2021年 11月 28日

2021/11/28|2,024文字

 

<民法の規定>

正社員のように、期間を定めずに雇用した従業員については、「使用者がいつでも解雇できる」と民法が規定しています。

 

【民法第627条:期間の定めのない雇用の解約の申入れ】

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

2 期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

 

一方で、パート社員など、期間を定めて雇用した従業員については、「やむを得ない事由があれば期間の途中でも解雇できる」と規定しています。

 

【民法第628条:やむを得ない事由による雇用の解除】

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

 

そして、雇用期間の満了とともに雇用契約を終了させることについては、特別な制約がありません。

ただ、雇用の期間が満了した後、従業員が引き続きその労働に従事する場合に、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、期間満了前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定されます。〔民法第629条第1項〕

 

<労働基準法の規定>

民法の特別法である労働基準法には、解雇予告の規定があり、使用者が従業員を解雇しようとする場合は、遅くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならないと規定しています。〔労働基準法第20条第1項本文〕

そして、解雇の禁止についていくつか規定しています。〔労働基準法第19条など〕

これだけであれば、解雇禁止にあたるケースを除き、解雇が困難である理由は見当たりません。

 

<司法判断による修正>

かつての日本企業では、年功序列の終身雇用制が採られていました。

年功序列であれば、若い時の給与・賞与は働きぶりに見合わないほど低く抑えられています。

それが、勤続年数が長くなるとともに、働きぶりに見合う収入となり、定年年齢が近づくと業務内容の割に高い収入となります。

つまり、若い頃のマイナスを、中高年になってから取り戻すという制度です。

退職金制度も年功序列なので、定年年齢まで勤め上げずに退職すると、給与・賞与だけでなく退職金の点でも不利になってしまいます。

そもそも、終身雇用制なのですから、企業は簡単には解雇しないというのが大前提となっています。

こうした企業で、若いうちの解雇は、人生設計を狂わせる大打撃となるわけですから簡単には許されません。

つまり、年功序列の終身雇用制の下での解雇は、余程の理由が無い限り、権利の濫用となって許されないというのが裁判所の判断として定着しました。〔日本国憲法第12条、民法第1条第3項〕

 

<労働契約法の成立>

労働契約法は、労働契約に関する基本的な事項を定める法律です(平成20(2008)年3月1日施行)。

解雇など個別労働紛争での予測可能性を高めるためにできました。

個別労働紛争というのは、労働組合が絡まない「会社と労働者個人との間の労働紛争」です。

労働基準法をはじめとする数多くの労働法は、その内容が抽象的なこともあり、労働紛争が裁判になったらどんな判決が出るのか、条文を読んでもよくわからないケースが増えてしまいました。

そこで、数多くの裁判例にあらわれた理論を、条文の形にまとめたのが労働契約法です。

労働契約法は、解雇について次のように規定しています。

 

【労働契約法第16条:解雇】

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

この条文の解釈は、堂々巡りになりますが、過去の裁判例にあらわれた理論を参考に行われることになります。

したがって、年功序列の終身雇用制を前提とした理論も、かなり含まれてしまいます。

こうして、「解雇はむずかしい」と言われるようになっています。

 

<解決社労士の視点から>

年功序列や終身雇用制はすでに崩壊しているとも言われています。

今後、解雇の有効性が争われる裁判の中で、企業側が「自社は終身雇用を前提としない、年功序列ではない給与体系、退職金制度をとっているので、今回の解雇は客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当である」という主張を行っていけば、判例理論も緩やかに変更されて、「日本は解雇がむずかしい」というのも解消されていくのではないでしょうか。

労働市場や企業の実情の変化に合わせて解釈を変更できるように、労働契約法第16条の規定がやや抽象的な表現となったのだと考えることもできるでしょう。

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