2022年 1月

2022/01/31|477文字

 

労働基準監督署の立入調査https://youtu.be/lNxUYDb6rFo

 

<出勤簿の重要性>

会計検査院がハローワークを通じて会社の調査に入る場合には、この出勤簿の提出を求めてきます。

それだけ出勤簿は重要視されているということです。

 

<出勤簿の体裁>

たしかに出勤簿を使用している会社も数多くあります。

その内容は、出勤日、公休日、休暇、欠勤など1日単位で区分して記入し、1か月単位で集計したものがほとんどです。

これは、給与計算や年次有給休暇管理の補助簿として用いられています。

ところがハローワークに持参すると「これは出勤簿ではない」と言われてしまいます。

 

<法定帳簿としての出勤簿>

ハローワークの想定する出勤簿は、出勤日の始業時刻と終業時刻が明示されていて、1か月の勤務時間が集計されたものです。

パソコンで勤務時間を管理している会社であれば、それが出勤簿の代わりになりますから、求めに応じてすぐに印刷できる状態であれば別に作る必要はありません。

また、タイムカードを適正に使用していれば、これが出勤簿の代わりになります。

出勤簿を本当に必要とするのは、出勤簿によって勤怠管理をしている一部の会社だけということになります。

2022/01/30|895文字

 

<衛生委員会の設置義務>

事業者は業種を問わず、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに、衛生委員会を設置する義務を負っています。

これを規定するのが、労働安全衛生法の次の条文です。

 

【衛生委員会】

第十八条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。

一 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。

二 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。

三 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。

四 前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項

 

事業場ごとですから、会社全体ではなく事務所や店舗ごとに設置します。

労働者が50人を上回ったり下回ったりの場合には、給与計算の締日ごとに集計して、過去1年間の7か月以上で50人以上なら「常時50人以上」と考えるのが行政解釈です。

 

<委員会のメンバー>

その事業場の責任者、衛生管理者、産業医、その事業場の労働者で労働衛生に関する経験を有する者で構成されます。

衛生管理者は試験に合格しなければなれませんし、産業医は医師に限定されますので、事業場の労働者数が50人に近づいたら、前もって準備しておくことが必要です。

 

<衛生委員会の役割>

毎月1回以上委員会を開催して、労働者の健康障害防止対策、労働者の健康保持増進対策、労働災害の原因と再発防止などについて、労働衛生の面から調査・審議し、重要なものについては議事録を作成して、その内容を社内に周知します。

委員会の審議内容で「重要なもの」だけ議事録に残せば良いのですが、定期健康診断の結果についての話し合いは、これに含まれるというのが行政解釈です。

議事録は3年間の保管義務があります。

ここは労働基準監督署のチェックポイントになりますから重要です。

せっかく毎月衛生委員会を開催していても、議事録を作成して保管しておかなければ、労働基準監督署には伝わりません。

形式を整えておくことも大事ですから、忘れないようにしましょう。

2022/01/29|1,928文字

 

届出と違う経路で通勤災害https://youtu.be/ZySNmaO5sUg

 

<自転車通勤>

就業規則で自転車通勤を認めている会社は多いですし、自転車通勤に対して通勤手当を支給している会社もあります。

就業規則に規定は無いものの、自転車通勤を黙認している会社もあります。

特に都市部では、満員電車を避け運動不足の解消にもなるので、自転車通勤は増加傾向にあるようです。

最近では、新型コロナウイルスの新規感染者数が増えると、一時的に自転車通勤にする人もいます。

 

<従業員がケガをした場合>

従業員が自転車通勤中にケガをした場合には、ほとんどのケースで通勤災害として労災保険が適用されます。

この場合には、会社の人事担当者や顧問の社会保険労務士が手続をすることになります。

単独事故ではなく相手がいる場合、第三者行為災害となります。

すると、通常の労災保険の手続で作成する書類の他に、何種類か別の書類を作成する必要があります。

ケガをした本人から話を聞きながら書く部分が多く、事故の発生状況を示す図も添付します。

相手が自動車やバイクであれば、警察に報告して「交通事故証明書」の交付も受けておかなければなりません。

慣れていないと、全部で5~8時間かかるでしょう。

 

<従業員が加害者になった場合>

さらに大変なのは、従業員が加害者になってしまった場合です。

会社は事故の発生には関与していません。

しかし、民法715条の使用者責任が認められた場合には、事故を起こした従業員が負う損害賠償債務を会社が負担しなければなりません。

民法715条は、使用者が従業員を使用して利益を上げている以上、その使用によって生じたリスクも負担しなければならないという報償責任や、従業員を雇えば一定のリスクが発生することは覚悟しておいて対策をとっておかなければならないという危険責任等の趣旨に基づいています。

自転車通勤を認めている会社も黙認している会社も、こうした法的責任を問われることがあるので、従業員に対する安全教育は不可欠です。

道路交通法では、自転車利用のルールも厳しくなっていますので、ほんの一部を以下にご紹介します。

 

<逆走の禁止>

自転車は、道路(車道)の中央から左側部分の左端に寄って通行しなければなりません。〔道路交通法第17条〕

当たり前のように歩道を走行する自転車も多いのですが、自転車は車両の一種ですから、歩道と車道の区別がある道路では、車道を通行するのが原則です。〔道路交通法第17条〕

しかし、車道の右側を走行している自転車が、多数の自動車からクラクションを鳴らされても、自分に対するものだとは気づかないことも多いようです。

 

<歩行者の優先>

自転車が例外的に歩道を走行できる場合については、道路交通法で次のように規定されています。

 

【普通自転車の歩道通行】

第六十三条の四 普通自転車は、次に掲げるときは、第十七条第一項の規定にかかわらず、歩道を通行することができる。ただし、警察官等が歩行者の安全を確保するため必要があると認めて当該歩道を通行してはならない旨を指示したときは、この限りでない。

一 道路標識等により普通自転車が当該歩道を通行することができることとされているとき。

二 当該普通自転車の運転者が、児童、幼児その他の普通自転車により車道を通行することが危険であると認められるものとして政令で定める者であるとき。

三 前二号に掲げるもののほか、車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき

2 前項の場合において、普通自転車は、当該歩道の中央から車道寄りの部分(道路標識等により普通自転車が通行すべき部分として指定された部分(以下この項において「普通自転車通行指定部分」という。)があるときは、当該普通自転車通行指定部分)を徐行しなければならず、また、普通自転車の進行が歩行者の通行を妨げることとなるときは、一時停止しなければならない。ただし、普通自転車通行指定部分については、当該普通自転車通行指定部分を通行し、又は通行しようとする歩行者がないときは、歩道の状況に応じた安全な速度と方法で進行することができる。

(罰則 第二項については第百二十一条第一項第五号)

 

ここの罰則は、自転車が徐行しない場合や、歩行者の通行を妨げないようにする一時停止を怠った場合に適用されます。

2万円以下の罰金または科料です。

 

ベルを鳴らして歩行者にどいてもらうというのも法律違反です。

自転車は一種の車両ですから、歩行者を優先しなければなりません。

自転車に乗った高齢者から歩道で後ろからベルを鳴らされて、やれやれと思うこともあります。

しかも歩行者である私を追い抜けません。

少し気の毒な気もします。

2022/01/28|1,492文字

 

就業規則の変更に対する従業員の不満https://youtu.be/zDZ_wtCwGzY

 

<就業規則変更の手順>

就業規則変更の正しい手順は、

1.法改正や社内ルールなどの変更により就業規則変更の必要が発生

2.担当部署や社労士(社会保険労務士)が変更案を作成

3.社内での決裁

4.従業員への周知

5.労働者の意見書作成

6.労働基準監督署への変更届提出

という順番になります。

5.の意見書には、労働組合や労働者の過半数を代表する者の、就業規則変更についての意見を記入します。

変更後の就業規則が社内に周知され、多くの労働者の反応を把握してから意見書を書くようにしなければ、労働者を代表する立場で書くのは難しいでしょう。

ですから、上記の順番が正しいわけです。

 

<意見書の内容>

所轄の労働基準監督署長に就業規則の変更届を提出するには、上記5.の意見書を添付しなければなりません。

これが無いと、受け付けてもらえません。

ところが、「この変更は納得できません。私たちにとって不利になる変更です」「この変更は、労働基準法違反です」などの意見が書かれていても、問題なく受け付けてもらえます。

提出したときに押されるゴム印には、「受付」の文字があります。

「承認」「確認」「受理」ではなくて「受付」です。

これは、内容の審査までは行わず、形式を満たしているので受け付けましたということです。

つまり、意見書に労働者の切実な訴えが書かれていたとしても、これは全く考慮されないのです。

 

<従業員に不利な変更>

労働契約法には、次のような規定があります。

 

【就業規則による労働契約の内容の変更】

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

 

つまり、就業規則の変更内容を従業員に知らせていて、不利益の程度や会社側の必要性など様々な事情を踏まえて合理的であれば、変更後の就業規則が有効だということです。

実際に不利益を受けた従業員や退職者が会社に対して民事訴訟を提起して、裁判所が「不合理」と判断したのでなければ無効にはなりません。

 

<法令違反の変更>

労働契約法第13条の定めにより、法令で定める基準に達しない労働条件を定める就業規則は、その部分については無効となります。

不思議ですが、法令違反の就業規則でも、労働基準監督署に持って行けば受け付けてもらえます。

労働基準監督署にしてみれば、たとえ法令違反の規定が含まれていたとしても、そこは無効になって法令の内容に修正されるわけですから、安心して受け付けることができるわけです。

こうして、実際に所轄労働基準監督署の立入調査(臨検監督)や訴訟などがなければ、就業規則の法令違反は指摘されないのが実情です。

 

<結論として>

このように、会社に都合よく就業規則を変更することは、かなり自由にできてしまうことは事実です。

明らかに不合理な不利益変更であるとか、法令違反であるとか、確信が持てる場合であれば、従業員や退職者から訴訟が提起されることもあるでしょう。

しかし、確信が持てない場合には、信頼できる社会保険労務士に相談してみることも考えましょう。

ちなみに、「就業規則を見せてもらえない」ということであれば、その就業規則は無効です。

この場合には、すべて法令通りということになりますし、法令に規定の無いことは何もルールが無いということになります。

2022/01/27|1,422文字

 

ブラック企業の疑いhttps://youtu.be/DJhI0-SwP9g

 

<ブラックとは何か>

ブラックとは、自分が身を置く社会関係の中で、道義的に求められていることをせず、自分(自分たち)のやりたいようにしてしまう人(企業)であると定義できるでしょう。

これは、他人から自分(自分たち)への干渉を極端に嫌う、自己中心的で無責任な態度です。

倫理観が欠如していて、正しく行動することについては消極的で無気力です。

 

<ブラック求人の実態>

労働条件が実態と異なる求人広告を「ブラック求人」といいます。

働き手を募る広告は、募集企業と求職者との社会関係の中で、その内容が正しく実態を示していることが道義的に求められています。

ところが、ハローワークの求人票を含め、このブラック求人についての苦情や相談は一向に減少しません。

それどころか、ブラック求人を出している企業の間では、ブラック求人を採用のための必要なテクニックであるという、誤った共通認識が生じています。

 

