2022/01/12|958文字
本当は怖い労働基準法の罰則
<健康診断の実施義務>
会社は一定の条件を満たした従業員について、雇入れ時の健康診断、定期健康診断、深夜業の健康診断などの実施義務を負っています。
そして、その結果は本人に通知する義務を負っていますし、結果を5年間保管する義務も負っています。
これを怠ると、会社が存続できなくなる程の大きな経済的ダメージが発生することもあります。
<罰則>
義務違反には50万円以下の罰金が科せられます。〔労働安全衛生法第120条〕
たとえば、健康診断の対象となる従業員が5人いたとして、会社が健康診断を全く実施していなかったとします。
実施していなければ、結果を本人に通知できませんし、結果を保管しておくこともできません。
実施義務違反と、通知義務違反と、保管義務違反で、1人当たり150万円の罰金です。
50万円 × 3 = 150万円 ということです。
5人なら 150万円 × 5 = 750万円 となります。
結果は5年間保管ですから、保管されていなければ、健康診断を実施していない証拠になってしまいます。
「個人別結果票をなくしました」と嘘をついても、ではどの健診機関で実施したのかと問い詰められれば、嘘がバレてしまいます。
結局、750万円 × 5回分 = 3,750万円 の罰金ということになります。
<損害賠償>
罰金3,750万円で済めば安いものです。
ある従業員が勤務中に脳血管障害で倒れて亡くなったとします。
本人は、健康診断を希望していなかったし、受けなくてラッキーだと納得していたとします。
しかし、遺族はどうでしょう。
配偶者や、親兄弟、お子さんたちは、会社に責任があると考えるでしょう。
となると、会社に対して民事訴訟を提起して損害賠償の請求をします。
会社は、自分たちに責任が無いことの証拠をどれだけ持っているでしょうか。
遺族の皆さんは、法定の健康診断を実施していたのか、その結果を元に必要な指導をしていたのかといったことを追究してきます。
会社としては、法律で定められた最低限のことすらしていなかったのですから全面降伏しかありません。
こうなると、3,750万円の罰金とは別に、1億円の損害賠償を求められたりします。
一方、法定の健康診断なら、その費用は1人2万円です。
5人なら10万円、5年で50万円です。
これは1人の1回分の罰金と同額です。