有給休暇の記事

2021/12/04|1,349文字

 

<法改正のポイント>

年次有給休暇は、労働者の所定労働日数や勤続年数などに応じた法定の日数以上を与えることになっています。

与えるというのは、年次有給休暇を取得する権利を与えるということです。

実際に労働者の方から「この日に年次有給休暇を取得します」という指定が無ければ、使用者の方から積極的に取得させる義務は無いのです。

これが以前の労働基準法の規定内容です。

ところが、平成31(2019)年4月1日からは、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うようになりました。

しかし、その対象者は限定されています。

 

<対象となる労働者>

年次有給休暇の付与日数が10日以上である労働者が対象です。

付与された日数が少ない労働者の場合には、自由に取得日を指定できる日数が少なくなってしまうことが配慮されています。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表】のとおりです。週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日の欄が適用されます。

 

【図表】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

5日

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

 

この【図表】の中で、「年次有給休暇の付与日数が10日以上である」のは、赤文字の部分です。

これをまとめると、次のようになります。

 

年次有給休暇の付与日数が10日以上のパターン

・週5日出勤の従業員が勤続6月以上になった場合

・週4日出勤で週所定労働時間が30時間以上の従業員が勤続6月以上になった場合

・週4日出勤で週所定労働時間が30時間未満の従業員が勤続3年半以上になった場合

・週3日出勤の従業員が勤続5年半以上になった場合

 

ここで勤続期間は、最初の入社から通算しますから、パート社員などで期間を区切って契約する有期労働契約であっても、契約更新でリセットされません。

 

<使用者に求められること>

労働者が6か月間継続勤務したときに年次有給休暇が付与され、その後1年間勤務するごとに年次有給休暇が付与されるというのが労働基準法の定めです。

この基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

こうしたことは、多くの企業にとって不慣れですから、ともすると次の基準日の直前にまとめて年次有給休暇を取得させることになりかねません。

これでは業務に支障が出てしまいますので、計画的に対処することが必要になります。

 

基準となるのは週所定労働日数と週所定労働時間です。

これが確定できないと、年次有給休暇の付与日数も決まりません。

未確定ならば、必要に応じ専門家に相談するなどして確定させてください。

2021/11/20|830文字

 

<勤続期間が短い場合>

最初から半年以内の契約期間で働く約束であったり、長く勤めてもらう予定だったとしても入社から半年以内に退職すると、法定の年次有給休暇は取得できません。〔労働基準法第39条第1項〕

ただし、雇用期間を半年にして契約した場合でも、契約が更新されて半年を超えて働き続ければ、原則として、法定の年次有給休暇が取得できるようになります。

さらに、会社の就業規則で入社と共に年次有給休暇を付与するような規定を置いていれば、半年を待たずに年次有給休暇を取得できます。

 

<休みがちだった場合>

就業規則や雇用契約で決まっている全労働日の8割以上出勤しなければ、法定の年次有給休暇は付与されません。〔同上〕

ただし、業務上の負傷・疾病等により療養のため休業した日、産前産後の女性が労働基準法第65条の規定により休業した日、育児・介護休業法に基づき育児休業または介護休業した日、年次有給休暇を取得した日については、出勤したものとして計算します。

 

<出勤回数が少ない場合>

隔週1日の出勤というように、所定労働日数が年48日未満の雇用契約で働く場合にも、年次有給休暇は付与されません。〔労働基準法第39条第3項、厚生労働省令〕

あくまでも、所定労働日数が基準です。

1日の勤務時間が短くても、所定労働日数が多ければ年次有給休暇が付与されます。

 

<就業規則による修正>

会社の就業規則に、労働者に有利な規定があれば法律に優先して適用されます。

反対に、年次有給休暇についての規定が無かったり、法定の基準を下回る規定があったとしても、最低限、法定の年次有給休暇が付与されます。

 

<違法な運用>

勤続期間は、試用期間を設けた場合であっても、試用期間の初日から計算しなければなりません。

本採用になってから半年後に、年次有給休暇を付与するのでは違法です。

また、年次有給休暇を減らしたり付与しなかったりする懲戒処分は無効ですし、違法でもありますから、損害賠償と罰則の適用の両方が問題となります。

2021/11/12|1,361文字

 

<クイズに正解で有給チャンス>

昔、ある支店長が部下に、「クイズに正解しなければ有給休暇を取得させない」というメールを送ったという事件がありました。

この支店長は平成28(2016)年に複数の部下に対して「正解で有給チャンス」など、メールでクイズを出題していたそうです。

不正解の部下には、実際に年次有給休暇の取得を認めなかったとのことです。

  

