2022/03/11|1,327文字
<初期対応の重要性>
顧客等から最初に対応を求められた現場従業員の対応次第で、その場で事態が収拾したり、本格的なカスハラに発展したりと、その後の展開に大きな差が生じます。
現場の従業員が、誠意ある対応をすることはもちろんなのですが、カスハラに発展させないためには、状況把握、事実確認を正確かつ客観的に行い、記憶や記録に留めておく必要があります。
この点、不慣れな新人では、頭の中が真っ白になって、記憶も記録も残らない可能性がありますので、早期に現場責任者や顧客対応責任者に引き継ぐのがお勧めです。
ただし、いきなり暴力行為やセクハラ行為があった場合には、すぐさま周囲の従業員の助けを求めるルールにしておくことは言うまでもありません。
<カスハラに発展させない対応>
まずは傾聴の態度をもって、顧客等の話を途中で遮ったり、言葉を差し挟んだり、反論したりせず、最後まできちんと聴くことが基本です。
顧客等の怒りや興奮は、真剣に聞いてもらうことで、かなり収まるものです。
事情が分かるまでは、顧客等の態度に驚いてむやみに謝罪してはいけません。
ただ、「不快な思いをさせたこと」「説明不足があったこと」は、現に顧客等が不快に思っていたり、勘違いしていたりの事実を認めるに過ぎませんから、お詫びしても問題ありません。
次に、顧客等の話の内容から、「主張」の内容を抽出・把握します。
ここで、不足する情報があれば追加で話を聴きます。
こうして確認できた情報を、時系列に整理し、意見を交えず、現場責任者や顧客対応責任者に報告します。
ただし、顧客等の単純な勘違いであれば、説明不足を侘びたうえで追加の説明をすれば解決するでしょう。
<応接室等での対応>
店頭など現場での対応が、他のお客様のご迷惑になる場合や、クレームを申し出た顧客等が希望した場合など、場所を変えて、また日を変えて、改めて対応することがあります。
この場合は、現場従業員ではなく、現場責任者と顧客対応責任者の2人で対応するのが一般でしょう。
ここでも、傾聴の態度をもって、顧客等の話を途中で遮ったり、言葉を差し挟んだり、反論したりせず、最後まできちんと聴くことが基本です。
応接室等では、テーブルがありますから、メモを取りながら聴くことができます。
こうすることで、顧客等も正確に話すことを心がけるものです。
討論会ではありませんから、問題解決に向けた前向きな話し合いとする必要があります。
このとき、業界用語や専門用語を用いてしまうと、ごまかしているような印象を与えてしまうので注意が必要です。
最後に「出来ることは出来る」「出来ないことは出来ない」ことを明確にします。
そして顧客等が「出来ること」だけでは納得がいかないという態度を示したり、感情的になっていたり、あるいは現場責任者の判断で結論を出せない場合には、後日改めて回答するようにします。
<解決社労士の視点から>
顧客等への初期対応によっては、収まるはずのクレームが、過剰な要求や不当な言いがかりへと発展してしまうこともあります。
こうなると、顧客等を挑発してカスハラを誘発してしまったことにもなりかねません。
顧客等を加害者にしないためにも、初期対応を確実にすることが必要なのです。