試用期間の記事

<パート社員の試用期間>

たとえば、1年間の有期労働契約にして、最初の3か月間は試用期間とすることが行われます。

会社側は、3か月間の働きぶりを見て、とても勤まらないと判断すれば、そこで解雇しようという意図がうかがえます。

しかし、試用期間中であれ、試用期間終了時であれ、やむを得ない理由が無ければ解雇できません。日常用語で「本採用拒否」などと言われますが、これは解雇です。

このことは、きっちり雇用契約書を交わして本人の了解を得ていたとしても、結論に変わりはありません。

 

<正しい方法>

最初は3か月契約として、契約更新の条件に会社が意図する「本採用」の条件を定めておけば良いのです。

この「本採用」の条件は、正社員に対しても、入社時に文書で明示しておくと労働トラブルの防止に役立ちます。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

法令の規定とは違った「常識」や同業他社の「慣行」に頼った対応が、思わぬ結果をもたらしたり、意図した効果が得られなかったりで、労働トラブルとなることがあります。

会社の中で当たり前になっていることも、一度、信頼できる社労士にチェックさせることをお勧めします。

 

〔労働契約法171項〕

使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

 

〔民法628条〕

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。

 

2017.06.28.解決社労士

<結論>

試用期間中は家族手当を支給せず、本採用となってから支給を開始するという規定や運用は、原則として問題がありません。

ただし、家族手当を支給しないことによって、1時間あたりの賃金が最低賃金の基準を下回ってしまうと、最低賃金法違反となりますから、ここは確認が必要です。

 

<試用期間の法規制>

労働基準法には、「試用期間」という用語は無くて、「試みの使用期間」〔12条3項5号〕、「試の使用期間中の者」〔21条4号〕という用語で2回登場します。

そして、労働基準法の予定する試用期間は14日までです。ですから、会社が試用期間を3か月としても、労働基準法上は15日目からは試用期間として認められません。

認められないとどうなるかと言うと、正当な理由があって辞めてもらう場合にも、解雇予告手当の支払いとともに解雇通告することが必要です。あるいは、30日以上前もって予告するわけです。解雇予告手当20日分と、10日前の予告で、合わせて30日という方法も認められています。〔20条2項〕

たとえ試用期間中であっても、正当な理由があって解雇予告手当を支払わずに即日解雇できるのは、原則として入社14日目までということになります。

 

<試用期間であっても必要な事(法定事項)>

健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険は、試用期間中か本採用後かという区分がありませんので、法定の基準を満たせば入社とともに加入します。

これは、市区役所に出生届を提出しなくても、赤ちゃんが生まれれば、その生まれた事実に変わりはないのと同じです。つまり、加入手続きをしなくても保険料の未払いが発生するだけです。その証拠に、会社に調査が入って手続きもれが発覚すれば、さかのぼって多額の保険料を支払うことになります。

給与について言えば、残業手当、深夜手当、法定休日出勤手当のように、法定のものは試用期間中であっても支給しなければなりません。ただし、役員待遇で入社するなど、いきなり管理監督者の立場に立つ人は例外です。

 

<試用期間であれば必要ない事(会社がプラスアルファで決めた事)>

家族手当の他、精勤手当、賞与など、基本の給与とは別に会社がプラスアルファで支給するものは、試用期間中は支給しない規定と運用でも、原則として問題ありません。ただ、最低賃金法違反に注意するだけです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

正しい給与計算を代行するだけが社労士の仕事ではありません。

適法な給与規定の作成と運用も社労士の仕事です。

さらに、社員が納得してやる気になる給与体系を構築するのも、社労士の仕事です。

もし、やる気のないブラック社員がいたり、新人が定着しないという問題を抱えているのなら、給与体系の見直しが必要かもしれません。

信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.11.25.

