フレックスタイム制と勤務日時の指定

2022/04/10|1,815文字

 

フレックスタイム制と年次有給休暇

 

<よくある誤解>

フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。

この意味が誤解されていると思います。

従業員の一人ひとりが、「気が向いた時に出勤して、帰りたくなったら帰る」のであれば仕事が回らなくなります。

使い物にならない制度を、労働基準法が定めるはずがありません。

 

<フレックスタイム制の公式説明>

フレックスタイム制については、厚生労働省が次のように説明しています。

 

フレックスタイム制のもとでは、あらかじめ働く時間の総量(総労働時間)を決めた上で、日々の出退勤時刻や働く長さを労働者が自由に決定することができます。

 

フレックスタイム制を導入するためには、就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨を定める必要があります。

 

この一方で、次のような説明もあります。

 

フレックスタイム制は始業・終業時刻の決定を労働者に委ねる制度ですが、使用者が労働時間の管理をしなくてもよいわけではありません。 実労働時間を把握して、適切な労働時間管理や賃金清算を行う必要があります。

 

<労働者という言葉の意味>

まず「使用者」の意味ですが、これについては労働基準法第10条に規定があります。

 

この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。

 

「すべての者をいう」ですから、社長1人ではありません。

この条文の「事業主」とは、個人事業なら事業主ですし、会社なら会社そのものです。

「事業の経営担当者」とは、代表者、取締役、理事などです。

「その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」の中に、人事部長や労務課長などが含まれることも明らかです。

 

一方で、「労働者」というのも、労働者一人ひとりを指しているのではなく、使用者に対置される意味での労働者です。

つまり、社内の労働者全体であり、「労働者たち」という意味です。

 

この理解のもとで、ここまでに出てきた話の中の「労働者」を「労働者たち」に言い換えると、次のようになります。

 

フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者たちが日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。

 

フレックスタイム制のもとでは、あらかじめ働く時間の総量(総労働時間)を決めた上で、日々の出退勤時刻や働く長さを労働者たちが自由に決定することができます。

 

フレックスタイム制を導入するためには、就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を労働者たちの決定に委ねる旨を定める必要があります。

 

「労働者」と「労働者たち」とで何が違うかというと、「労働者」ならば一人ひとりの自由な考えということになるのに対して、「労働者たち」ということになると、仕事の効率を考え、仕事に支障が出ないように、協議のうえ日々の始業・終業時刻、労働時間を自分たちで決めるということです。

 

<働き方改革の面で>

使用者は、労働者一人ひとりに対して、出勤日や始業・終業時刻を指定することができません。

しかし、当然のことですが、仕事の指示を出すことはできます。

労働者側は、使用者側から指示された仕事を効率よく成し遂げるために、労働者同士で協議して出勤日や始業・終業時刻を決めることになります。

こう考えると、フレックスタイム制は、仕事の効率が向上する制度であることがわかります。

 

<不都合が感じられる原因>

フレックスタイム制ではなく、会社が各労働者のシフトを決定しているとします。

この場合に、一人ひとりのシフトは一種の個人情報だから、お互い秘密にしておくことという不思議なルールがあれば、業務の連携が取りにくくなります。

また、月末に翌月のシフト表が個人宛に配付されるものの、月の途中で頻繁に変更があるという場合には、さらに業務の連携がむずかしくなります。

これはフレックスタイム制で、各労働者のシフトやシフト変更を非公開にした場合にも同じ不都合が発生します。

フレックスタイム制だから不都合が発生するのではなく、勤務予定の情報共有が無いから不都合が発生すると考えられます。

フレックスタイム制を採り入れたら、情報共有を怠らないようにする必要があるのです。

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