<ブラック求人への制裁>

実は、求人広告にウソを書いて出しても、これといって制裁が無いのです。

厚生労働省としても、監視や取締りの強化、ペナルティを設けるなどの有効な対策をとることができていません。

ハローワークの求人票ですら、民間の求人広告会社と同じく、利用者からクレームがあれば、掲載の依頼をした企業に釘を刺すだけです。

ですから、「ハローワークの出している求人だから」「○○新聞に載っている求人だから」ということで、そのまま信頼してはダメです。

たとえブラック求人であったとしても、労働契約の際に、正しい労働条件を示していればそれで良しというのが、当局の公式見解のようです。

ただ最近になって、悪質なものはハローワークが求人票を出さない仕組になってきています。

 

<ブラック求人を信じて採用された場合>

採用にあたって示された労働条件が実際と違っていたらいつでも退職できる、そして、働くために引っ越した労働者は14日以内に帰郷する場合、その旅費を使用者に請求できるという規定があります。〔労働基準法第15条〕

ですから、採用にあたって示された労働条件と、実際に働き始めてから判明した労働条件が違えば、退職を申し出る権利が労働者には保障されています。

ところが、求人広告と採用にあたって示された条件が違うことや、求人広告と実際に働き始めてから判明した労働条件が違うことは、労働基準法も想定していません。

結局こうした場合には、労働契約が有効ということになってしまいます。

 

<身を守るには>

仕事を探している皆さんは、なかなか仕事が見つからないと、条件を落としてでも就職しようとします。

ですから、良い条件の求人広告を見れば「ここに入社したい」と思います。

それでも、求人広告はあくまでも「広告」なのだということを忘れずに、実際の労働条件は採用面接のときに確認しましょう。

そして、「広告」と違っていたら、採用を辞退しましょう。

「なんか求人広告と違う気がするけど、まぁいいか」と妥協するのは、自己責任ということになります。

 

<もし採用されてしまったら>

ブラック求人を出すような企業は、他にもいろいろとブラックな面を持ち合わせていることが多いものです。

そういう企業で無理に働くようなことはせず、なるべく早く労働法に明るい弁護士や特定社会保険労務士にご相談いただくのが得策だと思います。

社内だけに目を向けて、「みんな頑張っているのに私が辞めてしまったら」とは考えずに、視野を広げて考えていただきたいです。

2022/01/26|1,550文字

 

労基署の再監督https://youtu.be/aI9FLfYKlVQ

 

<是正勧告書と指導票>

労働基準監督署が立入調査(臨検監督)に入り問題点が見つかると、その事業場に「是正勧告書」や「指導票」という書類を交付します。

「是正勧告書」は、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法などの罰則に触れていると思われる事実が見つかったときに、その是正と報告を求める文書です。

「指導票」は、罰則には触れないと思われるものの、厚生労働省のガイドラインに沿っていないなど問題となる事実が見つかると、その改善と報告を求める文書です。

立入調査終了後に、その場で作成・交付されることが多いのですが、複雑な事案に関するものは、後日、交付されることもあります。

 

<是正勧告書の性質>

是正勧告は行政指導ですから、不服申立のようなことはできません。

本来であれば、是正勧告書を交付せず、いきなり逮捕・書類送検も可能なのです。

しかし、労働法の罰則に触れることが犯罪ではあっても、刑法犯とは異なり認知度が低いためにワンクッション置いて、是正の機会を与えているものと考えられます。

 

<是正勧告書への対応>

是正勧告書で指摘を受けた事実は、違法なものですから、基本的には直ちに是正しなければなりません。

是正報告書を交付されたなら、違法な部分を是正し、是正の内容を端的にまとめた「是正報告書」を作成します。

提出先は、立入調査を担当した労働基準監督官です。

是正勧告書には、提出期限が書かれています。

どうしても間に合いそうにない場合は、労働基準監督官に相談しましょう。

期限を過ぎてしまうと、督促状が届いてあたふたします。

督促状に示された提出期限を過ぎてしまうと、労働基準監督官の心証を害してしまいます。

また、是正勧告書に誤りが無いとは言い切れません。

立入検査に社会保険労務士などの専門家が立ち会わなかった場合には、会社側の説明が不適格であったために、労働基準監督官が勘違いすることもあります。

これについても、労働基準監督官に相談することをお勧めします。

 

<指導票の性質>

指導はまさに行政指導なのですが、是正勧告書で指摘された事項と異なり、指導票で指摘された事項は違法というわけではなく、直ちに是正が求められるという内容ではありません。

無理の無い範囲で是正し、時間を要する項目については、改善計画を提出することになります。

 

<指導票への対応>

指導票で指摘を受けた事実は、違法ではないものの改善を求められたわけですから、放置せず段階的に改善していかなければなりません。

指導票を交付されたなら、指摘された事項を改善し、あるいは改善計画を立て、その内容を端的にまとめた「改善報告書」を作成します。

指導票に示された事項には、直ちに改善するのが難しいものが含まれていることが多いものです。

具体的な計画を立て、確実にこなしていく道筋を示すことができれば、これを「改善報告書」にまとめ、立入調査を担当した労働基準監督官に提出することで、一応の決着を見ることになります。

この点、違法性を指摘された是正勧告書については、すべての事項について是正が完了しなければ、解放してもらえないのとは異なります。

 

<解決社労士の視点から>

店舗などが労働基準監督署の立入検査を受け、「是正勧告書」を受け取ったのに、これを恥として本部に報告せず、また「勧告に過ぎないから」という判断で放置するということもあります。

さらに督促状が届いても放置し、再度「是正勧告書」が交付されて、これもまた放置ということになると、さすがに逮捕・書類送検が行われても不思議ではありません。

こうしたことを想定して、各事業場の責任者や代行者には、労働基準監督署や年金事務所などの調査が予告・実施された場合には、会社への速やかな報告が必須である旨、きちんと説明しておく必要があるでしょう。

2022/01/25|1,735文字

 

労働基準法違反の労働契約https://youtu.be/5Q00e6yuGWo

 

<契約書には似た規定があるものの>

契約書の最後の方に「本契約書に定めのない事項、または本契約の履行にあたり疑義を生じた事項は、甲乙協議の上円満に解決をはかるものとする」という規定を見ることが多いですね。

しかし、契約書というのは、当事者間に紛争が発生した時にこそ、その解決の拠り所とするために作成されるものです。

なんでも話し合って円満に事が進むのならば、その当事者間に契約書は要りません。

それなのに、何か疑問に思うことがあれば話し合って解決しましょうという規定があるというのは矛盾しています。

 

<就業規則にも似たような規定が>

就業規則の最初の方に「この規則に定めのない事項については、労働基準法その他の法令の定めるところによる」という規定を見ることも多いです。

なるほど、こうすれば法改正があっても、就業規則を変更する必要が無くて便利なようにも見えます。

しかし、こうしておけば不都合が無いといえるのでしょうか。

 

<たとえば労働基準法で>

労働基準法第7条の公民権行使の保障について、たとえば投票に行っている時間の賃金が支払われるか否かは、通達により労使の取り決めによるとされています。

ということは、賃金の支払について決めておかないとトラブルになるでしょう。

これは労働基準法第68条の生理休暇も同様です。

休んだ日の賃金が支払われるのか支払われないのかは大問題です。

労働基準法第41条は、「監督もしくは管理の地位にある者」については、労働基準法の労働時間、休憩、休日に関する規定を適用しないとしています。

さて、適用されない人の休憩や休日はどうなるのでしょうか。

ご本人が自由に決めるのでしょうか。

取締役に近い従業員についての話ですから事は重大です。

 

<他の労働法でも>

高年齢者雇用安定法が改正されたとき、会社は定年を引き上げるか、定年をなくすか、あるいは継続雇用制度を導入するかの選択を迫られました。

これと同様に、育児・介護休業法には、会社の義務として、どちらか/どれか選んで措置を実施するという規定がいくつかあります。

こうした場合には「法令の定めるところによる」と言ってみても、何も決まっていないことになります。

会社がどうすべきかについて、選択肢を与えられる条文というのは、最近になってから出現しています。

昔は「法令の定めるところによる」としておけば問題なかったのですが、最近の法令では「会社が従業員と話し合って選んでください」という内容が出てきましたので、対応しきれなくなっているというわけです。

 

<そもそも法令に規定が無い場合>

懲戒処分ができる場合とは、どのような場合なのか、法令には規定がありません。

反対に、懲戒処分の限度や無効となる場合については、労働基準法や労働契約法に規定があります。

ということは、就業規則に具体的な規定を置かなければ、懲戒処分が適正にできないことになります。

特に男女雇用機会均等法は、セクハラの禁止とセクハラ行為者に対する懲戒処分などの規定を企業に義務づけていますが、その具体的な内容は各企業の実情に応じて定めることになっています。

「法令の定めるところによる」という規定だけではセクハラが野放しになってしまう恐れさえあります。

各企業ごとにきちんと規定を置かなければなりません。

またたとえば、「正社員」ということばに、法令上の定義はありません。

社内に正社員と正社員以外の従業員がいて、異なる処遇をしているのなら、それぞれの定義づけが必要です。

もし「無期労働契約の従業員が正社員である」としていたら、労働契約法第18条による有期労働契約の無期化により、正社員が増えていくことになります。

 

<解決社労士の視点から>

何もせず放置したことによって「何もしていないのに」退職者から訴えられたり、労働基準監督署から是正を求められたりというのは、珍しいことではありません。

それぞれの会社にとって、必要不可欠な内容が、その会社の就業規則にきちんと規定されているか、法改正によって変えるべきところは変わっているか、労働法に詳しい弁護士や社会保険労務士のチェックが必要でしょう。

そして、会社の状況の変化や法改正のことも考えると、定期的なチェックが必要ということになります。

2022/01/24|1,016文字

 

年次有給休暇が会社に勝手に使われたhttps://youtu.be/JgWobP3JbN4

 

<時季指定権と時季変更権>

同じ会社の同じ部署で、一度に多数の労働者が相談のうえ、同じ日を指定して年次有給休暇を取得しようとするのは権利の濫用です。

このように事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は時季変更権を行使することができます。

 

【労働基準法第39条第5項】

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

 

<権利の濫用>

出勤日当日の朝に、従業員が上司にメールで「休みます」と連絡し、後から「あれは有給休暇です」と言っても、多くの場合、会社は有給休暇の取得を拒否できます。

なぜなら、会社の時季変更権を侵害してしまうからです。

そもそも年次有給休暇などの権利を保障する労働基準法は、憲法に基づいて制定されました。

 

【日本国憲法第27条第2項:勤労条件の基準】

賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

 

そして憲法自身が、権利を濫用してはならないと定めています。

 

【日本国憲法第12条:権利濫用の禁止】

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

 

