2022年 2月

2022/02/28|1,250文字

 

不注意による労災の防止https://youtu.be/HJPbk2GW7os

 

<通達の発出>

令和4(2022)年2月15日、厚生労働省大臣官房審議官(労災、建設・自動車運送分野担当)から都道府県労働局長に宛てて、令和4年度の労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項についての通達が発出されました(労災発0215第1号)。

この通達の中で、令和4年度においては、次の事項に留意し労災補償行政を推進する方針であることが明らかにされています。

1.新型コロナウイルス感染症等への迅速・的確な対応

2.過労死等事案などの的確な労災認定

3.迅速かつ公正な保険給付を行うための事務処理等の徹底

4.業務実施体制の確保及び人材育成、デジタル化の推進

 

<方針策定の背景>

上記の方針は、最近の労災補償行政を巡る状況への対応として、重点的に取り組むものです。

この通達では、方針策定の背景を概ね次のように説明しています。

近年、労災保険の新規受給者数は年間65万人を超える状況にあります。

こうした中での使命は、被災労働者に対して迅速・公正な保護をするため、必要な保険給付等を行うことにあります。

この使命を果たすため、職員ひとり一人がこの役割を自覚し、社会情勢に応じた業務運営の改善を実施していかなければなりません。

新型コロナウイルス感染症に関する労災請求件数は2万件以上となり、今後も相当数の労災請求が想定されます。

このことから迅速・公正に対応し、事業場等に対しても、積極的な労災請求を勧奨するよう要請することが大事です。

また、過労死等や石綿関連疾患など職業性疾病を巡る国民の関心は高く、過労死等に関する労災請求件数は2,800件以上となり、石綿関連疾患に関する労災請求件数も1,000件以上となるなど、多くの複雑困難事案の処理を求められている状況にあり、これらの労災請求事案に引き続き迅速かつ公正に対応していく必要があります。

一方で、現状の定員事情や行政経費に関する予算事情など、労災補償行政を取り巻く環境は依然として厳しい状況にあります。

このような状況の中で、労災補償行政に対する国民の期待に応え、労災請求に適切に対応するためには、厚生労働本省、都道府県労働局、労働基準監督署が、より一層連携して効率的な業務運営に取り組み、また、的確な事務処理の実施に必要な体制確保と人材育成を行うことが重要となっています。

 

<解決社労士の視点から>

方針策定の背景に述べられている内容から、厚生労働省も過労死等や石綿関連疾患など国民の関心が高い、つまり、マスコミが大きく取り上げる事項については、重点項目とせざるを得ないことが窺われます。

企業としても、マスコミでしばしば取り上げられる問題については、優先的に対応していかなければなりません。

また人件費予算が限られ、人手不足となっていることに対しては、連携しての効率的な業務運営に取り組み、人材育成を行うことで対応するとしています。

厚生労働省がどこまで取り組めるかは分かりませんが、企業にとっても、社内外の連携や人材育成が人手不足解消の要となることは言うまでもありません。

<国民健康保険における糖尿病性腎症重症化予防の取組>

厚生労働省が平成30(2018)年12月28日、国民健康保険における糖尿病性腎症重症化予防の取組を調査報告書に取りまとめ公表しました。 

高齢化の進行に伴い、生活習慣病が増加し、中でも糖尿病は、初期段階では自覚症状が無いため、長年放置されると、糖尿病性腎症の重症化進行により人工透析による治療が必要となるリスクがあります。

この場合、患者本人だけでなく家族の苦痛は著しく、合併症などにより勤務が困難となるケースも少なくありません。

 

<メタボリックシンドローム>

会社は定期健康診断など、法定の健康診断を実施しています。血糖値の高い受診者に対しては、健診機関から生活上の注意に関するパンフレットが配布されることもあります。

たしかに、糖尿病の目安となるのは、第一に血糖値ですが、他にも血液検査のHbA1c(ヘモグロビンエイワンシー)やBMIも参考になります。

また、内臓脂肪の蓄積による肥満をもとに、軽い高血糖、高血圧、高脂血症などが重なって起こっている病態は、「メタボリックシンドローム」といわれ、心筋梗塞や脳梗塞が起こりやすいだけでなく、将来的に高い確率で糖尿病になることがわかっています。

 

<特定保健指導>

日本人の死亡原因の約6割を占める生活習慣病の予防のために、40歳から74歳までの人を対象に、メタボリックシンドロームに着目した特定健診が行われています。

この特定健診の結果から、生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善による生活習慣病の予防効果が多く期待できる人に対して、専門スタッフ(保健師、管理栄養士など)が生活習慣を見直すサポートをします。これが特定保健指導です。

あくまでもメタボ予備軍に対する指導です。すでにメタボと認定された人には治療が必要です。特定保健指導では、予備軍からメタボに転落しないように指導するわけです。

特定保健指導を受けてもメタボ予備軍から抜け出せない人には、医師の受診をお勧めすることになります。

2022/02/26|1,230文字

 

安全配慮義務https://youtu.be/CX5LdSXAuBI

 

<労働安全衛生法の目的>

労働安全衛生法は、この法律の目的を次のように規定しています。

 

【目的】

第一条 この法律は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。

 

この中の「自主的活動」が、誰のどのような活動を指しているのかは、労働安全衛生法の中に示されていません。しかし、主にリスクアセスメントを指していると考えられます。

 

<リスクアセスメント>

リスクアセスメントは、職場の潜在的な危険や有害性を見つけ出し、これを除去・低減するための手法です。

労働安全衛生法が、全体として多くの職場に共通する労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化を目指しているのに対し、リスクアセスメントは、各職場の個性に応じて労働災害防止を目指すものです。

平成18(2006)年4月1日より、リスクアセスメントの実施が労働安全衛生法第28条の2により努力義務化されました。

 

【事業者の行うべき調査等】

第二十八条の二 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等(第五十七条第一項の政令で定める物及び第五十七条の二第一項に規定する通知対象物による危険性又は有害性等を除く。)を調査し、その結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない。ただし、当該調査のうち、化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物で労働者の危険又は健康障害を生ずるおそれのあるものに係るもの以外のものについては、製造業その他厚生労働省令で定める業種に属する事業者に限る。

 

具体的な進め方については、厚生労働省より「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」が公表されています。〔労働安全衛生法第28条の2第2項〕

 

<リスクアセスメントの必要性>

かつての労働災害防止対策は、発生した労働災害の原因を調査し、類似災害の再発防止対策を確立し、各職場に徹底していくという手法が基本でした。

しかし、災害が発生していない職場であっても潜在的な危険性や有害性は存在しており、 これが放置されると、いつかは労働災害が発生する可能性がありました。

また、技術の進展等により、多種多様な機械設備や化学物質等が生産現場で用いられるようになり、その危険性や有害性が多様化してきました。

こうしたことから、これからの安全衛生対策は、自主的に職場の潜在的な危険や有害性を見つけ出し、事前に的確な対策を講ずることが不可欠であり、これに応えたのが職場のリスクアセスメントです。

2022/02/25|1,345文字

 

不注意による労災の防止https://youtu.be/HJPbk2GW7os

 

<基安発0209第1号通達>

令和4(2022)年2月9日、厚生労働省労働基準局安全衛生部長より都道府県労働局長に宛てて、小売業と介護施設等を中心に増加する転倒や腰痛による労働災害を予防する取組を推進するため、令和4年度より労働局において実施する事項に関する通達を発出しました。

 

<通達発出の背景>

令和4(2022)年1月時点(速報値)における死傷者数(新型コロナウイルス感染症の罹患による労働災害を除く)は、小売業と介護施設を中心に増加し、全体では平成29(2017)年同期比で9.0%の増加となっています。

事故の型別でみると、「転倒」及び腰痛等の「動作の反動・無理な動作」など、職場での労働者の作業行動を起因とする労働災害(行動災害)が増加しており、中には後遺障害を伴う重篤な災害も発生しています。

こうした状況から、小売業と介護施設を中心として行動災害を予防するための取組の強化が、喫緊の課題となっています。

この課題を解決するためには、行動災害の増加を労働分野の問題としてだけではなく、人材確保など企業の経営問題であるとして、事業者の行動変容を促し、自主的な安全衛生管理の定着を図る必要があります。

このため、都道府県労働局では、小売業と介護施設を中心とした行動災害の予防対策の推進について、令和4(2022)年度は、以下のような事項を実施することとしています。

 

<+(プラス)Safe 協議会(仮称)の設置および運営>

各労働局で、管内での波及効果が期待されるリーディングカンパニー、地方公共団体、関係団体等を構成員とする+Safe 協議会(仮称)を設置します。

構成員による連携した取組みとして、取組目標の設定、行動災害の予防に関する啓発資料等の作成を行うとともに、構成員の安全衛生管理の好事例を管内事業場へ水平展開を行います。

 

<+(プラス)Safe 育成支援(仮称)の実施>

+(プラス)Safe 協議会(仮称)の構成員に準ずる規模の小売業と介護施設の多店舗展開企業等を対象者として、自主的な安全衛生管理のスタートアップ支援を行います。

支援開始にあたっては、労働局で対象者の安全衛生管理の状況や課題を確認し、効果が高いと見込まれる対策を育成支援対象企業とともに検討し、育成支援対象企業の実情を踏まえつつ優先順位を付けた支援計画を作成したうえで、支援を行います。

 

<大規模ショッピングセンター等の施設管理者を通じた取組み>

労働局と労働基準監督署で、駅ビルや商店街、ショッピングモールなど、小売店や飲食店等が複数、密集して存在する施設の施設管理者と連携しつつ、各店舗の責任者が集まる会議の機会等に、啓発資料等を活用した周知啓発を行います。

 

<実務の視点から>

通達に掲げられた施策は、個人レベルでの安全衛生に対する意識啓発による行動変容の促進、企業レベルでの自主的な安全衛生活動の普及・定着を図るものです。

しかし、これらのことは、本来、行政が中心となって行うべきものではなく、企業が自主的に取組むべき施策です。

企業の積極的な取組により、安全で健康に働くことのできる職場環境を調えることができ、従業員の勤労意欲が向上し、生産性、定着率が高まるとともに、有能な人材の獲得も容易になると考えられます。

2022/02/24|1,398文字

 

働き方改革と労働基準法との関係https://youtu.be/HTNnv1oQJvI

 

