社会保険料の給与からの控除(徴収、天引き)

LINEで送る

<法律の規定>

社会保険(健康保険と厚生年金保険)の保険料を、従業員の給与から控除(天引き)する形で徴収することについては、健康保険法と厚生年金保険法に次のような規定があります。

 

健康保険法(保険料の源泉控除)

第百六十七条 事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所に使用されなくなった場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を報酬から控除することができる。

2 事業主は、被保険者に対して通貨をもって賞与を支払う場合においては、被保険者の負担すべき標準賞与額に係る保険料に相当する額を当該賞与から控除することができる。

3 事業主は、前二項の規定によって保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない。

 

厚生年金保険法(保険料の源泉控除)

第八十四条 事業主は、被保険者に対して通貨をもつて報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所又は船舶に使用されなくなつた場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を報酬から控除することができる。

2 事業主は、被保険者に対して通貨をもつて賞与を支払う場合においては、被保険者の負担すべき標準賞与額に係る保険料に相当する額を当該賞与から控除することができる。

3 事業主は、前二項の規定によつて保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない。

 

どちらも、ほぼ同じ内容です。

 

これらの法律によると、今月支給される給与から、前月分の社会保険料を控除することになります。

そして会社は、従業員から徴収した保険料に会社負担分を加えて、今月末までに前月分の社会保険料を納めることになります。

この仕組みを考える時に、「いつ勤務した分の給与か」は問題にしません。あくまでも、「いつ支給された給与か」だけを考えます。

 

<新規に入社した従業員の場合>

社会保険は、その月の1日に加入(資格取得)しても、月末に加入しても、その月の分の保険料が徴収されます。

入社月に給与が支給されるのであれば、その前月は社会保険に加入していませんから、その給与から社会保険料は控除しません。

入社月の翌月に初めて給与が支給されるのであれば、その前月は社会保険に加入していますから、その給与から社会保険料を控除します。

 

入社月の翌月に初めて給与が支給されるのであれば、社会保険料の控除の都合を考えて、入社日についてのルールを設定しておくことをお勧めします。

たとえば、給与の支給について、月末締切り翌月10日支払いのルールだとすると、28日に入社した場合、最初の給与が少なくて社会保険料を控除できないことも多いでしょう。

この場合には、社会保険料を別に支払ってもらうことになりますが、入社早々の出費は厳しいものがあります。

そこで、「毎月21日以降は入社日としない」などの運用ルールがお勧めなのです。

 

入社月に給与が支給される会社で、最初の給与から社会保険料を控除している場合もあります。

これは、健康保険法や厚生年金保険法の規定とは違うことをしているのですが、労使協定を交わして、そのように運用している限り問題ありません。〔労働基準法241項但書〕

しかし、労使協定を交わさずに行うのは良くありません。

健康保険法や厚生年金保険法には、これについての罰則が無いのですが、賃金を全額支払う義務に違反してしまいます。〔労働基準法241項本文〕

これには、三十万円以下の罰金という罰則があります。〔労働基準法120条〕

 

<退職する従業員の場合>

社会保険の脱退(資格喪失)の場合には、月末に脱退する場合に限り、その月の分の保険料が徴収されます。

月末以外の脱退なら、その月の保険料は徴収されません。

 

退職月に最後の給与が支給される場合、退職日によっては、欠勤控除によって給与が少額となり、社会保険料を控除できないこともあります。

こうした事態を想定して、健康保険法と厚生年金保険法には、退職の場合には例外的に前月と当月の2か月分の保険料を控除できるという規定になっているわけです。

この場合、退職月の給与が少額になる見込みであれば、退職月の前月の給与から2か月分の保険料を控除することになります。

 

退職月の翌月に最後の給与が支給される場合、月末退職を除いては、社会保険料を控除しないのが正しいのですが、うっかり控除してしまった場合には、すぐに返金しましょう。

 

2018.02.25.解決社労士