<しろうと目線では>

なかなか年次有給休暇を取得できない職場で、「少しでも有給休暇を消化させよう」と考え、上司が部下全員にくじ引きやクイズで働きかけて、取得を促進するのは、働き方改革の観点からも良い工夫であるかのようにも見えます。

たとえ経営者や人事部門から「もっと有給休暇を取りなさい」と言われても、全社的にあるいは一部の部門で、なかなか取得できない雰囲気があるかも知れません。

こんなとき「当たりくじを引いたから」「クイズに正解したから」という理由で、堂々と年次有給休暇を取得できたなら、その社員は救われた気持になることでしょう。

 

<法的観点からは>

しかし年次有給休暇は、労働基準法第39条に定められた労働者の権利です。

権利というのは、行使するかしないかが権利者の自由に任されています。

もし「当たりくじを引いたら」「クイズに正解したら」賞品として必ず年次有給休暇を取得するというルールなら、強制的に権利を行使させられることになり、権利者の自由ではなくなってしまいます。

また「外れくじを引いたら」「クイズに不正解なら」年次有給休暇を取得できないというルールなら、会社の許可なく自由に取得できるはずの年次有給休暇が不当に制限されてしまいます。

年次有給休暇の取得促進という目的が正しくても、手段が正しくなければ、法的観点からは違法なこととして否定されることがあるのです。

 

<労働基準法が改正されて>

平成31(2019)41日からは、法改正により、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになりました。

権利を行使するかしないかが権利者の自由に任されていることの重大な例外です。

政府は、働き方改革の推進を権利の本来の性質に優先したことになります。

年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者に対し、年次有給休暇のうち5日については、基準日から1年以内の期間に労働者ごとにその取得日を指定しなければなりません。

具体的には、基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

こうしたことは、多くの企業にとって不慣れですから、ともすると次の基準日の直前にまとめて年次有給休暇を取得させることになりかねません。

これでは業務に支障が出てしまいますので、計画的に対処することが必要になります。

そこで、労働基準法施行規則も改正され、企業は「年次有給休暇管理簿」の作成・運用・保管が義務づけられています。〔労働基準法施行規則第24条の7〕

働き方改革の継続的な推進による法改正に取り残されることがないよう、十分に注意しましょう。

2021/10/15|556文字

 

年次有給休暇が会社に勝手に使われたhttps://youtu.be/JgWobP3JbN4

 

<休日と休暇>

休日とは、雇用契約や就業規則の取り決めで労働義務を負わない日をいいます。

もともと決まっている休みですから、従業員の方から会社に申請しなくても当然に休みです。

週休2日制であれば、何か手続をしなくても休日が1週間に2日あります。

休暇とは、本来は労働義務を負っている日について、従業員から会社への申し出によって労働義務が免除される日をいいます。

もともと休む権利が与えられていて、従業員の方から届け出をすると休むことができるわけです。

年次有給休暇が代表的ですが、会社の規則で慶弔休暇が定められていることも多いでしょう。

 

<休日と休暇は重なりません>

休日はもともと働かない日、休暇は出勤日に手続をして休む日ということですから、休日に休暇をとることはできません。

たとえば、土曜日と日曜日が休日と決まっている従業員は、土曜日や日曜日に年次有給休暇を使うことができないのです。

このことから退職にあたって、たくさん余っているからといって、年次有給休暇をもともとの休日にあてはめて無理やり取得するということはできません。

こんなことをしては、年次有給休暇が実質的に消えてしまいますから許されません。

退職にあたっては、年次有給休暇を買い上げることも禁止されていませんので、状況によっては会社が買い上げることもあるわけです。

2021/10/06|1,066文字

 

年次有給休暇が会社に勝手に使われたhttps://youtu.be/JgWobP3JbN4

 

<年次有給休暇の趣旨>

年次有給休暇とは、一定期間継続勤務した従業員に疲労回復を目的として会社が付与する有給の休暇です。

何か用事があるとか、具合が悪いからとか、必要があって休むというのではなく、休息のために休むわけです。

そして、休んでも欠勤控除によって給与が減る心配が無いので安心して休めるのです。

このことは、労働基準法などに規定があるわけではなく、厚生労働省などがこのような説明をしています。

疲労回復の必要性は、正社員に限らず、パート、アルバイト、嘱託社員、契約社員などあらゆる雇用形態の従業員に共通です。

年次有給休暇付与の条件さえ満たせば、労働基準法の規定により、誰でも年次有給休暇を取得できます。

会社がこれを拒めば罰せられます。1回拒むごとに30万円以下の罰金、悪質なら6箇月以下の懲役です。〔労働基準法第119条〕  

 

