2021年 8月

2021/08/31|1,538文字

 

労働契約https://youtu.be/dcnpbjVePB0

 

<労働条件の決定>

労働条件の決定は、労働者と使用者が対等の立場で決めるべきものだとされています。

このことは、労働基準法第2条第1項に次のように定められています。

 

(労働条件の決定)

第二条  労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。

 

本来は対等なのでしょうけれども、労働者は生活がかかっているので、使用者に対する遠慮があります。

また、少子化によって労働者が不足している業種では、労働者側が優位に立つこともあるでしょう。

さらに、入社後は会社に対する貢献度に応じて、優位に立つ労働者と、弱い立場の労働者に分かれてくるでしょう。

 

いずれにせよ、労働者と使用者が対等の立場で話し合い、制服代やそのクリーニング代、筆記用具などについて労働者の負担とすることは、そのような内容の労働契約になるのであって、法令の規定に触れることはありません。

 

<労働条件の明示>

とはいえ、制服代や備品代の負担も労働条件の一つです。

労働条件を口頭で説明されただけでは不明確ですから、主なものは文書にして労働者に交付することが使用者に求められています。

そこで、労働基準法は労働条件の明示について、次のように規定しています。

 

(労働条件の明示)

第十五条  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

 

明示すべき事項は労働基準法施行規則第5条第1項に規定されています。

次に示すのがその内容ですが、制服代や備品の負担は、(8)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項 に含まれます。

労働者に対して制服代や備品の負担について明示しないまま雇い入れてしまったなら、これらを負担させることは労働条件の明示義務違反になります。

 

(1)労働契約の期間に関する事項 (2)就業の場所及び従業すべき業務に関する事項 (3)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項 (4)賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項 (5)退職に関する事項(解雇の事由を含む。) (6)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項 (7)臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項 (8)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項 (9)安全及び衛生に関する事項 (10)職業訓練に関する事項 (11)災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項 (12)表彰及び制裁に関する事項 (13)休職に関する事項

 

<就業規則の項目にも>

「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」が就業規則に規定する事項として法定されています。〔労働基準法第89条第5号〕

「負担をさせる定めをする場合」には、就業規則に規定を置かなければなりませんし、定めをしない場合には、就業規則に規定を置きようがありません。

就業規則に規定が無いにもかかわらず、うっかり労働者に負担させてしまうと、労働基準法違反になってしまいます。

 

労働者の負担になることは、法令で規制されている可能性を考えて、社会保険労務士などの専門家に確認してから行うようにすることをお勧めします。

2021/08/30|1,256文字

 

パワハラの定義https://youtu.be/Mdh36sSuu2o

 

<パワハラの定義からすると>

職場のパワーハラスメントとは、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害される」ものをいいます。〔労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第30条の2第1項〕

この条文を見ると、「就業環境が害される」という実害の発生が、パワハラの成立条件のようにも見えます。

しかし、企業としてはパワハラを未然に防止したいところです。

ですから、就業規則にパワハラの定義を定めるときは、「職場環境を悪化させうる言動」という表現が良いでしょう。

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)では、次のように規定されています。

 

(職場のパワーハラスメントの禁止)

第12条  職務上の地位や人間関係などの職場内の優越的な関係を背景とした、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

これらのことからすると、直接被害者に向けられた行為でなくてもパワハラとなりうることが分かります。

 

<パワハラの構造からすると>

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

行為者は、パワハラをしてやろうと思って、パワハラを行っているわけではなく、会社の意向を受けて行った注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

こうして見ると、ただ単に陰口を叩くような場合、業務上必要の無い雑談の中で悪口を言っているに過ぎない場合には、パワハラには該当しないといえそうです。

 

<業務上不要な人権侵害行為>

パワハラで問題となる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

これらの人権侵害行為は、業務と無関係に行われれば、パワハラの定義にはあてはまらなくても、国家により刑罰を科され、被害者から損害賠償を請求されることがあります。

 

<悪口を言うと成立しうる犯罪>

名誉毀損罪〔刑法第230条〕は、公然と事実を摘示(てきじ)して名誉を毀損することで成立します。

「摘示」というのは、あばくこと、示すことです。

示した事実は、原則として、真実であっても嘘であってもかまいません。

しかし、「公然と摘示」するのが条件ですから、他の人には知られないように、直接の相手だけに事実を摘示した場合には成立しません。

また、「事実を摘示」しないで名誉を棄損すると侮辱罪〔刑法第231条〕となります。

結局、本人がいない所で悪口を言うのは、パワハラにならなくても犯罪になりうるということです。

2021/08/29|1,345文字

 

<雇用保険の離職理由>

雇用保険の失業手当(求職者給付の基本手当)は、かなり大雑把に言うと、自己都合の離職よりも会社都合のほうが有利です。

しかし実際には、自己都合・会社都合という区分ではなく、労働契約期間の満了や自己都合退職といった一般的な離職の場合と、特定受給資格者や一部の特定理由離職者の場合とに区分されています。

これは、予め転職の準備や経済的な備えができる退職と、転職が困難で経済的な備えができない退職とに区分して、離職者の受給内容に差を設けているのです。

ですから、会社と離職者とで雇用保険の話をする場合には、自己都合・会社都合というのではなく、給付制限期間の有無と所定給付日数について話すのが現実的です。

 

<退職金制度>

退職金制度では、自己都合と会社都合とで、支給金額に差のあることが多いものです。

自己都合でも会社都合でもない場合は、想定されないのが殆どです。

たとえば、1店舗のみを経営する会社が、行政により店舗の立退きを命じられた場合、廃業することになるのは、会社都合ではなく「行政都合」のようにも見えます。

しかし、店舗を移転して営業を続けるという選択肢もありますから、廃業するのは会社の主体的な決定によるものとされ、一斉解雇の場合には会社都合となります。

 

<休職制度>

休職制度で、会社都合によるものについて規定を置くことは少なく、殆どの場合が自己都合によるものとなります。

そして、休職期間が満了すれば、自動退職(自然退職)とされることが多く、中には解雇とする規定も見られます。

会社都合での休職や、復職できる状態となったにも関わらず会社都合で復職させられない場合には、休職期間の満了をもって自己都合による自動退職することはできず、話合いのうえ会社都合での退職とする場合が多いでしょう。

特にセクハラ、パワハラ、長時間労働、退職強要などによる精神疾患を原因とする休職の場合には、休職期間の満了をもって退職とすることは、不当解雇となるのが一般ですから注意が必要です。

 

<感染症の自宅待機>

インフルエンザに罹患した従業員から、年次有給休暇を取得する旨の申し出があれば、会社はこれに従うことになります。

しかし本人から「比較的症状が軽いので出勤したい」「テレワークにしたい」という希望が出された場合には、会社から年次有給休暇の取得を強制することはできません。

会社が休業させたいと考えるのであれば、休業手当を支払うことになります。

また、家族が新型コロナウイルスに感染し、従業員が濃厚接触者とされ、保健所から自宅待機するよう指導があった場合には、自己都合でも会社都合でもなく「行政都合」です。

この場合には、会社が休業手当を支払う義務を負いませんが、ご本人が年次有給休暇を取得することはできます。

しかし従業員の中に、お子さんが新型コロナウイルスに感染して濃厚接触者となった母親がいて、保健所から自宅待機を指示され、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金を受給しようとする場合に、会社は休業期間を証明してあげることになります。

この場合、会社が金銭的な負担をすることはなく、休業の事実を確認する書類の作成に協力するだけです。

「会社都合ではなく自己都合だから」と考えて、協力を拒まないように注意しましょう。

2021/08/28|1,853文字

 

パワハラの定義https://youtu.be/Mdh36sSuu2o

 

<会社のパワハラ対策>

会社は、就業規則にパワハラの禁止規定と懲戒規定を置き、パワハラ防止対策のための社員教育を行う義務を負っています。

これは、労働契約上の雇い主としての義務です。

こうした義務を果たさない会社で勤務する管理職は、パワハラの加害者とされ被害者や遺族から訴えられる危険にさらされています。

部下が「上司のパワハラに絶望しました」といった遺書を残して自殺を図るようなことがあれば、何がパワハラに該当するのか教育研修が行われていない会社では、事実の確認も無いままパワハラの責任を取らされることにもなりかねません。

不幸にしてこうした会社で働いている管理職は、自分の身を守るため、最低限、以下のことを頭に入れておきましょう。

 

<パワハラの構造>

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

行為者は、パワハラをしてやろうと思っているわけではありません。

会社の意向を受けて行った叱責、指導、注意、教育、激励、称賛などは、業務上必要な行為です。

行為者の意識としては、これらの行為を熱心に行った結果、パワハラ呼ばわりされたということになりがちです。

しかし、パワハラが問題なのは、必要の無い人権侵害を伴っているからです。

 

<パワハラで問題となる人権侵害行為>

業務上必要な行為と同時に行われる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

 

<典型的な犯罪行為>

暴行罪〔刑法第208条〕の「暴行」とは、人の身体に向けられた有形力の行使をいいます。有形力とは物理的な力のことで、たとえば石を投げつければ当たらなくても暴行になります。服を引っ張る、近くで刀を振り回す、耳元で大きな音を立てるというのも暴行です。

傷害罪〔刑法第204条〕の「傷害」とは、ケガをさせることです。ケガをさせる意図が無く暴行を行った結果、ケガをさせてしまった場合でも傷害罪になります。頭を叩こうとしたところ、相手が避けようとして転び腰を傷めた場合にも、頭を叩くという暴行の故意があった以上、傷害罪になってしまいます。

脅迫罪〔刑法第222条〕は、相手や親族の生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知して脅迫すると成立します。口頭でも、文書でも、メールでも、あるいは態度でも脅迫になりますし、相手が実際に怖がらなくても成立します。

名誉毀損罪〔刑法第230条〕は、公然と事実を摘示して名誉を毀損することで成立します。「摘示」というのは、あばくこと、示すことです。示した事実は、原則として、真実であっても嘘であってもかまいません。しかし、「公然と摘示」するのが条件ですから、他の人には知られないように、直接の相手だけに事実を摘示した場合には成立しません。また、「事実を摘示」しないで名誉を毀損すると侮辱罪〔刑法231条〕となります。

