2022/04/08|979文字
評価パワハラ
<現物支給>
現物支給とは、物品やサービスなど金銭以外の経済的利益で、賃金が支給されることをいいます。
賃金の一部を、会社の商品や割引券に換算して支給するような場合を指します。
通勤手当の代わりに、定期券を支給するのも現物支給です。
食事や栄養ドリンクも、賃金の代わりに支給されるのであれば現物支給になります。
<賃金支払の5原則>
賃金の支払については、労働基準法第24条に規定があり、この中に賃金支払の5原則が含まれています。
通貨払の原則、直接払の原則、全額払の原則、毎月1回以上払の原則、一定期日払の原則の5つです。
このうち通貨払の原則は、日本のお金で支払うという原則です。
<現物支給が許される場合>
法令や厚生労働省令によって、現物支給が許されている場合があります。
しかし、たとえば本人が希望して、退職金を銀行振出し小切手で受け取るような例外的なものに限られています。
この他、労働組合のある会社では、労働組合と会社とが現物支給についての労働協約を交わせば、その労働協約の適用を受ける労働者に限って、労働協約の範囲内での現物支給が許されます。
労働者の過半数を代表する者と会社との間で交わされる労使協定は、名称は似ていますが労働協約ではありません。
労働組合が無ければ労働協約は交わせませんから、現物支給もできないということになります。
<プラスアルファなら>
ただ労働基準法は、「賃金の代わりに」物品やサービスなどで支払うことを禁止しているのであって、「賃金とは別に」物品やサービスなどの経済的利益を提供することは禁止していません。
たとえば、一定の時刻を超えて残業している社員に、「賃金とは別に」夜食と栄養ドリンクを支給するような場合には、労働基準法違反にはなりません。
また、就業規則などで定められた賞与とは別に、会社の商品やサービスを社員に与えて親しんでもらうなども、労働基準法違反になりません。
会社の業績が悪いので、賞与支給額は減額するけれども、その減額分を会社の商品やサービスで支給するというのは現物支給となります。
しかし、賞与支給額が減額され、これとは別に、商品の不良在庫を全従業員に10万円分ずつ支給するというのであれば、現物支給とは言い難いでしょう。
ただし、ケースによっては、所得税法上の「現物給与」とされ課税対象となりうるので、こちらの確認が必要です。