が有効とされるのは、原則的には、次の2つの条件を満たす場合に限られると考えられます。

・採用内定の取消事由が、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であること。具体的には、契約の前提となる条件や資格の要件を満たさないとき、健康状態の大幅な悪化、採否の判断に大きく影響する重要な経歴詐称、必要書類を提出しないなど手続への非協力的態度、その他の不適格事由などが考えられます。

・この事実を理由として採用内定を取消すことが、解約権留保の趣旨と目的に照らして、客観的に合理的な理由によるものと認められ社会通念上相当として是認することができる場合であること。

 

<内定辞退>

内定辞退は学生・労働者側からの行為になります。

内定辞退の場合には、すでに労働契約は成立しているものの、民法の規定により「雇用の期間を定めなかった時はいつでも解約できる」とされているので、基本的には認められることになります。

ただし、労働契約を解約することはできても、一方的な解約が信義に反し不誠実な場合には、会社側から損害賠償の請求をすることも考えられます。

もっとも、損害と内定辞退の因果関係や損害額を立証することは難しく、立証できても大きな金額とはならないので、実際に損害賠償を求めた判例は見当たりません。

内定を辞退された採用担当者としては、恨み言の一つも言ってやりたくなりますが、ハラスメントを主張され、会社の評判が落ちてしまったら責任重大ですから、グッとこらえなければなりません。

 

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