真実の指摘とパワハラの成否

2022/04/06|906文字

 

パワハラの6類型

 

<パワハラの構造>

パワハラは次の2つが一体となって同時に、あるいは時間的に前後して行われるものです。

 

【パワハラの2要素】

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

 

ほとんどの場合、行為者はパワハラをしてやろうと思っているわけではなく、会社の意向を受けて行った注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

 

<業務上不要な人権侵害行為>

業務上必要な行為と同時、あるいは前後して行われる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

 

【無用な人権侵害】

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

 

刑事上は犯罪となる行為が、同時に民事上は不法行為にもなります。

つまり、刑罰の対象となるとともに、損害賠償の対象ともなります。

 

<真実でも>

正しい事実の指摘なら責められる理由は無いだろうというのは素人の考えです。

名誉毀損について、刑法は次のように規定しています。

 

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

 

つまり、生きている人のことについては、事実の有無にかかわらず名誉を毀損することは犯罪になるということです。

 

「仕事が遅い」「ミスが多い」「仕事をサボっている」という指摘を、人前で行ったなら、それは名誉棄損罪に該当するでしょう。

パワハラとして社内で懲戒の対象になるのはもちろん、刑事告訴の対象となりうるわけです。

損害賠償の対象となる民事責任の面では、 虚偽の事実ではなく、本当の事実である方が、名誉の侵害が深刻な場合もあります。

この辺りのことが、就業規則で対応できていない会社もあります。

就業規則での対応も、社員教育も速やかに行う必要があるでしょう。

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