就業規則の変更が必要になる場合と留意点

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<法改正があった場合>

本来、法令の内容を広く国民に知らせるのは国家の役割だと思われるのですが、労働基準法には次の規定があって、労働基準法などの内容を労働者に周知させるのは使用者の義務ということになっています。

これには、30万円以下の罰金という罰則も規定されています。〔労働基準法120条1号〕

 

【法令等の周知義務】

第百六条 使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第十八条第二項、第二十四条第一項ただし書、第三十二条の二第一項、第三十二条の三、第三十二条の四第一項、第三十二条の五第一項、第三十四条第二項ただし書、第三十六条第一項、第三十七条第三項、第三十八条の二第二項、第三十八条の三第一項並びに第三十九条第四項、第六項及び第七項ただし書に規定する協定並びに第三十八条の四第一項及び第五項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。

 

就業規則に、「この規則に定めた事項のほか、就業に関する事項については、労基法その他の法令の定めによる」という規定を置いておけば、法改正があっても法令と就業規則との矛盾が発生することは防げます。

しかし、こうした規定を置いたとしても、法改正の内容を労働者に周知する義務は果たしたことになりませんから、別途資料を配布して説明会を開催するなどが必要になってしまいます。

これではかえって大変ですから、法改正の内容を就業規則に反映させて、就業規則の一部として周知した方が簡単だということになります。

 

<労働条件の実態が就業規則に記載されている内容とズレている>

次のようなケースが考えられます。

・就業規則に出勤簿による勤務管理の規定があるが、実際にはタイムカードを使用している。

・就業規則には女子の制服についての規定があるが、数年前に制服が廃止されている。

・電車の遅れによる遅刻に、就業規則で必要とされている遅延証明書が不要とされている。

たしかに、古い規定が残っていても特別な不都合は無いのですが、会社側の就業規則に対する無関心な態度を示していることになりますから改めるべきでしょう。

 

<就業規則の予定していない非正社員がいる>

正社員と非正社員がいても、就業規則が1種類しか無ければ、その就業規則がすべての社員に適用されます。

そもそも、会社ごとに決めているはずの「正社員」の定義すら無いでしょうから、賞与、退職金、昇進、昇給、人事異動など、就業規則上は一律に扱うことになるわけです。

会社から非正社員に口頭で説明し、納得してもらっているつもりであったとしても、その人が退職後に経済的に困った場合には、会社に対して未支給の賞与や退職金の支払いを求めてくることもあります。

 

<「労使で話し合って」という規定が残っている>

社員のすべてが経営者の家族や親戚であれば、何でも話し合って円満に解決するのがベストでしょう。

しかし、会社が成長し従業員が増えてくると、赤の他人が会社に入ってきます。「労使で話し合って」では解決がむずかしくなります。

就業規則がトラブルの予防や解決に対応できる内容となっていないのであれば、早い段階で見直すことをお勧めします。

 

<会社の成長や労働環境の変化>

会社側からも従業員側からも、会社や社会の変化に応じて、労働条件の変更についての要望が出てくることがあります。

特に、今のように「働き方改革」について報道されない日が無いといった状況では、数多くの点について意見が出てきていることでしょう。

これはチャンスですから、よく話し合って就業規則の変更についての合意を形成したいところです。

 

<労働基準監督署から是正勧告や指導を受けた>

「是正勧告」は、法令違反を直ちに改めなさいという内容ですから、速やかに就業規則の内容と運用を改めなければなりません。

似たものに「指導票」というのがありますが、こちらは計画的に改善を進める姿勢を示すことが求められるものです。

素人判断で動いてしまうと、将来に向けて大きな影響が生じますから、特に労基署対応に慣れた社会保険労務士に相談することをお勧めします。

 

<不利益変更の留意点>

従業員の全員ではなくても、一部の従業員にとって不利益となる就業規則の変更は、その不利益を被る従業員から、変更の無効確認や損害賠償の請求などの形で問題が露見することがあります。

 

【問題となる不利益変更の例】

・定年制が無い会社で新たに定年制を設ける。

・すでに規定されている休職期間を短くする。

・賃金の一部をカットする。

・退職金の支給額を減らす。

・所定労働時間を延長する(時間単価が下がる)。

 

経営者の立場で考えて、「やむを得ない事情がある」としても、裁判になれば「経営努力の不足」として一蹴されてしまうこともあります。

反対に、不利益変更の実質的な理由がさほど強固ではなくても、段取りが適正であるために是認されるケースもあります。

社会保険労務士にご用命いただく場合には、不利益変更の内容や理由だけでなく、変更の手順についても具体的にご相談いただけたらと思います。

 

2018.12.23.解決社労士