ドライバーを使用する事業場への監督指導の実例(令和3年)

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2022/08/03|2,132文字

 

<監督指導・送検等の状況>

令和3年にトラック、バス、タクシーなどの自動車運転者を使用する事業場に対して労働局や労働基準監督署が行った監督指導や送検等の状況について、厚生労働省が取りまとめ公表しました(令和4(2022)年7月27日)。

対象は自動車運転者を使用する事業場ですが、この業界に特有ということではなく、すべての事業場に共通する問題を含んでいます。

ここでは、監督指導の実例を3件ご紹介させていただきます。

 

<労働時間の適正な把握についての監督指導>

トラック運転者の荷積時間等が把握されておらず、適正な労働時間管理が行われていませんでした。

また、支払われていた割増賃金額は、把握されていた範囲の時間外・深夜労働時間数で計算した額に満たないものであり、割増賃金の支払いが不足していました。

さらに、労働時間の一部が業務委託として作業を行った時間として取り扱われており、賃金が適切に支払われていませんでした。

これに対して労基署は、労働時間の状況を客観的な方法等により把握しなければならないことについて是正勧告するとともに、実態調査するなどの方法により労働時間を適正に把握し、未払いが認められる場合には、遡及して支払うよう併せて指導しました。

また、賃金は労働者に、その全額を支払わなければならないことを是正勧告しました。

さらに、時間外労働及び深夜労働に対し2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないことを是正勧告しました。

会社はこれを受けて、タコグラフの導入、労働時間記録の方法について社員教育を行うことで、労働時間を適正に把握することとしました。

また、労働時間の実態調査を行い、未払いが認められたものについては、遡及して支払いを行うこととしました。

さらに、労働時間の一部を業務委託として作業を行った時間として取り扱うことはやめ、実態に即して、労働時間として取り扱うこととしました。

 

<長時間労働についての監督指導>

バス会社が、36協定の上限を超えて時間外・休日労働を行わせており、時間外・休日労働時間数が1か月80時間を超える者が、最も多い月で11名おり、最長で125時間の者が認められました。

また運転者の中に、1日の拘束時間が上限の16時間を超える日があり、勤務終了後に継続8時間以上の休息期間を与えておらず、また、4週間の平均拘束時間が上限の71.5時間を超える者が認められました。

これに対して労基署は、36協定の上限を超えて時間外労働させてはならないことを是正勧告しました。

また、過重労働による健康障害防止対策として長時間労働の削減について併せて指導しました。

さらに、運転者の1日の拘束時間が16時間を超えてはならないこと、勤務終了後に継続8時間以上の休息期間を与えなければならないこと及び4週間を平均した1週間の拘束時間が71.5時間を超えてはならないことについて是正勧告しました。

会社はこれを受けて、事業場単独ではなく、企業全体で改善基準告示の見直しに対応する部署を決め、自動で労働時間を集計し、休息期間や拘束時間など改善基準告示違反が発生する前に、警報が出る仕組みのシステムを導入しました。

また、ダイヤ改正により、運転者の拘束時間、労働時間の削減を図りました。

 

<不適切な歩合給制度についての監督指導>

タクシー運転手の賃金が、運賃収入に応じた歩合給により支払われていましたが、支給割合が段階的に上がる、「累進歩合給」が採用されていました。

また、一部の運転者の賃金について、最低賃金額未満となっており、最低賃金法違反が認められました。

労働契約の締結に際して、労働者に対して書面等により労働条件を明示しておらず、また、就業規則を変更しているにもかかわらず、所轄の労働基準監督署長への届出が行われていませんでした。

これに対して労基署は、「累進歩合給」が長時間労働等を極端に誘発するおそれがあることから、賃金制度の見直しを指導しました。

また、一部の運転者の賃金が地域最低賃金額未満となっていたため、地域最低賃金額以上の金額で支払う必要があることを是正勧告しました。

さらに、労働契約の締結に際して、労働者に対して書面等により労働条件を明示しなければならず、また、就業規則を変更した場合に、所轄労働基準監督署長に届け出る必要があることについて是正勧告しました。

会社はこれを受けて、「累進歩合給」の制度を廃止し、速やかに新たな賃金体系を構築することとしました。

また、地域最低賃金額未満となっていた金額について、地域最低賃金額以上となるよう改善を行い、不足していた賃金を支払いました。

さらに、労働者に対して労働条件通知書を交付し、所轄の労働基準監督署長へ変更した就業規則の届出を行いました。

 

<解決社労士の視点から>

明らかな労働基準法違反、労働安全衛生法違反、最低賃金法違反が存在するような上記ケースでも、労基署の監督指導に対して、会社側が前向きな対応を行った場合には、悪質事案とはされず送検には至らないものです。

万一、会社に労基署の立入検査(臨検監督)が入り、是正勧告や指導があった場合には、これを好機と捉え、積極的に改善に向けた努力をするようお勧めします。

 

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