<労働基準法第1条>

労働基準法第1条には、労働条件の原則が定められています。

法令の第1条には、その法令の目的が掲げられていることが多く、この条文も労働基準法全体の目的を示しているとみることができます。

 

【労働条件の原則】

第一条 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。

2 この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

 

この条文を素直に読めば、「人たるに値する生活を営むための必要」というのは、人間らしい生活をするのに必要な収入が得られることを意味しているでしょう。

また、「労働条件を低下させる」というのは、賃金の実質的な時間単価を低下させることを意味するものと考えられます。

このことからすると、時間外労働や休日労働は割増賃金となりますから、労働者が希望して積極的に残業や休日出勤を行い、より多くの賃金を獲得するのは労働基準法第1条と矛盾するものではないでしょう。

ところが、労働基準法は改正され、平成31(2019)年4月1日から一部の事業・業務を除いて、残業時間の上限規制が行われました。

生活費を残業手当に頼っていた労働者にとって、この法改正は「労働条件を低下させる」ことにならないのか、「人たるに値する生活を営むための必要」を満たさなくなるのではないかという不安をもたらし兼ねないものとなっています。

 

<憲法との関係>

労働基準法が制定されたのは、日本国憲法第27条第2項の規定を受けてのことです。

 

第二十七条 2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

 

また、労働基準法第1条が「人たるに値する生活」と言っているのは、日本国憲法第25条第1項の「健康で文化的な最低限度の生活」を受けてのことでしょう。

 

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

 

第二次世界大戦が終わったのが昭和20年、日本国憲法の公布が昭和21年、労働基準法の公布が昭和22年です。この当時、「人たるに値する生活」「健康で文化的な最低限度の生活」という言葉の解釈として、経済的な側面が中心になったのは当然のことでしょう。

 

<働き方改革との関係>

過労死、過労自殺、メンタルヘルス不調といった問題がクローズアップされ、過重労働や長時間労働の予防が急務となっています。

割増賃金さえきちんと支払えば、企業が労働者をどれだけ働かせても問題ないとは考えられない時代になりました。

長時間労働は解消されなければなりません。

しかし残業手当が減って、労働者の賃金の時間単価が減ったのでは、労働基準法第1条第2項が労働関係の当事者に「労働条件を低下させてはならない」と命じていることに違反してしまいます。

この条文は、労働関係の当事者である使用者と労働者の両方に、労働条件の向上を図るように努めなさいと言っているのですから、労使で話し合って、労働時間を減少させつつ売上や利益が減少しないように工夫することが求められています。

このように、労働基準法第1条の「人たるに値する生活」「労働条件」の意味合いは、経済的な側面だけでなく、社会的な側面や健康的な側面に拡大されてきたとみることができるでしょう。

2022/02/23|1,236文字

 

就業規則を作るならhttps://youtu.be/kd5sU_-19Jc

 

<就業規則の作成・届出義務>

就業規則の作成と届出については、労働基準法に次の規定があります。

 

【就業規則の作成及び届出の義務】

第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。(以下略)

 

全体で常時10人以上の労働者を使用するようになれば、就業規則の作成・届出義務が発生します。

これは遅くとも、従業員が10人になったら、就業規則が無いとあれこれ不都合が発生するので、労働基準法が警告を発しているのだと思います。

パートやアルバイトなど非正規社員が1人であっても、全体で10人以上であれば、その1人に適用するための就業規則が必要となり、作成・届出義務が発生します。

もし作成しなければ、その非正規社員には正社員の就業規則が適用されることになってしまいます。

 

<意見書の添付>

就業規則の作成や変更を労働基準監督署長に届け出るには、「意見書」の添付が必要です。

これについては、労働基準法に次の規定があります。

 

【意見書の添付】

第九十条 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。

2 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。

 

労働者の過半数で組織する労働組合が無い場合の、「労働者の過半数を代表する者」は、正社員の就業規則の手続きに使用する意見書であっても、非正規社員を含めた「労働者全体の過半数を代表する者」であることが必要です。

 

<短時間労働者の就業規則の意見書>

一方で、パート有期労働法(正式名称:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)は、パートやアルバイトなど短時間労働者の就業規則の作成・変更について、次の規定を置いています。

 

【就業規則の作成の手続】

第七条 事業主は、短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとするときは、当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとする。

 

この規定にある「短時間労働者の過半数を代表すると認められるもの」というのは、労働基準法90条にならって、「当該事業場に、短時間労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、短時間労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては短時間労働者の過半数を代表する者」を指すものと考えられます。

また、意見聴取が努力義務とされている以上、短時間労働者の就業規則の作成・変更の届出に、短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの「意見書」を添付する必要は無いことになります。

2022/02/22|989文字

 

シフト調整で社会保険未加入https://youtu.be/USoOj2jX-z8

 

<現状の問題点>

現在、厚生年金保険法と健康保険法では、「二月以内の期間を定めて使用される者」(引き続き使用されるに至った場合を除く)が適用除外となっています。

ただし、2か月以内の雇用契約であっても、これを継続反復しているような場合には、「引き続き使用されるに至った場合」として、厚生年金保険と健康保険の対象としています。

それでも、雇入れ時の最初の雇用契約の期間は適用の対象となっていないため、雇用の実態に即した適切な適用が図られているとはいえません。

これは、雇用保険法第6条第2号が、雇用保険の適用除外者として「同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者」と規定していることとも整合性がとれていません。

 

<見直し内容>(令和4(2022)年10月施行)

雇用保険の規定等も参考にして「二月以内の期間を定めて使用され、その定めた期間を超えて使用されることが見込まれない者」を適用除外にすることにより、雇用契約の期間が2か月以内であっても、実態としてその雇用契約の期間を超えて使用される見込みがあると判断できる場合は、最初の雇用期間を含めて、当初から厚生年金保険と健康保険の適用対象とすることになります。

令和4(2022)年10月、社会保険の適用拡大と同時に施行されます。

 

<具体的な事務取扱>

法改正後は、雇用期間が2か月以内の場合であっても、以下のとおり取り扱うことになります。

就業規則、雇用契約書等で、その契約が「更新される旨」、または「更新される場合がある旨」が明示されている場合には、当初から被保険者となります。

また、同一の事業所で、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が更新等により最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績がある場合にも、当初から被保険者となります。

ただし、これらに該当するときであっても、労使双方により、最初の雇用契約の期間を超えて雇用しないことにつき合意しているときは、雇用契約の期間を超えることが見込まれないこととして取り扱います。

年金事務所や会計検査院による事業所調査では、労働者名簿等に基づき適用されていない従業員等の雇用契約書等を確認し、法改正後の期間について、雇入れ当初から被保険者に該当することが事後的に判明した場合は、契約当初(保険料徴収の時効を踏まえて2年)に遡及して適用するよう指導することになります。

2022/02/21|795文字

 

未払残業代の経済的リスクhttps://youtu.be/lf4nqYYECFs

 

<働き方改革>

「働き方改革」は、働く人たちが、個人の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。

日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く人たちのニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要です。

働く人の置かれた個人的な事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指します。

 

<時間外労働の上限規制>

長時間労働は、健康の確保を困難にするとともに、仕事と家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因となっています。

長時間労働を是正することによって、ワークライフバランスが改善し、女性や高齢者も仕事に就きやすくなり労働参加率の向上に結びつきます。

このため、働き方改革の一環として、労働基準法が改正され、時間外労働の上限が法律に規定されました。

 

<法改正のポイント>

時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として、月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできなくなりました。

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、

・時間外労働・・・年720時間以内

・時間外労働+休日労働・・・月100時間未満、2~6か月平均80時間以内

とする必要があります。

原則である月45時間を超えることができるのは、年6回(6か月)までです。

法違反の有無は「所定外労働時間」ではなく、「法定外労働時間」の超過時間で判断されます。

大企業への施行は2019年4月、中小企業への適用は1年猶予され2020年4月でしたから、すべての企業に適用されています。

2022/02/20|557文字

 

年次有給休暇はさかのぼって取得できるのかhttps://youtu.be/eCN6tB0p_7g

 

<働き方改革の目指すもの>

「働き方改革」は、働く人たちが、個人的な事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。

日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く人たちのニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要です。

働く人の置かれた個人的な事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指します。

 

<年5日の年次有給休暇の確実な取得>

年次有給休暇は、働く人の心身のリフレッシュを図ることを目的として、原則として、労働者が請求する時季に与えることとされています。

しかし、同僚への気兼ねや請求することへのためらい等の理由から、取得率が低調な現状にあり、年次有給休暇の取得促進が課題となっています。

このため、労働基準法が改正され、平成31(2019)年4月から、全ての企業で、法律上年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。

2022/02/19|828文字

 

基礎年金番号の役割https://youtu.be/5ZBM6hKJUPk

 

<現在のしくみ>

老齢基礎年金・老齢厚生年金の受給開始時期は、原則として、個人が60歳から70歳の間で自由に選ぶことができます。

繰上げ受給(65歳より早く受給開始)の場合、年金額は減額されます(1月あたりマイナス0.5%、最大5年でマイナス30%)。

繰下げ受給(65歳より後に受給開始)の場合、年金額は増額されます(1月あたりプラス0.7%、最大5年でプラス42%)。

そしてこの減額・増額は、一生涯続くことになります。

なお、繰下げについては、66歳到達以降に選択することができます。

 

<法改正の趣旨>

高齢期の就労の拡大等を踏まえ、高齢者が自身の就労状況等に合わせて年金受給の方法を選択できるよう、繰下げ制度について、より柔軟で使いやすいものとするための見直しが行われます。

 

<繰下げ受給の上限年齢の引上げ>(令和4(2022)年4月施行)

繰下げ受給の上限年齢が70歳から75歳に引き上げられます。

これによって、受給開始時期を60歳から75歳の間で個人が選択できるようになります。

ただしこの改正は、改正法施行時点で70歳未満の人に適用されます。

繰下げについて、66歳到達以降に選択することができるのは従来と同じです。

繰下げ増額率は1月あたりプラス0.7%で変更されませんので、最大10年でプラス84%となります。

75歳以降に繰下げ申出を行った場合でも、75歳に繰下げ申出があったものとして年金が支給されます。

 

<繰上げ受給の減額率変更>(令和4(2022)年4月施行)

繰上げ減額率が1月あたりマイナス0.5%からマイナス0.4%に変更されます。

最大5年でマイナス30%からマイナス24%となります。

 

