2021/10/18|1,744文字
採用面接で聞けないこと
採用面接で病気のことを聞く
<労働局の指導>
面接担当官が、採用面接で聞いてはいけないことを聞いてしまい、応募者が労働基準監督署に相談した結果、その会社に労働局の指導が入るということがあります。
これは、全国の労働基準監督署が窓口となっています。
労働局は、その都道府県の労働基準監督署の上位に位置しますから、軽く考えてはいけません。
<聞いてはいけない本人に責任のない事柄>
・あなたの本籍はどこですか。
・あなたの家族の職業を言ってください。
・兄弟(姉妹)は何人ですか。
・あなたの自宅付近の略図を書いてください。
・○○町の××はどのへんですか。
企業としては、応募者の家族の状況を聞きたいところです。
しかしこれは、応募者の適性・能力にかかわりのない事柄を採否の判断基準に持ち込むことになり、個人の人権を尊重しない考え方です。
昔のJIS規格の履歴書には家族欄がありましたが、これは廃止され、厚生労働省から公表された新たな履歴書の様式例には、家族欄などありませんので注意が必要です。
また、現住所の環境についていろいろと聞くことは、身元調査に利用する目的ではないかと考えられても弁明の余地はありません。
<聞いてはいけない個人の自由であるべき事項>
・あなたの信条としている言葉は。
・あなたはどんな本を愛読していますか。
・家の宗教は何ですか。
・尊敬する人物を言ってください。
思想・信条や宗教、支持する政党、人生観などは、信教の自由、思想・信条の自由など、日本国憲法で保障されている個人の自由権に属する事柄です。
これらのことを記述させ、また聞いたりして採用選考の場に持ち込むことは、応募者の基本的人権を侵すことになります。
<企業の採用の自由とその制限>
企業にも職業選択の自由と経済活動の自由、そして契約締結の自由が保障されています。
これらが結びついて、企業には採用の自由が認められています。
したがって企業は、労働者の採用基準や採用条件について、原則として自由に決定することができます。
しかし、企業の採用の自由には、法律などによって一定の制限が課せられる場合があります。
その代表的なものは以下のとおりです。
・募集採用での性別による差別の禁止〔男女雇用機会均等法第5条〕
・労働者の身長、体重、体力を要件とすることの禁止
・転居を伴う転勤ができることを要件とすることの禁止〔男女雇用機会均等法第7条〕
・年齢制限の禁止〔雇用対策法第10条〕
・障害者差別の禁止〔改正障害者雇用促進法第34条〕
法定の規制を守らないと、口コミで会社の評判が落ちてしまいますし、応募者が来なくなってしまいます。
「うちは小さな会社だから、評判を気にすることはない」などと言っていると、人材不足で立ち行かなくなる可能性があります。
<公正な採用選考の取組>
企業が、学生・求職者らの応募者に対して、どのような採用手続で選考をするかについて法的な規制はありませんが、応募者である学生・求職者の基本的人権は尊重しなければなりません。
そこで、応募者の就職の機会均等が確保されるよう、公正な募集・採用選考が行われることが求められています。
つまり、本人が職務遂行上必要な適性・能力をもっているかどうかを採用基準とし、これと無関係な事項を採用基準としないことが必要です。
具体的には、本籍地や家族の職業など本人に責任のない事項や、宗教や支持政党などの個人の自由であるべき事項など、本人が職務を遂行できるかどうかに関係のない事項を採用基準とすることは許されません。
また、それらの事項を応募用紙や面接などによって把握することも、就職差別につながるおそれがあるため許されません。
<「面接シート」を使った採用面接の実施>
面接担当官が採用面接をするにあたっては、あらかじめ「面接シート」を準備しておくことをお勧めします。
「面接シート」には、面接で確認することをすべて網羅して記載しておき、応募者の回答も記入できるようにしておきます。
これを使いながら面接を進めることによって、聞き漏らしを防ぐことができ、効率よく進行することができますし、うっかり余計なことを聞いてしまうことも防げます。
裏面に面接担当官の評価やコメントを記入できるようにしておけば、記憶が新鮮なうちに情報をまとめることができます。