人を雇うときのルール ― 定着率アップと応募者増加のために

2022/12/17|1,551文字

 

<労働条件の明示>

人を雇うときには、「使用者」が労働者に労働条件を明示することが必要です。

労働契約は口約束でも成立するのですが、特に重要な項目については、口約束だけではなく、きちんと書面を交付する必要があります。〔労働基準法第15条〕

書面の名称としては、労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書などが一般的です。

ここで「使用者」とは、事業主または事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいいます。

顧問社労士も使用者に含まれますから、使用者としての責任を負っています。

 

<書面の交付による明示が必要な事項>

・契約はいつまでか(労働契約の期間に関すること)

期間の定めがある契約の更新についての決まり(更新があるかどうか、更新する場合の判断のしかたなど)

・どこでどんな仕事をするのか(仕事をする場所、仕事の内容)

・仕事の時間や休みはどうなっているのか(仕事の始めと終わりの時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、就業時転換〔交替制〕勤務のローテーションなど)

・賃金をどのように支払うのか(賃金の決定、計算と支払いの方法、締切りと支払いの時期)

・辞めるときのきまり(退職に関すること(解雇の事由を含む))

※労働契約を締結するときに、期間を定める場合と、期間を定めない場合があります。一般に、正社員は長期雇用を前提として特に期間を定めず、アルバイトやパートタイマーなど短時間労働者は期間の定めがあることが多いです。

※これら以外の労働契約の内容についても、労働者と使用者はできる限り書面で確認する必要があると定められています。〔労働契約法第4条第2項〕

 

<労働契約の禁止事項>

労働法では、労働者が不当に会社に拘束されることのないように、労働契約を結ぶときに、会社が契約に盛り込んではならないことも定められています。

その主なものとしては、次の例があります。

・労働者が労働契約に違反した場合に違約金を支払わせることや、その額をあらかじめ決めておくこと。〔労働基準法第16条〕

たとえば、「1年未満で会社を退職したときは、ペナルティとして罰金10万円」「会社の備品を壊したら1万円」などとあらかじめ決めてはなりません。

これはあらかじめ賠償額について定めておくことを禁止するもので、労働者が故意や不注意で、現実に会社に損害を与えてしまった場合に損害賠償請求を免れるという訳ではありません。

・労働することを条件として労働者にお金を前貸しし、毎月の給料から一方的に天引きする形で返済させること。〔労働基準法第17条〕

労働者が会社からの借金のために、辞めたくても辞められなくなるのを防止するためのものです。

・労働者に強制的に会社にお金を積み立てさせること〔労働基準法第18条〕

社員旅行費など労働者の福祉のためでも、強制的に積み立てさせることは、その理由に関係なく禁止されています。

ただし、社内預金制度がある場合など、労働者の意思に基づいて、会社に賃金の一部を委託することは厳格な法定の要件のもと許されています。

 

<採用内定>

採用内定により労働契約が成立したと認められる場合には、採用内定取消しは解雇に当たるとされています。

したがって、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上認められない場合は、採用内定取消しは無効となります。〔労働契約法第16条〕

内定取消しが認められる場合には、通常の解雇と同様、労働基準法第20条(解雇の予告)、第22条(退職時等の証明)などの規定が適用されますので、使用者は解雇予告など解雇手続きを適正に行う必要があります。

採用内定者が内定取消しの理由について証明書を請求した場合には、速やかにこれを交付する義務もあります。

 

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