<70歳以降に請求する場合の5年前時点での繰下げ制度>(令和5(2023)年4月施行)

70代(70歳以降80歳未満の間)で請求し、かつ請求時点における繰下げ受給を選択しない場合、年金額の算定に当たっては、5年前に繰下げ申出があったものとして年金が支給されます。

2022/02/18|1,372文字

 

基礎年金番号の役割https://youtu.be/5ZBM6hKJUPk

 

<事前の相談>

生活保護制度の利用を希望する場合には、まず地域の福祉事務所の生活保護担当に相談します。

ここで、生活保護制度の説明を受けるとともに、生活福祉資金、各種社会保障施策等の活用について検討することになります。

その日1日を過ごすのも大変になってから相談に訪れる人もいますが、今後の見通しが立たなくなったら早めに相談するべきでしょう。

 

<保護申請後の調査>

生活保護の申請をすると、保護の決定のために次のような調査が行われます。

 

・生活状況等を把握するための実地調査(家庭訪問等)

・預貯金、保険、不動産等の資産調査

・扶養義務者による扶養(仕送り等の援助)の可否の調査

・年金等の社会保障給付、就労収入等の調査

・就労の可能性の調査

 

扶養義務者による扶養の可否の調査は、対象者のプライバシーなどのこともあり、どうしても形式的なものになりがちです。 

また、年金受給額などは保護開始後に詳しく調査されるものです。

 

<保護費の支給>

基準となる最低生活費から収入(年金や就労収入等)を差し引いた額が、保護費として毎月支給されます。

したがって、生活保護の受給中は、収入の状況を毎月申告することになります。

また、世帯の実態に応じて、福祉事務所のケースワーカーが年数回の訪問調査を行います。

就労の可能性のある方については、就労に向けた助言や指導が行われます。

しかし、生活保護世帯も高齢化が進み、就労が困難なケースが増えています。

 

<老齢年金の受給>

生活保護を受け始めてから、年金の手続をすれば受給できることがわかる場合があります。

この場合、一般には5年前の分までさかのぼり、まとめて受給することになります。

このときの受給額が多額の場合には、生活保護が一時ストップすることもありますし、その後の受給額が充分であれば保護廃止の決定が行われることもあります。

 

<年金相談は早めに>

「今はまだ大丈夫」ということで、年金をもらう手続を怠っている方も、かなりの数にのぼります。

しかし、面倒に思わず、年金事務所の窓口に行って、相談していただきたいものです。

生活費に困り余裕の無い状態になってからでは、落ち着いて話を聞くこともできなくなりますので。

お客様相談室では、一般の職員の他、社会保険労務士が対応にあたっています。

いくらネットや本で調べてみても、個人の保険料納付記録が無ければ、確実なことはわかりません。

年金を受け取る権利には、時効期間もあります。

年金をもらえる状態で、長年放置していれば、権利は消えていってしまいます。

そうならないためにも、是非一度、ご相談をしていただきたいです。

 

<障害年金の受給>

年金というと、まず老齢年金が思い浮かびます。

しかし、働けなくなって生活保護の申請をする方の中には、障害年金の受給対象となる方も含まれています。

障害があるために働けないケースがあるからです。

ただし、この障害年金を受けるには、保険料納付要件、初診日の証明、障害の状態等いくつものハードルがあります。

生活費に困り余裕の無い状態になる前に、老齢年金と同じく年金事務所で相談することをお勧めします。

ただ、老齢年金よりも少々複雑な話となることが多いようです。

不安がある場合や、年金事務所での相談に納得できない場合には、思い切って、社会保険労務士に相談してみてはいかがでしょうか。

2022/02/17|1,381文字

 

サービス残業と労働者の責任https://youtu.be/GMUfGb6hok8

 

<正しい計算の法的根拠>

労働基準法には、残業手当を何分単位で計算するかについて規定がありません。

しかし、規定が無いからといって、労働局や労働基準監督署が企業の残業代計算について、指導できないというのでは困ります。

そこで、法令の具体的な解釈が必要な場合には、行政通達が出されて、その内容が解釈の基準となります。

残業手当の計算についても、労働省労働局長通達が出されています。

531ページまである行政通達の220ページから221ページにかけて、次のような内容が記載されています。

 

【昭和63年3月14日付通達 基発第150号】

次の方法は、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められるから、・・・違反としては取り扱わない。 

・時間外労働および休日労働、深夜労働の1か月単位の合計について、1時間未満の端数がある場合は、30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げること。

・1時間当たりの賃金額および割増賃金額に1円未満の端数がある場合は、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げること。

・時間外労働および休日労働、深夜労働の1か月単位の割増賃金の総額に1円未満の端数がある場合は、上記と同様に処理すること。

 

結局、この基準に沿った四捨五入は許されますし、たとえば常に切り上げるなど労働者に有利なルールで運用することも問題ありません。

 

<行政通達の効力>

この行政通達は、厚生労働省が労働局や労働基準監督署に、企業指導のための具体的な指針を示したものです。

ですから、労働基準法などの法律とは異なり、行政通達が直接企業を拘束するものではありません。

しかし、企業から「行政通達の内容が不合理だから従いません」と主張するためには、行政訴訟で指導の不当性を争い、裁判所に行政通達の違法性を確認してもらうしかないでしょう。

これは、立法機関が法律を作り、行政機関が執行し、司法機関がその違法性や違憲性を審査するという三権分立のあらわれです。

結局、現実的には、どの企業もこの行政通達に従うしかないでしょう。

 

<トイレの時間は勤務時間外か>

これも法令には規定が無いのですが、一般に「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。

仕事をしなければ賃金を支払う必要がないということです。

この原則を杓子定規に捉えると、トイレに行っても、タバコを吸っても、居眠りをしても、1分単位で給料を減らして良いように思えます。

しかし、「ノーワーク・ノーペイの原則」は労働契約の性質から導き出されています。

労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者と使用者が合意することによって成立する契約です。〔労働契約法第6条〕

つまり「働くなら払います」の裏返しで、「働かないなら払いません」ということを言っているに過ぎません。

そもそも、労働契約を締結する際には、いちいち確認しなくても、トイレに行くことぐらいは当然に了解済みです。

タバコについては、その職場のルールが説明されるでしょう。

そして、居眠りについては、ひどければ懲戒処分の対象としておけば済むことです。

結局、労働時間の中には、労働以外のことをする時間もある程度含まれているという了解のもとで、労働契約が成立し給与も決められているといえるのです。

2022/02/16|914文字

 

国民年金の任意加入制度https://youtu.be/QOlYVznfX94

 

<在職定時改定の導入>

現在、老齢厚生年金の受給権を取得した後に就労し、厚生年金に加入している場合は、資格喪失時(退職時・70歳到達時)に、受給権取得後の加入者(被保険者)であった期間を加えて、老齢厚生年金の額が改定されています(いわゆる退職改定)。

この場合、厚生年金保険料を支払いながら働いている間は、老齢厚生年金の支給額が増えず、退職後に増える形になります。

高齢期の就労が拡大する中、就労を継続したことの効果を退職を待たずに早期に年金額に反映することで、年金を受給しながら働く在職受給権者の経済基盤の充実を図ることを目的として、65歳以上の人については、在職中であっても、年金額の改定が定時に行われることとなります(毎年1回、10月分から)。

つまり、厚生年金保険料を支払いながら働いている間、毎年、老齢厚生年金の支給額が増えていくことになります。

 

<支給停止基準額の引き上げ>

老齢厚生年金に加入しながら働いている60歳から64歳に支給されている、特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度について、支給停止とならない範囲が拡大されます。

具体的には、支給停止が開始される賃金と年金の合計額の基準が、現行の28万円から47万円(令和2年度額)に引き上げられます。

60歳から64歳の在職老齢年金制度(低在老)については、年金の一部または全部が支給停止とならないように、労働時間を抑えようとする傾向が一定程度確認されていることで、労働力不足の原因となりかねないと言われてきました。

また、2030年度まで支給開始年齢の引上げが続く女性の就労を支援する必要もあります。

なにより、制度を分かりやすくするという要請から、今回の法改正が行われました。

 

<解決社労士の視点から>

働き方改革は、少子高齢化の進む日本で、良質な労働力の確保を目指して強力かつ継続的に推進されています。

令和4(2022)年4月の法改正の中でも、上記の2つは、能力のある高齢者が働くことを抑制せず意欲的に働くとともに、経済基盤を充実させることができるようにするものです。

企業としては、この流れに乗って、高齢者の活用を進めることが得策だといえるでしょう。

2022/02/15|2,465文字

 

パワハラの6類型https://youtu.be/_I0MvwhXaPU

 

<パワハラ>

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(通称パワハラ防止法)によれば、職場のパワーハラスメントとは職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されるものをいいます。〔同法第30条の2第1項〕

これによると、相手に精神的・身体的苦痛を与えて、その人の就業環境を害した、あるいは、他の人たちまで巻き込んで就業環境を悪化させたという実害の発生が、パワハラの成立条件のようにも見えます。

しかし、企業としてはパワハラを未然に防止したいところです。

ですから、就業規則にパワハラの定義を定めるときは、「精神的・身体的苦痛を与えうる言動」「就業環境を悪化させうる言動」という表現が良いでしょう。

 

<優越的な関係>

パワーハラスメントという言葉は、上司から部下へのいじめ・嫌がらせを指して使われる場合が多いでしょう。

しかし、先輩・後輩間や同僚間でも起こります。

さらには、部下から上司に対して行われるものもあります。

複数の部下が共謀して上司にパワハラを行うこともあります。

「優越的な関係」には、「職務上の地位」に限らず、人間関係や専門知識、勤続年数や経験などの様々な優位性が含まれます。

 

<業務上必要かつ相当な範囲>

業務上の必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合でも、業務上必要かつ相当な範囲で行われている場合には、パワーハラスメントにはあたりません。

たとえば、上司は自らの職位・職能に応じて権限を発揮し、業務上の指揮監督や教育指導を行い、上司としての役割を遂行することが求められます。

職場のパワーハラスメント対策は、そのような上司の適正な指導を妨げるものではなく、各職場で、何が業務の適正な範囲で、何がそうでないのか、その範囲を明確にする取組を行うことによって、適正な指導をサポートするものでなければなりません。