ここで、「公共の福祉」というのは、時季指定権と時季変更権のような対立する権利間の調整を意味します。

自分の権利の主張が、相手の権利を侵害する場合には、権利の濫用とされることがあるのです。

 

<権利の濫用とはいえない場合>

出勤日当日の朝に、従業員が上司に電話で「母が自宅で意識を失い救急車で病院に運ばれました。私も救急車に同乗して今病院にいます。有給休暇の取得ということにできませんか」と連絡した場合は、権利の濫用とはいえないでしょう。

従業員は有給休暇の取得にあたって、理由を述べる必要は無いのですが、みずから特別な理由を明らかにして申し出た場合には、会社も取得を認めるルールが必要でしょう。

たとえば、就業規則に「私傷病により勤務できない場合の欠勤、その他やむを得ない事情による欠勤は、申請によってこれを年次有給休暇に振り替えることを認める場合があります。振替は所定の用紙に記入するものとします」というような規定を置くと良いでしょう。

2022/01/23|1,488文字

 

男女平等https://youtu.be/gOe2ZdVhYRk

 

<女性活躍推進法の改正>

令和4(2022)年4月1日より、一般事業主行動計画の策定・届出義務及び自社の女性活躍に関する情報公表の義務の対象が、常時雇用する労働者数が301人以上の事業主から101人以上の事業主に拡大されます。

常時雇用する労働者数101人以上300人以下の事業主は、施行日までに、行動計画の策定・届出及び情報公表のための準備を済ませておく必要があります。

自社だけでなく、子会社、関連会社、お取引先で新たに対応が必要となる場合には注意が必要です。

 

<一般事業主行動計画の策定・届出>

●ステップ1:自社の女性の活躍に関する状況の把握、課題分析

・自社の女性の活躍に関する状況を、以下の基礎項目(必ず把握すべき項目)を用いて把握します。

・把握した状況から自社の課題を分析します。

 

【基礎項目】

・採用した労働者に占める女性労働者の割合(雇用契約形態別)

・男女の平均継続勤務年数の差異(雇用契約形態別)

・労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況

・管理職に占める女性労働者の割合

 

●ステップ2:一般事業主行動計画の策定、社内周知、外部公表

・ステップ1を踏まえて、(a)計画期間、(b)1つ以上の数値目標、(c)取組内容、(d)取組の実施時期を盛り込んだ一般事業主行動計画を策定する。

・一般事業主行動計画を労働者に周知し外部へ公表する。

 

●ステップ3:一般事業主行動計画を策定した旨の届出

・一般事業主行動計画を策定した旨を都道府県労働局へ届け出る。

 

●ステップ4:取組の実施、効果の測定

・定期的に、数値目標の達成状況や、一般事業主行動計画に基づく取組の実施状況を点検・評価する。

 

<女性の活躍に関する情報公表>

自社の女性の活躍に関する状況について、以下の項目から1項目以上を選択し、求職者等が簡単に閲覧できるように情報を公表します。

 

【女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供】

・採用した労働者に占める女性労働者の割合(雇用契約形態別)

・男女別の採用における競争倍率(雇用契約形態別)

・労働者に占める女性労働者の割合(雇用契約形態別、派遣労働者を含む)

・係長級にある者に占める女性労働者の割合

・管理職に占める女性労働者の割合

・役員に占める女性の割合

・男女別の職種又は雇用形態の転換実績(雇用契約形態別、派遣労働者を含む)

・男女別の再雇用又は中途採用の実績

 

【職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備】

・男女の平均継続勤務年数の差異

・10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合

・男女別の育児休業取得率(雇用契約形態別)

・労働者の一月当たりの平均残業時間

・雇用管理雇用契約形態別分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間(雇用契約形態別、派遣労働者を含む)

・有給休暇取得率

・雇用管理雇用契約形態別分ごとの有給休暇取得率(雇用契約形態別)

 

<解決社労士の視点から>

常時雇用する労働者数が101人以上の事業主は、すでに次世代育成法の一般事業主行動計画の作成・提出義務を負っています。

これと、新たに義務となる女性活躍推進法の一般事業主行動計画とを混同し、すでに作成・届出済みであると勘違いすることもありえますので注意が必要です。

また、常時雇用する労働者数が301人以上の企業での、一般事業主行動計画の進捗率は4割程度という報道もあります。

上記ステップ1の【基礎項目】の年次推移などを踏まえ、なんとか達成できるレベルの計画を策定していただけたらと思います。

2022/01/22|692文字

 

就業規則の変更に対する従業員の不満https://youtu.be/zDZ_wtCwGzY

 

<就業規則の内容>

就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

・職場のルール

・労働契約の共通部分

・法令に定められた労働者の権利・義務

3つのうちのどれにあたるかによって、就業規則変更の可能性と必要性は異なります。

 

<職場のルール>

明らかに不合理とならない限り、会社の実情に合わせて自由に変えられるのが原則です。

たとえば、「従業員は、従業員同志およびお客様・お取引先に対して明るく元気に挨拶すること」という規定を新たに就業規則に定めるような場合です。

そして変更の必要性については、会社の判断に委ねられています。

ここは、会社の創業の精神や経営理念を反映した内容が十分に盛り込まれるところです。

 

<労働契約の共通部分>

労働者に不利な変更は「不利益変更」となり厳格な要件のもとで許されます。

しかし、不利とならない変更や有利となる変更は原則として自由です。

たとえば、深夜労働の賃金の割増率を25%から30%に引き上げるような変更です。

これも、変更の必要性は会社の判断に委ねられます。

人手不足や働き方改革で、従業員の処遇改善が必要になっており、各社とも対応が迫られている部分です。

 

<法令に定められた労働者の権利・義務>

労働基準法などの労働法に改正があれば、少なくとも会社に影響のある範囲内で、就業規則を変更しなければなりません。

そして就業規則の変更は、労働基準監督署への届出が義務付けられていますから、法改正の情報が出たら早めの対応が必要となります。

ここの部分を変更していなくても、法律の規定が優先されますので、就業規則に古い部分が残っていれば、ただみっともないだけの物になってしまいます。

2022/01/21|577文字

 

会社に都合よく就業規則を変更するhttps://youtu.be/ZQooKnziL3U

 

<就業規則の内容>

就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

・職場のルール

・労働契約の共通部分

・法令に定められた労働者の権利・義務

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。

また、一つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<職場のルール>

「就業規則」という名前の通り、働くにあたって労働者が職場で守るべきルールです。

 学校の校則は、学校で生徒が守るべきルールをまとめたものですが、これの会社版です。

ですから、会社ごとに会社の実情に合わせた内容となっています。

 

<労働契約の共通部分>

同じ会社の中でも、勤務地、業務内容、給与・時給などは、労働者ごとにバラバラです。

しかし、会社全体で見ると、正社員は正社員の、パートはパートの共通部分があります。

たとえば、出張したときの旅費や手当の定めは、これに当たります。

「正社員」というのは、法律用語ではありません。

ですから、「正社員」の定義も会社ごとに就業規則の中で定めておく必要があります。

 

<法令に定められた労働者の権利・義務>

会社は労働者に対して、法令に定められた労働者の権利や義務さらには各種制度について、重要なものを周知する義務を負っています。

これを個別に説明していたのでは手間がかかりますから、就業規則の内容に盛り込んで、就業規則の周知として行っています。

2022/01/20|1,435文字

 

証拠不足で懲戒解雇https://youtu.be/8BxtSpXabF4

 

<業務命令違反の性質>

厚生労働省のモデル就業規則最新版(令和3年4月版)には次の規定があります。

 

第10条:服務

労働者は、職務上の責任を自覚し、誠実に職務を遂行するとともに、会社の指示命令に従い、職務能率の向上及び職場秩序の維持に努めなければならない。

 

第66条第2項本文、第4号:懲戒の事由

労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。(以下省略)

4 正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき。

 

労働契約では、会社の指示・命令に従って働くことが当然の内容となっていますので、正当な理由なく、業務上の指示・命令に従わないのは、労働者の債務不履行となります。

これが繰り返されるのであれば、就業規則に規定が無かったとしても、少なくとも普通解雇の対象となります。

また場合によっては、懲戒解雇も有効となることがあります。

 

<業務命令違反認定のむずかしさ>

日本での職場マナーや日本語の特質により、会社からあやふやな業務命令が出されたり、これに対して労働者があやふやな回答をしたりということが多発します。

このため、紛争に発展し訴訟となった場合には、裁判所が「業務命令があったとはいえない」「業務命令を拒否したとはいえない」などと判断することも、決して珍しくはないのです。

 

<あやふやな業務命令の例>

次の事例は「業務命令・業務指示には該たらない」と裁判所が判断したものです。

・繰り返し土曜日出勤を要請していたのが、任意の協力を求めたものか、会社の業務命令か不明確なので、これを拒否することは業務命令違反とまではいえない。

・高等学校の校長が、副担任を務める教員に対し担任就任を打診したのは、明確な業務命令として担任の職を命じたとまでは認められない。

・調理の業務を行っている従業員に対し「残業削減のためメニューを減らしてもいい」と何度も注意したのは、メニューを減らす/減らさないが、従業員の選択に任されているので、業務指示には該たらない。

これらの場合、会社としては業務命令・業務指示をしたのだと主張しているのですが、裁判所がこの主張を退けているわけです。

 

<あやふやな回答の例>

一方で、次の事例は「業務命令拒否・業務指示拒否には該たらない」と裁判所が判断したものです。

・業務指示に対して「なぜ私がしないといけないんですか?」「就業規則のどこに書いてありますか?」と質問を返して業務に着手しなくても、指示に対する拒否とまではいえない。

会社としては、業務命令の拒否があったものと判断しているわけですが、裁判所は会社が疑問に応え説明すべきだったと判断しています。

 

<実務の視点から>

会社が従業員の業務命令違反を問題にするのは、懲戒や解雇を検討しているような場合が多いと考えられます。

対象従業員に対するイメージから、懲戒や解雇の結論が先行して、後付で理由を探るようでは、冷静な判断がむずかしくなってしまいます。

懲戒や解雇では、客観的に合理的な理由が存在すること、社会通念上相当であると認められることが有効要件となります。〔労働契約法第15条、第16条〕

「正当な理由なく業務命令に従わなかった」といえるためには、明確な業務命令があったこと、業務命令の内容が適法であり就業規則や個別の労働契約にも反していないこと、明確な業務命令拒否があったことなど、いくつもの事実が認定されなければなりません。

まずは、十分な指導を行いつつ、客観的な資料を残していることが前提といえるでしょう。

2022/01/19|1,265文字

 

賃金についての法規制https://youtu.be/X9e4g4Ae8NQ

 

<原則の割増賃金>

使用者は、過重な労働に対する労働者への補償のため、原則として次の割増賃金を支払う義務があります。

・1日8時間または1週40時間を超えて時間外労働させた場合25%以上

(特例対象事業場では、1週44時間が基準となります)

・深夜(原則として午後10時~翌日午前5時)に労働させた場合25%以上

・週1日の法定休日に労働させた場合35%以上

 

