2022年 1月 17日

<労働時間の定義>

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

もっとも、これは法令に規定されているわけではなく、最高裁判所が判決の中で示したものを元に、厚生労働省が「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に掲げているものです。

抽象的な表現に留まっていますので、具体的な事実に当てはめてみた場合には、判断に迷うことが多々あります。

 

<就業規則の規定>

「始業時刻や終業時刻は、タイムカード通りに認定しなければいけないのか」と問われれば、まず就業規則の規定を確認することになります。

タイムカード通りに認定することになる規定には、次のようなものが考えられます。

・勤務開始とともに打刻すること、勤務終了とともに打刻すること

・勤務時間の管理はタイムカードにて行う

必ずしもタイムカード通りに認定することにはならない規定には、次のようなものが考えられます。

・出社時に打刻すること、退社時に打刻すること

・勤務開始前に打刻すること、勤務終了後に打刻すること

・打刻後は速やかに業務を開始すること、業務終了後は速やかに打刻すること

 

<「タイムカード通り」ではない場合の認定>

タイムカード通りに認定することにはならない就業規則の場合、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」によれば、「使用者自ら現認」によることができます。

ここで「使用者」は、労働基準法第10条に定義されている通り、事業主に限られるわけではありません。

判断基準として重要なのは、事業場内で行うことが義務付けられている準備行為・後片付けに必要な時間は労働時間に該当するということです。

また、業務遂行に必要な知識・技能の習得に必要な学習の時間であって、使用者の指示により行われるものは労働時間に該当します。

とはいえ、すべてを「使用者自ら現認」によることは不可能でしょうから、ガイドラインは「客観的な記録を基礎」として確認することも認めています。

この「客観的な記録」の代表がタイムカードの打刻なわけです。

就業規則の規定が、上に例として掲げた「出社時に打刻すること、退社時に打刻すること」であれば、始業終業時刻の認定が打刻された時刻と前後することもあるわけです。

しかし「勤務開始前に打刻すること、勤務終了後に打刻すること」「打刻後は速やかに業務を開始すること、業務終了後は速やかに打刻すること」という規定であれば、始業時刻は出社時の打刻以降であり、終業時刻は退社時の打刻以前であることが確かなわけです。

 

<雑談や小休憩の時間は労働時間か>

就業規則や個別の労働契約で定められた、始業時刻から終業時刻までは休憩時間を除き労働時間となるのが原則です。

労働義務があるからこそ、その場所に拘束されていると考えるのが、社会通念上相当だからです。

たとえば雑談について、会社が「情報交換やコミュニケーション深化のため必要」と認めたのであれば、これを労働時間としても良いわけです。

反対に「他人の業務を妨げる有害な行為」と考えるなら、全社統一のルールとして禁止することも可能ではあります。

またたとえば小休憩について、「リフレッシュし生産性を維持するのに必要」と認めたのであれば、これも労働時間として構わないわけです。

反対に「小休憩はサボりだから許せない」と考えるなら、全社統一のルールとして禁止することも可能ではあります。

しかし、いずれの場合も、ルールを提示する前の行為について、労働時間から差し引くようなことは信義に反します。

 

<解決社労士の視点から>

始業終業時刻を厳密に認定しようとしても、人間の脳の中を探ることができない以上、限界があるのは明らかです。

ましてや、労働時間の厳格な管理となれば、さらに困難を極めます。

また、これを担う「使用者」は、会社にとって貴重な戦力ですから、労働時間の管理に精力を使い果たされたのでは、会社全体の生産性が低下してしまいます。

法令も「労働時間の適正な把握」を求めているのであって、「労働時間の完璧な把握」を求めているわけではありません。

結局、ガイドラインに沿って労働時間を把握し、記録し、保管するのが正しいことになります。

そして、労働者側に有利な方向で多少緩いのは、トラブル回避に必要な「車のハンドルの遊び」のようなものとして考えても良いでしょう。

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