そうでなければ、上司は部下を適正に指導することに臆病になり躊躇してしまい、組織としての機能が損なわれて、企業全体の生産性が低下してしまいます。

 

<パワハラの判断基準>

具体的な事案が発生した場合に、それがパワーハラスメントであったかどうか判断をするには、行為が行われた状況など詳細な事実関係を把握し、各職場での共通認識や裁判例も参考にしながら判断しましょう。

しかし、パワハラかどうかの判断をするのに、裁判例を参考にするのはむずかしいと思います。

むしろ、就業規則を読めばわかるようにしておきたいものです。

そして、就業規則にパワハラの定義を定めるときには、適正な指導との区別を具体的に明らかにする必要があります。

まず主観的には、相手の成長を思い親身になって接するのが指導です。

これに対して、自分の感情を爆発させストレスを発散する言動がパワハラです。

ですから、指導に単なる怒りの感情は伴いません。

100%怒りの感情だけがあれば、それは間違いなくパワハラです。

そして客観的には、指導というのは、その対象者の親・家族が見ていて、「しっかり指導してくれてありがとう」と思える言動です。

これに対して、パワハラというのは親・家族が見ていて「何てことを言うんだ!何てことをするんだ!」と怒り嘆く言動です。

なぜなら、指導というのは相手の成長を願って行うものであり、また、指導した者には指導に従った結果に対して責任を負うという覚悟があります。

親が子に厳しくしても、この前提が崩れない限り指導であり躾(しつけ)です。

こうしたことを踏まえて、就業規則にパワハラの定義を定めなければ、従業員には何が禁止されているのか不明確ですし、それらしき行為があっても確信が持てなければ、誰も注意することができないのですから被害者は救われません。

「自分の言動が、パワハラとなるかどうかわからない。要は、相手の受け取り方次第なので、ハッキリしない。」というのが加害者側の理屈でしょう。

これを許さないためには、具体的で明確な定義が必要なのです。

 

<パワハラ発生のメカニズム>

そもそも部下や後輩などが、優位に立つ自分に対して従順で素直で協力的なのは、経験、能力、意欲の差が明白だからではありません。

立場上あるいは心理的に仕方なくてそうしているのです。

決して実力の差が、仕事上の立場を超えて現れたわけではありません。

ここを勘違いしている人が、パワハラに走っているように思います。

パワハラ防止のための教育研修の内容には、このパワハラ発生のメカニズムも加える必要があるでしょう。

 

<企業として必要な対策>

パワハラに限らず、セクハラでもマタハラでも、ハラスメント対策としては、次のことが必要です。

・ハラスメントは許さないという経営者のメッセージ

・就業規則にあらゆるハラスメントの禁止規定と対応する懲戒規定を置く

・実態を把握するための体制と仕組みの整備

・社員教育

・再発防止措置

・相談窓口の設置

この中で、相談窓口としては、厚生労働省が社外の専門家を推奨しています。

なぜなら、社内の担当者や部門では、被害者が申し出をためらいますし、個人情報が漏れるなど被害拡大やもみ消しの恐れもあるからです。

まずは、経営者がハラスメントの問題を重くとらえ理解し、社内に「許さない」というメッセージを発信するのが第一歩です。

 

<社外での解決>

被害者の申し出にもかかわらず、企業が納得のいく対応をしてくれない場合には、被害者は労働局に申請して紛争調整委員会に斡旋(あっせん)をしてもらうことができます。

反対に、企業がきちんと対応したのに、被害者が納得してくれない場合にも、企業から斡旋を求めることができます。

斡旋では、委員会が話し合いの場を設けます。

双方の話し合いで解決すれば良いのですが、そうでなければ訴訟に発展することもあります。

特定社会保険労務士は、この斡旋での一方当事者の代理人となる資格を持っています。

専門家の助力が必要であれば、弁護士か特定社労士にご相談ください。

2022/02/14|1,589文字

 

セクハラ被害者の権利と会社の責任https://youtu.be/g5LOEg4gIfg

 

<セクハラ>

セクシュアルハラスメントの略で、「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型)」または「性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること(環境型)」をいいます。

これが厚生労働省による説明です。

これによると、労働者が「不利益を受けること」あるいは「悪影響が生じること」という実害の発生が、セクハラ成立の条件のようにも見えます。

しかし、企業としてはセクハラを未然に防止したいところです。

 

<企業の責任>

法令により、企業にはセクハラ対策が義務付けられています。〔男女雇用機会均等法第11条〕

従業員からセクハラ被害の申し出があれば、企業は誠実に対応しなければなりませんから、被害の申し出を受け付けるための窓口を設置する義務もあります。

就業規則にセクハラの禁止規定と、これに対応する懲戒規定も必要になります。

 

<就業規則にセクハラの定義>

まず就業規則にセクハラの定義を定めなければ、従業員には何が禁止されているのか不明確ですし、それらしき行為があっても確信が持てなければ、誰も注意することができないのですから被害者は救われません。

「自分の言動が、セクハラとなるかどうかわからない。要は、相手の受け取り方次第なので、ハッキリしない」というのが加害者側の理屈でしょう。

これを許さないためには、「自分と相手との間柄を前提として、客観的に見て、相手や周囲の社員が性的な意味合いを感じ不快に思う言動」はセクハラに該当するというような具体的で明確な定義が必要なのです。

社内での相手に対する言動が、周囲の社員にとって、あるいは、相手の家族にとって、性的な意味合いで不快感を与えていればセクハラになります。

 

<セクハラ発生のメカニズム>

そもそも部下や後輩が自分に対して従順で素直で協力的なのは、自分に好意を寄せているからではなくて、立場上、仕方がないからです。

決して、二人の間柄が、仕事上の立場を超えたわけではありません。

ここを勘違いしている方が、セクハラに走っているように思われます。

セクハラ防止のための教育研修の内容には、このセクハラ発生のメカニズムも加える必要があるでしょう。

 

<企業として必要な対策>

セクハラに限らず、パワハラでもマタハラでも、ハラスメント対策としては、次のことが必要です。

・ハラスメントは許さないという経営者からのメッセージ

・就業規則の懲戒処分に関連規定を置く

・実態を把握するための体制と仕組みの整備

・社員教育

・再発防止措置

・相談窓口の設置

この中で、相談窓口としては、厚生労働省が社会保険労務士など社外の専門家を推奨しています。

なぜなら、社内の担当者や部門では、被害者が申し出をためらいますし、被害拡大やもみ消しの恐れもあるからです。

まずは、経営者がハラスメントの問題を重くとらえ理解し、社内に「許さない」というメッセージを発信するのが第一歩です。

 

<社外での解決>

法は、企業に対して自主的解決を求めています。〔男女雇用機会均等法第15条〕

しかし、被害者の申し出にもかかわらず、企業が納得のいく対応をしてくれない、また、企業としてはきちんと対応したのに、被害者が納得してくれないという場合には、労働局に申請して紛争調整委員会に調停をしてもらうことができます。

調停では、委員会から具体的な事情を踏まえた和解案が提示されます。

双方がこれに従えば、一件落着ですが、そうでなければ訴訟に発展することもあります。

特定社会保険労務士は、この調停での一方当事者の代理人となる資格を持っています。

ハラスメントの防止策や社員教育から、万一紛争に発展した場合の解決まで、社内でまかなえない部分については専門家である社会保険労務士にご用命ください。

2022/02/13|1,662文字

 

男女平等https://youtu.be/gOe2ZdVhYRk

 

<法律の規定>

女性が仕事と育児を両立できるよう、法律には次の規定があります。

・産前産後休業中とその後30日間は解雇禁止。〔労働基準法第19条第1項〕

・妊娠中と産後1年以内の妊娠・出産・産休取得を理由とした解雇は無効。〔男女雇用機会均等法第9条第4項〕

・妊娠・出産などを理由とする不利益な取扱は禁止。〔男女雇用機会均等法第9条第3項〕

・産前・産後休業、育児休業などの申出や取得を理由とした解雇その他不利益な取扱は禁止。〔育児・介護休業法第10条〕

労働法の代表格である労働基準法の規定だけを見て、「産休終了後30日経過すれば解雇できる」と即断するのは、全くの誤りであることが分かります。

 

<平成26(2014)年10月23日最高裁判決>

妊娠中の軽易業務への転換を「契機として」降格処分を行った場合には、妊娠中の軽易業務への転換を「理由として」降格したと解されるので、男女雇用機会均等法に違反すると判断しました。

そして、違反に当たらない例として、次のものを挙げています。

・降格することなく軽易業務に転換させることに業務上の必要性から支障がある場合であって、その必要性の内容・程度、降格による有利・不利な影響の内容・程度に照らして均等法の趣旨・目的に実質的に反しないと認められる特段の事情が存在するとき

・軽易業務への転換や降格により受ける有利・不利な影響、降格により受ける不利な影響の内容や程度、事業主による説明の内容等の経緯や労働者の意向等に照らして、労働者の自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき

どちらも、レアケースであることは間違いありません。

 

<解釈通達:平成27年1月23日付け雇児発0123第1号>

上記の最高裁判決がきっかけとなり、雇用均等・児童家庭局長の解釈通達が発出されました。

妊娠・出産、育児休業等を「契機として」不利益取扱を行った場合、妊娠・出産、育児休業等を「理由として」不利益取扱を行ったと解されるので、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法に違反するという内容です。

ここで、「契機として」は基本的に時間的に近接しているか否かで判断するものとされました。

また、違反に当たらない例として、次のものが挙げられています。

・業務上の必要性から支障があるため当該不利益取扱いを行わざるを得ない場合において、その業務上の必要性の内容や程度が、法の規定の趣旨に実質的に反しないものと認められるほどに、当該不利益取扱いにより受ける影響の内容や程度を上回ると認められる特段の事情が存在するとき

・契機とした事由又は当該取扱いにより受ける有利な影響が存在し、かつ、当該労働者が当該取扱いに同意している場合において、有利な影響の内容や程度が当該取扱いによる不利な影響の内容や程度を上回り、事業主から適切に説明がなされる等、一般的な労働者であれば同意するような合理的な理由が客観的に存在するとき

これらの例外も、最高裁判決の挙げた例外と軌を一にするものであって、極めて稀なケースを想定しています。

 

