2022/04/17|1,092文字
<年次有給休暇の付与基準>
年次有給休暇の付与について定める労働基準法第39条第2項の末尾には、「出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、(中略)有給休暇を与えることを要しない」と書かれています。
全労働日に対する出勤日の割合は、出勤率と呼ばれ、これが8割未満であれば年次有給休暇を付与しなくても良いということです。
<出勤率が基準に満たない社員の状況>
出勤率が8割未満ということは、年次有給休暇をフルに取得したうえ、さらに2割の欠勤が発生している状態だと考えられます。
時々遊びに行きたくなって、繰り返し仕事を休んでいたら、欠勤が2割を超えてしまったなどということは、そうそうあるものではないでしょう。
学生なら学業の都合で、主婦なら家族の都合で、やむを得ず欠勤を重ねてしまったというケースが多いのではないでしょうか。
<正しい出勤率の計算>
年次有給休暇の付与基準に使われる出勤率の計算は、実際には複雑です。
単純に考えると、出勤日数 ÷ 全労働日 ということになりますが、これには、休業しても出勤したものと取り扱う例外と、全労働日から除かれる例外があります。
【出勤したものと取り扱う日数】
(1)業務上の負傷・疾病等により療養のため休業した日
(2)産前産後の女性が労働基準法第65条の規定により休業した日 (3)育児・介護休業法に基づき育児休業または介護休業した日 (4)年次有給休暇を取得した日 |
【全労働日から除外される日数】
(1)使用者の責に帰すべき事由によって休業した日
(2)正当なストライキその他の正当な争議行為により労務が全くなされなかった日 (3)休日労働させた日 (4)法定外の休日等で就業規則等で休日とされる日等であって労働させた日 |
こうした例外をきちんと加味して出勤率を計算することは、意外と手間がかかるうえ間違えやすいものです。
<会社独自の制度として>
労働基準法は、「出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、(中略)有給休暇を与えることを要しない」と規定しているのであって、「与えてはならない」とは規定していません。
普通に出勤していれば、そうそう出勤率が8割を切ることはありません。
たまに見られるのは、週5日出勤で契約したアルバイトが、実際には週4日のシフトで働いていたような場合です。
こうした場合には、勤務の実態が変更するたびに、雇用契約書を交わし直すのが確実なのですが、実際にはできていないことがあります。
いろいろと手間を考えてみると、出勤率はノーチェックで8割以上あるものとして、年次有給休暇を付与することにも十分な合理性があるといえるでしょう。