<買い上げが禁止される理由>

時間給で働くアルバイトなどは、有給休暇をとると給料が増えるという感覚を持つでしょう。

しかし、有給休暇の趣旨は「給料が減らないので安心して休める」というところにあります。

「買い取るから休むのは我慢してください」という年次有給休暇買い上げは、休息を与えるという本来の趣旨に反してしまうので、原則として禁止されるのです。

 

  <例外的に許される買上げ>

年次有給休暇のうちでも、会社が法定の日数を上回って福利厚生的に与えている場合の法定を上回る日数、2年の消滅時効にかかってしまい消えた日数、退職によって使い切れなかった日数については買上げが許されます。

これらの場合、会社は法定の日数分の有給休暇を与えていますし、権利の消滅を救済する意味での買上げは制度の趣旨に反しないからです。

 

  <退職時の買上げ>

特に退職時の買上げは、安心して充分な引継ぎをすることに役立つでしょう。

有給休暇の消化期間だけ、退職日を後ろにずらすことも考えられますが、転職先の入社日よりも後に退職するのは不自然ですし、社会保険料が余計にかかったりしますのでお勧めできません。

退職するにあたって、「退職日までのすべての出勤日に年次有給休暇を取得します」という申し出があった場合、会社はこれを拒めません。

しかしこれでは、引継ぎなどできなくなってしまいます。

こんなとき、会社ができる工夫としては、本来の休日に休日出勤を命じて引き継ぎ書の作成や申し送りをさせることでしょうか。

普段から少しずつ年次有給休暇を取得させておけば、突然の退職にあたって会社側が困ることは避けられるのです。

2021/09/16|1,117文字

 

1時間単位の年次有給休暇https://youtu.be/NvhWqWPb2j8

 

<年5日の年次有給休暇の確実な取得>

年次有給休暇は、働く人の心身のリフレッシュを図ることを目的として、原則として、労働者が請求する時季に与えることとされています。

しかし、同僚への気兼ねや請求することへのためらい等の理由から、取得率が50%前後と低調な現状にあり、年次有給休暇の取得促進が課題となっています。

このため労働基準法が改正され、平成31(2021)年4月から、すべての企業で、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。

 

<取得義務の例外>

休職中は労働義務がありません。

労働義務が無い日について、年次有給休暇を取得する余地はありませんから、休職期間に年次有給休暇を取得することはできません。

法令には規定がありませんが、同趣旨の通達があります(昭和31.2.13基収489号)。

これは、就業規則で毎年三が日が休日の企業で、三が日に年次有給休暇を取得できないのと同じです。

したがって、休職期間を年次有給休暇の残日数分だけ延長ということもありません。

例えば、基準日前から次の基準日後まで、1年以上にわたって休職していて、期間中に一度も復職しなかった場合には、使用者にとって義務の履行は不可能です。

こうした場合には、法違反を問われることはありません。

 

<取得義務の履行が困難なケース>

次の基準日までの日数が少ないタイミングで、休職や育児休業などから復帰した場合には、年次有給休暇を取得できる労働日が少ないので、取得義務を果たすのが難しくなります。

しかし、この場合でも、年5日の年次有給休暇を取得させうる労働日がある場合には、年次有給休暇を取得させる義務を免れることはできません。

半日単位の年次有給休暇を取得してもらうなど、工夫して義務を果たすことになります。

仕事の進捗に問題が発生するような場合には、年次有給休暇の取得義務を果たしつつ、休日出勤を命ずるという裏技を使うこともあるでしょう。

なお、次の基準日までの日数が極端に少なく、取得させるべき年次有給休暇の残日数が、次の基準日の前日までの労働日の日数を超える場合には、「年5日」を達成できなくても、その労働日のすべてを年次有給休暇に充てることで足ります。

 

<解決社労士の視点から>

上記のように、かなり厳しい状況に追い込まれる可能性があります。

休職や育児休業などが見込まれた時点で、前もって年次有給休暇を取得しておいてもらったり、復帰後の年次有給休暇取得を勤務予定に組み込んだりと、年次有給休暇の取得義務を見据えた勤務計画を立てておく必要があるでしょう。

2021/09/15|1,064文字

 