 

<典型的な不法行為>

上記のような犯罪行為に対しては、国家により刑罰として懲役刑や罰金刑が科されうるのですが、同時に不法行為でもありますから、被害者に対しては損害賠償の責任を負います。両者は別物ですから、どちらか片方だけで済むというものではありません。

暴言、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなどの程度が軽くて、名誉毀損罪などの犯罪が成立しない場合には、一般に不法行為のみが成立します。

不要なことや不可能なことの強制が強要罪や業務妨害罪にはあたらない程度の場合にも、一般に不法行為のみが成立します。

つまり、人権侵害行為ではあっても犯罪が成立しない場合には、不法行為のみが成立しうるということです。

 

<身を守るだけではない知識>

パワハラ行為とされ、犯罪者になったり損害賠償を求められたりするのはどのような行為なのか、正しい知識を身に着けることは、自分の身を守るのに必要なことです。

しかし、それだけではなく、自信をもって業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛などを行えるようになるのですから、管理職としての指導力を最大限に発揮できるようになるというメリットもあります。

2021/08/27|608文字

 

<両者の定義>

「配置転換」と「人事異動」は、法令によって明確な定義付けがされていません。

そのため、「配置転換」「人事異動」の意味については、会社ごとに解釈が分かれています。

とはいえ、会社の就業規則に「配置転換」と「人事異動」の両方の用語があり、異同について疑義が発生した場合や、これから就業規則に規定を置くにあたって一般的な意味を確認しておきたい場合には、以下を参考にしてください。

 

<配置転換>

配置転換とは、従業員の担当職務や勤務地などを変更することを指します。

配置転換は大きく分けると、企業内の配置転換と企業間の配置転換の2つです。

企業内の配置転換には、昇進・昇格、職種変更、勤務地変更などがあります。

営業所・店舗など複数の事業所間にまたがる配置転換を特に転勤と呼びます。

狭義の配置転換は、この企業内の配置転換のみを指します。

一方、企業間の配置転換には、子会社や関連会社への転籍、出向などがあります。

広義の配置転換には、企業内の配置転換と企業間の配置転換の両方が含まれます。

 

<人事異動>

人事異動とは、従業員が企業の命令によって、配置・地位や勤務状態などが変更されること全般を指します。

人事異動は、配置転換よりも広い概念で、配置転換のすべてを含む意味に使われることが多い用語です。

 

<就業規則の規定>

このように解釈が分かれる用語については、就業規則の中に定義規定を置いて、トラブルの発生を予防することが必要です。

2021/08/26|1,245文字

 
これって労働時間?https://youtu.be/2UlD66LICBo

 

<長時間労働の基準>

所轄の労働基準監督署長に届出ている三六協定の範囲内で、時間外労働や休日労働が可能です。

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、法定労働時間を基準として、以下を守らなければなりません。

・時間外労働が年720時間以内

・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満

・時間外労働と休日労働の合計について、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均がすべて1か月あたり80時間以内

・時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6か月まで

以上の基準をすべて守らなければ、労働基準法違反となり罰則の適用もありえます。

 

<長時間労働が疑われる事業場に対する令和2年度の監督指導結果>

令和3(2021)年8月20日、労働基準局監督課過重労働特別対策室室長と中央過重労働特別監督監理官の連名で、長時間労働が疑われる事業場に対する令和2年度の監督指導結果が公表されました。

これは、長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した、監督指導の結果を取りまとめたものです。

 

【令和2年4月から令和3年3月までの監督指導結果のポイント】

(1) 監督指導の実施事業場: 24,042 事業場

(2) 主な違反内容[(1)のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場]

 ① 違法な時間外労働があったもの: 8,904 事業場(37.0%)

  うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が

  月 80 時間を超えるもの: 2,982 事業場(33.5%)

  うち、月 100 時間を超えるもの: 1,878 事業場(21.1%)

  うち、月 150 時間を超えるもの: 419 事業場( 4.7%)

  うち、月 200 時間を超えるもの: 93 事業場( 1.0%)

 ② 賃金不払残業があったもの: 1,551 事業場( 6.5%)

 ③ 過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの: 4,628 事業場(19.2%)

(3) 主な健康障害防止に関する指導の状況[(1)のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場]

 ① 過重労働による健康障害防止措置が

  不十分なため改善を指導したもの: 9,676 事業場(40.2%)

 ② 労働時間の把握が不適正なため指導したもの: 4,301 事業場(17.9%)

 

<解決社労士の視点から>

時間外労働について、違法の基準が変わっていること、また、その基準が複雑であることから、違法とされる事業場が4割近くあります。

「平均」の管理については、手計算で行うことが難しく、システムに頼らざるを得ないでしょうし、給与計算の締日の中間点で警告が出るようにしておかないと、適法性を保つのは困難だと思われます。

また、かつてはブラック企業の特徴とされていた賃金不払残業が、6.5%にまで低下しています。

令和時代に入ってもなお、サービス残業がある会社では、人材の確保が難しく、また、各方面からの信頼も得られませんので、やがて事業の継続は困難となるでしょう。

2021/08/25|1,677文字

 

<就業規則の規定>

マタニティーハラスメント(マタハラ)とは「子を設け育てることに対する職場での支援拒否の態度」と表現できます。

また、特に経営者が行うものは「不利益な取扱い」と呼ばれ、マタハラとは別の概念とされています。

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)では、マタハラが次のように規定されています。

 

(妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントの禁止)

第14条  妊娠・出産等に関する言動及び妊娠・出産・育児・介護等に関する制度又は措置の利用に関する言動により、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

マタハラという用語が、比較的新しいものであるために、敢えて日本語で明確に示されているのでしょう。

ただ、就業規則にこのような規定を置いた場合でも、何が「妊娠・出産・育児・介護等に関する制度又は措置の利用」にあたるのかについて、別に社員教育が必要となります。

少子高齢化に対応して、ここに言う「制度又は措置」の内容も、法改正により充実してきていますので、研修などの内容もアップデートしながら繰り返さなければなりません。

また、小規模会社で就業規則が無い場合であっても、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関する法令は適用されますから、マタハラへの対応を怠ることはできません。

 

<制度又は措置の利用への嫌がらせ>

次に掲げる制度や措置は、育児介護休業法が定めるもので、男女どちらにも適用されます。

上司や同僚の言動が、こうした制度や措置に関するもので、人権侵害となれば、就業環境を害することにもなり、制度等の利用への嫌がらせ型のマタハラとなります。

・育児休業

・子の看護休暇

・所定外労働(早出や残業)の制限

・深夜業の制限

・育児のための所定労働時間の短縮措置

・始業時刻変更等の措置

 

<マタハラとなる言動>

次のような言動が、マタハラの典型例です。

・制度や措置の利用請求などを理由に上司が不利益な取扱をほのめかす

・制度や措置の利用請求などを上司や同僚が邪魔する

・制度や措置を利用したことを理由に上司や同僚が嫌がらせをする

具体的には、次のような発言がマタハラになります。

「男のくせに育休を取るなんて」

「一人だけ残業しないで帰るなんてずるい」

「いつも社長出勤で偉そうね」

周囲の人たちは、自分の負担が増えるから、ついついこんな発言をしがちです。

 

<マタハラ防止に必要な知識>

さて、就業規則を読んだだけでは、自分の行為がパワハラにあたる/あたらないを判断できない場合があります。

育児介護休業法などの内容についての具体的な知識が無ければ、判断することは不可能だからです。

また、他の社員の行為に対しても、自信を持って「それはマタハラだから止めなさい」と注意することもできません。

セクハラやパワハラであれば、関連するニュースも多いですし、感覚的に理解できる点もあるのですが、マタハラについては、知識が無ければ対応のしようがありません。

こうしてみると、社内でマタハラを防止するのに必要な知識のレベルというのは、かなり高度なものであることがわかります。

 

<知識不足によるパワハラの防止には>

こうした事情があるにもかかわらず、就業規則にマタハラの禁止規定があり懲戒規定があることを理由に懲戒処分が行われてしまうのは、加害者本人にとっても会社にとっても不幸です。

加害者は、マタハラの意識が無いままに加害者とされ、会社と共に損害賠償を求められる他、両当事者とも評判が落ちてしまいます。

会社が本気でマタハラを防止するには、就業規則にきちんとした規定を設け、充実した社員教育を実施することが必要となります。

社員教育では、育児介護休業法の具体的な内容の理解が中心となります。

少しでも社員の記憶に残っていれば、何か疑問が生じたときに法令の内容を確認することによって、マタハラの被害を最小限に食い止めることができます。

一般に、社員教育は生産性を高めるものですが、マタハラについての社員教育は社員と会社を守るために必要なものだといえるでしょう。

2021/08/24|803文字

 

<年次有給休暇の取得促進>

労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持を図るための年次有給休暇は、その取得率が50%前後の水準で推移しています。

こうした現状を踏まえ、有給休暇取得促進のため、1日単位にこだわらない取得が認められるようになっています。

 

<半日単位の取得>

労働者が希望し、会社が同意した場合であれば、半日単位で有給休暇を消化することが認められています。

ただし、「午前中で終わる用事のためなら、1日休まなくても半日有給でいいですね」と会社側から働きかけるような、1日単位での有給休暇の消化を阻害する行為は認められません。

 

<1時間単位の取得>

5日以内なら労使協定を交わすことによって、1時間単位の年次有給休暇取得も可能です。〔労働基準法第39条第4項〕

また、労使協定の定めによって、対象者の範囲を限定することもできます。

この場合には、異動などによって対象者から外れた場合の取り扱いについて、あらかじめ労使で取り決めておく必要があります。

 

<1時間単位なら不安も少ない>

年次有給休暇の取得を申し出るには、労働者の側に次のような不安があります。

・みんなに迷惑がかかるのではないか

・休み明けに忙しくなるのではないか

・職場が年次有給休暇を取得できる雰囲気ではない

・上司が嫌な顔をしそうだ

1時間単位で希望の時間だけ年次有給休暇を取得する場合には、こうした不安も軽減されるでしょう。

 