<新人を大切にしたい思い>

せっかく正社員として採用した新人が、今一つ自主性が足りないとか、仕事の覚えが悪いとか、試用期間が終わっても本採用に踏み切れないときがあります。

こんなとき、本人と相談して、試用期間をあと1か月だけ延長して様子を見たらどうでしょう。

社員に優しい、新人を大切にする会社のイメージでしょうか。

 

<労働法の世界では>

求人広告に「試用期間3か月」と書いてあったのに、実際には1か月延長して4か月になったなら、その求人広告はブラック求人とされても反論できません。

就業規則に「3か月の試用期間の後、本採用とする」と書いてあったのに、4か月に延長したら、ブラック企業と言われるかもしれません。

試用期間延長の話のときには喜んで同意した人でも、試用期間を延長したあげく、本採用にならなかったら、家族や労基署に相談するかもしれません。

おそらく試用期間と本採用後では、給与などの処遇にも差があるでしょうから、試用期間の延長は、それだけを見ると労働者に不利益な扱いです。こんなとき、労働法の世界では、「本人の同意」は原則として効力を否定されてしまいます。

 

<それでも時には延長したいなら>

就業規則には「試用期間経過後に本採用の条件を満たしていない場合には、会社から試用期間の延長を提案することができ、本人の同意のもと最大6か月間にまで延長できるものとする」という規定を置いておけば、このルールに基づく延長であると説明できます。

もっと大事なのは、「本採用の条件」を書面で明らかにしておくことです。たとえば、一般事務であれば「次の条件を満たしていない場合には、本採用としない。1.他の社員と明るく元気にあいさつしていること。2.無遅刻無欠勤であること。3.電話応対が自部署の他の社員と同等にできること。」といった内容を、説明のうえ新人に渡しておきます。

そして、1か月後、2か月後にできているかどうか、面談をして確認します。

ここまでして試用期間終了のかなり前に、「これができていないので、試用期間を延長したいがどうか」という提案をすれば、結果的に本採用に至らなくてもあきらめがつくでしょう。

 

2016.07.20.

<よくあるパターン>

正社員として月給20万円で採用、ただし3か月間は試用期間で月給15万円とするなどのパターンは多いですね。ここで、試用期間は時給1,000円の契約社員とするのならよいのですが、月給の時間単価が最低賃金を下回るというのは法令違反です。「月給÷所定労働時間」を計算して確認しておきましょう。

 

<試用期間終了で雇用契約終了>

4月から6月まで試用期間の新人が、どうも会社の正社員としての要件を満たしていないので、辞めていただこうという場合、6月に入ってから「本採用はありません。試用期間の終了をもって退職していただきます」という話をすると、解雇予告手当の支払いが必要となります。解雇予告手当の支払いを避けるには、5月中に見極めて通告することが必要です。

ただし、14日以内に見極めて解雇を通告する場合には、解雇予告手当の支払いが不要です。しかし、14日以内に見極めのつくかたを採用するのは例外でしょう。採用の失敗ともいえます。

 

<試用期間の延長>

ブラック企業が、人件費を削減するために、試用期間の延長を繰り返して、安い給料の支給を続けることがあります。

そうではなくて、「人物的にはいいけれど、ミスが多いのと、報告を忘れるのが気になる」などの理由で、もう少し様子を見たいということがあります。この場合に、ご本人と面談して、試用期間の終了をもって辞めるか、試用期間を1か月延長するか相談し、試用期間の延長を選んだとします。

それでも、やはり正社員にするには能力不足を感じるので辞めていただいたとします。すると、一方的に試用期間を延長されたことに対する慰謝料の請求などで訴えられる恐れがあります。訴訟になれば、客観的な証拠がものをいいますから、いつどんなミスをしたか、いつどんな報告を忘れたか、いつ試用期間延長の話をして、どのように同意したのかなどなど事実の記録を詳細に残しておかないと、会社が敗訴する可能性が高まります。

 

<社会保険の加入は?>

試用期間の初日から、厚生年金や健康保険に入るのが法律の定めです。

これを避けるためには、試用期間ではなくて2か月限定の有期労働契約とすることです。そして、この2か月間の勤務成績が優秀であれば、正社員に抜擢することがあるというのなら、正社員になったときから社会保険加入でかまいません。しかし、2か月の有期契約で採用されることを希望するかたは稀でしょう。

また、これを繰り返して正社員抜擢が当たり前になれば、実質的に最初から正社員として採用していることになり、初めから社会保険に入らなければなりません。

 

