人事権の行使としての降格と懲戒処分としての降格

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2019/01/07|1,057文字

 

<モデル就業規則>

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、懲戒の事由を次のように規定しています。

 

【懲戒の事由】

第66条  労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする。(以下略)

2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。(以下略)

 

ここでは、懲戒処分として、けん責、減給、出勤停止、懲戒解雇の4種が掲げられています。

 

<降格処分>

会社によっては、上記の4種の他、降格処分が規定されていることがあります。

降格処分には、役職の降格、資格等級の降格などがあります。

懲戒処分として降格を行うものです。

 

<人事権の行使としての降格>

これとは別に、会社の人事権の行使としての降格があります。

その役職や資格等級の立場を維持するのに、必要な能力や適性を欠いているために、会社の判断により降格を行うものです。

 

<2つの降格があることによる問題>

懲戒処分としての降格と、人事権の行使としての降格とは、理由付けが異なるだけで、行われる内容は同じです。

そして、人権保障の趣旨から、日本国憲法には次の規定が置かれています。

 

【一事不再理・二重処罰の禁止】

第三十九条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

 

懲戒処分についても、これと同じ考え方が妥当します。

つまり、懲戒処分が検討され対象外と判断された行為について、再び懲戒処分の対象とすることを検討することは禁止されます。

また、懲戒処分を受けた行為について、二重に懲戒処分を行うことも禁止されます。

もし、減給処分と人事権の行使としての降格が同時に行われたならば、その結果から、減給処分と降格処分が重ねて行われたと判断される余地があります。

これでは、二重処罰の禁止に触れるのではないかという問題を生じることになります。

こうした問題の発生を避けるためには、懲戒処分の種類に降格処分を入れないのが得策です。

 

<その他の留意点>

懲戒処分の種類に降格処分を入れなければ、問題が発生しないということではありません。

懲戒処分は、懲戒権の濫用となる場合には無効とされます。〔労働契約法第15条〕

これと同様に、人事権の行使としての降格が、人事権の濫用であれば無効とされる場合もあります。

こうした点にも、十分留意しましょう。

 

解決社労士