<解決社労士の視点から>

年次有給休暇を1時間単位で取得できるようにする/しないは、それぞれの会社の自由ですが、法的権利であると思い込んでいる労働者が多いのも事実です。

それほど労働者のニーズが高い一方で、この制度の導入は会社の負担が大きくありません。

働き方改革は、企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善だと考えられますから、1時間単位の年次有給休暇の導入は優先順位が高いといえるでしょう。

2021/08/23|813文字

 

<テレワーク対応>

令和3(2021)年8月13日、厚生労働省が、健康保険法施行規則及び船員保険法施行規則の一部を改正する省令(令和3年8月13日厚生労働省令第140号)を発出しました。

この省令は、事業主を経由して健康保険証(被保険者証)を交付する手続がテレワーク普及の妨げになっている等として政府の縦割り110番に寄せられた改正要望を受けたものです。

 

<保険証の直接交付>

保険者は、令和3(2021)年10月1日以降、健康保険加入者(被保険者)に直接交付することについて支障がないと認めるときは、被保険者証を被保険者に直接交付することができることになりました。

現在は事業主に郵送された被保険者証を被保険者に交付する流れとなっていますので、10月以降は交付までの日数が短縮されることになります。

 

<被保険者証の情報を訂正した場合の被保険者証の返付>

記載事項を訂正するため保険者に提出された被保険者証の返付についても、被保険者に直接返付することについて支障がないと認めるときは、事業主を経由することを要しないことになります。

 

<再交付>

紛失や汚損等による被保険者証の再交付についても、支障がないと保険者が認めるとき、または災害その他やむを得ない事情により、事業主を経由して行うことが困難であると保険者が認めるときは、事業主を経由することを要しないことになります。

 

<返納>

被保険者が退職などにより資格を喪失したとき、その保険者に変更があったとき、またはその扶養家族(被扶養者)が異動したときは、事業主は遅滞なく被保険者証を回収して保険者に返納しなければならないこととされています。

この場合に、事業主を介さず直接返納することは、今回の省令によっても認められていません。

 

<その他>

高齢受給者証、特定疾病療養受療証、限度額適用認定証、限度額適用・標準負担額減額認定証等の交付方法等についても、上記の被保険者証に準じた改正が行われます。

2021/08/22|2,131文字

 

<能力不足によるパワハラ>

会社の就業規則にパワハラの具体的な定義を定め、これを禁止する規定や懲戒規定を置いて、パワハラに関する社員研修を行っていても、社員個人の能力不足によるパワハラが発生します。

ここで不足する能力は説明能力が中心です。

 

<就業規則の規定>

職場のパワーハラスメントとは、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害される」ものをいいます。〔労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第30条の2第1項〕

この条文を見ると、「就業環境が害される」という実害の発生が、パワハラの成立条件のようにも見えます。

しかし、企業としてはパワハラを未然に防止したいところです。

ですから、就業規則にパワハラの定義を定めるときは、「職場環境を悪化させうる言動」という表現が良いでしょう。

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)では、次のように規定されています。

 

(職場のパワーハラスメントの禁止)

第12条  職務上の地位や人間関係などの職場内の優越的な関係を背景とした、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

<パワハラの構造>

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

行為者は、パワハラをしてやろうと思っているわけではなく、会社の意向を受けて行った注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

 

<業務上不要な人権侵害行為>

業務上必要な行為と同時に行われる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

刑事上は犯罪となる行為が、同時に民事上は不法行為にもなります。

つまり、刑罰の対象となるとともに、損害賠償の対象ともなります。

 

<パワハラ防止に必要な知識>

さて、就業規則を読んだだけでは、自分の行為がパワハラにあたるのかどうかを判断できない場合もあるでしょう。

また、他の社員の行為に対しても、自信を持って「それはパワハラだから止めなさい」と注意するのはむずかしいでしょう。

ましてや、暴行罪〔刑法第208条〕や名誉毀損罪〔刑法第230条〕の成立要件、特に構成要件該当性などは、「物を投げつけても当たらなければ成立しない」「真実を言ったのなら名誉毀損にはならない」などの誤解があるものです。

こうしてみると、社内でパワハラを防止するのに必要な知識のレベルというのは、かなり高度なものであることがわかります。

 

<知識があっても行われるパワハラ>

しかし、高度な知識があるのに、ついついパワハラに走ってしまう社員がいます。

もちろん、怒りっぽい、キレやすい性格というのもあります。

そして、カッとなってパワハラ行為に出てしまう原因を見てみると、相手が自分の思い通りに動いてくれない、自分の言ったことを理解してくれないということにあります。

さらに、その原因を追究すると、要領を得ない説明で相手に趣旨が伝わらないということがあります。

1人か2人の相手に伝わらないというのであれば、相手の理解力に問題がありそうです。

しかし、「どいつもこいつも解かってくれない」という感想を持つようであれば、その人の説明能力に問題があるのでしょう。

こうして、部下に説明する → 伝わらない → ボーッと聞いている、とんちんかんな質問をしてくる、同じ過ちを繰り返す → 再度説明する → 伝わらない → 感情的になって怒鳴ったり机を叩いたりのパワハラに走る という構造が出来上がってしまいます。

 

<不足する説明能力とは>

一口に「説明能力」と言っても複雑です。

前提として、相手の性格・経験・理解力の把握、相互理解があります。

異動したての役職者には、この前提を欠いていることがあり、パワハラ発生の危険が高まります。

次に、相手が落ち着いて傾聴できる態度・環境・雰囲気作り、そして、本人の語彙力・表現力、相手の理解度を探る観察力なども必要です。

こうしてみると、本人の持つ雰囲気、語彙力・表現力、観察力など、会社の教育研修をもってしても容易には醸成できない項目を含んでいます。

これらは、その個人の資質に依存する能力です。

 

<解決社労士の視点から>

説明能力が不足する社員は、優位な立場に立たせないのが得策です。

会社に対する貢献度が高い社員に説明能力が不足していたら、説明能力を十分身に着けるまでは、部下を持たせるのではなく、専門職的な立場で会社に貢献してもらうようにしてはいかがでしょうか。

専門職制度など適性を踏まえた人事異動を可能にする仕組と、その前提となる人事考課制度の適正な運用が、パワハラから社員と会社を守ってくれます。

2021/08/21|1,443文字

 

<セクハラの公式定義>

セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、職場において、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、身体への不必要な接触など、意に反する性的な言動が行われ、拒否したことで不利益を受けたり、職場の環境が不快なものとなることをいいます。

対価型セクハラとは、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けることをいいます。

セクハラ行為に拒否の態度を示したら不利益を受けたという形です。

環境型セクハラとは、労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等その労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることをいいます。

セクハラ行為があったため落ち着いて仕事ができず生産性が低下したという形です。

 

<労働者の意に反する性的言動>

セクハラの加害者は相手の受け取り方次第という言い逃れをしたがります。

たしかに、セクハラの定義の中の「労働者の意に反する性的言動」のうちの「意に反する」というのが、相手の主観だけを基準に認定されるのであれば、この主張は正しいことになります。

しかし、相手の感覚を基準にすれば、「声がセクハラだった」「目つきがセクハラだった」など、セクハラとなりうる行為の範囲が不当に広がってしまいます。

これでは、相手の目を見て話すこともむずかしく、業務に支障を来してしまいます。

そこで実際には、相手の被害者意識も参考としつつ、具体的な事情から、相手の性格は抜きにして、年齢や立場などが同じ人であれば、「意に反する性的言動」であったかどうかを考えます。

つまり、相手の主観と客観的な事情の両方を基礎として、セクハラの成否を判断するのです。

たとえば相手が、性的言動について極端に敏感であったり、鈍感であったりすれば、これを修正して平均的なところで判断します。

ただし、相手が敏感であることを知りつつ、あえて性的言動に及んだような場合には、「意に反する性的言動」であったと認定されます。

このように考えないと、被害者は救われませんし、加害者は故意に行っているわけですから言い訳できる立場にないからです。

このように、セクハラ行為の有無を認定するには、行為者とその相手との関係や、それぞれの性格も把握する必要があります。

結論として、セクハラは相手の受け取り方次第という言い逃れは許されないことになります。

 

<会社のセクハラ対応>

こうして見てくると、セクハラの成否を判断するのは簡単ではないことが分かります。

それにもかかわらず、就業規則にセクハラの禁止規定があり懲戒規定があることを理由に、安易に懲戒処分まで行われてしまうのは、行為者本人にとっても会社にとっても不幸です。

反対に、セクハラ被害があったにもかかわらず、会社がきちんと対応しないのでは、社員からの信頼を失い退職者が増えたり、会社の評判が落ちたりします。

会社が本気でセクハラを防止するには、就業規則にきちんとした規定を設け、充実した社員教育を実施することが必要となります。

社員教育では、セクハラの定義・構造の理解、具体例を踏まえた理解の深化を図りましょう。

この他、人事考課制度の適正な運用や、適性を踏まえた人事異動が、セクハラから社員と会社を守ってくれます。

そして、具体的な事例が発生したとき、その対応に迷ったら、守秘義務を負った専門家である社会保険労務士へのご相談をお勧めします。

2021/08/20|827文字

 

<特例改定の対象者>

今回の標準報酬月額の特例改定は、令和3(2021)年8月から12月までの間に新型コロナウイルス感染症の影響による休業に伴い報酬が急減した人が対象です。

令和2(2020)年6月から令和3(2021)年5月までの間に休業により著しく報酬が下がり特例改定を受けた人であっても対象となります。

 

<対象者の具体的な条件>

次のすべての条件を満たす人が対象です。

・新型コロナウイルス感染症の影響による休業があったことにより、令和3(2021)年8月から令和3(2021)年12月までの間に、著しく報酬が下がった月が生じたこと

・著しく報酬が下がった月に支払われた報酬の総額(1か月分)が、既に設定されている標準報酬月額に比べて2等級以上下がったこと(固定的賃金の変動がない場合も対象)

・特例措置による改定内容に本人が書面により同意していること

 

<届出>

月額変更届(特例改定用)に申立書を添付して、所轄の年金事務所に原則として郵送で提出します。

令和3(2021)年9月1日から令和4(2022)年2月28日までの届出が対象となります。

※令和3年4月から7月までの間の特例の届出期間は、令和3年9月30日までとなっています。

※令和3年1月から3月までの間の特例の届出期間は、令和3年5月31日で終了しています。

 

