日給制の落とし穴 ― 所定労働時間があやふやで時間外割増賃金が未払になっていませんか?

2024/03/03|853文字

 

<同じ日当でも>

出張に伴う日当は、就業規則などに規定がなければ、本来、支払われなくても問題のない手当です。これは、遠方で勤務することの負担に対して公平の観点から、あるいは福利厚生的に支払われているものだからです。

しかも、社会慣行として非課税とされているなど、その性質は不明確です。

これに対して、同じく日当と呼ばれることはあるものの、日給には多くの法的規制があります。

 

<最低賃金法の規制>

日給制とは、1日を単位として賃金が定められている制度をいいます。

また、これを前提として、毎日賃金を支払うことをいいます。

賃金を1月に1回支払う場合には、日給月給制と呼ばれます。

一方で、最低賃金法で定められている最低賃金は、1時間当たりの賃金で示されています。

これは、時間給だけではなく、月給制でも日給制でも適用があります。

ということは、1日いくらという日給制の場合、その1日とは何時間なのか明確にしておく必要があるということです。これが確定していないと、最低賃金法を不当に潜脱することになります。

日給 ÷ 所定労働時間 = 1時間当たりの賃金

これで計算した結果が、最低賃金を下回ると違法になります。

 

<時間外割増賃金の規制>

このように、1日いくらで決めれば計算が簡単なはずの日給ですが、所定労働時間は決めなければなりません。

そして、所定労働時間を超える労働に対しては、プラスアルファの賃金支払が必要となります。

さらに、法定労働時間を超えた場合には、割増賃金の支払も必要です。

 

<実務の視点から>

このように見てくると、せっかく明確な賃金制度として日給制を選んでも、そのメリットは疑わしくなってきます。

また、その日によって、所定労働時間がバラバラの場合には、どのように計算すれば良いのか迷うことになるでしょう。

日給制を合理的に、また合法的に運用するのであれば、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

「うちの業界では昔から」「同業者もやっているから」労働基準法違反を続けていると、足元を掬われて事業の継続が危うくなります。

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