 <割増賃金の計算基礎>

割増賃金の計算の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当を含めなくてもかまいません。

ただしこれは、名称ではなく内容により判断されます。

 

<割増の条件が重なった場合>

深夜に時間外労働を行った場合には、25% + 25% = 50% 以上の割増賃金です。

法定休日に深夜労働を行った場合には、35% + 25% = 60% 以上の割増賃金です。

しかし、法定休日に時間外労働を行った場合には、35%以上の割増賃金です。

この割増賃金ですが、働き方改革の推進により残業手当が減ってしまう不都合を緩和するために、割増率を法定の率よりも高く設定する動きが見られます。

 

<「限度時間」を超える時間外労働>

「限度時間」とは、「時間外労働の限度に関する基準」が定める時間のことで、1か月45時間、1年間360時間です。

「限度時間」を超える時間外労働については、法定割増賃金率(25%以上)を超える率とするよう努めなければなりません。

そして、具体的な割増率は三六協定に明記することになります。

たとえば、「限度時間」を超える時間外労働の割増率を30%とした会社の場合には、深夜労働と重なれば 30% + 25% = 55% 以上の割増賃金となります。

 

<1か月60時間を超える時間外労働>

1か月60時間を超えて時間外に労働させた場合には、50%以上の割増賃金となります。

したがって、1か月60時間を超える時間外労働のうち、深夜労働と重なる部分は50% + 25% = 75% 以上の割増賃金となります。

 

<中小企業の例外>

1か月60時間を超える時間外労働の割増賃金は、中小企業については適用が猶予されていますので、「限度時間」を超える時間外労働の割増率が適用されています。

適用が猶予される中小企業の範囲は、次のとおり業種ごとに、資本金の額または出資の総額と常時使用する労働者数の限度が決められています。

小売業 ― 5,000万円以下 または 50人以下

サービス業 ― 5,000万円以下 または 100人以下

卸売業 ― 1億円以下 または 100人以下

その他 ― 3億円以下 または 300人以下

「資本金の額または出資の総額」と「企業全体での常時使用する労働者の数」のどちらかが基準以下であれば、中小企業として適用が猶予されることになります。

 

<猶予期間の終了>

働き方改革関連法により、中小企業でも令和5(2023)年4月1日からは1か月に60時間を超える時間外労働を行わせた場合、50%以上の割増賃金を支払う義務が課せられることになります。

2022/01/18|1,071文字

 

タイムカードを使う理由https://youtu.be/Fz05L3pgTOc

 

<解雇予告の規定>

労働基準法第20条に次の規定があります。

 

【解雇の予告】

第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる。

3 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

 

<解雇予告手当>

会社が従業員を解雇しようとする場合に、少なくとも30日前には解雇する旨を通知しなくてはならないというものです(第1項)。

もし30日以上前に解雇予告をしなかった場合には、使用者は平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う義務が生じます(第1項)。

 

<予告と手当の組み合わせ>

予告期間と解雇予告手当を組み合わせることもできます(第2項)。

たとえば、17日前に予告して平均賃金の13日分の解雇予告手当を支払うこともできます。

併せて30日になれば良いのです。

ただし、解雇予告の当日は24時間ありませんので、1日としてカウントできません。

今月30日をもって解雇という場合には、13日に予告すれば17日前の予告となります。

 

<解雇予告手当の支払い時期>

解雇予告手当は解雇の通知とともに支払います。

この手当は、給与ではなく支払うことによって効力が発生する特殊な手当なので、「次の給与と一緒に支払います」ということはできません。

もし給与と一緒に支払ったなら、支払ったその日に予告したものとして予告期間が計算されてしまいます。

解雇予告手当を給与振込口座に振り込んでから、解雇の通知をすれば良いでしょう。

 

<注意すること>

解雇予告を正しく行うということは、手続を正しく行うということです。

これによって、不当解雇が正当化されるわけではありません。

つまり、解雇予告をしたり解雇予告手当を支払ったりで、すべての解雇を有効に行えるということではありません。

労働契約法にも、次の規定があります。

 

【解雇】

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

解雇予告手当を支払い解雇を通告して安心していると、解雇の無効を主張され、働いていないのに賃金を請求されるということもありますから注意しましょう。

<労働時間の定義>

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

もっとも、これは法令に規定されているわけではなく、最高裁判所が判決の中で示したものを元に、厚生労働省が「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に掲げているものです。

抽象的な表現に留まっていますので、具体的な事実に当てはめてみた場合には、判断に迷うことが多々あります。

 

<就業規則の規定>

「始業時刻や終業時刻は、タイムカード通りに認定しなければいけないのか」と問われれば、まず就業規則の規定を確認することになります。

タイムカード通りに認定することになる規定には、次のようなものが考えられます。

・勤務開始とともに打刻すること、勤務終了とともに打刻すること

・勤務時間の管理はタイムカードにて行う

必ずしもタイムカード通りに認定することにはならない規定には、次のようなものが考えられます。

・出社時に打刻すること、退社時に打刻すること

・勤務開始前に打刻すること、勤務終了後に打刻すること

・打刻後は速やかに業務を開始すること、業務終了後は速やかに打刻すること

 

<「タイムカード通り」ではない場合の認定>

タイムカード通りに認定することにはならない就業規則の場合、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」によれば、「使用者自ら現認」によることができます。

ここで「使用者」は、労働基準法第10条に定義されている通り、事業主に限られるわけではありません。

判断基準として重要なのは、事業場内で行うことが義務付けられている準備行為・後片付けに必要な時間は労働時間に該当するということです。

また、業務遂行に必要な知識・技能の習得に必要な学習の時間であって、使用者の指示により行われるものは労働時間に該当します。

とはいえ、すべてを「使用者自ら現認」によることは不可能でしょうから、ガイドラインは「客観的な記録を基礎」として確認することも認めています。

この「客観的な記録」の代表がタイムカードの打刻なわけです。

就業規則の規定が、上に例として掲げた「出社時に打刻すること、退社時に打刻すること」であれば、始業終業時刻の認定が打刻された時刻と前後することもあるわけです。

しかし「勤務開始前に打刻すること、勤務終了後に打刻すること」「打刻後は速やかに業務を開始すること、業務終了後は速やかに打刻すること」という規定であれば、始業時刻は出社時の打刻以降であり、終業時刻は退社時の打刻以前であることが確かなわけです。

 

<雑談や小休憩の時間は労働時間か>

就業規則や個別の労働契約で定められた、始業時刻から終業時刻までは休憩時間を除き労働時間となるのが原則です。

労働義務があるからこそ、その場所に拘束されていると考えるのが、社会通念上相当だからです。

たとえば雑談について、会社が「情報交換やコミュニケーション深化のため必要」と認めたのであれば、これを労働時間としても良いわけです。

反対に「他人の業務を妨げる有害な行為」と考えるなら、全社統一のルールとして禁止することも可能ではあります。

またたとえば小休憩について、「リフレッシュし生産性を維持するのに必要」と認めたのであれば、これも労働時間として構わないわけです。

反対に「小休憩はサボりだから許せない」と考えるなら、全社統一のルールとして禁止することも可能ではあります。

しかし、いずれの場合も、ルールを提示する前の行為について、労働時間から差し引くようなことは信義に反します。

 

<解決社労士の視点から>

始業終業時刻を厳密に認定しようとしても、人間の脳の中を探ることができない以上、限界があるのは明らかです。

ましてや、労働時間の厳格な管理となれば、さらに困難を極めます。

また、これを担う「使用者」は、会社にとって貴重な戦力ですから、労働時間の管理に精力を使い果たされたのでは、会社全体の生産性が低下してしまいます。

法令も「労働時間の適正な把握」を求めているのであって、「労働時間の完璧な把握」を求めているわけではありません。

結局、ガイドラインに沿って労働時間を把握し、記録し、保管するのが正しいことになります。

そして、労働者側に有利な方向で多少緩いのは、トラブル回避に必要な「車のハンドルの遊び」のようなものとして考えても良いでしょう。

2022/01/16|2,101文字

 

<LGBTの定義>

LGBTは、4つの性的少数者の頭文字をとったものです。

 

【LGBT】

L

レズビアン(Lesbian)

恋愛の対象が女性である女性
G ゲイ(Gay) 恋愛の対象が男性である男性
B バイセクシュアル(Bisexual) 恋愛の対象が男性・女性の両方である人
T トランスジェンダー(Transgender) 生まれた時の体に基づいて判別された性別と、本人が心の中で認識している性別とが異なる人

トランスジェンダーの中でも、出生上の性に分類されることに持続的な不快感を持ち、精神的な苦痛や生活上の問題を抱えている状態にある人を、医学的に「性同一性障害」と呼んでいます。

 

すべての企業に、LGBTへの理解と具体的な取り組みが求められています。

また、この4つに分類されない性的少数者をQで表わし、LGBTQということも増えています。

 

<特別ではないLGBT>

電通総研が、平成27(2015)年に約7万人を対象に実施した調査で、7.6%がLGBTに該当すると回答したそうです。これは、約13人に1人の割合です。

しかし、「あなたはLGBTのどれかに当てはまりますか?」と尋ねられて、素直に「はい」と答える人は限られているでしょう。

実際には、より多くの人がLGBTに該当するのかもしれません。

LGBTは特別な存在ではないのです。

 つまり、お客様、従業員、お取引先にも、LGBTの方がいらっしゃる可能性は高いのです。

 企業は、性別や年齢によって、採用、教育、異動、待遇などの差別をしないように求められています。

これは、LGBTについても全く同じことが当てはまります。

 

<採用内定にあたって>

企業としては、LGBTQに該当するか否かに関わらず、優秀な人材を採用したいと考えているでしょう。

しかし、内定を受けた学生からLGBTQに該当することを明かされた企業が、戸惑いからか内定を取り消してしまうという事態も見られます。

こうした内定取消の多くは、不当なものであり無効とされるべきものですが、LGBTQの立場は弱く、学生側が諦めやすいものです。

また、内定を出してくれた企業を信じてLGBTQに該当することを打ち明けたのに、内定を取り消されたのですから一層ショックが大きいのです。

LGBTQに該当する人について、本当に内定を取り消さなければならない特殊な業種などであれば、内定取消事由として「学校を卒業できなかった場合」「重大な罪を犯した場合」などに加えて、「LGBTQに該当する場合」を書面で明示しておかなければなりません。

 

<従業員について>

性的少数者である従業員の多くは、誰にも相談できずに悩んでいます。

一方、周囲の従業員や上司は、それと知らずに接しています。

同性同士の雑談に傷つき体調を崩して休んでしまい、退職してしまうことすらあります。

企業は、LGBTQに該当する従業員がいることを想定して、誰でも自分らしく働ける環境を作らなければ、優秀な人材の確保がむずかしくなってしまいます。

トイレや健康診断、セクハラの定義など、企業に求められることは意外な項目にも及びます。

しかし、最初に取り組むべきことは、LGBTQに対する理解を深めるための社員研修だと思います。

もちろん、経営トップをはじめ、幹部社員は特に深い理解を求められます。

特定非営利活動法人「虹色ダイバーシティ」等の団体に講師の派遣を依頼できる場合もありますので、必要に応じて相談すると良いでしょう。

 