<試用期間クリアの基準>

試用期間終了後に本採用するかどうかの基準が、「正社員としてふさわしい」などの抽象的な基準だと、それ自体が争いの種になります。基準を満たしているかどうかの判断が、客観的にできないからです。

採用にあたっては、「遅刻・欠勤しないこと。社員・お取引先・お客様には明るく元気にあいさつすること。電話応対が同僚と同レベルでできること。」など、試用期間クリアの基準を、書面にまとめて説明し渡しておくことをお勧めします。

なかには、この基準をクリアする自信のないことを理由に、採用を辞退するかたもいるでしょう。それはそれで、無駄な採用をしなくて済んだことになります。

また、無理に試用期間を延長して、トラブルになることも防げると思います。

 

2016.05.01.

<解雇無効の主張>

試用期間中に時間が守れない、パソコンも使えない、当然本採用は見送りということで、試用期間終了をもって退職とした社員の代理人から「解雇は無効であり労働者の権利を有する地位にあることの確認を求める」という内容証明郵便が会社に届くということがあります。

ネット上でも、こうした情報が増えるにつれ、不当解雇の主張も増えているようです。

「いや、うちの会社はすべての新人に試用期間を設け、試用期間の評価によっては本採用とならず退職となることをきちんと説明している」と言っている会社が、実際に解雇無効を主張される結末になっているのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(試用期間)

第6条 労働者として新たに採用した者については、採用した日から  か月間を試用期間とする。

2 前項について、会社が特に認めたときは、この期間を短縮し、又は設けないことがある。

3 試用期間中に労働者として不適格と認めた者は、解雇することがある。ただし、入社後14日を経過した者については、第49条第2項に定める手続によって行う。

4 試用期間は、勤続年数に通算する。

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

この条文は、次のことを言っています。

・試用期間を○か月とするが、短縮したり無しにすることがある。(しかし、延長は無い。)

・入社して14日を超えた人を解雇するときは、第49条2項に定める手続き(30日以上前の予告、解雇予告手当)が必要である。

この「第49条2項」というのがクセ者です。そんなに後の方に書いてあることは読まずに済ませてしまう危険があるのです。

 

<注意書き>

実は、厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

試用期間中の者も14日を超えて雇用した後に解雇する場合には、原則として30日以上前に予告するか、又は予告の代わりに平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払うことが必要となります(労基法第20条、第21条)。

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<実例として>

新入社員のAさんが、就業規則で定めた3か月の試用期間終了近くなっても、電話応対がきちんとできません。同じ職場のメンバーの顔と名前が覚えられず、自分から挨拶できません。

社長が「せっかく入社したのだからもう少し様子を見よう」という特別の計らいで、もう1か月だけ試用期間を延長したのですが、結局、Aさんは不適格者ということで、解雇となってしまいました。

「大変ご迷惑をおかけしました」と挨拶して会社を去っていったAさんの代理人から「解雇は無効である。一方的に試用期間を延長されたことに対する慰謝料も支払え。」などという内容証明郵便が届きます。

この場合、会社としては就業規則に無い試用期間の延長や、解雇予告手当を支払わずに解雇したことについて、法令違反や就業規則違反があったのです。

 

<こうすればOK>

こうした困ったことにならないようにするには、2つのポイントがあります。

1つは、試用期間を定めたら延長しないこと。そのためには、本採用とするための条件を書面で明らかにして、会社と新人とが保管することです。たとえば「遅刻・欠勤が無いこと。明るく元気に挨拶すること。基本的な電話応対を身に着けること。身だしなみを整えること。業務の報告は確実に行うこと。」などです。試用期間内にクリアする条件を明確にすれば、温情的な延長も防げます。

もう1つは「ちょっと無理かな」と思ったら、試用期間が終わるまで待たないで、14日以内に解雇することです。長引けば、その新人の転職のチャンスも遠くなります。

もちろん、こうしたドライな対応をする前提として、募集選考・採用の精度は高めておかなければなりません。試用期間中の教育訓練も、スケジュールに沿って着実に行わなければなりません。

何事も最初が肝心なのです。

 

2016.04.12.