2025/03/08|1,029文字
<通常の場合>
年次有給休暇を取得する場合には、労働者から取得する日を指定するのが原則です(時季指定権)。
一方、労働者が指定した日の年次有給休暇取得が、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社からその日の取得を拒むことができます(時季変更権)。
労働者から、いきなり「今日休みます」と言われたのでは、会社は時季変更権を使う余地がありません。
ですから、前もっての指定が必要なのです。
<円満退職の場合>
転職先が決まっている、家族と共に転居するなど、労働者の都合により、退職日が決まっていて変更できない場合があります。
この場合、退職日より後の日に年次有給休暇を取得することはできませんから、一般的に退職日までの間の出勤予定日に取得することになります。
しかし、会社に長い間貢献した人が退職していくにあたって、それが円満退社であれば、せめて最後に残った年次有給休暇をすべて取得させてあげたいところです。
この場合、残った年次有給休暇の日数が多ければ、日付を遡って取得させることもありえます。
ただし、前年度にさかのぼると、労働保険料の計算や税金の計算などがやり直しになりますので注意が必要です。
場合によっては、社会保険料の計算もやり直しとなります。
そこで、お勧めしたいのは、年次有給休暇の買上げです。
通常は、買上げは許されないのですが、退職にあたって買上げることは、休暇取得の妨げにならないので許されています。
それでも、年次有給休暇の取得は労働者の権利ですから、退職者と会社とで話し合って決めることが必要です。
<円満ではない退職の場合>
会社と感情的に対立していて、退職にあたって様々な要求をしてくる労働者がいます。
年次有給休暇については、「普段あまり取得できなかったので、退職にあたっては、残さずすべてを取得させてほしい」「残った年次有給休暇を買い取ってほしい」という話が出てきます。
年次有給休暇をすべて取得し尽くすというのは、退職日との関係で日程的に無理が無ければ可能な話ですし、労働者としての正当な権利を行使するに過ぎません。
しかし、年次有給休暇の買上げは、「会社が残日数の一部または全部の買上げを行うことができる」に過ぎず、労働者の側から権利として主張することはできません。
ただ、引継ぎをきちんと終わらせない恐れがある、あるいは未払残業代やパワハラを理由とする慰謝料を請求してくる可能性が高いなどの事情があれば、経営判断で年次有給休暇の買上げをすることも考えられます。