<就業規則の整備>

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、次のように規定しています。

 

【その他あらゆるハラスメントの禁止】

第15条  第12条から前条までに規定するもののほか、性的指向・性自認に関する言動によるものなど職場におけるあらゆるハラスメントにより、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

上記のうち「第12条から前条まで」というのは、パワハラ、セクハラ、マタハラ、パタハラ、ケアハラなどを指します。

いずれにせよ、「性的指向・性自認に関する言動」という言葉が入っています。LGBTのうち、LGBは性的指向ですし、Tは性自認に関することです。

就業規則には、こうした規定が必須のものとなっていますし、LGBTQについて従業員の全員に理解できる内容となっている必要があります。

 大企業の従業員であれば、同性パートナーへの福利厚生の適用も期待が高まっていることでしょう。

結婚した時に支給される結婚祝い金や結婚休暇等を、同性間のパートナーについても適用する旨の規定が、就業規則に欲しいところです。

もちろん、お祝い事だけでなく、育児、介護等の特別休暇や結婚以外の慶弔見舞金の対象にすることも考えられます。

これらを運用するには、同性間の事実婚や同性パートナーとの同居を届け出る「パートナー届」のような制度も必要となります。

LGBTQ該当者の中からも優秀な人材を採用できるようになりますし、定着率も向上します。

また、LGBTQ該当者向けの商品やサービスの開発にも有利です。

何より、企業のイメージアップにつながります。

2022/01/15|1,459文字

 

シフト調整で社会保険未加入https://youtu.be/USoOj2jX-z8

 

<シフト減少の具体例>

年中無休の新規店舗で働き始めた。

月曜日と水曜日はダンスのレッスンがあり、この2日を除き1日7時間、週5日の勤務という約束だった。

ところが突然、会社からの指示があったということで、毎週火曜日が定休日になった。

週4日しか働けなくなり、社会保険も資格を失うことになった。

こうした変更は、「不利益変更」と言って法的に許されないのではないか。

 

<不利益変更禁止の原則>

「合理的理由がない限り、労働条件を一方的に不利益になるように変更できない」

これが、不利益変更禁止の原則です。

この原則に違反して労働条件の変更を通告しても、その変更は無効ですから労働条件は元のままということになります。

しかし、毎週火曜日は定休日ですから出勤できません。

これは、会社都合で働けないのですから、本来の賃金の6割以上の休業手当が支払われなければなりません。

 

<合理的理由がある場合>

不利益変更禁止の原則には、「合理的理由がない限り」という条件が付いています。

合理的理由があれば、労働条件の変更も無効になるとは限りません。

上記の例では、採用されるにあたって「月曜日と水曜日は必ずダンスのレッスンを受けたいので出勤できない」という説明をしていなかった。

そして最近になって、店長から「火曜日は店休日なので、月曜日か水曜日に働きませんか」と言われた。

ここで初めてダンスのレッスンの話を持ち出した。

このような事情があれば、合理的な理由は認められやすくなります。

また、会社全体で年次有給休暇の取得率を高める方針で、定休日を設けることにしたのであれば、これにも合理的な理由があったと認められやすいでしょう。

 

<トラブル防止のために>

基本的な労働条件については、「労働条件通知書」などの交付によって、使用者から労働者に通知されます。

これが行われないと、労働トラブル発生のリスクが大幅に上昇します。

言った/言わないの話になりますし、勘違いも増えるからです。

この「労働条件通知書」には、労使の合意内容が記載されるのですが、出勤日を「日、火、木、金、土曜日」と書くか、「週5日勤務(シフト制)」と書くかによって、大きな違いを生じます。上記の例のように、火曜日を定休日にした場合には、この違いが明らかになります。

また、働いている人たちの都合を考えれば、なるべく早い時期に、定休日を設ける理由を具体的に説明しておきたいところです。

できれば他店の動向から「開店5か月後には定休日を設けるかもしれない。この場合には、週1日シフトが減る可能性がある」など労働条件通知書に明示しておけば、トラブルを避けることができます。

ただ、いくら明確に説明しても「売上が落ちてきたから」「退職者が多く、求人広告への応募者が少ないから」というのでは、経営努力の問題とされ合理的な理由があるとは認められにくくなってしまいます。

定休日を設ける場合、いくつもの理由が重なった上でそうするのでしょうから、合理的な理由を中心に説明することが求められています。

 

<解決社労士の視点から>

最初に挙げた具体例では、定休日には仕事が無いということを前提条件として、解決策を探るのが一般です。

しかし、店舗の休業日であっても、清掃、POP作成・交換、レイアウトや棚割りの変更などの業務を行うことは可能ですし、むしろ休業日に行うことが望ましい業務もあると思われます。

ここまで深く踏み込んだうえで話し合いを行えば、たとえ理想的な結論にたどり着けなくても、納得のいく円満解決が期待できるのではないでしょうか。

2022/01/14|918文字

 

功績に応じた退職金https://youtu.be/ApLCDLgG450

 

<モデル就業規則では>

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、次のように規定しています。

 

【退職金の支給】

第52条 勤続  年以上の労働者が退職し又は解雇されたときは、この章に定めるところにより退職金を支給する。ただし、自己都合による退職者で、勤続  年未満の者には退職金を支給しない。また、第65条第2項により懲戒解雇された者には、退職金の全部又は一部を支給しないことがある。

2 継続雇用制度の対象者については、定年時に退職金を支給することとし、その後の再雇用については退職金を支給しない。

 

退職金制度は必ず設けなければならないものではありませんが、設けたときは、適用される労働者の範囲、退職金の支給要件、額の計算及び支払の方法、支払の時期などを就業規則に記載しなければなりません。

これを怠ると、労働基準法違反になります。

 

<慣行がある場合>

会社に就業規則が無い場合や、就業規則はあっても退職金についての規定が無い場合でも、一定の基準で計算された退職金が現に支給されているのであれば、退職者には退職金を受給する権利があるものと考えられます。

ただし、基準が不明確で、経営者に支給の有無や金額の判断が一任されているような場合には、退職者の方から会社に退職金の支払を求めるのは困難です。

あくまでも恩恵的なものであって、退職金の制度があるわけではないという説明ができるからです。

 

<会社の意向で特別に支給する場合>

もっとも、就業規則の規定や過去の例が無ければ退職金を支払えないわけではありません。

長年にわたり会社に多大な貢献をした人に特別に退職金を支給したり、事業縮小に伴い希望退職者を募る時に退職金の支給を条件としたりということがあります。

また、就業規則が規定する金額を上回る退職金が支給される場合もあります。

これらの特別扱いをする場合には、なぜ特別扱いをするのか、その具体的な理由を社内に明示するとともに、これらが前例となるわけではないことを、明確に説明しておく必要があります。

これを怠ると、慣例があるものと勘違いしたその後の退職者から、退職金の支払を求められてトラブルとなる可能性があるからです。

2022/01/13|1,405文字

 

管理監督者の残業手当https://youtu.be/v4V_qEG6RSc

 

<消えない誤解>

「部長や課長は管理監督者だから、労働基準法第41条によると残業手当や休日手当は付かないし、休憩時間も要らないわけで、タイムカードも要らないわけだ」

こんな誤解がいまだに解けないのは何故でしょう。

 

<魔法のことば>

「管理監督者」には2つの意味があります。

 

【2つある管理監督者の意味】

法 令

分 野

管理監督者の意味

労働基準法など

労働条件、労務管理 労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者

労働安全衛生法など

メンタルヘルスを含む健康管理、安全、衛生 職場環境や部下の健康、労働安全、労働衛生に配慮すべき管理職

 

ネットでは「管理監督者」で、次のようなものが検索されます。

・労働基準法における 管理監督者の範囲の適正化のために – 厚生労働省

・しっかりマスター労働基準法 管理監督者編 – 東京労働局

・「管理監督者」 – 確かめよう労働条件 – 厚生労働省

・「管理監督者」の範囲の適正化に関するQ&A – 厚生労働省

これらは、主に労働基準法の解釈に関することが書かれています。

 

ところが、「管理監督者研修」では、次のようなものが検索されます。

・心の健康づくりの研修のために (管理監督者編) – 人事院

・メンタルヘルス対策って、 具体的には何するの? – 愛知県

・管理監督者・職場リーダーのためのラインケアセミナー – 東京労働基準協会

これらの中で「管理監督者」は、労働基準法の規定とは無関係に、「管理職」という意味で使われています。

後ろに「研修」を加えただけで、「管理監督者」の意味が違ってくるのは面白いですね。

 

<使い分け>

「管理監督者」について規定しているのは、労働基準法第41条第2号の条文です。

 

【労働時間等に関する規定の適用除外】

第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

 

この中の「監督若しくは管理の地位にある者」というのが、「管理監督者」の語源です。

 

一方、労働安全衛生法は、労働者の安全・衛生を管理する者として、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者等について定めています。

しかし、職場における労働者の安全と健康について第一に責任を負っているのは事業者とされています。

労働安全衛生法には、次の規定があります。

 

【事業者等の責務】

第三条 事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。

 

ここで、事業者とは誰かというと、会社であれば会社そのものです。

実際には、経営者の他、経営者から権限を与えられ責任を負わされる管理職が、事業者である会社の手足となって労働者の安全と健康の確保に努めるわけです。

 

こちらの方は、素直に「管理職」と表現するのが良いと思います。

 

結局、労働基準法第41条の厳しい条件を満たすような取締役に準ずる労働者に限定して「管理監督者」と呼び、その他の部長や課長などは「管理職」と呼んで混乱を避けるようにしてはいかがでしょうか。

2022/01/12|958文字

 

本当は怖い労働基準法の罰則https://youtu.be/McNtk-uBYBs

 

<健康診断の実施義務>

会社は一定の条件を満たした従業員について、雇入れ時の健康診断、定期健康診断、深夜業の健康診断などの実施義務を負っています。

そして、その結果は本人に通知する義務を負っていますし、結果を5年間保管する義務も負っています。

これを怠ると、会社が存続できなくなる程の大きな経済的ダメージが発生することもあります。

 

<罰則>

義務違反には50万円以下の罰金が科せられます。〔労働安全衛生法第120条〕

たとえば、健康診断の対象となる従業員が5人いたとして、会社が健康診断を全く実施していなかったとします。

実施していなければ、結果を本人に通知できませんし、結果を保管しておくこともできません。

実施義務違反と、通知義務違反と、保管義務違反で、1人当たり150万円の罰金です。

50万円 × 3 = 150万円 ということです。

5人なら 150万円 × 5 = 750万円 となります。

結果は5年間保管ですから、保管されていなければ、健康診断を実施していない証拠になってしまいます。

「個人別結果票をなくしました」と嘘をついても、ではどの健診機関で実施したのかと問い詰められれば、嘘がバレてしまいます。

結局、750万円 × 5回分 = 3,750万円 の罰金ということになります。

 

