中小企業にも伝染する大企業病

2022/02/09|1,714文字

 

<大企業病>

大企業病というのは、企業全体が非効率的になることを指しています。

社員が増え組織が大きくなることで、コミュニケーションが悪くなり、組織が活力を失った状態です。

 

<症状>

大企業は、大企業であり続けたいわけですから、どうしても現状維持的になります。

社員も、現状維持を第一に考え、市場経済の変動や顧客ニーズに応じてチャレンジすることは考えにくくなります。

いつか世間の変化に追い越されて、業績が縮小していくのは目に見えています。

中小企業でも、急成長を遂げたり、世間の注目を集め一世を風靡した後に、この症状が現われやすくなります。

 

大企業には、不要な業務が増えすぎています。

新人を採用する力は強いのですが、新人が入るたびに「やった方がいいかもしれない」「あると便利そうな」余計な仕事が増えていきます。

その仕事が、会社の業績にどう結びつくのかという、厳しいチェックが入らなくなっています。

中小企業でも、ひょっとしたら業績向上に結びつく可能性を考えて、何となく仕事が増えていく現象が見られます。

 

大企業では、現状維持的になるわけですから、これを打破する優秀な社員の出現は大歓迎です。

目標管理制度や業績主義の下、社員は自分の業績向上に集中します。

同僚と協力し合ったり、後輩を指導したり、上司をフォローしたりということはお留守になってしまいます。

優秀な社員が、こうした役割を担わなければ、企業の更なる成長は期待できません。

中小企業でも、大企業の評価制度を真似て、同じ症状に陥っているケースが見られます。

 

大企業では、意思決定が遅くなります。

組織のピラミッドが高くなりすぎて、1つのことを決定するのにも多くの社員の判断が必要になっています。

稟議制度を電子化しても、複雑な決裁ルートは改善されません。

中小企業でも、社長の即決で足りることを、何段階ものルートを経て決定するようになっていれば、同じ症状が現われています。

 

大企業では、社内的に良かれと思うことが行われていて、視点がお客様から離れていることがあります。

これは中小企業でも、業績向上ばかりに気を取られていると、お客様をライバル企業に持って行かれる現象と共通しています。

 

<対策>

今は事業や企業の業績が安定していても、10年後、30年後、あるいはもっと先のことを考えて、変化を遂げなければなりません。

日本だけでなく世界各国の人口構成、国民総生産、IT化、AI技術など、今後の予測に応じて会社が変わっていかなければなりません。

 

不要な業務は、過去からの習慣や、上層部への役に立たない報告が中心です。

その仕事が、会社の業績にどれだけ結びついているのか、見栄を張らないで正直に判断して取捨選択が必要です。

 

ルールに縛られているのも問題です。

能力のある社員が実力を発揮できるように、ルールを最小限にするとか、ルールの順守を人事考課で過大評価しないとか、力を開放する変革が必要です。

ルールに固執する社員は、会社の業績に貢献できない可能性が高いです。

 

<キーワードは目的意識>

何より目的意識が大事です。

「なぜするのか」という意識を持ち続けることが目的意識です。

ここから派生して「なぜこの時間にやるのか」「なぜここでやるのか」「なぜこの人がやるのか」「なぜこれがあるのか」「なぜこの方法でするのか」なども目的意識に含まれます。

裏を返せば、「これをしなかったらどうなるのか」という意識を持ち続けることも、一種の目的意識です。

ここから派生して「別の時間にやったらどうか」「別の場所でやったらどうか」「別の人がやったらどうか」「これが無かったらどうか」「他にどんな方法があるか」なども裏から見た目的意識です。

 

人事異動や退職によって、仕事の引継ぎが発生します。

何も意識しないで引き継げば、慣れている前任者から不慣れな後任者に仕事が移るわけですから、明らかに戦力ダウンです。

しかし、一つひとつの仕事の目的を意識した引継ぎを行えば、仕事のレベルは向上し、社員は成長し、会社も成長するのです。

まさに、引継ぎは会社成長のチャンスなのです。

 

大企業病を退ける特効薬は「目的意識」であると言っても過言ではありません。

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