<年次有給休暇取得権の保護>

使用者が、年次有給休暇の取得を妨害する措置をとっても構わないのであれば、労働者の権利は容易に侵害されてしまいます。

こうした事態を防ぐため、労働基準法には次の規定が置かれています。

 

第百三十六条 使用者は、第三十九条第一項から第四項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

 

この規定の最後の「しないようにしなければならない」という言い回しが曲者(くせもの)です。

こうした言い回しは、使用者の「努力義務」を規定しているものとされます。

違反しても、刑事罰や過料等の法的制裁を受けない程度の義務であって、一定の努力を示せば良いとされるものです。

ですから、正面から年次有給休暇の取得を妨害するような露骨な措置をとれば、この努力義務違反となりうるのですが、全く別の目的からとられた措置であって、年次有給休暇の取得を抑制する効果が小さければ、許されることもあるのです。

 

<「努力義務」違反の例>

年次有給休暇を取得した日について欠勤扱いとし、給与計算で欠勤控除とする措置は、労働基準法第136条に違反します。

給与計算のうえで、年次有給休暇を取得しても、欠勤した場合と同じ効果しか無いのであれば、年次有給休暇を労働者の権利とした意味がありません。

また、賞与の査定の際に、年次有給休暇の取得日数に応じたマイナス評価をして、取得日数分の給与に相当する金額を賞与から控除するような措置も、同様の理由から労働基準法第136条に違反します。

 

<「努力義務」違反にはならない例>

労働基準法第136条違反が争われた沼津交通事件では、最高裁判所が次のような判断を示しています。(平成5(1993)625日)

 

タクシー会社では、乗務員の出勤率が低下して自動車の実働率が下がることを防止する目的で、皆勤手当の制度を採用することがある。

この会社では、年次有給休暇と欠勤を合わせて1日であれば減額した皆勤手当てを支給し、2日以上であれば支給しないという運用をしていたが、皆勤手当の金額は最大でも給与の1.85%に過ぎなかった。

このように、この会社の皆勤手当は年次有給休暇の取得を抑制する目的を持たず、また、その金額からも年次有給休暇の取得を抑制する効果を持つものではないので、労働基準法第136条に違反しない。

 

労働者の権利である年次有給休暇の取得を抑制しうる措置の導入を考える場合には、その目的と効果を具体的に検証したうえで実施する必要があるということです。

2021/09/12|1,067文字

 

<年次有給休暇は事前の請求が原則>

労働者が年次有給休暇を取得するときには、休む日を指定します。

これが、労働者の時季指定権の行使です。〔労働基準法第39条第5項本文〕

休む日を指定して取得するということは、事前に請求するということになります。

そして、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は労働者に対して、休む日を変更するように請求できます。

つまり、会社は時季変更権を行使することができます。〔労働基準法第39条第5項但書〕

労働者が会社の時季変更権を侵害しないようにするためにも、年次有給休暇の取得は事前請求が原則です。

 

<恩恵としての年次有給休暇への振替>

例外的に、事後の申請により私傷病欠勤を年次有給休暇に振り替える規定を就業規則に置いている会社もあります。

これは、労働基準法の定めを上回る権利を労働者に認める規定ですから、このような規定を置く/置かないは会社の自由です。

そして、どのような手続によって振り替えを認めるか、また会社の承認を必要とするかしないかも、会社の判断で自由に定めることができます。

 

<申請だけで振替ができる規定の場合>

労働者が所定の用紙に必要事項を記入して会社に提出すれば、欠勤を年次有給休暇に振り替えることができるという規定ならば、花粉症であれ腹痛であれ、それなりの理由があれば振り替えることができてしまいます。

会社としては、無断で年次有給休暇を使われたという印象を受けるかもしれません。

しかし、就業規則の規定に従って年次有給休暇の振り替えを行った以上、会社がこれを否定したり、非難したり、マイナスに評価するということはできません。

 

<会社の承認を得て振り替えができる規定の場合>

私傷病欠勤が、やむを得ない欠勤であると認められる場合に限り、年次有給休暇に振り替えることができるという規定にしておけば、インフルエンザや急性胃腸炎を理由に上司の承認を得て振り替えが認められるし、花粉症や単なる腹痛であれば、勤務不能とまではいえない欠勤なので、年次有給休暇に振り替えることはできないという運用が可能です。

 