<対象者の同意>

届出に当たっては、対象者(被保険者)本人の十分な理解に基づく事前の同意が必要となります。

「保険料が安くなる」というメリットだけでなく、傷病手当金、出産手当金及び年金の額は、改定後の標準報酬月額に基づき算出されるので、こちらも減額されるというデメリットの理解が必須です。

 

<再度の改定手続>

上記の特例改定を受けた人は、休業が回復した月に受けた報酬の総額を基にした標準報酬月額が、特例改定により決定した標準報酬月額と比較して2等級以上上がった場合、その翌月から標準報酬月額を改定することになりますので、月額変更届の提出が必要です。

2021/08/19|1,118文字

 

秘密漏洩と損害賠償https://youtu.be/9JS05-d2BIM

 

<守秘義務の認識>

社員は、在職中だけでなく退職後にも、労働契約に付随する義務として当然に守秘義務を負っています。

しかし、このことは必ずしも社員一人ひとりに認識されているとは限りません。

就業規則に具体的な規定を置くことはもちろん、守秘義務を負う社員からは、入社や異動の際に誓約書を取っておくことをお勧めします。

 

<賠償請求の困難性>

社員が営業秘密をもらしてしまった場合でも、損害賠償請求は困難ですし、その金額も限定されてしまいます。

賠償を請求する場合には、まず具体的な事実関係を確認する必要があります。

ところが、これは大変時間のかかることですから、対象社員から十分に事情を聞く前に退職されてしまうことがあります。

また、事実関係が明らかになったとしても、損害の発生や損害額を証明することが大変困難です。

こうした場合に備えて、会社と社員との間で損害賠償額を予め決めておければ楽なのですが、これは労働基準法で禁止されていて、たとえ決めておいても無効になってしまいます。〔労働基準法第16条〕

 

<不正競争防止法>

不正競争防止法には、損害賠償請求の規定があるのですが、この法律が保護の対象としている営業秘密は、範囲が限定されているため簡単には適用されません。

保護されるのは「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」とされています。〔不正競争防止法第2条第6項〕

実際には、秘密管理性の要件に欠けるとして、この法律の保護が受けられないことが多いのです。

なぜなら、秘密管理性の要件を満たすには、次のことが行われている必要があるからです。

・情報に接した者にその情報が営業秘密であると認識させていること

・情報に接する者が制限されていること

 

<刑事責任と民事責任>

企業機密を持ち出した社員が書類送検されたということは、国家権力による刑事責任の追及が始まったということです。

このことによって、企業の犯人に対する損害賠償の請求が可能になったわけではありません。

刑事責任と民事責任とは、必ずしも連動しないのです。

やはり、秘密がもれたかも知れないと気づいてから対応するのではなく、もれないようにするのが得策です。

そのために最も効果的なのは、定期的に社員研修を繰り返すことです。何か問題が発生してから1回だけ研修を行い、その後長く実施しなければ、会社の態度が見透かされてしまいます。ですから、少なくとも年1回は実施したいものです。

こうした研修は、社外の講師が行った方が効果的ですし、労働契約の性質、就業規則の意味、誓約書の効果といった深い話から順を追ってきちんと説明することが大事です。

2021/08/18|1,942文字

 

<計算上の不利益>

ある日2時間残業して、翌日2時間早退して、これで相殺したことにすると賃金の面で問題があります。

労働基準法第37条第1項には次の規定があって、法定労働時間を超える労働には25分以上の割増賃金を支払わなければなりません。

 

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)

第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

 

ある日、法定労働時間を超えて2時間残業した場合、その2時間の賃金は、就業規則や労働条件通知書などに示された25分以上割増の賃金です。

2時間 × 1.25 2.5時間

ですから、2.5時間分以上の賃金支払が必要です。

これと、早退による2時間分の賃金のマイナス(欠勤控除)とで相殺すると、0.5時間分以上の賃金が消えてしまうのです。

 

これでは割増賃金を支払わないことになりますから、労働基準法第37条第1項に違反し、「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する」という罰則適用の対象になってしまいます。〔労働基準法第119条〕

 

<不利益が無い場合>

ある人の所定労働時間が毎日4時間であれば、2時間残業しても法定労働時間の範囲内ですから、割増賃金は発生しません。

翌日2時間早退して、これで相殺したことにしても、賃金計算上の不利益はありません。

また、割増賃金を就業規則や労働条件通知書などに25分と規定し、4時間の残業と5時間の早退とで相殺するという運用ならば、賃金計算上の不利益はありません。

4時間 × 1.25 5時間

こうした計算で、労働者に不利益が無いのなら違法ではないようにも思われます。

しかし、労働基準法により、残業代は残業代、早退による欠勤控除は欠勤控除として、それぞれ別項目で賃金台帳に示さなければなりません。

労働基準法第108条には次の規定があります。

 

(賃金台帳)

第百八条 使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。

 

そして、労働基準法施行規則第54条により、次の事項を記入することになります。

・氏名

・性別

・賃金計算期間

・労働日数

・労働時間数

・時間外労働、休日労働および深夜労働の時間数

・基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額

・労使協定により賃金の一部を控除した場合はその金額

 

こうしたことから、たとえ賃金計算上の不利益が無い場合でも、残業時間と早退時間はそれぞれ集計して賃金台帳に記入しなければなりません。

 

<フレックスタイム制の運用>

きちんと手続をして、フレックスタイム制を正しく運用していれば、ある日2時間残業して、別の日に2時間早退すると、結果的に相殺されたのと同じ効果が発生します。〔労働基準法第32条の3

これは、1か月間など労使協定で定められた清算期間内の総労働時間と、実際の勤務時間の合計との比較で、時間外労働や欠勤の時間を集計する仕組みだからです。

労働者が仕事の都合と個人の都合をバランス良く考えて、自由に労働時間を設定できることによる例外です。

就業規則の規定や労使協定が無いのに、フレックスタイム制に似せた運用をしてしまわないように注意しましょう。

 

<月60時間を超える時間外労働>

中小事業主は当分の間対象外ですが、月60時間を超える時間外労働の割増賃金(割増率5割以上)については、労働者の健康確保の観点から、割増賃金の支払に代えて有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。〔労働基準法第37条第3項〕

代替休暇制度の導入には、事業場の過半数組合、または労働者の過半数代表者との間で労使協定を結ぶことが必要です。

この協定では、a.代替休暇を与えることができる時間外労働の時間数の算定方法、b.代替休暇の単位、c.代替休暇を与えることができる期間、d.代替休暇の取得日の決定方法および割増賃金の支払日を定めるべきとされています。

これは、残業時間と早退時間との相殺ではなくて、残業時間と休暇との相殺になります。

中小企業の場合はもちろん、大企業であっても労使協定の無いまま、「8時間残業したら1日休んでよし」といった乱暴な運用は違法ですから注意しましょう。

2021/08/17|1,028文字

 

<休職期間中の産前休業>

産前休業について、労働基準法は次のように規定しています。

 

【労働基準法第65条第1項:産前休業】

使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。

 

このように、産前休業は法定された休業ですが、妊娠中の女性からの請求を待って発生するものです。

ですから、何らかの事情により、本人から産前休業の請求が無いまま休職期間が満了すれば、自動退職(自然退職)となることもあるわけです。

しかし、一般には本人からの請求があって、休職期間中に産前休業が開始されることになります。

この場合には、法定の制度である産前休業が、会社の制度である休職に優先して適用されます。

つまり、休職期間の満了をもって自動退職(自然退職)とはなりません。

むしろ、産休の期間とその後30日間は解雇が制限されます。〔労働基準法第19条本文〕

 

<休職期間中の産後休業>

産後休業について、労働基準法は次のように規定しています。

 

【労働基準法第65条第2項:産後休業】

使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。

 

このように、産後休業は産前休業と同様に法定された休業ですが、出産した女性からの請求を待たずに当然に発生するものです。

ですから、休職期間中に産後休業が開始された場合には、法定の制度である産後休業が、会社の制度である休職に優先して適用されます。

つまり、休職期間の満了をもって自動退職(自然退職)とはなりません。

やはり、産休の期間とその後30日間は解雇が制限されます。〔労働基準法第19条本文〕

 

<解決社労士の視点から>

休職に優先して産休が適用されることによって、残っていた休職期間がどうなるのか、法令には規定がありません。

これについては、各企業の就業規則に任されていることになります。

産休や育休が終了してから、休職期間の残された期間が進行する、期間がリセットされ改めて休職期間がスタートするなど、就業規則に定めることになります。

休職期間が短縮されたり終了したりというのは、産休や育休の取得による不利益取扱ですから許されません。

休職中の産休はレアケースですが、産休を取得する社員が多い職場では、予め就業規則に規定しておいてはいかがでしょうか。

2021/08/16|1,334文字

 

労働者本人の同意https://youtu.be/TA8e1cofsFE

 

<本人が同意しているのなら>

労働契約というのは、使用者と労働者との合意によって成立します。

ですから、労働条件も基本的には両者の合意によって決定されます。

このことからすれば、労働基準法の規定とは違う労働条件とすることについて、労働者本人が同意しているのであれば問題なさそうに思えます。

しかし、採用されたいがために「残業代はいただきません」「年次有給休暇は取得しません」「5年間は退職しません」というような同意書に労働者が署名・捺印したとしても、本心かどうかは怪しいものです。

では、本人が心の底から同意していれば、その労働条件でかまわないのでしょうか。

 

<任意規定と強行規定>

法令の規定には、任意規定と強行規定とがあります。

任意規定とは、契約の中のある項目について当事者の合意が何も無い場合に、法令の規定が適用されてその空白が埋められるように設けられたものです。

ですから、契約の当事者が任意規定とは違う合意をすれば、その合意の方が優先されて法的効力が認められます。

強行規定とは、当事者の合意があっても排除できない法律の規定です。

つまり、強行規定とは違う合意をしても、この合意に法的効力はありません。

しかし、任意規定なのか、それとも強行規定なのかは、法令そのものに明示されていません。

その規定の趣旨から、解釈によって判断されます。

そして最終的な判断は、裁判所が行います。

一般に、契約書に関する法律の規定は、任意規定が多いとされています。

労働基準法の中の労働契約に関する規定も、任意規定なのでしょうか。

 

