セクハラ対策の初歩

2022/02/14|1,589文字

 

セクハラ被害者の権利と会社の責任

 

<セクハラ>

セクシュアルハラスメントの略で、「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型)」または「性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること(環境型)」をいいます。

これが厚生労働省による説明です。

これによると、労働者が「不利益を受けること」あるいは「悪影響が生じること」という実害の発生が、セクハラ成立の条件のようにも見えます。

しかし、企業としてはセクハラを未然に防止したいところです。

 

<企業の責任>

法令により、企業にはセクハラ対策が義務付けられています。〔男女雇用機会均等法第11条〕

従業員からセクハラ被害の申し出があれば、企業は誠実に対応しなければなりませんから、被害の申し出を受け付けるための窓口を設置する義務もあります。

就業規則にセクハラの禁止規定と、これに対応する懲戒規定も必要になります。

 

<就業規則にセクハラの定義>

まず就業規則にセクハラの定義を定めなければ、従業員には何が禁止されているのか不明確ですし、それらしき行為があっても確信が持てなければ、誰も注意することができないのですから被害者は救われません。

「自分の言動が、セクハラとなるかどうかわからない。要は、相手の受け取り方次第なので、ハッキリしない」というのが加害者側の理屈でしょう。

これを許さないためには、「自分と相手との間柄を前提として、客観的に見て、相手や周囲の社員が性的な意味合いを感じ不快に思う言動」はセクハラに該当するというような具体的で明確な定義が必要なのです。

社内での相手に対する言動が、周囲の社員にとって、あるいは、相手の家族にとって、性的な意味合いで不快感を与えていればセクハラになります。

 

<セクハラ発生のメカニズム>

そもそも部下や後輩が自分に対して従順で素直で協力的なのは、自分に好意を寄せているからではなくて、立場上、仕方がないからです。

決して、二人の間柄が、仕事上の立場を超えたわけではありません。

ここを勘違いしている方が、セクハラに走っているように思われます。

セクハラ防止のための教育研修の内容には、このセクハラ発生のメカニズムも加える必要があるでしょう。

 

<企業として必要な対策>

セクハラに限らず、パワハラでもマタハラでも、ハラスメント対策としては、次のことが必要です。

・ハラスメントは許さないという経営者からのメッセージ

・就業規則の懲戒処分に関連規定を置く

・実態を把握するための体制と仕組みの整備

・社員教育

・再発防止措置

・相談窓口の設置

この中で、相談窓口としては、厚生労働省が社会保険労務士など社外の専門家を推奨しています。

なぜなら、社内の担当者や部門では、被害者が申し出をためらいますし、被害拡大やもみ消しの恐れもあるからです。

まずは、経営者がハラスメントの問題を重くとらえ理解し、社内に「許さない」というメッセージを発信するのが第一歩です。

 

<社外での解決>

法は、企業に対して自主的解決を求めています。〔男女雇用機会均等法第15条〕

しかし、被害者の申し出にもかかわらず、企業が納得のいく対応をしてくれない、また、企業としてはきちんと対応したのに、被害者が納得してくれないという場合には、労働局に申請して紛争調整委員会に調停をしてもらうことができます。

調停では、委員会から具体的な事情を踏まえた和解案が提示されます。

双方がこれに従えば、一件落着ですが、そうでなければ訴訟に発展することもあります。

特定社会保険労務士は、この調停での一方当事者の代理人となる資格を持っています。

ハラスメントの防止策や社員教育から、万一紛争に発展した場合の解決まで、社内でまかなえない部分については専門家である社会保険労務士にご用命ください。

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