過労死基準の変更

2021/10/10|1,473文字

 

労災事故と被災者本人の過失

 

<過労死等防止啓発月間>

厚生労働省では、11月を「過労死等防止啓発月間」と定め、過労死等をなくすためにシンポジウムやキャンペーンなどの取組を行っています。

この月間は、「過労死等防止対策推進法」に基づくもので、過労死等を防止することの重要性について国民の自覚を促し、関心と理解を深めるため毎年11月に実施されています。

月間中は、国民への啓発を目的として、各都道府県で「過労死等防止対策推進シンポジウム」、「過重労働解消キャンペーン」として、長時間労働の削減や賃金不払残業の解消などに向けた重点的な監督指導やセミナーの開催、土曜日に過重労働等に関する相談を無料で受け付ける「過重労働解消相談ダイヤル」等が行われます。

ここで「過労死等」とは、業務における過重な負荷による脳血管疾患又は心臓疾患を原因とする死亡、もしくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患、心臓疾患、精神障害をいいます。

 

<脳・心臓疾患の労災認定基準の改正>

厚生労働省は、「心理的負荷による精神障害の認定基準」を改正し、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長宛てに通知しました。〔令和2年5月29日付基発0529第1号通達〕

そして今度は、「脳・心臓疾患の労災認定基準」が改正されました。〔令和3年9月14日付基発第0914第1号〕

従来は、業務による過重負荷を原因とする脳血管疾患や虚血性心疾患等については、平成13(2001)年12月に改正された「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準」に基づき労災認定が行われていました。

しかし、改正から約20年が経過する中で、働き方の多様化や職場環境の変化が生じていることから、最新の医学的知見を踏まえて、「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」において検証等を行い、令和3(2021)年7月16日に報告書が取りまとめられ、認定基準が改正されたものです。

 

<改正前の基準>

業務の過重性の評価基準として、改正前の基準はそのまま維持されています。

これは、長期間の過重業務を基準とするものです。

・発症前1か月間に100時間または2~6か月間平均で月80時間を超える時間外労働は、発症との関連性が強い。

・月45時間を超えて長くなるほど、関連性は強まる。

・発症前1~6か月間平均で月45時間以内の時間外労働は、発症との関連性が弱い。

労働時間以外の負荷要因としては、 拘束時間が長い勤務、 出張の多い業務などが挙げられています。

 

<改正後の基準>

業務の過重性の評価基準として、従来の認定基準に新たに追加されたのが次の内容です。

まず、長期間の過重業務を基準とするものに以下が加わりました。

・改正前の基準の水準には至らないがこれに近い時間外労働があり、一定の労働時間以外の負荷もあった場合には、業務と発症との関連が強いと評価。

・勤務間インターバルが短い勤務、身体的負荷を伴う業務なども、評価対象とする。

また、短期間の過重業務であっても「発症前おおむね1週間に継続して深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど過度の長時間労働が認められる場合」等、異常な出来事があった場合には、業務と発症との関連性が強いと判断できる。

 

<解決社労士の視点から>

新たに加わった基準により労災と認定される事例は、これから出現してくることになります。

しかし少なくとも、従来の労災認定基準が一段緩和され、認定されやすくなったことは確かです。

「雇い主である会社側の責任もそれだけ重くなった」と言えます。

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