これからの人材育成

2021/11/01|1,765文字

 

<人材育成は投資>

かつては新人教育に熱心だった企業が、即戦力を求めるあまり、人材育成を後回しにする風潮が見られます。

人材を労働力と捉え、教育をコストと考えてしまうと、人材育成は進みません。

しかし、人材育成をコストではなく、投資と捉え積極的に進めなければ、企業の明るい未来は描けません。

 

<事業内職業能力開発計画>

事業内職業能力開発計画は、企業の雇用する労働者の職業能力の開発と向上を、段階的かつ体系的に行うために事業主が作成する計画です。

この計画の作成は、職業能力開発促進法第11条に基づき、事業主の努力義務となっています。

これを受けて、雇用関係助成金の中に人材開発支援助成金が設けられています。

事業内職業能力開発計画の作成は、人材開発支援助成金の一部のコースにおいて支給要件となっています。

そして厚生労働省は、この計画作成の意義について次のように述べています。

 

計画の作成は、従業員の職業能力開発について、仕事の種類やレベル別に、「何を身につけたらよいか」「そのためにはどのような学習・訓練を受ければよいか」を整理することができます。

これらを明らかにして示すことで、企業の経営者や管理者と従業員が能力開発について共通の認識を持ち、目標に向かってこれを進める「道しるべ」となり、効果的な職業能力開発を行うことが可能になります。

さらに、従業員の自発的な学習・訓練の取組意欲が高まることも期待されます。

 

<キャリア形成支援の必要性>

厚生労働省は「事業内職業能力開発計画作成の手引き」を作成し公表しています。

この中の「キャリア形成支援の必要性」の項目では次のように述べています。

 

従来の人材育成は新入社員研修から始まる階層別研修など日本的雇用慣行に基づいて会社が主体となり実施してきました。しかし、経営の核となる人材に対しての選抜研修や従業員一人ひとりが目標を設定し自己啓発に取り組むといった仕組みが広がりつつあります。

特に多様な働き方が一般化したことにより、個人の自律的な能力開発も広がっています。

キャリア形成とは、「自らの職業生活設計に即して必要な職業訓練・教育訓練を受ける機会が確保され、必要な実務経験を積み重ね、実践的な職業能力を形成すること」と定義しています。

短くまとめると「長い職業生活を充実させるため、よく学び、仕事の経験を重ね広く通用する職業能力を身につけること」としています。

また、このような状況の下で会社は従業員のキャリア形成をどのように支援していけばよいのでしょうか。

従来のような従業員全員に対して一律的な能力開発を行おうとしても限界があります。

このため個人が主体的に行おうとするキャリア形成を側面から支援することが求められています。

実際にキャリア形成といわれてもとまどう人が多いのではないでしょうか。

個人主導となっても、何をすればいいのかわからないという人もいます。また、情報が無いため何があるのかわからない、あるいは業務の多忙さから取り組めないということもあります。

このため、キャリア形成を実施するための情報提供や休暇取得、勤務時間の配慮が求められます。このようなことを実施することで求める人材の確保にもつながります。

厳しい経営環境を乗り切れる人は、創造的で高度な専門能力を発揮できる能力を身につけている人といえます。このような人は主体的に自身の能力開発に取り組めますが、その能力を発揮する場面は主に職場です。

よりよい人材を確保するためにも、キャリア形成を支援する必要性があります。

 

会社主導の能力開発は、終身雇用・年功序列を前提とした他律的・一律的なものでした。

しかし、この前提が崩れ、職業能力開発の主導が会社から個人へと移りました。

個人主導の能力開発は、IT人材のような新しいタイプの人材の確保・育成に対応した自律的・多面的なものです。

とはいえ、キャリア形成を自己責任としていたのでは、人材育成の目的が果たせませんから、会社が積極的にキャリア形成を支援する必要があるということです。

 

<解決社労士の視点から>

社会の激しい変化に対応すべく、改めて人材育成の強化に乗り出す企業が増えると思います。

過去の研修の復活を検討するのではなく、従業員のキャリア形成の支援の観点から計画を進めていただけたらと思います。

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