<労働基準法の性質>

憲法は労働者の保護をはかるため、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定めることにしました。〔日本国憲法第27条第2項〕

こうして定められた法律が労働基準法です。

労働基準法の目的は、使用者にいろいろな基準を示して守らせることによって、労働者の権利を守らせることです。

労働者の同意によって、この基準がくずされてしまったのでは、労働者の権利を守ることはできません。

労働基準法は使用者に対し、とても多くの罰則を設けて、基準を守らせようとしています。

一方で、労働者に対する罰則はありません。

労働者が労働基準法違反で逮捕されることもありません。

こうしたことから、労働基準法の規定は、原則として強行規定であるというのが裁判所の判断です。

 

<解決社労士の視点から>

退職予定の正社員から「引継ぎ書と業務マニュアルを完成させたいので残業させてください。これは、私が納得のいくものを作成したいという我がままですから、残業代は要りません」という申し出を受けて、会社側がOKを出したとします。

この退職予定者が、毎日残業し休日出勤までして、見事な引継ぎ書と業務マニュアルを残して退職していったとします。

この場合でも、退職後に残業代の支払を求められたら会社は拒めません。

社員は、退職すれば心理的に自由になります。

そして、労働者としての権利を最大限に主張できるのです。

退職した時点では、残業代を放棄するつもりだったのに、その後経済的に困って会社に請求してくるというのは、典型的なパターンになっています。

円満退社の場合でも、決して油断はできないということです。

2021/08/15|1,438文字

 

<就業規則の規定>

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など「職場内での優位性」を背景に、「業務の適正な範囲」を超えて、精神的・身体的苦痛を与え、または、職場環境を悪化させる行為をいいます。

これによると、「精神的・身体的苦痛を与えこと」あるいは「職場環境を悪化させる行為」という実害の発生が、パワハラ成立の条件のようにも見えます。

しかし、企業としてはパワハラを未然に防止したいところです。

ですから、就業規則にパワハラの定義を定めるときは、「精神的・身体的苦痛を与えうる言動」「職場環境を悪化させうる言動」という表現が良いでしょう。

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)では、次のように規定されています。

 

(職場のパワーハラスメントの禁止)

第12条  職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景にした、業務の適正な範囲を超える言動により、他の労働者に精神的・身体的な苦痛を与えたり、就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

<パワハラの構造>

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

行為者は、パワハラをしてやろうと思っているわけではなく、会社の意向を受けて行った注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

 

<業務上不要な人権侵害行為>

業務上必要な行為と同時に行われる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

刑事上は犯罪となる行為が、同時に民事上は不法行為にもなります。

つまり、刑罰の対象となるとともに、損害賠償の対象ともなります。

 

<パワハラ防止に必要な知識>

さて、就業規則を読んだだけでは、自分の行為がパワハラにあたるのかどうかを判断できない場合もあるでしょう。

また、他の社員の行為に対しても、自信を持って「それはパワハラだから止めなさい」と注意するのはむずかしいでしょう。

ましてや、暴行罪〔刑法第208条〕や名誉毀損罪〔刑法第230条〕の成立要件、特に構成要件該当性などは、「物を投げつけても当たらなければ成立しない」「真実を言ったのなら名誉毀損にはならない」などの誤解があるものです。

こうしてみると、社内でパワハラを防止するのに必要な知識のレベルというのは、かなり高度なものであることがわかります。

 

<解決社労士の視点から>

こうした事情があるにもかかわらず、就業規則にパワハラの禁止規定があり懲戒規定があることを理由に懲戒解雇まで行われてしまうのは、行為者本人にとっても会社にとっても不幸です。

行為者と家族の人生は台無しになりますし、会社は損害賠償を求められる他、両当事者とも評判が落ちてしまいます。

会社が本気でパワハラを防止するには、就業規則にきちんとした規定を設け、充実した社員教育を実施することが必要となります。

社員教育では、パワハラの定義・構造の理解、具体例を踏まえた理解の深化を図りましょう。

この他、人事考課制度の適正な運用や、適性を踏まえた人事異動が、パワハラから社員と会社を守ってくれます。

2021/08/14|1,732文字

 

<配転命令権の根拠>

企業に配置転換を命ずる権利が与えられているのは、適材適所により人材の効率的活用を図り、また、キャリアアップのため多様な能力と経験を積み上げられるようにするためです。

東亜ペイント事件最高裁判決などによると「使用者は業務上の必要に応じ、その裁量により労働者の勤務場所を決定することができ」、次の条件を満たす場合には、労働者の個別的な同意を得ずに配置転換を命ずることができます。

 

【同意なく配転命令ができる場合】

1.就業規則、個別労働契約等に、会社は業務上の必要から配置転換を命ずることができる旨の規定があること

2.これらの規定に従い、一定の頻度で実際に配置転換が行われていること

3.対象者について、勤務場所や職種等を限定する合意が無いこと

 

上記3つの条件のうち、1.と2.は客観的に認定できますが、3.の合意の有無については、しばしば労使で争われることがあります。

裁判では明示の合意があったと認められることが少ないものの、職種の限定について明示の合意が無い場合であっても、医師、看護師、薬剤師、弁護士などの専門職では、黙示の合意があると見るのが自然です。

勤務場所や職種等を限定する合意がある場合には、改めて本人の同意を得たうえで、配置転換を命ずることになります。

 

<権利濫用法理>

労働契約法には、出向、懲戒、解雇について、権利濫用法理の規定があります。〔労働契約法第14条、第15条、第16条〕

配置転換については、権利濫用法理の規定がありません。

しかし、一般法である民法には、第1条(基本原理)の第3項に「権利の濫用は、これを許さない」という規定があります。

配置転換も労働契約の中で行われる以上、権利の濫用が許されないことは明らかです。

 

<配転命令権の濫用>

上記【同意なく配転命令ができる場合】に該当していても、配転命令権の濫用となる場合には、配転命令が無効となります。

 

【配転命令権の濫用となる場合】

1.配置転換により労働者の被る家庭生活上の不利益が、転勤に伴い通常甘受すべき程度を超えるものである場合

2.業務上の必要が認められない場合

3.不当な動機・目的によるものである場合

 

上記3つの条件のうち、2.と3.は会社側で把握しうるものですが、労働者から配置転換を拒む理由として主張されることがあります。

1.については、配置転換を内示した後になって、労働者から家庭の状況について説明を受けることが多く、また、配置転換により労働者の被る家庭生活上の不利益が、転勤に伴い通常甘受すべき程度を超えるか否かの判断が分かれやすいため、紛争となりやすい内容です。

 

<1.配置転換により労働者の被る家庭生活上の不利益が、転勤に伴い通常甘受すべき程度を超えるものである場合>

労働者の被る家庭生活上の不利益のうち、育児介護休業法により事業主が配慮すべきとされている事項については、相当程度の配慮が行われ、労働者の不利益が軽減されている必要があります。

しかし、これ以外については、裁判で家庭生活上の不利益が転勤に伴い通常甘受すべき程度のものと認定されることが多いようです。

 

<2.業務上の必要が認められない場合>

業務上の必要は、基本的には会社の裁量権が大幅に認められます。

したがって、人材の効率的活用を図るでもなく、また、キャリアアップのためでもないことが明らかであるような場合を除き、業務上の必要が認められるでしょう。

 

<3.不当な動機・目的によるものである場合>

労働者を退職に追い込むための配置転換は、無効とされることが多いといえます。

パワハラでの、過大な要求、過小な要求、隔離に準ずるような配置転換、あるいは、資格・能力・経験を活かせない業務への配置転換は、人事考課やキャリア蓄積の面で不利であり昇格・昇給を遅らせる可能性が高いため、嫌がらせ配転であると解されることが多いといえます。

 

<解決社労士の視点から>

配転命令の正当性について、多角的に検討したうえで、内示するというのは不効率だと思われます。

むしろ配置転換を打診し、対象者が拒否的な態度を示したら、その言い分に耳を傾け、一度話を持ち帰り、問題が無いと判断したならば説明・説得にあたるのが得策だと考えます。

2021/08/13|1,586文字

 

<周知の意味>

周知(しゅうち)というのは、広く知れ渡っていること、または、広く知らせることをいいます。

「周知の事実」といえば、みんなが知っている事実という意味です。

会社で「周知」という場合には、社内の従業員に広く知らせるという意味です。

 

<就業規則についての義務>

労働基準法には、次のように規定されています。

 

第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

 

つまり、従業員が10名以上の会社では、就業規則を作成し所轄の労働基準監督署長に届け出る義務があります。

しかし、従業員が10名未満の会社が就業規則を作成し届け出るのは任意です。

 

<会社の周知義務>

会社は、労働基準法および同法による命令等の要旨、就業規則、労使協定を従業員に周知しなければなりません。〔労働基準法第106条第1項〕

従業員が10名以上の会社で、就業規則を作成して労働基準監督署長に届け出たとしても、周知しなければ効力が発生しません。ここは重要なポイントです。

 

<労使協定の周知義務>

よくある勘違いに、「うちには労働組合が無いので労使協定は関係ない」というのがあります。

しかし、労働組合が無い会社では、「労働者の過半数を代表する者」が選出され、この過半数代表者との間で労使協定が交わされます。

労使協定というと、三六協定(時間外労働・休日労働に関する協定)が特に有名です。〔労働基準法第36条〕

この協定書を作成して、所轄の労働基準監督署長に届け出なければ、法定労働時間を超える残業は1分たりともさせられません。

無届での残業は違法残業となってしまいます。

労働基準法には、他にも多くの労使協定が規定されています。

特別なことを何もしなければ、これらの労使協定は要りません。

しかし、必要に応じて協定を交わし、周知することが会社に義務付けられています。

 

<周知の方法>

周知の方法には、常時各作業場の見やすい場所に掲示/備え付ける、書面で交付する、磁気テープ/磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し各作業場に労働者がその記録の内容を常時確認できる機器を設置するというのがあります。

 