<損害賠償>

罰金3,750万円で済めば安いものです。

ある従業員が勤務中に脳血管障害で倒れて亡くなったとします。

本人は、健康診断を希望していなかったし、受けなくてラッキーだと納得していたとします。

しかし、遺族はどうでしょう。

配偶者や、親兄弟、お子さんたちは、会社に責任があると考えるでしょう。

となると、会社に対して民事訴訟を提起して損害賠償の請求をします。

会社は、自分たちに責任が無いことの証拠をどれだけ持っているでしょうか。

遺族の皆さんは、法定の健康診断を実施していたのか、その結果を元に必要な指導をしていたのかといったことを追究してきます。

会社としては、法律で定められた最低限のことすらしていなかったのですから全面降伏しかありません。

こうなると、3,750万円の罰金とは別に、1億円の損害賠償を求められたりします。

 一方、法定の健康診断なら、その費用は1人2万円です。

5人なら10万円、5年で50万円です。

これは1人の1回分の罰金と同額です。

2022/01/11|1,903文字

 

働き方改革と労働基準法との関係https://youtu.be/HTNnv1oQJvI

 

<働き方改革の定義>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、日本全体で質の高い労働力を確保するための変革」といえるでしょう。

 

<企業にとっての働き方改革の目的>

政府としては、少子高齢化による労働力不足や消費の落ち込みを解消するために、何としても働き方改革を推進しなければなりません。

しかし、企業が働き方改革に取り組むのは、政府に協力することが目的ではありません。

求職者に「この会社で働きたい」と思わせること、従業員に「この会社で働き続けたい。貢献したい。自分が成長したい」と思わせること、従業員の家族をはじめ取引先や金融機関、そして何よりお客様に「この会社は良い会社だ」と思わせることが、本音の目的だと考えられます。

 

<働き方改革の手段>

上記の目的を果たすための具体的な手段としては、次のようなものが挙げられます。

 

【労働時間の正確な把握】

 社内で把握可能な勤務時間はもちろんのこと、社外での勤務時間や持ち帰り仕事の時間も、可能な限り正確に把握する必要があります。

 これは、すべての働き方改革の前提条件ですから、これを怠ると不平等や不公平が拡大して社員の不満が高まります。

 

【業務の削減】

 過去からの習慣で行っているだけの業務をやめる。経営者の満足のために行っているだけの業務をやめる。この2つでかなりの業務が削減されます。

 加えて、仕事のダブりをなくす、時間帯や手順を変える、取引先との取り決めを見直す、システム化、機械化、外注化、上司や先輩から部下や後輩へのノウハウ伝授など、できることは意外に多いものです。

 これも、すべての働き方改革の前提条件ですから、怠ると会社も従業員も無理を強いられて苦労することになります。

 

【残業時間の削減】

 業務が減れば、自然と残業時間は減っていきます。減らない従業員がいた場合には、その原因を究明して問題点を解消しなければなりません。特定の人に業務が偏っていたり、残業代が欲しくてあえて残業が増えるように立ちまわっていたりと、原因はさまざまです。

 業務が減るペースを上回って残業時間が減る場合には、サービス残業や持ち帰り仕事が発生している可能性があります。

 また、残業時間が減った分だけ、従業員の手取り額が減らないように、何らかの手当を支給する、賞与に上乗せするなどが必要です。収入が減って喜ぶ従業員はいません。

 

【年次有給休暇の取得率向上】

 平成31(2019)年4月以降は、企業側から積極的に年次有給休暇を取得させる義務も発生しています。

 業務の削減が進んでいれば、こうした法改正への対応も難しくはないでしょう。

 ただ、労働基準法が1年間で5日以上と定めたからといって、一律に5日の年次有給休暇を取得させ、それ以上の休暇を取れない雰囲気にしてしまうのは本末転倒です。

 毎年10月に最低賃金が改定されて、そのたびに時給が最低賃金ピッタリに上昇している状態と同じで、あまり喜べるものではありません。

 法改正によって強制される以上の年次有給休暇取得を奨励するのが、本当の働き方改革です。

 また、法改正は、企業に時季指定義務を課したのだという説明も見られます。しかし、年次有給休暇はあくまでも労働者の権利ですから、権利者である従業員の意向を十分に反映して取得日を決定する必要があります。

 

【フレックスタイム制】

 平成31(2019)年4月より、清算期間の上限が1か月から3か月に延長されたのですが、使用者から労働者に業務内容の指示はできても、出勤日や始業・終業時刻の指示はできないという大原則に変更はありません。

 業務に支障が出ないように、労働者同士で話し合って出勤日や勤務時間帯を決めたうえで、使用者に事前報告するというのが上手な運用の基本です。

 あくまでも、生活と仕事の両立を目指し、労働生産性を高めるための制度ですから、結果として残業時間が減少したり年次有給休暇の取得が減ったりはあっても、最初からそれを意図するというのは誤った運用になります。

 

<働かせ方改革にしないために>

会社の立場で、経営陣や人事部門が働き方改革を推進したつもりになっても、それが働き手の必要と欲求に反していれば、それは「働かせ方改革」になってしまいます。

これでは、働き方改革の目的は達せられません。

働き方改革の推進のためには、実施の前後に従業員の声を聞き、不満がないか不合理ではないかということを常にチェックする必要があるのです。

2022/01/10|1,087文字

 

<公益通報者保護制度>

「公益通報」は、日常用語では「内部通報」「内部告発」などと言われます。

法律上は、労働者が不正の目的でなく、通報対象事実が生じまたはまさに生じようとしている旨を、その労務提供先や労務提供先が定めた者、その通報対象事実について処分や勧告等の権限を有する行政機関等に通報することをいいます。〔公益通報者保護法第2条第1項〕

企業の不祥事は、内部からの通報をきっかけに明らかになることが多いものです。

こうした企業不祥事による国民の生命、身体、財産その他の利益への被害拡大を防止するために通報する行為は、正当な行為として事業者による解雇等の不利益な取扱から保護されなければなりません。

事業者にとっても、通報に適切に対応し、リスクの早期把握や自浄作用の向上を図ることにより、企業価値と社会的信用を向上させることができます。

「公益通報者保護法」は、このような観点から、通報者が、どこへどのような内容の通報を行えば保護されるのかというルールを明確にするものです。

 

<公益通報者保護法の改正>

公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和2年法律第51号)が、令和2(2020)6月12日に公布されました。

改正法は、令和4(2022)年6月1日に施行されます。

現在、施行に向け消費者庁を中心に準備が進められています。

 

<内部通報に適切に対応するための体制整備等>

改正法は事業者に対し、新たに公益通報対応業務従事者を定める義務(第11条第1項)、内部の労働者等からの公益通報に適切に対応する体制の整備、その他の必要な措置をとる義務(第11条第2項)を課しています。

ただし、常時使用する労働者の数が300人以下の事業者については、努力義務となります(第11条第3項)。

ここで「常時使用する労働者」とは、常態として使用する労働者を指すことから、パート労働者も、繁忙期のみ一時的に雇い入れるような場合を除いて含まれます。

しかし、役員については、労働者ではないことから含まれません。

 

<グループ会社の場合>

改正法は、独立した法人格を有する事業者ごとに上記の義務を課していますので、グループ全体ではなく、関係会社ごとに通報窓口を整備する義務を果たす必要があります。

例えば、グループ全体としての体制整備の一環で、子会社の従業員が行う公益通報の窓口は親会社とされている場合もあると考えられます。

このように子会社が、自らの内部規程に定めたうえで、通報窓口を親会社に委託して設置し、従業員に周知しているなど、子会社として必要な対応をしている場合には、体制整備義務を果たしていると考えられています。

2022/01/09|1,442文字

 

統計調査などによっては、異なる意味で使用されることもありますが、基本的なものをまとめてみました。

 

<常用労働者>

次のうちいずれかに該当する労働者のこと。

(1) 期間を定めずに雇われている者。

(2)  1か月以上の期間を定めて雇われている者。

つまり、1か月未満の期間を定めて雇われている者は、常用労働者ではない。

 

<パートタイム労働者>

「常用労働者」のうち次のいずれかに該当する労働者のこと。

職場により基準が異なる。

(1) 1日の所定労働時間が一般の労働者よりも短い者。

(2) 1日の所定労働時間が一般の労働者と同じで1週の所定労働日数が一般の労働者よりも少ない者。

 

<一般の労働者>

「常用労働者」のうち「パートタイム労働者」を除いた労働者のこと。

原則として、正社員のように1日の所定労働時間が最も長く、1週の所定労働日数が最も多い者。

職場により基準が異なる。一般労働者とも言う。

 

<所定内労働時間数>

事業所の就業規則や労働契約で定められた、正規の始業時刻と終業時刻との間の実労働時間数のこと。休憩時間は差し引かれる。

所定労働時間とも言う。

統計資料では、労働者によって異なる場合に、最も多くの労働者に適用されるものを、その企業の所定内労働時間数としている。変形労働時間制が採用されている場合には、期間内の平均をその企業の所定内労働時間数としている。

 

<所定外労働時間数>

早出、残業、臨時の呼出、休日出勤等の実労働時間数のこと。

 

<総実労働時間数>

「所定内労働時間数」と「所定外労働時間数」の合計。

 

<変形労働時間制>

週40時間、1日8時間の労働時間の原則に対して、一定の期間内で例外を認める制度。

1年単位の変形労働時間制、1か月単位の変形労働時間制、1週間単位の非定型的変形労働時間制、フレックスタイム制がある。

 

<みなし労働時間制>

特定の事情により、労働時間の算定が困難であったり、通常と同じ算定方法が適切でなかったりする場合に、労使協定等により定めた時間を労働したものとみなす制度。

事業場外みなし労働時間制、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制がある。

 

<事業場外みなし労働時間制>

営業社員など、事業場外で業務に従事し、使用者の具体的な指揮・監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な業務を遂行する場合に、所定労働時間、または労使協定等により通常必要とされる時間を労働したものとみなす制度。

 

<専門業務型裁量労働制>

研究開発など、その業務の性質上その遂行の方法や時間配分の決定等に関し具体的な指示をすることが困難として法定されている業務に就かせた場合に、あらかじめ定めた時間労働したものとみなすことを労使協定により定める制度。

 

<企画業務型裁量労働制>

事業運営に関する企画、立案、調査、分析の業務を行うホワイトカラー労働者を対象として、労使委員会で決議した時間労働したものとみなす制度。

導入には、労使委員会で5分の4以上の多数による決議が必要であり、また、対象労働者本人の同意が必要。

 

<勤務間インターバル>

実際の終業時刻から次の始業時刻までの間隔。

これを一定時間以上空ける制度を、勤務間インターバル制度という。

 

<時間外労働>

法定労働時間(原則、1日8時間、1週40時間)を超えて労働させることをいう。

時間外労働の割増賃金も、法定労働時間を超える部分について発生する。

 

