平均賃金が使われる場合と使われない場合

2022/12/14|1,134文字

 

<平均賃金>

平均賃金というのは、賃金の相場などという意味ではなく、労働基準法などで定められている手当や補償、減給処分の限度額などを個人別に算定するときなどの基準となる金額です。

原則として事由の発生した日の前日までの3か月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で割った金額です。〔労働基準法第12条〕

賃金の締日がある場合には、事由の発生した日の直前の締日までの3か月について、通勤手当、皆勤手当、時間外手当など諸手当を含み税金などの控除をする前の額(賃金総額)の合計額を算出します。

これを3か月の暦上の日数で割って、銭(1円の100分の1)未満を切り捨てます。

例外として、賃金が日額や出来高給で決められ労働日数が少ない場合には、総額を労働日数で割った金額の6割に当たる額が高い場合にはその額を適用します(最低保障額)。

 

<平均賃金が使われるケース>

労働者を解雇する場合の解雇予告手当、使用者の都合により休業させる場合に支払う休業手当、年次有給休暇を取得した日について平均賃金で支払う場合の賃金、減給制裁の限度額などで使われます。

解雇予告手当は、所定労働日数や出勤予定日とは無関係に、平均賃金の原則として30日分を支払います。〔労働基準法第20条第1項〕

休業手当は、たとえば使用者の都合で金曜日から月曜日までの4日間休業する場合、元々土日が休日の労働者に対しては、金曜日と月曜日の2日分について、平均賃金の6割以上を支払うことになります。〔労働基準法第26条〕

年次有給休暇を取得した日について、平均賃金で支払うこともできます。〔労基法第39条第7項〕

減給の制裁は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならないとされています。〔労働基準法第91条〕

この他、労災保険の休業(補償)給付は、給付基礎日額の60%ですが、この給付基礎日額の実体は平均賃金です。

 

<平均賃金とは違う計算方法>

失業手当(雇用保険の基本手当)が支給される1日当たりの金額のことを「基本手当日額」と言います。

この「基本手当日額」を求める計算式は、「離職する直前の6か月間に支払われた賃金の合計金額を、180で割った金額(賃金日額)の、およそ80%~45%」になります。

期間が6か月であることと、ざっくり180日で割ることが、平均賃金とは異なっています。

また、健康保険の傷病手当金や出産手当金の計算には、「支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額」が使われます。

1日あたりの支給額は、これを30日で割って、3分の2倍した金額となります。

賃金の実額ではなく、標準報酬月額を基準とする点で、平均賃金とは考え方が異なっています。

 

PAGE TOP