<労働基準法の要旨の周知>

会社は、労働基準法の要旨も就業規則も周知しなければなりません。

たとえば、就業規則に「年次有給休暇は法定通り」と定めたならば、別に労働基準法の年次有給休暇の定めの内容を周知することになります。

就業規則や労働基準法に基づく労使協定ならば、会社が作成するのですから、それをそのまま周知すれば良いので、何も迷うことはありません。

しかし、「法令の要旨」となると、まさか『労働法全書』や『六法全書』を休憩室に置いて、従業員の皆さんに見ていただくというわけにはいきません。

しかも、労働基準法第106条は、法令そのものではなく「法令の要旨」としています。

 

<解決社労士の視点から>

厚生労働省のホームページには、パンフレット、リーフレット、ポスターが豊富に収録されています。

パンフレットは数ページにまとめられたもので、リーフレットは基本的に1枚でまとめられたものです。

たとえばネットで「厚生労働省 パンフレット マタハラ」で検索すると、「妊娠したから解雇は違法です」というページが検索され、そこに「パンフレット:働きながらお母さんになるあなたへ」という項目が見つかります。

厚生労働省とパンフレットの間に空白(スペース)を入れ、パンフレットとマタハラの間にも空白(スペース)を入れて検索すると、3つの言葉を含んだページが表示されますので、この検索方法を活用しましょう。

それでもなお、自社の従業員に合った上手い説明が見つからない場合には、国家資格者の社労士(社会保険労務士)にご相談ご用命ください。

2021/08/12|809文字

 

社会保険料の免除、健康保険の出産手当金や出産育児一時金の請求、会社からの出産祝金の支給、雇用保険の育児休業給付の請求などの手続的なことは、夫婦それぞれの勤務先に出産予定日と実際の出産日を伝えれば、滞りなく行われるはずです。

こうしたこととは別に、夫には夫の役割があります。

どうぞ以下のことを参考にして準備を進めてください。

 

<出産前の準備>

・より多くの時間、妻に付き添えるよう、休暇取得などの準備を整えておきましょう。なかなか年次有給休暇を取得できない職場であっても、この時ばかりは何とかしてもらいたいものです。

・夫婦それぞれの実家など連絡先を確認し、事前の連絡をしておきます。

・生まれてくる赤ちゃんのことばかり気にかけていると、上の子が孤独を感じて不安になってしまいます。しっかりフォローしましょう。

・陣痛が起こったら、腰をさすったり、楽な姿勢をとらせたり配慮しましょう。

・水分を補給するための飲み物や、消化の良い食物も用意しておきましょう。

・妻がリラックスできるよう、環境を整えたり会話をしたりしましょう。

 

<赤ちゃんが生まれたら>

・妻には感謝とねぎらいの気持を伝えましょう。

・夫婦それぞれの実家など、必要な連絡先に知らせましょう。

・出産と同時に、注目の的が妻から赤ちゃんに移ります。妻が寂しい気持にならないよう、積極的に会話しましょう。欲しい物、して欲しいことなどは、できるだけ対応しましょう。

・上の子は、赤ちゃんばかりが可愛がられて焼きもちを焼くことがあります。しっかりフォローしましょう。

・妻と話し合って赤ちゃんの名前を決めます。そのためにも、できるだけ面会に行くようにしましょう。

 

<退院の準備>

・自宅の掃除など、赤ちゃんを迎える準備を整えておきます。

・退院時に入院費用の精算がありますので、その準備をします。

・退院時の荷物の整理は、妻の指示に従う形で行いましょう。

・荷物を持つことや、車の手配もお忘れなく。

2021/08/11|1,031文字

 

<顔出ししたくない人の言い分>

オンライン会議で顔出ししたくない人は、次のような主張をします。

オンライン会議に参加する前は、服装や髪型を整え、化粧をしたり、ひげを剃ったり、部屋を片付けたりと、準備に手間と時間がかかります。

参加中は、緊張した姿勢と表情を維持しなければならず、プライベートな空間を社内の人に見られます。

そもそも、会議を行うのに姿を見せる必要はなく、音声だけで話し合えるのではないかと考えます。

 

<顔出しさせたい人の言い分>

一方、オンライン会議で顔出しさせたい人は、次のような主張をします。

会社で会議を行う場合には、出社の時点で服装や髪型が整っているし、化粧やひげ剃りは済ませてあって当然だから、オンライン会議だからといって特別な負担はありません。

会議中に緊張を強いられるのも、オンライン会議に特有のことではありません。

姿を見せることによって、表情やジェスチャーによる一段高いコミュニケーションが可能となります。

そもそも、話し手が熱心に話している時、聞き手がちゃんと聞いているかどうか把握できないのでは困ります。

 

<背景の設定>

プライベートな空間を人目に晒すことが問題であれば、カメラをオフにするのではなく、背景を設定することも可能です。

ただし、テレビ番組や居酒屋の背景では不適切ですから、参加者全員で同じ背景にする、あるいは会社が作成した公式の背景を用いることも考えられます。

 

<リモートハラスメント(リモハラ)>

何とかして顔出しさせたいがために「おいこら!ちゃんと顔を見せろ!」などと暴言を吐くことや、顔出ししないメンバーの会議出席を拒否することは、リモハラとなりますので許されません。

また、他のメンバーが見聞きできる状態での叱責は、それ自体がパワハラとなります。

会議が終了してから、顔出ししなかった理由を確認し、これを踏まえて指導すべきです。

 

<解決社労士の視点から>

社員間で「常識」が対立する場合には、ルールを確定することによって解決します。

就業規則(テレワーク規程、オンライン会議規程)に、オンライン会議での顔出しについて規定を置きます。

顔出しが義務付けられているオンライン会議で、顔出しできない理由がある場合には、参加者から主催者に理由を明らかにして事前の許可を得るという規定も必要でしょう。

また、プライバシー保護の観点から、背景設定を禁止することは望ましくありません。

さらに、パワハラやセクハラについての注意規定を置くこともお勧めします。

2021/08/10|911文字

 

<法定の通院休暇>

妊婦自身やお腹の中の赤ちゃんの健康のため、妊婦は定期的に健康診査等を受ける必要があります。

そこで、妊婦や産後1年を経過していない妊産婦の労働者が、会社に申請すれば、母子健康法に定める保健指導または健康診査を受けるのに必要な「通院休暇」を取得できます。〔男女雇用機会均等法第12条〕

その回数は、原則として次の通りですが、医師等がこれと異なる指示をした場合には、指示された回数となります。

 妊娠23週まで  4週間に1回
 妊娠24週から35週まで  2週間に1回
 妊娠36週から出産まで  1週間に1回
 産後1年以内  医師等が指示する回数

 

<会社のルールとの関係>

通院休暇は法定の休暇です。

会社の就業規則に記載されていない場合、会社に就業規則が無い場合、前例が無い場合でも利用できます。

部下から通院休暇の利用について申し出があった場合に、上司が知識不足で断ってしまうと、会社の教育不足によるマタハラ(マタニティーハラスメント)になってしまいます。

また、社員に通院休暇の説明をする場合に、一定の年齢を超えた女性社員を対象外とすることは、セクハラになる恐れがあります。

 

<通院休暇の給与>

通院休暇を有給とするか無給とするかは、会社の規定によります。

就業規則が無かったり、就業規則に「労基法その他の法令の定めによる」という規定があるだけだったりすると、トラブルの元になりますから、予め就業規則に規定しておくことをお勧めします。

通院休暇は、勤務時間内に健康診断等受診のための時間を確保するという趣旨で設けられるものです。

事業主が一方的に年次有給休暇を通院休暇に充てるよう女性労働者に対して指示することは認められません。

ただし、通院休暇が無給とされる場合に、女性労働者が自ら希望して年次有給休暇を取得して通院することは問題ありません。

 

<通院休暇の申請>

申請は、原則として事前に行います。

出産予定日、次回通院日は決まり次第、事業主に知らせるのがマナーでしょう。

申請事項は、通院の日時、医療機関等の名称・所在地、妊娠週数などとなります。

事業主は、必要があればその女性労働者の了承を得て、診断書などの提出を求めることができます。

2021/08/09|723文字

 

<年金振込通知書>

年金振込通知書は、原則として年16月に郵送されます。

年度の最初となる4月分の年金は6月に支給されます。

6月が年度の最初の月分の振込月となることから、6月に年金振込通知書が郵送されるのです。

年金振込通知書は、2か月に1回の各支払期の年金振込額を知らせるものです。

2つ以上の年金を受けている人には、年金種類ごとの年金振込通知書が封書で届くこともあります。

振込額や振込口座に変更がなければ、6月から先の支払月には年金振込通知書は送付されません。

もちろん、年金振込通知書が送付されない月でも年金は支払われます。

なお、年金振込通知書に記載されている金額は、あくまでも予定額です。

各支払期に支払額の変更があれば、その都度、年金振込通知書が郵送されます。

 

<税金が急に高くなる場合>

年金振込通知書を見て、税金が急に高くなっていることを知り、驚いて年金事務所に問い合わせるというケースが見られます。

年金から差し引かれる税金(所得税および復興特別所得税)は、所得税法の規定により、支払う年金額から各種控除を行い、残りの額に税率を掛けた額となります。

年金から各種の控除を受けるためには、年金を受けている人に送られている扶養親族等申告書に必要事項を記入して、提出期限までに出すことになっています。

しかし、扶養親族等申告書が提出されない場合には、年金の支給額から25%に相当する公的年金等控除額を差し引いた額の10.21%が所得税および復興特別所得税となります。

昨年と比べて急に高額の税金が徴収されている場合、扶養親族等申告書の提出を忘れている可能性があります。

個別に原因を確認したい場合は、ねんきんダイヤルまたは年金事務所等にお問い合わせください。

2021/08/08|1,259文字

 

<自宅外勤務の発生>

会社が在宅勤務を命じたところ、社員の判断で自宅ではなく、友人宅、カフェ、ホテル、レンタルオフィスなどで業務を行っていたということがあります。

在宅勤務について、詳細な規程があれば、形式的にルール違反ということが多いでしょう。

しかし、大雑把なルールしか無いため、必ずしもルール違反とはいえず、迂闊に指導できないということもあります。

こうしたことでのトラブル発生を防ぐためのポイントを、検討したいと思います。

 