厄介なことに、法令の用語と統計での用語が異なったり意味が違っていたりします。

注意して使い分けましょう。

2022/01/08|486文字

 

特定個人情報保護委員会事務局により、個人番号(マイナンバー)・特定個人情報の基本ルールが4か条にまとめられています。

 

<取得・利用・提供のルール>

・個人番号の取得・利用・提供は、法令で決められた場合だけ。これ以外では、「取れない」「使えない」「渡せない」。

たとえ便利でも、会社がマイナンバーを社員番号として使用することはできません。

 

<保管・廃棄のルール>

・必要がある場合だけ保管。必要がなくなったら廃棄。

マイナンバーの記載された書類が、法定の保存期間を経過し保管の必要がなくなった場合には、できるだけ速やかに廃棄しなければなりません。

 

<委託のルール>

・委託先を「しっかり監督」再委託は「許諾が必要」

会社がマイナンバーの管理を専門業者に委託しても、委託先に対して必要かつ適切な監督を行わなければなりません。

また、委託先が再委託できるのは、最初の委託者の許諾を得た場合だけです。

 

<安全管理措置のルール>

・漏えいなどを起こさないために。

会社は、漏えい、滅失、毀損の防止その他の適切な管理のため、適切な安全管理措置を講じ、従業員に対しても適切な監督を行わなければなりません。

2022/01/07|1,256文字

 

<出産育児一時金>

昔は分娩費(ぶんべんひ)などと呼ばれていました。

出産育児一時金は、健康保険の加入者(被保険者)やその扶養家族(被扶養者)が出産した時に、協会けんぽなどの保険者に申請すると1児につき42万円が支給される一時金です。

また、「1児につき」ですから双子なら2倍、三つ子なら3倍の金額が支給されます。

ただし、産科医療補償制度に未加入の医療機関等で出産した場合は40万8千円です(令和4年1月1日改定)。

この産科医療補償制度というのは医療機関等が加入する制度で、加入医療機関で制度対象となる出産をされ、万一、分娩時の何らかの理由により重度の脳性まひとなった場合、子どもとご家族の経済的負担を補償するものです。

 

<未婚の娘の出産>

平成14(2002)年10月以前は、被保険者の他には配偶者のみに「配偶者出産育児一時金」が支給されていましたが、法改正により被保険者の被扶養者が出産したとき「家族出産育児一時金」が支給されるようになりました。

こうして、扶養に入っていれば未婚の娘でも妹でも、支給されるようになったのです。

そもそも結婚するかどうかは、当事者の自由です。〔日本国憲法第24条〕

入籍していないと支給されないというのは平等権の侵害です。〔日本国憲法第14条第1項〕

少子化対策の流れの中で、やっと憲法の趣旨が届いた感じです。

 

 <支給の条件>

妊娠85日以後の生産(早産)、死産(流産)、人工妊娠中絶であることが必要です。

ですから、会社で出産祝金の支給対象外となる場合であっても、出産育児一時金の支給対象となることがあります。

 

<直接支払制度>

出産にかかる費用に出産育児一時金を充てることができるよう、協会けんぽなどの保険者から医療機関等に、直接支払う仕組み(直接支払制度)があります。

この場合、出産費用としてまとまった額を事前に用意する必要がないので大変助かります。

もちろん、出産後に健康保険の加入者(被保険者)が直接受け取ることもできます。

 

<出産費貸付制度>

出産費用に充てるため、出産育児一時金の支給までの間、出産育児一時金の8割相当額を限度に資金を無利子で貸し付ける制度があります。

対象者は、出産育児一時金の支給が見込まれる方のうち、出産予定日まで1か月以内の方、または妊娠4か月以上で医療機関等に一時的な支払いを要する方です。

 

<資格喪失後の出産育児一時金>

退職などにより、健康保険の加入者(被保険者)でなくなった場合でも、資格喪失の日の前日(退職日等)まで被保険者期間が継続して1年以上ある方が、資格喪失日から6か月以内に出産したときは、出産育児一時金が支給されます。

たとえば、健康保険に加入していた女性が退職して資格を喪失し、夫の扶養に入ってから出産した場合には、本人の出産育児一時金か、夫の家族出産育児一時金のどちらか一方を選んで支給を受けます。

ただし、健康保険の加入者(被保険者)の資格喪失後にその被扶養者だった家族が出産しても、家族出産育児一時金は支給されません。

2022/01/06|1,331文字

 

モデル就業規則の性質と使い方https://youtu.be/5M0ROmDfCxk

 

<就業規則作成料金の相場>

社会保険労務士に就業規則の作成を依頼すると、本格的なオーダーメイドであれば相場は20万円前後です。

何に経費がかかるのかというと、経営者や人事部門の責任者と繰り返し行う打合せの時間、移動時間、就業規則をパソコンで作成する時間、これらすべての人件費です。

こうした業務を行えるのは、労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法その他多数の労働法についての専門知識があり、法改正や通達の変更、裁判所の新判例や判例変更、社会情勢の変動などに即した知識の更新があって、トラブル対応の実戦経験を積んでいればこそのことです。

日頃の自己研鑽あっての高度に専門的な業務なので、人件費の時間単価が高額になるのです。

(もっとも、とりあえずの就業規則であれば1~2万円で出来てしまいます。急いで形式だけ調えたいというご依頼もありますので。)

 

<高い就業規則で元が取れるのか>

下手な就業規則はトラブルを招きます。

会社と退職者との間で争いが生じ、徹底的に争った場合には、時間、労力、人件費その他の経費、そして何より精神力の負担が大変です。

裁判になれば、会社の評判も落ちます。

退職者も出ますし、求人に対する応募者も来ませんから、人材不足となります。

会社の負担を減らすため、和解に持ち込むことができたとしても、3・6・12の法則があると言われるくらいです。

 

【解決金の相場3・6・12の法則】

賃金の3か月分 ― 退職者側に悪質性が認められる場合の解決金

賃金の6か月分 ― 会社と退職者のどちらが悪いともいえない場合の解決金

賃金の12か月分 ― 会社側に悪質性が認められる場合の解決金

 

こうしてみると、優れた就業規則でトラブルを防ぐことができるか、あるいは会社に悪質性が認められずに済むことが1回でもあれば、十分に元を取ることができます。

 

ネットに公開されている就業規則を手直ししたり、友人の会社の就業規則をコピーさせてもらったりでは、自社の実態に合った就業規則にはなりません。

この実態に合わない就業規則がトラブルの種となるのです。

 

<就業規則はいつ作るか>

労働基準法には、次の規定があります。

 

【作成及び届出の義務:労働基準法第89条】

常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。(以下略)

 

これによると、従業員が9人までは就業規則の作成義務が無いことになります。

しかし、なるべく早く就業規則作りに取りかかることを強くお勧めします。

残念なことに、「そろそろ従業員の人数が2ケタになりそう」「労働基準監督署の監督が入って勧告を受けた」というタイミングで、就業規則の作成を依頼してくるお客様が多いのです。

 

会社を設立し、いつか従業員を雇入れる予定があるのなら、すぐに就業規則を作ることをお勧めします。

従業員が1人でもいれば、就業規則の変更にあたって、不利益変更という厄介な問題が出てきます。

しかし、適用対象者がいないのであれば変更は自由です。

思い立った時に変更をかけていけば、会社にぴったりの就業規則が完成してから従業員を雇入れるという理想的な形になります。

2022/01/05|1,532文字

 

働き方改革で増えた一斉休業https://youtu.be/j4heUaohaCc

 

<ノーワーク・ノーペイの原則>

「ノーワーク・ノーペイ」とは、「労働者の労務提供がなければ使用者は賃金を支払わなくてよい」という原則のことです。

これを直接規定した法令はありませんが、労働契約法には次の規定があります。

 

【労働契約の成立:労働契約法第6条

労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

 

つまり労働契約は、労働者の労働に対して使用者が賃金を支払う約束だということです。

裏を返せば、労働者が労働しなければ使用者に賃金支払義務は無いのが原則です。

ただし、使用者側に何か落ち度があれば、賃金の全額または一部の支払義務が生ずることはあります。

 

使用者の都合で半日休みになったときの減給がどこまで許されるかは、「使用者の都合」の中身によって結論が分かれます。

 

<使用者に故意・過失がある場合>

使用者に故意・過失があって、労働者が働けない場合には、賃金全額を支払うという規定が民法にあります。

この場合には、減給できないことになります。

 

【債務者の危険負担等:民法第536条第2項】

債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

 

この中の「債権者」というのは、労働の提供を受ける権利がある使用者のことをいいます。

「債務を履行」というのは、労働の提供をいいます。

「債務者」は、労働を提供する義務がある労働者のことです。

「反対給付」は、労働と引換えに受取るもの、つまり賃金を指します。

 

使用者に明らかな故意・過失がある場合としては、次のようなものが想定されます。

・使用者が設備の法定点検を何度も怠っていたために、設備に欠陥を生じ営業時間の途中から営業できなくなった場合。

・お店のカギを開けられるのが使用者である店長のみであったのに、寝坊して大幅に遅刻したため、営業開始時間が遅くなった場合。

 

<使用者側に責任がある場合>

使用者に明らかな故意・過失が無くても、労働者には責任が無く、どちらかというと使用者側に原因がある場合には、使用者は労働者に対して平均賃金の6割以上を支払う義務があります。

この場合には、4割まで減給できることになります。

このことを定めたのが、労働基準法の次の規定です。

 

【休業手当:労働基準法第26条】

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

 

条文に使われている言葉は、民法第536条第2項も、労働基準法第26条も同じで、「責(せめ)に帰すべき事由」です。

しかし、その意味合いは、民法では故意・過失を指し、労働基準法では広く何らかの責任があることを指していると解釈されています。

 

使用者に明らかな故意・過失は無いものの、何らかの原因がある場合としては、次のようなものが想定されます。

・取引先の手配ミスによって材料が不足し製造ができない場合。

・景気が急速に悪化したため、新規学卒採用内定者を自宅待機させた場合。

 

<使用者側に全く責任が無い場合>

どう考えても、使用者に責任の無い理由で、労働者が働けない状態になったのなら、使用者は賃金を支払う義務がありません。

この例としては、次のようなものがあります。

 

・2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の被害・影響により、計画停電が実施されたとき。

・労働安全衛生法の規定による健康診断の結果に基づいて、労働者を休業させたとき。

2022/01/04|911文字

 

パワハラ加害者の処分https://youtu.be/CHoRL8XmcXA

 

<パワハラの定義>

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(通称パワハラ防止法)によれば、パワハラとは職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されるものをいいます。〔同法第30条の2第1項〕

 

<会社が加害者の味方となる理由>

まさに「優越的な関係」がポイントです。

加害者は、直接の被害者よりも、役職が上であったり、社歴が長かったり、知識・技能・経験・成績が優れていたり、会社での評価が高かったりします。

会社側の立場からすれば、加害者にはパワハラの問題はあるものの、気持ち良く働いて会社に貢献し続けて欲しいという思惑があります。

 

