次世代医療基盤法について

2022/03/30|1,631文字

 

<医療ビッグデータ>

新薬や最先端医療など研究開発のために「医療ビッグデータ」が注目されています。

医療情報については、画像や数値など検査結果の活用が十分に進んでいない現状があります。

また医療情報は、医療機関ごとに保管されているだけで、医療情報を統一的に活用する仕組みがありませんでした。

こうした現状を打開すべく、「次世代医療基盤法」が平成30(2018)年5月に施行されました。

 

私たちが病気やケガなどで医療機関を受診したとき、診療の流れの中で、患者一人ひとりについて、診察・検査・治療などの幅広い医療情報が記録されます。

日本全国の医療機関全体では、膨大な量の医療情報が蓄積されていることになります。

こうした情報を統合し、集約したものが「医療ビッグデータ」です。

 

IT技術が進化し、ビッグデータの解析性能が向上したことを背景に、新しい治療法や新薬の開発など医療分野の様々な研究開発に医療ビッグデータを活用し、医療の向上に役立てようとする取組が世界的に進められています。

 

日本では、患者の医療情報について、画像や数値など検査結果などの利活用が十分に進んでいません。

また、受診した医療機関や加入している健康保険組合ごとに分散して保有されており、それらを集約した医療ビッグデータとして利活用する仕組みがありませんでした。

 

<次世代医療基盤法>

医療ビッグデータの土台となる患者一人ひとりの医療情報を、個々の医療機関から集め、医療分野の研究開発のために活用できるようにすることを目的として、次世代医療基盤法(医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律)が平成29(2017)年5月12日に公布され、翌年5月11日に施行されました。

 

この法律では、「認定事業者」が、医療機関から患者の医療情報を収集します。

「認定事業者」とは、国が認定する信頼できる事業者です。

医療分野の研究開発や情報セキュリティ、医療情報の匿名加工などに精通しています。

 

「認定事業者」は、複数の施設から医療情報を収集し、暗号化して保管します。

そして、医療分野の研究開発の要望に応じて、必要な情報のみを研究機関や企業などに提供します。

患者の氏名や住所など特定の個人を識別することができる情報は提供されません。

 

このように私たち一人ひとりの情報が収集され活用されることで、効果のより高い治療法が分かったり、新薬がつくられたり、病気の早期発見や治療をサポートする機器が開発されたりするなど様々な成果につながり、私たちが将来より良い医療を受けられるようになることが期待されています

 

<医療ビッグデータの活用>

医療ビッグデータの活用は、私たちが将来受ける医療の向上につながると期待されています。

例えば、次のような医療が実現できるようになると期待されています。

1.患者一人ひとりに最適な医療を提供することが可能に

2.異なる診療科の情報を統合することで治療成績の向上が可能に

3.最先端の画像分析により病気の早期診断・早期治療を支援することが可能に

4.医薬品などの安全対策の向上が可能に

 

<個人の医療情報の提供>

認定事業者に対する医療情報の提供に協力できる医療機関では、患者が情報提供を望まない場合を除き、診察・検査・治療などの医療情報は認定事業者に提供されます。

病院やクリニックなどの医療機関では、患者が最初に受診した時に、医師や看護師などから医療情報の提供について書面による通知が行われます。

患者が16歳未満の場合や本人が判断できない状態の場合は、本人に加えて、保護者等にも通知が行われます。

この通知を受けていない人の医療情報は提供されません。

 

医療情報の提供を望まない場合は、いつでも提供の停止を求めることができます。

医療機関から認定事業者に情報が提供されるのは、書面による通知が行われてから必要な期間が経過した後です。

情報が認定事業者に提供された後でも、患者は、情報の削除を求めることができます。

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