アウトソーシングによる解雇の発生

2022/09/10|1,636文字

 

<アウトソーシング>

アウトソーシングとは、中核事業に経営資源を集中投入することを目的として、中核事業以外の一部を外部に委託することをいいます。

たとえば、経理部門の業務を会計事務所に委託する、人事部門の業務を社会保険労務士事務所に委託するなどです。

メリットとしては、頻繁な法改正にも専門的に対応し適法運営が可能であることや、人材の採用・教育を含めた人件費等のコストを削減できることなどがあります。

 

<余剰人員の発生>

人材不足で緊急の必要に迫られてアウトソーシングに踏み切ったという場合には、人手が余るということはありません。

しかし、経営の合理化やコンプライアンスの強化のために、政策的にアウトソーシングを導入した場合には、現に関連業務を行っている社員の仕事が奪われることになります。

これは、その社員に全く落ち度のないことですから、会社は安易に解雇することはできません。

 

<整理解雇の有効要件>

整理解雇は、会社の経営上の理由により行う解雇です。

経営不振に陥った会社で行われるイメージですが、経営合理化を果たすために行われるものが含まれます。

整理解雇の有効要件としては、最高裁判所が「整理解雇の4要素」を示しています。

総合的に見て、これらの要件を満たしていないと、解雇権の濫用となり無効となる可能性があります。

その4要素とは次の4つです。

1.人員削減の必要性が高いこと

2.解雇回避の努力が尽くされていること

3.解雇対象者の人選に合理性が認められること

4.労働者への説明など適正な手続きが行われていること

これらはそれぞれに厳格な基準があるわけではなく、また、すべての基準を満たしていなければ解雇が無効になるということではありません。

裁判では、4要素を総合的に見て、一定の水準を上回っていれば、整理解雇が有効とされています。

 

<1.人員削減の必要性が高いこと>

業務の一部を外部に委託するのですから、社内の担当社員の業務は減少します。

人によっては業務が全くなくなってしまい、社内失業の状態になることもあります。

経営合理化のために、人員削減の必要性が高いことは認められやすいでしょう。

 

<2.解雇回避の努力が尽くされていること>

社会保険の手続きや給与計算などを担当している人事部門の社員は、社会保険労務士事務所への委託によって仕事を失うかもしれません。

しかし、その社員はその仕事しかできないわけではありません。

人事部門内でも、採用や教育、人事制度の構築・改善の業務を担当することはできるでしょうし、総務部門の仕事をこなすこともできるでしょう。

アウトソーシングによって無くなった仕事の担当者を解雇するのではなくて、他の仕事を担当させたり、他部署に異動させたりすることを検討しなければなりません。

もっとも、本人がこれを拒めば、合意退職に至る場合もあります。

 

<3.解雇対象者の人選に合理性が認められること>

たまたまアウトソーシングされた業務を担当していたから解雇対象者に選ばれたというのは不合理です。

もっとも、その業務以外は行わないという条件で働いている従業員がいれば、その人が優先的に選定されることにも合理性があります。

全社的に見て、勤務成績や勤務態度の面で客観的に問題のある社員について、優先的に解雇対象とすることを検討すべきでしょう。

 

<4.労働者への説明など適正な手続きが行われていること>

十分な期間にわたって、段階的に説明するのが望ましいのです。

まず、会社を取り巻く環境から経営の合理化が必要になっていることを説明します。

次に、アウトソーシングを導入する方針であることを説明します。

さらに、対象業務やスケジュールについて説明します。スケジュールの中には、社員面談や希望退職者の募集、最終的な退職予定日などが含まれます。

適正な手続きというのは、解雇予告手当の支払いなどを指していますが、むしろ説明義務を十分に尽くしているかという点が、整理解雇の有効性判断の大きな要素とされています。

 

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