セクハラやパワハラで被害者から「処罰しないで」という申し出があったら

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<処罰しないで>

セクハラやパワハラの直接の被害者から「加害者を処罰しないでほしい」という申し出があった場合には、どのように対応したら良いのでしょうか。

被害を受けたその瞬間には大きなショックを受けたものの、後で冷静になってから、自分にも落ち度があったのではないか、ハラスメントとは言い切れないのではないかなどと考えが変わり、自分のせいで相手が懲戒処分を受けたら申し訳ないという気持ちになることもあるのです。

 

<ハラスメントの被害者>

さて、セクハラやパワハラの被害者とは誰でしょうか。

セクハラは、職場で性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、身体への不必要な接触など、意に反する性的な言動が行われ、拒否したことで不利益を受けたり、職場の環境が不快なものとなることをいいます。

パワハラは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えられたり、職場環境を悪化させられる行為をいいます。

こうしてみると、職場環境が悪化し不快なものとなることによって、直接行為を受けた人だけでなく、その行為を見聞きした人も被害者になるということが分かります。

たとえば、店長が店員を殴り、その場に他の店員がいたのなら、その場に居合わせた店員全員がパワハラの被害者です。

 

<被害者の同意>

被害者の同意があったから許されるというのは、セクハラやパワハラが密室で行われ、加害者と被害者だけが事実を知っていて、他の人は見聞きしていないという状況が前提となるでしょう。

多くの人が事実を見聞きしていながら、全員がセクハラやパワハラに同意しているというのは、容易には考えられないことです。しかし、事後の承諾であれば、ありえないことではありません。

 

<懲戒処分の目的>

そもそも懲戒処分の主な目的としては、次の3つが挙げられます。

 

【懲戒処分の主な目的】

1.懲戒対象者への制裁

懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとする。

 

2.企業秩序の回復

会社に損害を加えるなど不都合な行為があった場合に、会社がこれを放置せず懲戒処分や再教育を行う態度を示すことによって、他の社員が納得して働けるようにする。

 

3.再発防止と労働者の安心

社員一般に対してやって良いこと悪いことの具体的な基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持する。

 

こうしてみると、被害者から「処罰しないで」という申し出があり、ある程度被害者からの事後承諾があったとしても、懲戒処分の必要がなくなるわけではありません。

それでも、懲戒対象者への制裁の必要性は低くなりますし、企業秩序の侵害や労働者の不安は少なかったと評価できるでしょう。

ただ、再発防止の観点からはセクハラやパワハラを見逃すことができません。いつも被害者の事後承諾が得られるとは限らないからです。

 

<企業の取るべき対応>

最新版(平成31(2019)年3月版)のモデル就業規則には、次の規定があります。

 

(懲戒の事由)

第64条 2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

 

直接の被害者から「加害者を処罰しないでほしい」という申し出があったことは、この規定の中の「その他情状」に該当する事実です。

ですから、直接の被害者の申し出があったからといって、不問に付するというのではなく、情状の一つとして考慮し、場合によってはより軽い懲戒にすることもあるというのが、企業の取るべき対応だと考えられます。

 

2019.07.23. 解決社労士 柳田 恵一