2022/11/15|1,187文字
<雇用保険の求職者給付>
雇用保険では、労働者が失業した場合に必要な給付が行われます。
その代表は、「失業手当」と呼ばれることが多い求職者給付です。
一般にはあまり知られていませんが、この求職者給付は、仕事を辞めた時(離職時)の年齢により2種類に区分されています。
<65歳未満の基本手当>
離職時の年齢が65歳未満の一般の加入者(一般被保険者)は、離職時に一定の条件を満たしていれば、ハローワークで手続きすることによって、求職者給付を受けることができます。
これを基本手当といいます。
一定の条件というのは、離職日前2年間に雇用保険加入期間が12か月以上あることです(離職理由によっては1年間に6か月以上の例外あり)。
この場合、離職の理由、離職時の年齢、雇用保険の加入期間(算定基礎期間)によって、所定の給付日数(90日~360日)が決まり、1日につき何円という計算で、定期的に給付を受けます(原則として4週間ごと)。
<65歳以上の高年齢求職者給付金>
65歳以上の加入者(高年齢被保険者)が離職した場合には、この求職者給付が一時金で支給されます。
これを高年齢求職者給付金といいます。
これを受給する条件は、離職日前1年間に雇用保険加入期間が6か月以上あることです。
この場合、加入期間が1年未満なら30日、1年以上であれば50日の給付日数に相当する金額の給付金が、一括で支給されます。
しかも、年金との併給ができます。
<循環的離職者の問題>
循環的離職者とは、「過去3年以内に3回以上同一の事業所に連続して就職し、かつ、その間に1回でも求職者給付を受けたことがある者」をいいます。
循環的離職者が、同一の事業所に就職した場合には、雇用保険の受給資格決定前から再雇用予約があったものとして、本人だけでなく事業主も共謀して不正受給したものとされる場合があります。
高年齢求職者給付金では、受給の条件が、「雇用保険加入期間が6か月」と比較的短期間であるため、こうしたことが発生しやすいといえます。
<法改正による問題の拡大>
雇用保険に加入している労働者は、65歳を迎えても雇用保険に加入したままです。
そして、65歳に達してから離職してしまうと、再就職しても雇用保険に加入しないというのが法改正前のルールでした。
ところが、平成29(2017)年1月1日に雇用保険法が改正され、65歳以上で再就職しても、一定の条件を満たせば雇用保険に加入するルールに変更されたのです。
これによって、以前は一生に1回しか受けられなかった高年齢求職者給付金を、何回も受けられるようになったのです。
こうして、一般の加入者に見られた循環的離職者の問題は、むしろ65歳以上の加入者について大きくなってしまいました。
受給資格や雇用保険への加入条件などについては、多数の例外があります。
詳細はお近くのハローワークでご確認ください。