2022/12/06|1,023文字
<健康保険より有利な労災保険>
労災保険では、労働者が業務または通勤が原因で負傷したり、病気にかかった場合に、労働者の請求に基づき治療費の給付などを行っています。
しかし、業務または通勤が原因と考えられるにもかかわらず、労災保険による請求を行わず、健康保険を使って治療を受けるケースがあります。
これは、労働者に不利です。
健康保険では、被災者が原則として治療費の3割を負担しますが、労災保険なら被災者の自己負担は原則としてありません。
また、負傷や病気で休んだ場合、健康保険の傷病手当金では賃金の約67%の補償となりますが、労災扱いならば賃金の80%が補償されます。
さらに、業務災害であれば、休業の3日目まで事業主が賃金の60%以上を補償します。
<労災保険に切り替え可能な場合>
受診した病院の締め日などの関係で、健康保険から労災保険への切り替えが簡単にできる場合には、次の手順によります。
・労災保険の様式第5号または様式第16号の3の請求書を受診した病院に提出する。
・病院の窓口で支払った金額の返還を受ける。
<労災保険への切り替えができない場合>
受診した病院の締め日などの関係で、健康保険から労災保険への切り替えが簡単にできない場合には、一度、医療費の全額を自己負担したうえで、労災保険に請求することになります。
具体的には、次の手順によります。
・保険者(全国健康保険協会など)へ業務災害または通勤災害である旨を申し出る。
・「負傷原因報告書」の記入・提出(不要な場合もある)
・保険者(全国健康保険協会など)から医療費返納の通知と納付書が届く。
・近くの金融機関で返納金を支払う。
(健康保険が使えないのに使ってしまったため返金が必要となります)
・返納金の領収書と病院に支払った窓口一部負担金の領収書を添えて、労災保険の様式第7号または第16号の5に記入のうえ、労働基準監督署へ医療費を請求します。
※保険者は健康保険証に記載されています。
<解決社労士の視点から>
間違った手続をやり直すのは、大変になってしまうことが多いものです。
最初から必要な手続きをきちんと確認しましょう。
また、事業主の都合で、労災なのに健康保険の手続きを進めようとすることがあります。
これ自体、保険金詐欺ですから犯罪です。
そして、ケガが悪化して長く入院するような場合には、労働者の負担がとても大きくなります。
困ったときは、早めに所轄の労働基準監督署か社労士などの専門家に相談しましょう。