<在宅勤務の趣旨・目的>

在宅勤務を命じたのに、自宅で勤務しないからルール違反であり、指導や懲戒の対象となるというのは少し乱暴です。

やはり、在宅勤務を命じた趣旨・目的を軸に据えて考える必要があります。

まず、育児や介護との両立のために、本人からの希望もあって在宅勤務を命じた場合には、自宅よりも実家での勤務の方が現実的なこともあります。

自宅や実家以外での勤務であっても、配偶者の実家、兄弟の家、介護施設など、そこで業務をこなすことに合理性を見出しうる場合もあります。

つぎに、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、通勤や社内での密を避けるために在宅勤務を導入したのであれば、電車やバスで遠くに出かけて業務を行うのは趣旨に反します。

密になりやすい場所での勤務も同様です。

しかし、近所のホテルやレンタルオフィスであれば、多くの場合には、感染拡大防止の趣旨には反しないことが多いでしょう。

さらに、業務効率化の目的で在宅勤務が行われているのであれば、本人が業務に集中しやすい環境で勤務することが趣旨に適います。

たとえば、学生時代からカフェでの勉強が効率的であったという社員であれば、カフェでの勤務も趣旨に適うわけです。

 

<勤務場所の届出>

会社としては、社員がどこで業務を行っていようとも、きちんと業務が遂行されていれば基本的には問題ありません。

勤務場所は就業規則の必要記載事項でもないですし、労働条件通知書でも、雇入れ直後のものを記載すれば足りますし、将来の就業場所を含め網羅的に明示することも許されています。

しかし、勤務場所により情報漏洩のリスクが高まる、労災発生のリスクが高まる、容易に連絡がつかないなど就業管理が困難になるなどは困りものです。

これらを総合的に考えると、会社が社員に在宅勤務を指示した時点で、社員が自宅以外の場所を勤務場所としたいのであれば申し出てもらう必要がありますし、勤務場所を途中で変更する場合にも申告が必要です。

そして、その勤務場所が実質的な不都合をもたらすものであれば、会社から社員に対して、勤務場所の適正化を求めることができるようにしておくことも必要です。

これらのことから、在宅勤務を命じた場合に、社員が自宅とは異なる就業場所を希望するのであれば、会社への届出を義務付け、その就業場所が実質的な不都合をもたらすのであれば、会社は就業場所の変更を求めることができるルールとし、届出とは異なる場所での業務遂行や届出の懈怠に対しては、懲戒を規定しておくのが合理的だといえるでしょう。

2021/08/07|988文字

 

生理休暇を取るなはパワハラか?https://youtu.be/HlJnw71_t0E

 

<セクハラの公式定義>

セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、職場において、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、身体への不必要な接触など、意に反する性的な言動が行われ、拒否したことで不利益を受けたり、職場の環境が不快なものとなることをいいます。

「対価型セクハラ」とは、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けることをいいます。

「環境型セクハラ」とは、労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等その労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることをいいます。

 

<定義の修正>

上記の公式定義からは、実害のあったことがセクハラ成立の条件であるかのように思われます。

しかし、企業はセクハラ発生の防止に努めなければなりませんし、セクハラ行為を行った社員に対して懲戒処分を行いたいと思っても、会社が実害の発生を証明できなければ断念せざるを得ません。

このことから、私は「職場の人間関係や職場環境で性について平穏に過ごす自由を侵害しうる行為」という定義を推奨しています。

セクハラの加害者は「本人の受け取り方次第」という言い逃れをしたがりますが、この定義であれば、それはできない話です。

被害者の感情とは無関係に客観的に認定されますから。

 

<密室型セクハラの特殊性>

部屋の中に加害者と被害者だけがいる状態で行われたセクハラは、他のハラスメントと同様にその立証が極めて困難です。

セクハラがあったということが、真実であったとしても、これを客観的に認定するのは、ほとんど不可能ではないでしょうか。

反対に、セクハラをでっち上げることも簡単な状況であるといえます。

 

<企業の取るべき対応>

密室型セクハラを防止するためには、それが起こらないためのルールを設定し、社員に教育し、ルールの順守を求めることが必要です。

たとえば、男女1名ずつで会議室や応接室には入らない、自動車に乗車しないなどのルールです。

さらに、LGBTに配慮するのであれば、性別にかかわりなく密室に2名でこもることを禁止しなければなりません。

少し厳しいルールのような気もしますが、2名で密室に入る必要性は滅多に発生しません。

社員と会社を守るためには、必要なことではないでしょうか。

2021/08/06|830文字

 

社員が社内で、あるいは、お取引先やお客様からセクハラを受けたなら会社は毅然とした態度を示しましょう。

 

<ハラスメント対策>

セクハラはハラスメントの一種ですから、客観的に見れば人権侵害です。

そして、直接の相手だけではなく、その行為を見聞きした人にも恐怖感や不快感を与える形で被害を及ぼします。

ハラスメント対策の目的は、従業員の中から被害者も加害者も出さないことです。

対策の柱は、「ハラスメントは卑劣で卑怯な弱い者いじめ。絶対に許さない」という経営者の宣言と、社内での定義を明確にして社員教育を繰り返し行うことです。

その効果は、労働力の確保、労働環境の維持、生産性の向上、定着率の向上、応募者の増加、会社の評判の上昇と幅広いものです。

 

<形式面でのハラスメント対策>

目的は、会社がハラスメント防止に取り組んでいることの証拠を残しておくことです。

対策の柱は、就業規則などで定義を明確に文書化しておくこと、教育実績の保管、相談窓口の設置(できれば社外)です。

その効果は、被害者からの損害賠償請求額の減少などです。

 

<社員とは限らない加害者>

多くのセクハラは、社員同士で問題となります。

これを放置することは、会社にとって明らかにマイナスですから、積極的な対応をすることに躊躇する理由はありません。

しかし、お取引先の社員からのセクハラであれば、今後の取引関係を考えて、事なかれ主義に走ってしまう危険があります。

こうした場合には、社長自らお取引先に出向いてセクハラの事実を確認し、事実があれば取引関係を解消する毅然とした態度が必要です。

お取引先も理解を示さざるを得ませんし、社員は会社の態度に共感するでしょうし、こうした情報が外部に漏れても批判は生じにくいものです。

長い目で見れば、会社にとってのプラスが大きいといえます。

このことは、お客様からのセクハラについても、全く同じことが言えます。

むしろ、これを放置することは、他のお客様が離れていく原因となるのではないでしょうか。

2021/08/05|1,066文字

 

労災保険の勘違い(労働者編)https://youtu.be/0OzMsCnHgFI

労災保険の勘違い(事業主編)https://youtu.be/lBEXjn2TbSA

 

<業務災害認定の原則>

業務災害と認定されるには、業務遂行性と業務起因性の2つが必要です。

業務遂行性とは、労働契約関係が認められたうえで発生した災害であることをいいます。

業務起因性とは、業務と病気や怪我との間に因果関係があることをいいます。

ですから、業務とは無関係な私傷病による事故は、業務災害とは認められません。

 

<業務災害の限界事例>

事務所に1人でいる時に意識を失い、後から入室してきた別の従業員に発見されて、救急搬送されたケースがありました。

こうした場合の殆どは、業務とは無関係な病気によるものです。

しかし病院の検査で、外傷性くも膜下出血と診断され、頭に大きなコブも発見されました。

この診断結果を受けて、事務所内を確認したところ、机の上にFAXで受信した書類が置いてあり、FAXのコードが抜けかけていたことが分かりました。

この時点で、FAXのコードに足を取られ、転んで頭を打ったことにより、外傷性くも膜下出血を発症したことが疑われました。

幸いにも意識を回復し、こうした事実が正しいことが確認されました。

結局、業務災害と認定されました。

 

<通勤災害認定の原則>

通勤災害と認定されるには、通勤によって被災したこと、つまり、通勤に潜む危険が現実化して被災したことが必要です。

通勤ではない移動中のケガや、通勤に伴う危険とは無関係に、私傷病が原因でケガをした場合には、通勤災害と認定されません。

 

<通勤災害の限界事例>

会社に向かうため、バスに乗ろうとしてステップに足を掛けたところで倒れ、頭を打ち意識を失って救急搬送されたケースがありました。

頭を打って意識を失った場合、身体の半分以上がバスに入っていた場合にはバス会社の責任が発生しうるのです。

バス会社に状況の説明を求めたのですが、運転手も他の乗客もよくみていなかったという回答でした。

後日、病院の診断結果が出ました。

たまたまバスに乗ろうとしたタイミングで、貧血を起こして意識を失い、そのまま倒れて頭を打ったということでした。

結局、通勤災害ではないと認定されました。

 

<就業規則との関係で>

就業規則によりバイク通勤が禁止されている会社の従業員が、バイクで出勤中に転倒してケガをした場合、会社に届けていた通勤経路とは別のルートで帰宅中にケガをした場合、これらは就業規則違反であり、懲戒の対象となることもあります。

しかし、これはあくまでも社内的な話です。

労災保険は国の制度ですから、原則として、各企業の就業規則の内容に左右されません。

就業規則違反の事実は捨象して、労災の成否を検討しましょう。

2021/08/04|2,124文字

 

<働き方改革>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

 社員は人間ですから、ある程度の時間働き続ければ肉体的精神的疲労が蓄積して効率が低下します。

休憩や休暇によってリフレッシュできれば、体力と気力が回復して生産性が高まります。

適切な労働時間で働き、ほどよく休暇を取得することは、仕事に対する社員の意識やモチベーションを高めるとともに、業務効率の向上にプラスの効果が期待されます。 

これに対し、長時間労働や休暇が取れない生活が常態化すれば、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性も高まりますし生産性は低下します。

また、離職リスクの上昇や、企業イメージの低下など、さまざまな問題を生じることになります。

社員のためだけでなく、企業経営の観点からも、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進が得策です。

社員の能力がより発揮されやすい労働環境、労働条件、勤務体系を整備することは、企業全体としての生産性を向上させ、収益の拡大ひいては企業の成長・発展につなげることができます。

 

<長時間労働抑制のための具体的施策リスト>

厚生労働省から「働き方・休み方改善指標」が公表されています。

この中から、長時間労働抑制に向けた働き方の改善を進めるための具体的な施策を抽出すると、次のようになります。

 

