大企業で男女間賃金格差の公表義務化

2022/07/13|1,405文字

 

<賃金格差の公表義務化>

大企業に男女の賃金の差異の情報公表が義務化されます。

令和4(2022)年7月8日、厚生労働省が女性活躍推進法の省令・告示を改正し同日施行しました。

今回の改正により、女性の活躍に関する情報公表項目として「男女の賃金の差異」が追加され、常用労働者301人以上の大企業に対し、情報公表が義務化されます。

 

<実施時期>

女性活躍推進法に基づく男女の賃金の差異の開示義務化は「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画~人・技術・スタートアップへの投資の実現~」(令和4年6月7日閣議決定)で、今夏の制度改正実施・施行が決まっていました。

常用労働者301人以上の事業主には、令和4(2022)年7月8日以降に終了する事業年度の次の事業年度の開始日からおおむね3か月以内に、直近の男女の賃金の差異の実績を情報公表することが義務付けられます。

事業年度が4月から翌年3月までの場合、令和4(2022)年4月から令和5(2023)年3月までの実績を、おおむね同年6月末までに公表しなければなりません。

 

<公表内容>

「男女の賃金の差異」は、男性労働者の賃金の平均に対する女性労働者の賃金の平均を割合(パーセント)で示します。

「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の区分での公表が必要です。

「正規雇用労働者」から社外への出向者は除かれます。

賃金から通勤手当等は除かれます。

 

<「説明欄」の有効活用>

求職者等に対して、比較可能な企業情報を提供するという目的から、「男女の賃金の差異」は、すべての事業主が共通の計算方法で数値を公表する必要があります。

その上で、「男女の賃金の差異」の数値だけでは伝えきれない自社の実情を説明するため、事業主の任意で、より詳細な情報や補足的な情報を公表することもできます。

自社の女性活躍に関する状況を、求職者等に正しく理解してもらうためにも、『説明欄』を有効活用し、追加的な情報の公表をしましょう。

例としては、次のような情報の公表が考えられます。

・女性活躍推進の観点から、女性の新卒採用を強化した結果、前年と比べて相対的に賃金水準の低い女性労働者が増え、男女賃金格差が前事業年度よりも拡大した。

・より詳細な雇用管理区分(正規雇用労働者を正社員、勤務地限定正社員、短時間正社員に区分する等)があり、属性(勤続年数、役職等)が同じ男女労働者の間での賃金の差異は大きくない。

・「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の区分での賃金についてその時間単価の格差は小さい。

・時系列で男女の賃金の差異を公表し、複数年度にわたる変化を示すことで、賃金格差解消に向かっている傾向を明らかにする。

 

<解決社労士の視点から>

常時雇用する労働者が101人以上300人以下の事業主は、16項目から任意の1項目以上の情報公表が必要とされています。

ここで、「男女の賃金の差異」を選択しなければ、賃金格差の公表義務を負わないことになります。

しかし他の制度同様に、一定の期間を経て、101人以上300人以下の事業主にも必須項目とされるようになり、あるいは51人以上の事業主にも公表義務が課されるなどの省令・告示改正も予想されます。

また、公表義務の有無にかかわらず、男女賃金格差の縮小がリクルートの面だけでなく、女性労働者のモチベーションを向上させ、企業の評判を高めることに役立つことは明らかでしょう。

 

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