社会保険や労災保険と就業規則

2022/04/30|1,211文字

 

ブラック就業規則

 

<就業規則の内容>

企業の就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

 

1.従業員の労働条件の共通部分

2.職場の規律

3.法令に定められた労働者の権利・義務

 

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。また、1つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<1.従業員の労働条件の共通部分>

「生理日の就業が困難な女子社員が休暇を申請した場合は、無給休暇とします」という規定がある場合、これは女子社員に共通の労働条件です。

有給にするか無給にするかは会社が決めて就業規則に規定します。

もっとも、生理休暇そのものは、労働基準法に定められた権利です。

また、「休暇をとる場合は、事前に所定用紙で上長経由会社に届け出て、許可を受けなければなりません」という規定がある場合、これは全社員に共通の労働条件です。

用紙で届け出るか、口頭か、ネットかなどは会社が決めます。

直接人事部門に届け出るのか、上長に届け出るのかも会社が決めます。

こうした従業員の労働条件の共通部分は、法令に違反しない限り、会社が自由に決めています。

 

<3.法令に定められた労働者の権利・義務>

年次有給休暇や残業など所定外労働に対する割増賃金は、労働基準法に定められた労働者の権利です。

ただ、労働基準法は最低限の基準を定めていますから、基準を上回る日数の年次有給休暇を付与し、基準を上回る割増率の残業手当を就業規則に定めることもできます。

ここは法令通りではなくても良いわけです。

使用者は、法令等の周知義務を負っています。〔労働基準法第106条第1項〕

これを就業規則とは別に周知するのは大変ですし、法令の基準を上回る運用をする場合もありますから、まとめて就業規則に示しておくのが便利なのです。

もっとも、育児休業の対象者に対しては具体的な制度の内容、会社での手続を個別に説明し、育児休業を取得する/しないの意向を確認する必要がありますから、就業規則に示しておくだけでは足りません。

 

<社会保険や労災保険と就業規則>

社会保険(健康保険・厚生年金保険)や雇用保険の加入基準や運用は、法令に規定されています。

会社がこれとは異なる内容を定めても無効です。

また、労災保険は法令により従業員の全員が加入しますから、「臨時アルバイトは加入しない」などの規定を置いても無効です。

ただ、法令の内容とは別に、会社がプラスアルファの給付をするような福利厚生の制度を定めることは自由です。

「アルバイトでも、就業規則に定めれば社会保険に入れますか?労災保険はどうですか?」といった疑問を目にすることがあります。

しかし、就業規則の規定とは無関係に、法令の基準によって加入することになるわけです。

 

就業規則の各規定と労働基準法など法令との関係は、判別がむずかしいと思います。

就業規則の作成、変更、解釈について正確なところは、専門家である社会保険労務士にご相談ください。

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