2022/07/11|1,568文字
<試用期間の低賃金>
正社員として月給25万円で採用、ただし3か月間は試用期間で月給22万円とするなど、試用期間だけ労働条件が異なるパターンは多いですね。
ここで、試用期間は時給1,200円の契約社員とするのならよいのですが、月給の時間単価が最低賃金を下回るというのは法令違反です。
「月給 ÷ 所定労働時間」を計算して確認しておきましょう。
所定労働時間が決まっていないなどで、法令を無視した条件を設定しないように注意したいものです。
<試用期間終了で雇用契約終了>
4月から6月まで試用期間の新人が、どうも会社の正社員としての要件を満たしていないので、辞めていただこうという場合、6月に入ってから「本採用はありません。試用期間の終了をもって退職していただきます」という話をすると、解雇予告手当の支払が必要となります。
解雇予告手当の支払を避けるには、5月中に見極めて通告することが必要です。
ただし、14日以内に見極めて解雇を通告する場合には、解雇予告手当の支払が不要です。
しかし、14日以内に見極めのつく人を採用するのは例外でしょう。
これは採用の失敗ともいえます。
なお、14日以内なら無条件で解雇できるわけではなく、解雇の厳密な条件を満たしていなければ、不当解雇となって、会社が損害賠償責任を負うことは言うまでもありません。
<試用期間の延長>
ブラック企業が、不当に人件費を削減するために、試用期間の延長を繰り返して安い給料の支給を続けることがあります。
そうではなくて、「人物的にはいいけれど、ミスが多いのと、報告を忘れるのが気になる」などの理由で、もう少し様子を見たいということがあります。
この場合に、ご本人と面談して、試用期間の終了をもって辞めるか、試用期間を1か月延長するか相談し、試用期間の延長を選んだとします。
それでも、やはり正社員にするには能力不足を感じるので辞めていただいたとします。
すると、「一方的に」試用期間を延長されたことに対する慰謝料の請求などで訴えられる恐れがあります。
訴訟になれば、客観的な証拠がものをいいますから、いつどんなミスをしたか、いつどんな報告を忘れたか、いつ試用期間延長の話をして、どのように同意したのかなどなど事実の記録を詳細に残しておかないと、会社が敗訴する可能性が高まります。
<社会保険の加入>
試用期間の初日から、厚生年金や健康保険に入るのが法律の定めです。
これを避けるためには、試用期間ではなくて2か月限定の有期労働契約とすることです。
そして、この2か月間の勤務成績が優秀であれば、正社員に抜擢することがあるというのなら、正社員になったときから社会保険加入でかまいません。
しかし、2か月の有期契約で採用されることを希望する人は稀でしょう。
もっとも、この手が使えるのは令和4(2022)年9月までの話です。
10月以降は、2か月を超えて勤務する可能性がない場合を除き、試用期間であっても初日から社会保険に入らなければなりません。
<試用期間クリアの基準>
試用期間終了後に本採用するかどうかの基準が、「正社員としてふさわしい」などの抽象的な基準だと、それ自体が争いの種になります。
基準を満たしているかどうかの判断が、客観的にできないからです。
採用にあたっては、「遅刻・欠勤しないこと。社員・お取引先・お客様には明るく元気にあいさつすること。電話応対が同僚と同レベルでできること。報告・連絡・相談を怠らないこと」など、試用期間クリアの基準を、書面にまとめて説明し渡しておくことをお勧めします。
なかには、この基準をクリアする自信のないことを理由に、採用を辞退する人もいるでしょう。
それはそれで、無駄な採用をしなくて済んだことになります。
また、無理に試用期間を延長して、トラブルになることも防げると思います。