<解決社労士の視点から>

冒頭に掲げたとおり、男女雇用機会均等法第9条第4項は、「妊娠中・出産後1年以内の解雇は、事業主が、妊娠等が理由でないことを証明しない限り無効」としています。

訴訟などで争われたケースの具体的な内容を検討してみると、元々問題社員と目されていた社員について、妊娠・出産で本人がいない間に、解雇などの不利益取扱が検討されるという事情が窺われます。

問題社員を日頃から注意・指導し、これに応じない場合には懲戒で対応するなどしていれば、妊娠前に会社の決断を下せたでしょうし、たまたま妊娠・出産の時期に解雇などの不利益取扱をするタイミングとなった場合でも、「妊娠等が理由でないことを証明」しやすくなるでしょう。

同様のことは、問題社員の定年後の再雇用拒否や、問題社員が労災事故で休業した場合にも生じます。

問題社員に対しては、様子見をするのではなく、速やかな対処が必要だということです。

2022/02/12|2,119文字

 

会社に都合よく就業規則を変更するhttps://youtu.be/ZQooKnziL3U

 

<法改正があった場合>

本来、法令の内容を広く国民に知らせるのは国家の役割だと思われるのですが、労働基準法には次の規定があって、労働基準法などの内容を労働者に周知させるのは使用者の義務ということになっています。

これには、30万円以下の罰金という罰則も規定されています。〔労働基準法第120条第1号〕

 

【法令等の周知義務】

第百六条 使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第十八条第二項、第二十四条第一項ただし書、第三十二条の二第一項、第三十二条の三、第三十二条の四第一項、第三十二条の五第一項、第三十四条第二項ただし書、第三十六条第一項、第三十七条第三項、第三十八条の二第二項、第三十八条の三第一項並びに第三十九条第四項、第六項及び第七項ただし書に規定する協定並びに第三十八条の四第一項及び第五項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。

 

就業規則に、「この規則に定めた事項のほか、就業に関する事項については、労基法その他の法令の定めによる」という規定を置いておけば、法改正があっても法令と就業規則との矛盾が発生することは防げます。

しかし、こうした規定を置いたとしても、法改正の内容を労働者に周知する義務は果たしたことになりませんから、別途資料を配布して説明会を開催するなどが必要になってしまいます。

これではかえって大変ですから、法改正の内容を就業規則に反映させて、就業規則の一部として周知した方が簡単だということになります。

 

<労働条件の実態が就業規則に記載されている内容とズレている>

次のようなケースが考えられます。

・就業規則に出勤簿による勤務管理の規定があるが、実際にはタイムカードを使用している。

・就業規則には女子の制服についての規定があるが、はるか昔に制服が廃止されている。

・電車の遅れによる遅刻に、就業規則で必要とされている遅延証明書が不要とされている。

たしかに、古い規定が残っていても特別な不都合は無いのですが、会社側の就業規則に対する無関心な態度を示していることになりますから改めるべきでしょう。

 

<就業規則の予定していない非正社員がいる>

正社員と非正社員がいても、就業規則が1種類しか無ければ、その就業規則がすべての社員に適用されます。

そもそも、会社ごとに決めているはずの「正社員」の定義すら無いでしょうから、賞与、退職金、昇進、昇給、人事異動など、就業規則上は一律に扱うことになるわけです。

会社から非正社員に口頭で説明し、納得してもらっているつもりであったとしても、その人が退職後に経済的に困った場合には、会社に対して未支給の賞与や退職金の支払いを求めてくることもあります。

 

<「労使で話し合って」という規定が残っている>

社員のすべてが経営者の家族や親戚であれば、何でも話し合って円満に解決するのがベストでしょう。

しかし、会社が成長し従業員が増えてくると、赤の他人が会社に入ってきます。

「労使で話し合って」では解決がむずかしくなります。

就業規則がトラブルの予防や解決に対応できる内容となっていないのであれば、早い段階で見直すことをお勧めします。

 

<会社の成長や労働環境の変化>

会社側からも従業員側からも、会社や社会の変化に応じて、労働条件の変更についての要望が出てくることがあります。

特に、今のように「働き方改革」について報道されない日が無いといった状況では、数多くの点について意見が出てきていることでしょう。

これはチャンスですから、よく話し合って就業規則の変更についての合意を形成したいところです。

 

<労働基準監督署から是正勧告や指導を受けた>

「是正勧告」は、法令違反を直ちに改めなさいという内容ですから、速やかに就業規則の内容と運用を改めなければなりません。

似たものに「指導票」というのがありますが、こちらは計画的に改善を進める姿勢を示すことが求められるものです。

素人判断で動いてしまうと、将来に向けて大きな影響が生じますから、特に労基署対応に慣れた社会保険労務士に相談することをお勧めします。

 

<不利益変更の留意点>

従業員の全員ではなくても、一部の従業員にとって不利益となる就業規則の変更は、その不利益を被る従業員から、変更の無効確認や損害賠償の請求などの形で問題が露見することがあります。

 

【問題となる不利益変更の例】

・定年制が無い会社で新たに定年制を設ける。

・すでに規定されている休職期間を短くする。

・賃金の一部をカットする。

・退職金の支給額を減らす。

・所定労働時間を延長する(時間単価が下がる)。

 

経営者の立場で考えて、「やむを得ない事情がある」としても、裁判になれば「経営努力の不足」として一蹴されてしまうこともあります。

反対に、不利益変更の実質的な理由がさほど強固ではなくても、段取りが適正であるために是認されるケースもあります。

社会保険労務士にご用命いただく場合には、不利益変更の内容や理由だけでなく、変更の手順についても具体的にご相談いただけたらと思います。

<就業規則の内容>

就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

・労働条件の共通部分

・職場の規律

・法令に定められた労働者の権利・義務

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。

また、一つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<就業規則の必要性>

小規模な企業では、就業規則が無いこともあります。

しかし、明文化した規定がなく労働条件が個人ごとに決められるようでは、事務処理が煩雑になるばかりでなく、不平等と不公平が発生し労働者に不信感を与えることになります。

これでは、トラブルとなる可能性が高まります。

会社の秩序を守り、統一的に事業を運営していくためには、労働条件や服務規律などを明らかにした就業規則を作成することが必要です。

 

労働基準法には、次の規定があります。

 

【就業規則作成及び届出の義務】

第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項

二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

三 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項

四 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項

五 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項

六 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項

七 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項

八 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項

九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項

十 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

 

罰則があるわけですから、正社員、パート社員、嘱託社員、アルバイト社員など区分はどうあれ、臨時雇いではない従業員が10名以上なら、就業規則を作成して所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。

 

<就業規則のメリット>

罰則のことはともかく、就業規則を作成するメリットとしては、次のことが挙げられます。

 

【使用者側のメリット】

・ 労働条件や職場規律を統一的、画一的に定めることによって、合理的で効率的な労務管理を行うことができる。

・ 労働者一人ひとりが職場ルールを良く理解することによって、職場の秩序を良好に保つことができるようになる。

・ 無用なトラブルを予防し、安定した労使関係をつくることができる。

 

【労働者側のメリット】

・ 労働条件や職場規律が明確になることによって労使関係が安定し、安心して働くことができるようになる。

・ 明確にされた職場ルールを守ることによって、使用者からの恣意的な制裁を避けることができる。また、自分が知らない定めによる懲戒を受ける心配がなくなる。

・ 就業規則によって労働者の権利が守られるとともに、生活設計がたてやすくなる。

 

社会保険労務士という仕事をしていると、就業規則がちゃんとしていないために、余計なトラブルが多発する事態を目の当たりにしてしまいます。

「こんなトラブルは、こういう規定を置いておけば防げたのに」と思うことが多すぎます。

経営者も労働者も安心して事業を継続するために、その会社にマッチした就業規則は是非とも必要です。

 

なお、就業規則は生ものです。1年も放置していたら、害悪をもたらします。

定期的な見直しをどうぞお忘れなく。

2020/02/10|1,863文字

 

働き方改革と労働基準法との関係https://youtu.be/HTNnv1oQJvI

 

<法改正の動き>

一般の労働者については、厚生労働省が中心となって働き方改革の推進を図っています。

船員の場合には、一般の労働者と異なる特殊性が多く見られることから、国土交通省が中心となり働き方改革が推進されようとしています。

令和3(2021)年5月に公布された「海事産業強化法」に基づき、船員法、船員職業安定法、内航海運業法が改正され、令和4(2022)年4月1日から施行されます。

これに伴い、国土交通省海事局船員政策課が「船員モデル就業規則」を策定し公開しました。

船員を雇っていない企業にとっても、国土交通省による説明や「船員モデル就業規則」は大変参考となる内容です。

 

<船員の労働時間の把握と記録>

一般の労働者については、平成31(2019)年4月に労働安全衛生法が改正され、労働時間の客観的な把握が法的義務となりました。

令和4(2022)年4月1日の船員法改正により、船舶所有者は、船員の労働時間の状況を把握し、労務管理記録簿に記載する義務を負うことになります。

船員法によると、船員の「労働時間」とは、船員が職務上必要な作業に従事する時間、海員にあっては、上長の職務上の命令により作業に従事する時間に限るとされています。〔船員法第4条第2項〕

ここで「作業」とは、国土交通省のガイドラインによれば、実作業のみならず、所定場所での作業開始まで待機等の労働からの解放が保障されていない場合も含むとされます。

また「命令」には、「明示の命令」だけでなく、船員が上長との関係で当該作業に従事することを余儀なくされている場合等の「黙示の命令」も含むとされます。

このガイドラインの内容は、一般の労働者の労働時間の把握についても参考となるものです。

つまり、勤務場所で労働からの解放が保障されていない時間は、休憩時間として扱うことができず、労働時間とされることになります。

また、上長との関係で作業に従事することを余儀なくされている場合も「黙示の命令」と考え、労働時間に該当すると考えるのが妥当です。

 

<船員の新たな労務管理体制>

船員法改正で、以下の内容が船舶所有者に義務付けられます。

○船員の労務管理を行う主たる事務所で、労働時間等の管理を行う記録簿(労務管理記録簿)を作成し、備え置く。

○労務管理記録簿の管理等を行う労務管理責任者を選任する。

○労務管理責任者の意見を勘案し、船員に対して労務管理上の措置を講じる。

○措置を講じるために必要がある場合、内航海運業者(オペレーター)に対して運航計画の変更等に関する意見を述べる。

一般の事業で、船舶所有者を経営者に置き換えて考えると、経営者が労務管理記録簿の管理等を行う人事部門の責任者の意見を聞きながら、労務管理上の措置を講じたり、部門計画の変更等に関する意見を述べたりするということになります。