<会社が加害者の味方となる現象>

こうした思惑から、会社が次のような態度に出てしまうことがあります。

・加害者の言い分だけを聞いて事実の有無を判断する。

・直接の被害者に対し「パワハラは無かった」と説得する。

・直接の被害者を異動あるいは休職させる。

・直接の被害者に退職勧奨あるいは解雇する。

・加害者と被害者の双方に口止めする。

・すべてを無かったことにする。

 

<会社が加害者の味方となる弊害>

会社が上記のような対応をすれば、パワハラ防止どころかパワハラの助長となってしまいます。

直接の被害者が、会社に慰謝料を含め損害賠償請求訴訟を提起するとなれば、ついでに未払賃金などの請求もするでしょう。

裁判は公開されますから、会社の評判は落ち、従業員のモチベーションは低下します。

多数の退職者が出たり、入社を希望する人が激減したりと、人材の確保が難しくなります。

会社が味方したパワハラ加害者の行為も明らかにされますから、加害者とその家族は、元の生活を送れなくなります。

 

<解決社労士の視点から>

事実の確認が大前提ですが、直接の被害者や加害者の言動を見聞きした間接的な被害者からの聴き取りは必須です。

そして、就業規則に従い正しく加害者の懲戒処分、異動、退職勧奨などを行うことになります。

パワハラは絶対に許さないという態度を示すことによってこそ、会社を守ることができるのではないでしょうか。

2022/01/03|1,414文字

 

ミスが多い社員の解雇https://youtu.be/76BoK7FIawM

 

<モデル就業規則の規定>

能力不足を理由とする解雇に関して、厚生労働省労働基準局監督課が作成したモデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、次のように規定しています。

 

(解雇)第51条  労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。

⑧ その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき。

 

直感的には、能力不足を理由とする解雇は、厚生労働省の立場からも②の規定により認められていると読み取れます。

しかし、この規定をよく見ると、解雇の条件がクリアされるためには、会社側にもそれ相当の準備が必要であることに気づきます。

裏を返せば、事前の準備なく安易に解雇すればしっぺ返しを食らうということになります。

 

<著しく不良>

「勤務成績」「業務能率」という言葉に明確な定義があるわけでもなく、ましてや評価基準となると、客観的に統一されたものなどありません。

これらが「著しく不良」であることを、会社側が証明するのは困難です。

 

<向上の見込みがない>

向上の見込みがあるか、それともないか、これを見極めるには、会社側が様々な教育・研修を行ってみる必要があります。

上司が熱心に指導して、少しも成長しないので匙を投げたという場合であっても、上司の指導力不足を疑われたら、反論するのもむずかしいでしょう。

 

<他の職務にも転換できない>

他の部署で活躍できるか、それともできないか、これを見極めるには、異動させてみないと分からない点もあります。

しかし、すべての部署を経験させてから見極めるのは、余りにも非現実的です。

 

<就業に適さない>

これはもう、その会社で働くことが向いていない、あるいは、働くことそのものが向いていないと言っているに等しい表現です。

そのような人物であれば、最初から採用しませんから、この規定を根拠として解雇するのは現実的ではありません。

 

<別の攻め方>

そもそも、「勤務成績」「業務能率」「向上の見込み」や適性は、目に見えない抽象的なものです。

ですから、これらを根拠に解雇しても、不当解雇を主張され解雇を無効にされる恐れがあります。

むしろ、不都合な事実を多数突き付けて、⑧の「その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき」を理由に解雇するのが現実的です。

 

【解雇理由となる不都合な事実の例】

ルール違反が多い。

勤務中の居眠りが多い。※ただし、会社には健康管理の責任があります。

勤務中に個人的な興味でスマホをいじる時間が長い。

仕事をしているふりをして時間をつぶしている。

時々勤務中に感情を爆発させ叫ぶことがある。

上司から注意しても詫びないし、反省の色を示さない。

上司の指示に従わない。

世間一般の常識から外れた行為が目立ち、その自覚が無い。

遅刻の回数が多く、1回あたりの遅刻が長時間。

以上について、口頭・文書での注意が繰り返されているが改善されない。

 

万一、裁判などになれば「いろいろありました」ではなく、いつどこで何があったのかという事実の記録が必要です。

つまり、解雇するにもそれ相当の証拠の蓄積が必要になるということです。

 

大前提として、解雇が無効とされないためには、就業規則に具体的な解雇理由の規定が置かれていることも必要です。

その意味で、解雇に関する規定は、具体的で詳細なものであることが求められるのです。

2022/01/02|1,596文字

 

本当は怖い労働基準法の罰則https://youtu.be/McNtk-uBYBs

 

<社員の声の重要性>

大企業や大手グループ企業は社員の声を聞くことに熱心で、このために社内に独自の仕組が構築されています。

これは、企業の成長や改善にとって、社内の事情を知っている社員の声が最も貴重な情報源だからです。

ましてや今は、働き方改革が推進されています。

これは国の方針ですから、軽視するわけにはいきません。 

たしかに、働き方改革の定義は必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ日本全体で良質な労働力を確保するための急速な改善」といえるでしょう。

今、働き方改革を誤った方向に進めている企業は、働き手の必要と欲求を無視して独善に走り、社員に背を向けられてしまっています。

こうした事態を招かないためにも、社員の声を聞くことが必要なのです。

 

<小さな会社では>

小さな会社の社長の多くは、社員の声を聞くことにあまり熱心ではありません。

なぜなら、社内のほとんどの事は社長自身が決定しているのですから、今さら社員の声など聞いてみても、それはそれとして、やはり自分が決めると考えているからでしょう。

しかし、中には「もっと社員の声を聞きたい」「社員が意見を言ってくれないと本当の改善ポイントが見えない」「会社の成長のために批判でも良いから考えを出してほしい」と思っている社長もいます。

これは、会社が大きく成長する兆候です。

 

<目的意識の重要性>

まず、何のために社員の声を集めるのか、社内に具体的な目的を明示しなければなりません。

ただ単に、「成長のため」「改善のため」と言ってみても、社員はこれを信用しません。

小さな会社では、多くの事を社長が決定しています。

ですから、会社の現状について問題点を指摘したり、何らかの改善提案をしたりすれば、それはそのまま社長批判にもなりうるのです。

「社長は社員に声を出させることで不満分子を見つけ出し、徹底的に叩こうとしているのではないか」「少しでも自分の方針に合わない社員を解雇したいのではないか」と、疑心暗鬼を生ずるのも無理のないことです。 

社員の声を集める目的を明確にするには、ただ漠然と会社についての意見を求めるのではなく、具体的なテーマを提示することが必要です。

たとえば、「経費削減についての意見が欲しい」よりも「コピー機の使い方について経費削減の視点から意見が欲しい」の方が、意見が出やすくなります。

「整理整頓について聞かせて欲しい」よりも「机やロッカーをはじめ、物品の置き場所について見直したいので、気付いたことを教えて欲しい」の方が、社員の声が集まりやすくなるわけです。

これは、目的が具体的で明確ですから、出した意見が変なことに悪用される恐れが無いからでしょう。

 

<声が上がったときの対応>

社員から声が上がったら、社長は速やかに対応しなければなりません。

まずは、意見を出してくれたことに対するお礼を述べ、ほめることは最低限必要なことです。

うっかり聞き流しになってしまったら、二度と意見は出てきません。

意見を馬鹿にしたり、ケチを付けたりしても、社員に対する裏切りになります。

とはいえ、社長自身が出てきた意見に対して、どのように対応して良いのか迷ってしまい、身動きが取れなくなることもあります。

こんなときは、出てきた意見を公表し、この意見に対して他の人の意見を聞くと良いでしょう。

他の人の意見が出にくければ、具体的にそれを実施する場合の経費や手間、時間について考えを出してもらうなど、前向きに取り組む姿勢を見せたいところです。

 

<記録を残す>

社員から上がった声の中には、今は無理でも、3年後、5年後に役立つものがあります。

少なくとも5年間は見直しができるように、記録を残しておく必要があります。

なにしろ社員からの声は、大変貴重なものなのですから。

2022/01/01|1,218文字

 

法改正により違法残業の範囲が広がっていますhttps://youtu.be/il6m-PyrFT4

 

<法改正の目的>

令和4(2022)年4月、改正個人情報保護法が全面施行されます。

今回の改正目的は「個人の権利利益の保護」、「技術革新の成果による保護と活用の強化」、「越境データの流通増大に伴う新たなリスクへの対応」「AI・ビッグデータ時代への対応」などです。

この背景には、個人情報が多様に利活用される時代になり、リスク対応が急務になっていることがあります。

事業規模に関わらず、事業者が守るべき責務が拡大されました。

 

<短期保存データの開示等>

6か月以内に消去する短期保存データは、開示、利用停止等の対象外とされていましたが、これも対象に含まれるようになります。

しかし、これまで短期間で消去していた個人データを、開示請求等に応じるために保存する必要はありません。

ただ、利用する必要がなくなったときは、遅滞なく消去することが努力義務とされます。

例外として、検索できるように作られた「個人情報データベース等」を構成する「保有個人データ」は開示請求の対象となりえます。

この場合でも、業務の適正な実施に著しい支障を及ぼす恐れがある場合には、開示請求に応じる義務がありません。

 

<第三者提供記録の開示>

個人データの授受に関する第三者提供記録については、これまで本人が開示請求できるか否か明確な規定は無かったのですが、開示請求できることが明確に規定されました。

これによって本人は、提供元・提供先の双方に開示請求できることが明らかとされました。

 

<利用停止・消去請求権>

一部の法違反の場合に加えて、利用する必要がなくなった場合、重大な漏えい等が発生した場合、さらには本人の権利または正当な利益が害される恐れがある場合にも、本人から個人データの利用停止・消去等を請求できるようになります。

ここで「利用する必要がなくなった場合」とは、利用目的が達成されその目的との関係ではその個人データを保有する合理的な理由が無くなった場合、利用目的が達成されなかったものの前提となる事業自体が中止となった場合などをいいます。

求人に対する応募者のうち、採用されなかった者の情報について、合理的な期間を経過した後に、本人から利用停止を求めた場合などが含まれます。

 

<漏えい等報告・通知>

情報の漏えい等が発生し、個人の権利利益が害される恐れが大きい場合に、個人情報保護委員会への報告と、本人の通知は努力義務とされていましたが、これらが法的義務とされます。

例としては、従業員の健康診断結果、個人のクレジットカード番号、不正アクセスによる個人データの漏えいなどがあります。

また、個人情報保護委員会への報告は、事態を知って速やかに行う速報と、すべての報告事項が揃ってからの確報の2段階で行うことが求められます。

 

<解決社労士の視点から>

今回の法改正では、事業規模にかかわらず対応が求められます。

自社だけでなく、関連会社や取引先に対しても、適切な対応を促し確認することが必要でしょう。

アクセスカウンター

月別過去の記事

年月日別過去の記事

2022年1月
« 12月   2月 »
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31