就業規則とノーワーク・ノーペイの原則はどちらが優先か

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<両者の優劣>

ノーワーク・ノーペイの原則は、法令には直接の根拠がないものの、労働契約の性質から当然のこととして認められています。つまり、労働者が働かなければ雇う側に賃金の支払義務は発生しないということです。

ところがこの原則をそのまま就業規則にとり入れず、たとえば生理休暇を有給にするとか、欠勤控除をしないルールとすることは、労働者に有利となりますので、労働基準法などに違反するものではありません。

そして就業規則に、法令の基準よりも労働者に有利な内容を定めた場合には、法令の基準を理由に労働条件を低下させることが許されなくなります。〔労働基準法12項〕

以上のことから、就業規則が優先されるということになります。

 

<就業規則に定めた基準の引き下げ>

しかし、一度就業規則に定めたなら、その条件を引き上げることはできても、引き下げることは一切許されないというのでは困ります。

なぜなら、その規定が時代に合わなくなったり、運用が不合理になったりということは現実に起こりうるからです。

たとえば就業規則上、生理休暇を有給にして、その取得にあたっては事後の口頭による申し出でもOKというルールだったとします。

年々生理休暇の取得が増え、今では月平均1人あたり10日も使われているとしたらどうでしょう。50代、60代の女性でも月5日程度なら普通に生理休暇が認められているとしたら、男性社員との間で不平等が生じているといえるでしょう。

この場合、休暇の取得にあたって業務に耐えないという医師の証明を必要とするとか、口頭ではなく申請書を提出するとか、合理的な範囲内での制約を検討する余地はあるでしょう。

同様にたとえば就業規則上、欠勤控除がない職場で遅刻・早退・欠勤が多かったらどうでしょう。まじめに皆勤している社員は、士気が低下してしまうかもしれません。

こうした状況に陥るのを防ぐため、新たに欠勤控除の規定を設けることも検討する余地はあるでしょう。

 

<不利益変更のルール>

とはいえ、会社の都合で自由に就業規則を変更できるわけではありません。

使用者は原則として、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできません。〔労働契約法9条〕

たしかに、就業規則を労働者に不利益に変更するのであれば、ひとり一人にきちんと説明したうえで、合意を得るのが理想でしょう。

そうもいかない場合であれば、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであることが客観的に認められることが必要です。〔労働契約法10条〕

この場合であっても、労働者にもれなく説明し、期間的な余裕をもって変更したいものです。

 

2016.08.09.