こうしたことは、企業が働き方改革を強力に推進するのに必要な社内での連動といえるでしょう。

 

<海賊行為による被害を受けた場合の休暇>

「船員モデル就業規則」には、次の規定があります。

 

第44条 船員が海賊行為により船上又は船外で拘束された場合には、海賊から解放され適切に送還されるまで又は拘束中に死亡した日(失踪宣告を受け、死亡したとみなされた場合を含む。)までの間、有給の休暇とする。

 

海賊行為というのは、決して外国の物語に登場するだけではなく、現在でも「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律」の第2条に定義されている犯罪です。

この犯罪の被害者となって拘束された場合には、その事情を踏まえ、労働基準法に定められた年次有給休暇とは別に、特別な有給の休暇を与えるという規定です。

一般の労働者であっても、また、身体の拘束が無かったとしても、犯罪被害者の方々が仕事を続けられるようにするため、被害回復のための休暇制度の導入が求められます。

年次有給休暇の取得だけでは日数が足りないかもしれませんし、入社後半年未満などで年次有給休暇が無い社員は欠勤になってしまいます。

実際に出勤できなくなる事情としては、警察への届出、事情聴取、証拠提出、病院での受診、弁護士との相談・打合せ、裁判への出廷・傍聴などがあります。

特に裁判となると、年に10回以上法廷が開かれるなど、被害者の負担は大きいものです。

なにより、本人に責任の無いことで、たまたま犯罪の被害者となり、勤務が困難となったことにより、会社が貴重な人材を失うというのは避けなければなりません。

会社に犯罪被害者休暇の制度を設けて、こうした事態を防ぎましょう。

2022/02/09|1,714文字

 

<大企業病>

大企業病というのは、企業全体が非効率的になることを指しています。

社員が増え組織が大きくなることで、コミュニケーションが悪くなり、組織が活力を失った状態です。

 

<症状>

大企業は、大企業であり続けたいわけですから、どうしても現状維持的になります。

社員も、現状維持を第一に考え、市場経済の変動や顧客ニーズに応じてチャレンジすることは考えにくくなります。

いつか世間の変化に追い越されて、業績が縮小していくのは目に見えています。

中小企業でも、急成長を遂げたり、世間の注目を集め一世を風靡した後に、この症状が現われやすくなります。

 

大企業には、不要な業務が増えすぎています。

新人を採用する力は強いのですが、新人が入るたびに「やった方がいいかもしれない」「あると便利そうな」余計な仕事が増えていきます。

その仕事が、会社の業績にどう結びつくのかという、厳しいチェックが入らなくなっています。

中小企業でも、ひょっとしたら業績向上に結びつく可能性を考えて、何となく仕事が増えていく現象が見られます。

 

大企業では、現状維持的になるわけですから、これを打破する優秀な社員の出現は大歓迎です。

目標管理制度や業績主義の下、社員は自分の業績向上に集中します。

同僚と協力し合ったり、後輩を指導したり、上司をフォローしたりということはお留守になってしまいます。

優秀な社員が、こうした役割を担わなければ、企業の更なる成長は期待できません。

中小企業でも、大企業の評価制度を真似て、同じ症状に陥っているケースが見られます。

 

大企業では、意思決定が遅くなります。

組織のピラミッドが高くなりすぎて、1つのことを決定するのにも多くの社員の判断が必要になっています。

稟議制度を電子化しても、複雑な決裁ルートは改善されません。

中小企業でも、社長の即決で足りることを、何段階ものルートを経て決定するようになっていれば、同じ症状が現われています。

 

大企業では、社内的に良かれと思うことが行われていて、視点がお客様から離れていることがあります。

これは中小企業でも、業績向上ばかりに気を取られていると、お客様をライバル企業に持って行かれる現象と共通しています。

 

<対策>

今は事業や企業の業績が安定していても、10年後、30年後、あるいはもっと先のことを考えて、変化を遂げなければなりません。

日本だけでなく世界各国の人口構成、国民総生産、IT化、AI技術など、今後の予測に応じて会社が変わっていかなければなりません。

 

不要な業務は、過去からの習慣や、上層部への役に立たない報告が中心です。

その仕事が、会社の業績にどれだけ結びついているのか、見栄を張らないで正直に判断して取捨選択が必要です。

 

ルールに縛られているのも問題です。

能力のある社員が実力を発揮できるように、ルールを最小限にするとか、ルールの順守を人事考課で過大評価しないとか、力を開放する変革が必要です。

ルールに固執する社員は、会社の業績に貢献できない可能性が高いです。

 

<キーワードは目的意識>

何より目的意識が大事です。

「なぜするのか」という意識を持ち続けることが目的意識です。

ここから派生して「なぜこの時間にやるのか」「なぜここでやるのか」「なぜこの人がやるのか」「なぜこれがあるのか」「なぜこの方法でするのか」なども目的意識に含まれます。

裏を返せば、「これをしなかったらどうなるのか」という意識を持ち続けることも、一種の目的意識です。

ここから派生して「別の時間にやったらどうか」「別の場所でやったらどうか」「別の人がやったらどうか」「これが無かったらどうか」「他にどんな方法があるか」なども裏から見た目的意識です。

 

人事異動や退職によって、仕事の引継ぎが発生します。

何も意識しないで引き継げば、慣れている前任者から不慣れな後任者に仕事が移るわけですから、明らかに戦力ダウンです。

しかし、一つひとつの仕事の目的を意識した引継ぎを行えば、仕事のレベルは向上し、社員は成長し、会社も成長するのです。

まさに、引継ぎは会社成長のチャンスなのです。

 

大企業病を退ける特効薬は「目的意識」であると言っても過言ではありません。

2022/02/08|1,642文字

 

簡単ではない懲戒処分https://youtu.be/eAmGzzbHbas

 

<同じ遅刻であっても>

AさんとBさんが、どちらも今まで遅刻したことなど無かったのに、そろって同じ月に2回、30分の遅刻をしたとします。

そして、どちらも始業時刻の1時間前に会社に電話で「寝坊しました。遅刻します。申し訳ございません」という報告をしていたとしましょう。

 

【Aさん】

入社以来ずっと評価が高く、その人柄も周囲から信頼されている。仕事覚えが早く何でもテキパキと正確にこなすので、どうしても仕事が集まり残業が増えてしまった。会社としては、昇給や賞与の査定で報いている。今回の遅刻では、「可哀想に。きっと仕事で疲れているんだ」と言われている。

 

【Bさん】

入社以来ずっと評価が低く、その人柄も周囲から疑われている。仕事覚えが悪く間違いが多いため、仕事のやり直しなどのために、残業が増えてしまった。会社は、Bさんの仕事を減らし、なるべく定時で帰ってもらうようにした。今回の遅刻では、「たるんでいる。きっと深夜まで遊んでいるんだ」と言われている。

 

この場合でも、就業規則に「正当な理由なく、ひと月のうちに2回、10分以上の遅刻をした場合には、けん責処分とする」と規定してあったなら、この通りにしなければなりません。

会社はAさんとBさんの両方に対して、同じ懲戒処分をしなければならないのです。

これはこれで平等であり正しいという考え方もあるのでしょうか。

しかし、何か釈然としません。

 

<就業規則の規定>

最新版(令和3(2021)年4月版)のモデル就業規則には、次の規定があります。

 

(懲戒の事由)第66条  労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする。

① 正当な理由なく無断欠勤が 日以上に及ぶとき。

② 正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき。

(以下略)

 

この規定では、「情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする」となっていますから、同じ行為に対しても、情状に応じて異なる処分をすることができます。

 

<情状とは>

刑事手続では、訴追を行うかどうかの判断や刑の量定に影響を及ぼすべき一切の事情を情状と呼んでいます。

犯罪の動機や目的、犯人の年齢・経歴や犯行後の態度などがこれにあたります。〔刑事訴訟法第248条、刑法第66条〕

懲戒処分は会社の行う制裁であって、国が行うものではありませんが、行為者の年齢、社歴、事後の態度などは情状にあたります。

そして、この情状は懲戒処分を軽くする場合だけでなく、重くする場合にも作用します。

 

<公平の考え方>

同じ過ちをしたのに、異なる懲戒処分では不平等だという反論もありそうです。

しかし平等とは、人々の共通する属性に着目して同じ扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

一方で公平とは、人々の異なった属性に着目して違った扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

さて、妥当な結論を導くには、どちらの考えに従うべきなのでしょうか。

 

【懲戒処分の目的】

・懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとする。

・会社に損害を加えるなど不都合な行為があった場合に、会社がこれを放置せず懲戒処分や再教育を行う態度を示すことによって、他の社員が納得して働けるようにする。

・社員一般に対して、やっていいこと悪いことの基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持する。

 

懲戒処分の目的は、上記のようにまとめられると考えられますから、公平な処分というのが基本になるでしょう。

ただし、平等が無視されるわけではありません。AさんもBさんも普段の仕事ぶりや周囲からの信頼が同じであるなら、同じ懲戒処分となるのが妥当だということになります。

 

こうして、Aさんには上司からの厳重注意、Bさんにはけん責処分という差を設けることもできます。

ただし、これが可能なのは、就業規則の規定が「情状に応じた」扱いを許す内容になっている場合に限られます。

この視点から、もう一度、御社の就業規則を確認するようお勧めします。

2022/02/07|1,382文字

 

採用面接で聞けないことhttps://youtu.be/RMwaAg-3wYY

 

<法令の規定>

法律上は「予防接種を受けるよう努めなければならない」と定められています。〔予防接種法第9条第1項〕

つまり、ワクチン接種を受けることは「努力義務」とされています。

接種を受けるかどうかは、個人の自由意思に任されているのであって、国や企業が強制できないことは明らかです。

 

<厚生労働省の指導>

厚生労働省の新型コロナワクチンQ&Aは、「新型コロナワクチンの接種を望まない場合、受けなくてもよいですか」という問いに対して、次のように回答しています。

 

