労務不能の判断基準

2022/03/25|1,255文字

 

労災で休業した時の最初の3日間の賃金補償

 

<労務不能が条件となる保険給付>

健康保険の傷病手当金や、労災保険の休業(補償)給付は、ケガや病気で労務不能であることが受給の条件となります。

 

<傷病手当金の受給条件>

以下の条件をすべて満たすときは、「傷病手当金」を受けることができます。

保険加入者(被保険者)のみが対象ですから、扶養家族は対象外です。

 

・業務外かつ通勤途上外の病気やケガで療養中であること。

健康保険の制度ですから、美容整形手術など健康保険の給付対象とならない治療のための療養は含まれません。

・療養のための労務不能であること。

・4日以上仕事を休んでいること。

療養のために仕事を休み始めた日から連続した3日間(待期期間)を除いて、4日目から支給対象です。

・給与の支払いがないこと。

ただし、給与が一部だけ支給されている場合は、傷病手当金から給与支給分を減額して支給されます。

 

<休業(補償)給付の受給条件>

上記の傷病手当金の受給条件のうち、最初の「業務外かつ通勤途上外の病気やケガで療養中であること」を、「業務中または通勤途上の病気やケガで療養中であること」に置き換えると、休業(補償)給付の受給条件になります。

業務による病気やケガで療養する場合には「休業補償給付」、通勤による病気やケガで療養する場合には「休業給付」が支給されます。

休業の初日から3日目までは労災保険からは支給されません。

この間は業務災害の場合、事業主が休業補償(1日につき平均賃金の60%以上)を行うことになっています。

 

<労務不能の意味>

労務不能とは、保険加入者(被保険者)が今まで従事していた業務ができない状態のことで、労務不能であるか否かは、医師の意見、被保険者の業務内容、その他の諸条件を考慮して判断します。

「医師の意見」というのは、主に療養担当者つまり治療を担当する医師の意見です。

対象者の仕事内容から考えて、病気やケガの程度や回復具合から、今まで従事していた業務ができるかどうかを判断するのです。

たとえば、外回り営業に従事していた人が脚にケガを負って、まだ回復が不十分であっても、経理の仕事ならできるということがあります。

それでも、今まで従事していた業務ができるわけではありませんから、やはり労務不能と判断されるのが一般です。

 

<仕事内容がポイント>

労務不能の判断は、対象者の仕事内容と病気やケガの具合を比較して行われます。

治療を担当する医師は、病気やケガの具合を判断することは得意なのですが、対象者の仕事内容を具体的に知っているわけではありません。

ですから、対象者本人か会社の担当者が、医師に対象者の仕事内容をわかりやすく説明する必要があります。

特に病気やケガとの関係で、仕事上の困難な部分をよく説明しておく必要があります。

また、傷病手当金の支給申請書や休業(補償)給付の支給請求書には、仕事内容を記入する欄があります。

ここには「事務員」といった抽象的な表現ではなく、「経理担当事務」「自動車組立」「プログラマー」などある程度具体的に記入することが求められています。

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