<解決社労士の視点から>

就業規則の規定に従って、労働者が無断で年次有給休暇を取得してしまったと嘆いたり批判したりではなく、就業規則の不備を反省すべきです。

就業規則の規定は、労働契約の内容となります。

会社が就業規則に定めたことは、会社の労働者に対する約束になります。

想定外の運用をされてしまったと嘆く前に、社会保険労務士などの専門家のアドバイスを受けたうえで、就業規則の具体的な内容を決定してはいかがでしょうか。

2021/09/11|1,175文字

 

<年次有給休暇は事前の請求が原則>

労働者が年次有給休暇を取得するときには、休む日を指定します。

これが、労働者の時季指定権の行使です。〔労働基準法第39条第5項本文〕

休む日を指定して取得するということは、事前に届け出るということになります。

そして、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は労働者に対して、休む日を変更するように請求できます。

つまり、会社は時季変更権を行使することができます。〔労働基準法第39条第5項但書〕

労働者が会社の時季変更権を侵害しないようにするためにも、年次有給休暇の取得は事前請求が原則です。

しかし、会社側は時季指定権を持っていませんから、休む日を勝手に決めることはできません。

ただし労使の合意によって、次の「計画的付与制度」を使うことはできます。

 

<計画的付与制度>

年次有給休暇の付与日数のうち、5日分を除いた残りの日数については、労使協定を結べば、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度です。

この制度を導入している企業は、導入していない企業よりも年次有給休暇の平均取得率が 高くなっているという統計もありますから、年次有給休暇が取りやすくなると考えられます。

 

<実際の対応>

給与明細書を見てみたら、勝手に年次有給休暇を取得した扱いになっていたという場合、労働者が異議を申し出なければ、事後的な合意で年次有給休暇が取得されたものと考えて良いでしょう。

しかし、年次有給休暇は別の機会に取得する予定であったとか、何か必要が発生したときのために残しておきたかったとか、労働者の意思に反する場合には、労働者から会社に対して「間違い」の是正を求めることができます。実際に、給与処理上のミスだったということもありえます。

この場合には、年次有給休暇の残日数が減らなかったことになり、年次有給休暇を取得した扱いによって過剰に計算された賃金は、労働者から会社に返金することになります。

 

<働き方改革との関係で>

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)のためには、労働時間の削減や休日数の増加、年次有給休暇の取得など、従業員の健康と生活に配慮し、多様な働き方に対応したものへ改善することが重要です。

会社が労働者に対して一方的に年次有給休暇を取得させるというのは、年次有給休暇の取得促進にはなるものの、法的に認められることではありません。

また、何の予告も無く行われれば、労働者の会社に対する不信感も強まります。

なお、会社が年5日の年次有給休暇を取得させる義務を負う場合であっても、会社が時季を定めるに当たっては、労働者の意見を聴取することが必要であり、対象となる労働者の意見を尊重するよう努めなければなりません。

 

内容は同じであっても、労使で話し合って決めていけば、従業員満足度が高まり、定着率は上がるし、会社の評判も向上するでしょう。

2021/09/02|1,087文字

 

<犯罪による被害>

犯罪には侵害される「利益」があり、刑法などはその「利益」を守るために刑罰を規定しています。

この「利益」は、保護法益などと呼ばれています。

しかし、犯罪によって侵害される利益は、法令によって保護が予定されている利益にとどまりません。

たとえば、窃盗罪の被害者は財産上の利益を奪われるだけでなく、盗まれたものに対する愛着心や、被害に遭ったショックなどにより、精神的な被害も受けています。

 

<二次被害>

このように犯罪の被害者は、二次被害を受けています。

犯罪の被害者となったことによる精神的ショックや身体の不調、医療費の負担や失業による経済的損失、捜査協力や裁判に関わることによる精神面や時間の負担、うわさ話などによる精神的な被害など、その範囲は広範に及びます。

こうしたことにより、欠勤が発生したり、仕事の能率が低下することは、容易に想定されるのですが、こうした不利益から社員を守れるのは会社しかありません。

 

<犯罪被害者休暇の必要性>

犯罪被害者の方々が仕事を続けられるようにするため、被害回復のための休暇制度の導入が求められます。

年次有給休暇の取得だけでは日数が足りないかもしれませんし、入社後半年未満などで年次有給休暇が無い社員は欠勤になってしまいます。

実際に出勤できなくなる事情としては、警察への届出、事情聴取、証拠提出、病院での受診、弁護士との相談・打合せ、裁判への出廷・傍聴などがあります。

特に裁判となると、年に10回以上法廷が開かれるなど、被害者の負担は大きいものです。

なにより、本人に責任の無いことで、たまたま犯罪の被害者となり、勤務が困難となったことにより、会社が貴重な人材を失うというのは避けなければなりません。

会社に犯罪被害者休暇の制度を設けて、こうした事態を防ぎましょう。

 