新型コロナワクチンについては、国内外の数万人のデータから、発症予防効果などワクチン接種のメリットが、副反応などのデメリットよりも大きいことを確認して、皆さまに接種をお勧めしています。しかしながら、接種は強制ではなく、あくまでご本人の意思に基づき接種を受けていただくものです。接種を望まない方に接種を強制することはありません。また、受ける方の同意なく、接種が行われることはありません。職場や周りの方などに接種を強制したり、接種を受けていない人に差別的な扱いをすることのないよう、皆さまにお願いしています。仮にお勤めの会社等で接種を求められても、ご本人が望まない場合には、接種しないことを選択することができます。

 

そして、いじめや嫌がらせの相談窓口として総合労働相談コーナーを紹介し、法務省の人権相談窓口も紹介しています。

「接種を受けていない人に差別的な扱いをすることのないよう、皆さまにお願いしています」というのが国の方針であり、これに沿って行政指導が行われていることは明らかです。

 

<ワクチン接種を採用条件とすることの可否>

職業選択の自由と財産権から、企業の営業の自由が認められています。〔日本国憲法第22条第1項、第29条〕

そして、この営業の自由と民法の基本原理である契約の自由から、企業には採用の自由があるとされています。

しかし採用については、応募者の基本的人権を尊重し、適性や能力で判断することが企業に求められています。

このことから、性別や年齢による差別は、原則として許されないことになっています。

もっとも、ワクチン接種を採用条件とすることを禁ずる法律はありません。

厚生労働省は、接種を採用条件とすることについては「その理由が合理的か求人者が十分に判断し、応募者にあらかじめ示して募集を行うことが望ましい」としています。

これに従って、企業がワクチン接種を採用条件として明示し、その理由を明確にした場合に、求職者の多くがこれに納得できなければ、企業のイメージダウンにつながりますから、説得力のある理由を示すよう細心の注意が必要です。

 

<ワクチン接種を隠された採用条件とするリスク>

ワクチン接種が採用条件であることを隠して募集した場合でも、採用選考のどこかの段階で、応募者にワクチン接種について確認することになります。

この段階で、ワクチン接種が採用条件であることは、応募者に知られてしまうことになります。

しかも、なぜワクチン接種を採用条件としているのか全く説明が無いわけですから、ネットのクチコミ情報などによって、企業の評判が低下するリスクは大きいものと考えられます。

こう考えると、求人の段階で、ワクチン接種を必須としている合理的な理由を示しておくほうが、リスクが少ないといえるのではないでしょうか。

2022/02/02|938文字

 

社会保険料の折半https://youtu.be/2t7uchftQiQ

 

<健康保険の主な給付>

健康保険の主な給付には、次のようなものがあります。

給付の種類

給付される場合

療養費

就職直後で保険証がない等、やむを得ず全額自己負担で受診したときや、治療上の必要からコルセット等の治療用装具を装着したときなど

高額療養費

被保険者本人・被扶養者とも単独または、世帯合算で1ヵ月の窓口負担額が自己負担限度額を超えたとき

傷病手当金

被保険者が療養のために会社を休み、事業主から給料を受けられないとき

出産手当金

被保険者が出産のため会社を休み、事業主から給料を受けられないとき

出産育児一時金

被保険者(被扶養者)が出産したとき

埋葬料(費)

被保険者(被扶養者)が亡くなったとき

 

健康保険給付の申請期限>

健康保険給付を受ける権利は、受けることができるようになった日の翌日から2年で時効によって消滅します。

「翌日から」というのは、当日は24時間無いのが普通なのでカウントしないというルールによるものです(初日不算入)。〔民法第140条〕

時効の期間を計算し始める第1日目(起算日)は以下のとおりです。

給付の種類

消滅時効の起算日

療養費

 療養に要した費用を支払った日の翌日

高額療養費

 診療月の翌月1日

(自己負担分を診療月の翌月以後に支払ったときは支払った日の翌日)

移送費

 移送に要した費用を支払った日の翌日

傷病手当金

 労務不能であった日ごとにその翌日

出産手当金

 出産のため労務に服さなかった日ごとにその翌日

出産育児一時金

 出産日の翌日

埋葬料(費)

 死亡した日の翌日

(ただし、埋葬費については埋葬を行った日の翌日)

 

<申請漏れをなくすために>

経営者や人事担当者が、保険給付の内容を良く知っておいて、何か給付の対象となる事実を把握したら、すみやかに対象者にご案内することが必要です。

これだけだと、給付対象となる事実を把握できないことによる申請漏れが発生します。

就業規則に規定しておくか、分かりやすいパンフレットを従業員に配布するなどして、申請漏れが発生しないようにしましょう。

会社も健康保険料を負担しているわけですから、申請しないのは勿体ないですし、会社に過失があれば、受けられたはずの給付額を賠償しなければなりません。

社内で対応できない場合には、社会保険労務士に委託することもできます。

2022/02/05|1,586文字

 

懲戒処分・人事考課・人事異動の三重苦https://youtu.be/lKrPKsQ29GY

 

<就業規則が必要ということ>

懲戒処分を有効に行うためには、就業規則に具体的な規定のあることが必要です。

しかし、これは規定が必要だということであって、規定さえあれば十分ということではありません。

架空の例ですが、ある会社の就業規則に次のような規定があったとします。

 

【遅刻、早退、欠勤等】

第●条 労働者は遅刻、早退若しくは欠勤をし、又は勤務時間中に私用で事業場から外出する際は、事前に会社に対し申し出るとともに、承認を受けなければならない。

 

【懲戒解雇】

第●条 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。

○  1営業年度のうちに無断で100回遅刻したとき

 

1年間で100回も無断で遅刻したら、解雇されても仕方がないように思えます。

しかし、99回目まで誰も注意せず、遅刻してきた社員をニヤニヤして見ているだけだったのに、100回目の遅刻で突然「はい、就業規則の規定により、あなたは解雇となります」とはできないのです。

 

<懲戒処分の有効要件>

労働契約法は、懲戒処分が無効となる場合について、次のように規定しています。

 

【懲戒】

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 

裏を返せば、懲戒処分が有効となるためには、次の2つの条件を満たすことが必要です。

・客観的に合理的な理由があること

・社会通念上相当であること

 

このことからすると、1回目の無断遅刻のときに、上司など会社側は最低でも次のアクションを起こすことが求められます。

・無断遅刻はいけないことであり、ルール違反であることの説明。

・無断遅刻について、本人の弁解を聞くようにすること。

 

無断遅刻について注意しなかったり、正当な理由の有無を確認しなかったりというのでは、2回目以降の無断遅刻が発生しても強く責めることはできません。

それにもかかわらず、懲戒処分を行うと「客観的に合理的な理由がある」ともいえませんし、「社会通念上相当」ともいえませんから、その懲戒処分は懲戒権の濫用となって無効になります。

 

こうしたことを踏まえて、厚生労働省のモデル就業規則の規定は、次のようになっています。

 

【懲戒の事由】

第61条 2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第41条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

③正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、  回にわたって注意を受けても改めなかったとき。

 

このように、懲戒処分の有効要件〔労働契約法第15条〕に配慮した規定となっています。

 

<遅刻の再発を予防する労務管理>

遅刻の再発を予防するため、上司が取るべき行動には次のようなものがあります。

 

・出勤時刻になっても姿を現わさないので、連絡してみたが応答もなく、みんながとても心配していたことの説明。

・健康状態は大丈夫か、仕事や家庭の事情で疲労が蓄積していないか、夜はしっかり眠れているか、何か心配事があるのではないかの確認。

・やむを得ず遅刻する場合には、事前に会社に申し出て承認を受けるルールがあることと、その具体的な方法についての説明。

 

上司からこのようにされたら、本当は明け方までオンラインゲームに夢中になっていて寝坊したのであっても、「二度と遅刻しないようにしよう」と考えるものです。

少なくとも、みんなの見ている前で机を叩きながら「遅刻するなバカヤロー」と怒鳴るパワハラ上司の100倍は尊敬されるでしょう。

部下にルール違反があった場合の対応についても、管理職を教育しておくことが重要だということです。

2022/02/04|1,732文字

 

育児休業中の就労請求権https://youtu.be/diWW7ufgrXk

 

<くるみん>

くるみんマーク・プラチナくるみんマークは、「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定を受けた証です。

次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動計画を策定した企業のうち、計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業は、申請を行うことによって「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定(くるみん認定)を受けることができます。

この認定を受けた企業の証が、「くるみんマーク」です。

さらに、平成27(2015)年4月1日より、くるみん認定を既に受け、相当程度両立支援の制度の導入や利用が進み、高い水準の取組を行っている企業を評価しつつ、継続的な取組を促進するため、新たにプラチナくるみん認定が始まりました。

プラチナくるみん認定を受けた企業は、「プラチナくるみんマーク」を広告等に表示し、高い水準の取組を行っている企業であることをアピールできます。

そして令和4(2022)年4月1日、くるみん認定・プラチナくるみん認定の認定基準が改正されます。

 

<くるみん改正>

くるみんの認定基準とマークが改正されます。

 

男性の育児休業等取得率 現行:7%以上 → 改正後:10%以上

男性の育児休業等・育児目的休暇取得率 現行:15%以上 → 改正後:20%以上

認定基準に、男女の育児休業等取得率等を厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」で公表することが新たに加わります。

 

ただし、認定に関する経過措置が取られます。

・令和4(2022)年4月1日から令和6(2024)年3月31日の間の認定申請は、現行の男性の育児休業等の取得に関する基準の水準でも基準を満たします。この場合に付与されるマークは現行マークとなります。

・令和4(2022)年3月31日以前は改正前の基準を前提に取り組んでいるため、男性の育児休業等の取得に関する基準の算出にあたって、令和4年4月1日以降から計画期間の終期までを「計画期間」とみなし算出することも可能とされます。

 

<プラチナくるみん改正>

プラチナくるみんの特例認定基準が改正されます。

 

男性の育児休業等取得率 現行:13%以上 → 改正後:30%以上

男性の育児休業等・育児目的休暇取得率 現行:30%以上 → 改正後:50%以上

出産した女性労働者および出産予定だったが退職した女性労働者のうち、子の1歳時点在職者割合 現行:55% → 改正後:70%

 

ただし、認定に関する経過措置が取られます。

・令和4(2022)年4月1日から令和6(2024)年3月31日の間の認定申請は、現行の男性の育児休業等の取得に関する基準や女性の継続就業に関する基準の水準でも基準を満たします。