項目1:方針・目標の明確化

□経営トップによるメッセージの発信

□経営や人事の方針として長時間労働の抑制を明文化

□全社・部署・個人等での労働時間、残業時間等に関する数値目標の設定

 

項目2:改善推進の体制づくり

□長時間労働の抑制に向けた社内体制の明確化

□労働時間に関する相談窓口の設置

□長時間労働の抑制に関する労使の話し合いの機会の設定

 

項目3:改善促進の制度化

□労働時間・就労場所を柔軟にする制度( フレックスタイム制、朝型の働き方、短時間勤務制度、テレワーク制度、在宅勤務制度等)の導入

□業務繁閑に応じて営業時間を設定

□ノー残業デー、ノー残業ウィーク等、定時退社期間を設定

□勤務間インターバル制度を導入

 

項目4:改善促進のルール化

□残業の多い部下を持つ管理職への指導、改善促進

□部下の長時間労働の抑制を管理職の人事考課に盛り込む

□残業を行う際の手続を厳格化

 

項目5:意識改善

□長時間労働の抑制に関する社員向けや管理職向けの教育・研修を実施

□長時間労働抑制のための周知・啓発

□退勤時刻の終業呼びかけ、強制消灯

 

項目6:情報提供・相談

□労働時間・残業時間を社員各自に通知

□36協定による労働時間の制限を周知

□労働時間制度紹介のパンフレット等を配布

□定期健康診断以外での長時間労働やストレスに関するカウンセリング機会等を提供

 

項目7:仕事の進め方改善

□長時間労働の抑制を目的とした業務プロセスの見直し

□業務計画、要員計画、業務内容の見直し

□長時間労働の抑制を目的とした取引先との関係見直し

 

項目8:実態把握・管理

□社員の働き方や労働時間に関する意識や意向の定期的な把握

□タイムカードやICカード等の客観的な方法により労働時間を管理・把握

□管理職やみなし労働・裁量労働制等の適用者について労働時間を把握

 

これらは、あくまでもチェックリストですから、実際に施策を進めるにあたっては、この順番で進めるわけではありません。

会社の実情に応じて、順番を考えなければなりませんが、項目1:方針・目標の明確化は最優先でしょう。

次に行うべきは、多くの会社では、項目7:仕事の進め方改善だと思います。

仕事のムリ・ムダ・ムラを排除して、本当に必要な仕事だけを抽出する必要があります。

仕事は減らず、社員は減少しているのに、労働時間削減など無理な話です。

習慣的に行っている仕事の中で必要性の低い仕事をやめる、他部署とダブっている仕事はより得意な部署がまとめて行う、会議はやめて誰かに一任する、あるいは、23人の協議に委ねるなど、仕事の分量を減らす工夫も大事です。

 

<解決社労士の視点から>

いきなり労働時間を減らすと言われても、社員ひとり一人の都合があります。

周囲の社員に気を遣って、やむなくダラダラ残業をして、終業時間を合わせていた社員なら、長時間労働抑制は大助かりです。

会社にとっても、人件費の削減となりますから利害が一致します。

それでも、残業代を稼いで生活の糧にしていた社員にとっては深刻です。

高級な外車を買うために残業代を稼いでいたのなら、諦めてもらうことは難しくないのかも知れません。

しかし、実家の親に仕送りをするためであれば、転職や副業を考えるほど深刻な話になりかねません。

また、自分の仕事の出来栄えにこだわりを持っている社員は、「残業代は要らないから、思う存分、残業させてくれ」と思っているかもしれません。

企画やデザインの仕事をしている人には多いパターンです。

そこまで考えて、労働時間の削減をするのはむずかしい、時間と手間をかけられないというのであれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ご用命ください。

2021/08/03|753文字

 

社長など法人の代表者が替わったからといって、雇用契約を交わし直して、労働条件通知書や雇用契約書を作り直す必要はありません。

 

<社長個人が雇う場合>

社長宅で働くお手伝いさんを、社長個人が雇うのであれば、雇用契約の当事者は社長個人とお手伝いさんということになります。

この社長が会長になったとしても、契約の当事者は会長個人とお手伝いさんのままです。

この場合、雇用契約書には社長や会長といった肩書を使わず、契約書は個人名で作成します。

 

<法人とは>

法人というのは、一定の社会的活動を営む組織体で、法律により特に権利や義務の主体となる能力を認められたものをいいます。

本来、権利や義務の主体となるのは個人です。

そして一定の条件を満たした組織だけが、法律によって特別に権利や義務の主体となることを認められます。

法律上、権利や義務の主体となることのできる資格を、法人格(法律上の人格)と呼びます。

法人格を持つのは、個人(自然人)と法人です。

 

<法人の活動>

法人は、生身の人間ではありませんから身体もありません。

その活動は代表者(代表機関)の行為によって行われます。

そして、代表者が法人の目的の範囲内で行った行為の効果は、直接法人に帰属します。

また、代表者が事業遂行上、他人に与えた損害については法人が賠償の義務を負います。

法人は解散によって法人格を失います。

 

<法人との契約>

こうして、個人が法人と契約する場合には、法人の代表者と契約を交わす形をとるのですが、その効果は直接法人に帰属します。

つまり、法人の代表者が動いて、法人に効果を帰属させるわけです。

ですから、雇用契約を交わした後で、社長などの代表者が交代した場合でも、法人そのものが変わってしまうわけでないので、雇用契約の効果は失われず、その性質も変わらないのです。

2021/08/02|962文字

 

<調査の趣旨>

申告申請の内容が適正であるかを確認するため、毎年度、一定数の事業主が抽出され訪問調査が行われます。

これには、納付金申告を行っていない事業主の申告義務の有無確認が含まれます。

すべての事業主を対象として、毎年調査することはできないため、数年に分けて行っています。

事業主から見れば、約3年に1回調査が入るということになります。

この調査は、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づくものです。〔障害者雇用促進法第52条〕

資料の提出拒否や虚偽の報告等は、罰せられることがありますのでご注意ください。〔障害者雇用促進法第86条〕

 

<事業所調査の概要>

原則として、申告申請年度を含む直近3か年の各月における常用雇用労働者数や雇用障害者の雇用を裏付ける資料を確認します。

●常用雇用労働者の総数確認

・常用雇用労働者の範囲

・法定雇用障害者数の算定基礎となる労働者数

●雇用障害者の確認

・障害の種類と程度

(障害者手帳等の写しは退職後も3年間は保管が必要です)

・雇用関係と労働時間数

 

<調査対象となる資料>

・全労働者の労働者名簿、賃金台帳、雇用契約書等

(これらは労働基準法により罰則付きで義務付けられています)

・全労働者の勤務(就労)状況が確認できる出勤簿、タイムカード、勤怠表等

・その他、労働者の雇用に関する資料

 

<調査結果による対応>

調査の結果に基づき、次のような手続がとられます。

●申告した納付金の額が過少であった場合

独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構が納付金の額を決定し、納入の告知を行います。

この場合、その納付すべき額に10%を乗じて得た額の追徴金が加算されます。

●申告した納付金の額が過大であった場合

独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構が納付金の額を決定し、すでに納付した納付金の額のうち、過大となっている額がある場合には、未納の納付金に充当し、なお残余があるとき又は未納の納付金がないときは還付します。

●支給を受けた調整金等の額が過大であった場合

対象事業主は、最大過去10年に遡って支給額の全部または一部を返還することになります。

 

最新情報は、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 のページでご確認ください。

独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 (jeed.go.jp)

2021/08/01|1,155文字

 

年金手帳の再発行https://youtu.be/VFkSxQxs0qo

 

<受給資格期間>

年金を受ける場合は、保険料を納めた期間や加入者であった期間等の合計が一定年数以上必要です。

この年金を受けるために必要な加入期間を受給資格期間といいます。

日本の公的年金では、すべての人に支給される老齢基礎年金の受給資格期間である10年間が基本になります。

国民年金だけでなく、厚生年金、共済組合の加入期間もすべて含まれます。

また、年金額には反映されない合算対象期間や保険料が免除された期間も、受給資格期間になります。

 

<受給権>

この受給資格期間を満たしていることを前提に、老齢年金を受給できるのは、加入していた国民年金・厚生年金などの区分や、性別・生年月日に応じて決められた支給開始年齢に達してからです。

このように受給開始年齢に達したときに、受給権を取得することになります。

 

<法律上は誕生日の前日に歳をとる>

私たちは日常の生活の中では、誕生日に1つ歳をとるものと考えています。

しかし法律上は、誕生日の前日の「午後12時」(2400秒)に歳をとります。

「前日午後12時」と「当日午前0時」は時刻としては同じですが、日付は違うという屁理屈です。

学校でも、42日生まれから翌年41日生まれまでを1学年としています。41日から翌年331日までの間に○歳になる生徒の集団ということです。

これはおそらく「誕生日に年をとる」だと、229日生まれの人は、4年に1回しか歳をとらないので不都合だからでしょう。

2月29日生まれの人は、前日の228日に歳をとることにして救済しているのだと思います。

 

<いつの分から>

たとえば65歳で受給権を取得する場合には、65歳になった月の翌月分から老齢年金をもらえます。

一般には、誕生月の翌月分からですが、各月の1日生まれの人は、前月の末日に65歳になりますから、例外的に65歳の誕生月の分から老齢年金をもらえます。

 

<いつもらえるか>

2月分・3月分は、415日に支給されます。

4月分・5月分は、615日に支給されます。

6月分・7月分は、815日に支給されます。

8月分・9月分は、1015日に支給されます。

10月分・11月分は、1215日に支給されます。

12月分・翌1月分は、215日に支給されます。

15日が金融機関の営業日でなければ、その直前の営業日に支給されます。

しかし、老齢年金をもらうには、年金事務所などで手続をする必要があります。

この手続が遅れれば、その分だけ年金を受け取るのが遅くなります。

また、年金を受け取る権利は、5年間で時効により消滅するのが原則です。

 

年金の受給を繰り上げたり繰り下げたりする制度もあります。

気になることは、お近くの年金事務所でご確認ください。

ただし、大変込み合いますから、事前に電話予約することを強くお勧めします。

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