未成年者を雇う場合の注意

2022/05/19|865文字

 

令和4(2022)年4月1日をもって民法が改正され、年齢18歳をもって成年とすることになりました。

「未成年者」というのは、満18歳になる前の人をいいます。

 

<親権者・後見人の権限>

親権者や後見人は、法定代理人として、未成年者が交わす労働契約などの法律行為に同意を与え、未成年者の財産を管理し、その財産に関する法律行為につき未成年者を代表する権限を有します。〔民法第5条、第824条、第859条〕

 

<労働基準法による制限>

こうした民法の規定にもかかわらず、労働契約に関しては、本人の同意を得ても未成年者に代って締結できないこととされています。〔労働基準法第58条〕

これはかつて、親が親権を濫用し、子が知らないうちに子に不利益な内容の労働契約を締結する事例が多く見られたことから、その弊害をなくすために設けられた規定です。

このことから、親権者等の法定代理人としての行為に限らず、未成年者の委任による任意代理の場合にも、未成年者に代わる労働契約の締結はできないものと考えられています。

また、親権者や後見人は、未成年者の賃金を代って受け取ってはならないとされています。〔労働基準法第59条〕

口座振り込みの場合にも、本人名義の口座であることが必要です。

 

<本人の意思に反する労働契約の解除>

労働契約が未成年者に不利と判断される場合に、親権者や後見人が本人の意思に反してでもこれを解除できるかという疑問があります。

この点について裁判例は、未成年者に不利であると認められる場合には、未成年者の意思に反しても未成年者の利益になるものとして契約解除はできるとしています。

その一方で、親権者等が雇い主を個人的に嫌いであるなどを理由に、労働契約の解除が不利である場合にまで解除するのは、解除権の濫用として否定される場合があります。

いずれにせよ、未成年者を雇っている場合に、その親権者から労働契約の内容が不利であるとして解除されることがあるということです。

ですから、未成年者については、採用や契約の更新について親権者等に確認をとっておく必要があるのです。

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