・令和4(2022)年3月31日以前は改正前の基準を前提に取り組んでいるため、男性の育児休業等の取得に関する基準や女性の継続就業に関する基準の算出にあたって、令和4(2022)年4月1日以降から計画期間の終期までを「計画期間」とみなし算出することも可能とされます。

 

さらに、特例認定の取消に関する経過措置も取られます。

プラチナくるみんは認定取得後、「両立支援のひろば」で公表した「次世代育成支援対策の実施状況」が同じ項目で2年連続で基準を満たさなかった場合に取消の対象となりますが、今回の認定基準の改正に伴い、公表前事業年度が令和4(2022)年4月1日から令和5(2023)年3月31日までを含む場合は、新基準を満たしていなくても現行の基準を満たしていれば取消の対象とはなりません。

 

<新制度の創設>

新たな認定制度「トライくるみん」が創設されます。

また、くるみん、プラチナくるみん、トライくるみんの一類型として、不妊治療と仕事を両立しやすい職場環境整備に取り組む企業の認定制度が創設されます。

 

<解決社労士の視点から>

少子化対策は、国によって強力かつ継続的に推進されています。

そして、働き方改革の一環で、次世代育成支援対策推進法と育児介護休業法が同時に改正されます。

こうした動きについていく企業と、取り残される企業とでは、5年後、10年後に大きな差が生じます。

お客様、お取引先、そして世間からの評価が落ちないよう、しっかりと取り組む必要があるでしょう。

2022/02/03|1,925文字

 

退職禁止?! https://youtu.be/TFVbVky3mzU

 

<会社が証明を必要とする場合>

雇用関係助成金の申請などのために、会社が特定の従業員の雇用契約について、期間の定めの無いものであることを証明する必要に迫られることがあります。

労働基準法により、従業員に対する労働条件の通知は会社に義務付けられていますから、これを怠っていたのなら、労働条件通知書や雇用契約書を作成することによって、証明書類とすることができます。

また、一定の範囲の従業員について労働条件が一律であれば、その共通部分について就業規則に規定しておくことにより、就業規則を証明書類とすることができます。

 

<退職したい従業員が証明を必要とする場合>

退職の申し出については、労働基準法ではなく民法の規定が適用されます。

 

【期間の定めのない雇用の解約の申入れ】

第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

 

【やむを得ない事由による雇用の解除】

第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

 

つまり、期間の定めの無い雇用契約であれば、いつでも退職の申し出ができるのに対し、期間の定めがあると、「やむを得ない事由」が無ければ期間の終了前に退職の申し出ができません。

従業員が、自分自身の雇用契約について期限の有無が分からないというのは、労働条件通知書の交付を受けていないか紛失して忘れているかのどちらかでしょうから、使用者に確認するしかありません。

ただし、雇用期間が5年を超え、またはその終期が不確定であるときについては、次の規定が適用されます。

 

【期間の定めのある雇用の解除】

第六百二十六条 雇用の期間が五年を超え、又はその終期が不確定であるときは、当事者の一方は、五年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。

2 前項の規定により契約の解除をしようとする者は、それが使用者であるときは三箇月前、労働者であるときは二週間前に、その予告をしなければならない。

 

 使用者と労働者とで、予告期間に差異があるのは、労働者の保護を図る趣旨です。

退職の申出は、従業員側から契約を解約する旨の意思表示であり、会社の承認までは必要ないのですが、退職には一定のルールがあり、就業規則などに従った手続をとる必要があります。

就業規則が無い場合には、上記の民法の規定に従うことになります。

 

もっとも、これらのことは、従業員が会社に対して一方的に退職の申出を押し通すような場面を想定しています。

現実には、お互いにトラブルを避けるため、従業員から退職の申出があった場合には、会社側が従業員と話し合って退職の段取りを決めるのが一般的です。

これは、合意退職という形になりますから、民法の規定にこだわらず柔軟な対応を取ることが可能です。

この場合には、期間の定めの有無についての証明が要らないことになります。

 

<解雇を通告される従業員が証明を必要とする場合>

会社から解雇を通告された、あるいは、通告されそうだという場合に、期間の定めの無い雇用契約であることを証明できれば、解雇されにくくなるような気もします。

しかし、当初から契約終了日が決まっていて、契約の更新が無いことも明示されていたような場合を除けば、解雇は簡単に有効となるものではありません。

労働契約法には、次の規定があります。

 

【解雇】

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

この条文を素直に読めば、解雇の通告さえすれば解雇が有効になるのが原則ということになります。

例外として、客観的に合理的な理由を欠いているか、社会通念上相当であると認められない場合に限り、雇い主側の権利の濫用となって解雇が無効になるものと読めます。

ところが、訴訟ともなると、労働基準法など労働関係の法令の趣旨に反して合理的ではないとか、裁判所の認定した世間の常識とは違うとか、様々な理由によって解雇の通告が無効とされることが多いのです。

ですから、期間の定めの無い雇用契約であることを証明できないと解雇が有効になってしまうというわけではないのです。

期間の定めの無い雇用契約であることの証明に力を注ぐのではなく、具体的な事実を整理して社会保険労務士や労働法が得意な弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

2022/02/02|1,134文字

 

不可抗力だから休業手当の支払不要https://youtu.be/JLhmv2g-CsY

 

<欠勤控除>

遅刻や早退を含め欠勤によって労働時間が減少した分だけ、給与を減らすことを欠勤控除と言います。

時間給であれば、労働時間分の賃金を計算しますから、欠勤控除は問題となりません。

主に月給制の場合に問題となります。

また、「完全月給制」のように欠勤控除をしない場合には問題となりません。

 

<法律の規定>

労働基準法その他の法令には、欠勤控除の計算方法についての規定がありません。

しかし一般に、労働者の労務の提供が無い場合には、使用者は賃金を支払う義務が無く、労働者も賃金を請求できないという「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。

これは、労働契約が「働きますから賃金を支払ってください」「賃金を支払いますから働いてください」という労使の合意によって成立していることから当然に導かれます。〔労働契約法第6条〕

欠勤控除をすることは違法ではないのですが、計算方法について就業規則等に明記しておく必要はあります。〔労働基準法第89条第2号〕

 

<時間単価の計算>

欠勤控除を考える場合、まず時間単価を計算します。

1日の所定労働時間に、1か月の所定労働日数を掛けるなどして、1か月の所定労働時間を計算します。

月給を1か月の所定労働時間で割った金額が、時間単価となります。

所定労働日数や所定労働時間が決まっていなければ、こうした計算はできないことになります。

しかし、労働条件を書面で通知することは使用者の義務ですから、決まっていないのでは困ります。

 

<減額方式>

月給から欠勤時間分の賃金を控除する計算方法です。

これは欠勤控除の考え方を、そのまま計算方法に反映させているので、多くの会社で用いられています。

しかし、31日ある月など、その月の勤務シフト上の労働日数が所定労働日数を超える場合、1か月すべて欠勤すると給与がマイナスになるという不都合が生じます。

このとき、対象者からマイナス分の給与を支払ってもらったり、翌月の給与から天引きしている会社もあるようですが、全く勤務しない場合にゼロになるのはともかく、マイナスになるのは明らかに不合理でしょう。

 

<加算方式>

出勤した分の賃金を時間給で計算する方法です。

これなら給与がマイナスになることはありません。

しかし、28日しかない月など、その月の勤務シフト上の労働日数が所定労働日数を下回る場合、支給額が大幅に減ってしまいます。

減額方式よりも明らかに不利になります。

 

<併用方式>

たとえば、減額方式と加算方式の両方で計算して多い金額の方で給与を支給するなど、2つの方式を併用することによって欠点を解消することができます。

2通りの計算をしてから控除額を決定しますので手間はかかりますが、合理性が確保され従業員の納得も得やすいでしょう。

2022/02/01|1,206文字

 

<労働組合>

労働組合とは、労働者が主体となって、自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体およびその連合団体をいいます。

労働組合を結成する権利は、憲法で保障されています。〔日本国憲法第28条〕

労働組合の推定組織率は低迷していて、過去5年間を見ても17%前後で推移しています。

ここで推定組織率とは、雇用者数に占める労働組合員数の割合をいいます。

しかし、労働組合員数は年増加率1%未満で微増の傾向にあります。

 

<不当労働行為>

労働組合法第7条は、使用者の労働組合や労働者に対する次のような行為を「不当労働行為」として禁止しています。

1.組合員であることを理由とする解雇その他の不利益取扱

2.正当な理由のない団体交渉の拒否

3.労働組合の運営等に対する支配介入および経費援助

4.労働委員会への申立等を理由とする不利益取扱

 

<1.組合員であることを理由とする解雇その他の不利益取扱>

具体例としては、次のものが挙げられます。

労働者が、労働組合の組合員であること、労働組合に加入しようとしたこと、労働組合を結成しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたことを理由に、労働者を解雇その他の不利益な取扱をすること。

労働者が労働組合に加入せず、または労働組合から脱退することを雇用条件とすること(いわゆる黄犬契約)。

 

<2.正当な理由のない団体交渉の拒否>

使用者が、雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを、正当な理由なく拒むこと。

使用者が形式的に団体交渉に応じても、実質的に誠実な交渉を行わないこと(不誠実団交)も、これに含まれます。

 

<3.労働組合の運営等に対する支配介入および経費援助>

具体例としては、次のものが挙げられます。

労働者が労働組合を結成しまたは運営することを支配し、またはこれに介入すること。

労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。

 

<4.労働委員会への申立等を理由とする不利益取扱>

労働者が労働委員会に対し、不当労働行為の申立をし、もしくは中央労働委員会に対し再審査の申立をしたこと、または労働委員会がこれらの申立に関し調査もしくは審問をし、もしくは労働争議の調整をする場合に、労働者が証拠を提示し、もしくは発言したことを理由として労働者を解雇し、その他の不利益な取扱をすること。

 

<解決社労士の視点から>

かつては盛んだった労働組合活動が、近年は低調となっていました。

企業がこれに慣れてしまい、不当労働行為の禁止に触れぬよう神経を尖らせるという意識が低下しているようにも思われます。

労働組合を結成しようとした労働者に対する、陰湿な不利益取扱があったとする訴訟や報道も増えてきています。

最近は合同労組の一種であるユニオンの活動が盛んとなっており、経営者や総務人事部門の責任者は、改めて不当労働行為の内容を再確認しておく必要があるでしょう。

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