<就業規則の規定例>

(犯罪被害者休暇)

第●条 会社は、犯罪の被害を受けた従業員の心身の回復を図り、早期に通常の業務に専念できるようにすることを目的として、  日を限度に有給の休暇を与える。

2 前項の休暇は、従業員が次の理由により止むを得ず勤務できない場合に、これを与えるものとする。

・犯罪の被害を受けたことによる心身の治療のための通院

・犯罪被害者としての警察からの事情聴取、裁判への出廷・傍聴

 

上記の例では「有給の休暇」としていますが、無給とする場合であっても、年次有給休暇を付与する場合の出勤率の計算にあたって出勤扱いにするとか、人事考課にあたって欠勤扱いにしないとか、退職金の計算にあたって勤続期間から控除されないなどの利益がありますから、決して無意味ではありません。

2021/08/24|803文字

 

<年次有給休暇の取得促進>

労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持を図るための年次有給休暇は、その取得率が50%前後の水準で推移しています。

こうした現状を踏まえ、有給休暇取得促進のため、1日単位にこだわらない取得が認められるようになっています。

 

<半日単位の取得>

労働者が希望し、会社が同意した場合であれば、半日単位で有給休暇を消化することが認められています。

ただし、「午前中で終わる用事のためなら、1日休まなくても半日有給でいいですね」と会社側から働きかけるような、1日単位での有給休暇の消化を阻害する行為は認められません。

 

<1時間単位の取得>

5日以内なら労使協定を交わすことによって、1時間単位の年次有給休暇取得も可能です。〔労働基準法第39条第4項〕

また、労使協定の定めによって、対象者の範囲を限定することもできます。

この場合には、異動などによって対象者から外れた場合の取り扱いについて、あらかじめ労使で取り決めておく必要があります。

 

<1時間単位なら不安も少ない>

年次有給休暇の取得を申し出るには、労働者の側に次のような不安があります。

・みんなに迷惑がかかるのではないか

・休み明けに忙しくなるのではないか

・職場が年次有給休暇を取得できる雰囲気ではない

・上司が嫌な顔をしそうだ

1時間単位で希望の時間だけ年次有給休暇を取得する場合には、こうした不安も軽減されるでしょう。

 

<解決社労士の視点から>

年次有給休暇を1時間単位で取得できるようにする/しないは、それぞれの会社の自由ですが、法的権利であると思い込んでいる労働者が多いのも事実です。

それほど労働者のニーズが高い一方で、この制度の導入は会社の負担が大きくありません。

働き方改革は、企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善だと考えられますから、1時間単位の年次有給休暇の導入は優先順位が高いといえるでしょう。

2021/07/26|1,372文字

 

正社員登用者の年次有給休暇https://youtu.be/UCBrjOY97Bw

 

<就業規則の定め>

休職は、労働基準法などに規定がなく、各企業の定める就業規則に従って運用されます。

モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、休職について次のように規定しています。

 

【休職】

第9条  労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。

① 業務外の傷病による欠勤が  か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき                    年以内

② 前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき

                           必要な期間

2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。

3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

 

<休職前の年次有給休暇取得>

就業規則には、一定の期間欠勤が続くと休職となり、あるいは休職を命じられるという規定が多いでしょう。

この場合、年次有給休暇を取得すれば欠勤にはなりませんから、休職となることを嫌って、ある程度の日数の年次有給休暇を取得してから、欠勤が発生するようになるのが通常です。

また、社会保険料や住民税の控除ができる程度の給与を確保するためにも、年次有給休暇の取得が有効です。

本人の考え方次第ですが、欠勤や休職をなるべく避けたいということで、年次有給休暇をすべて使い果たしてから欠勤が発生することもあります。

 

<休職中の年次有給休暇取得>

休職中は労働義務がありません。

労働義務が無い日について、年次有給休暇を取得する余地はありませんから、休職期間に年次有給休暇を取得することはできません。

法令には規定がありませんが、同趣旨の通達があります(昭和31.2.13基収489号)。

これは、就業規則で毎年三が日が休日の企業で、三が日に年次有給休暇を取得できないのと同じです。

したがって、休職期間を年次有給休暇の残日数分だけ延長ということもありません。

 

<復帰後の年次有給休暇取得>

休職期間の満了とともに、あるいは期間満了前に休職事由が消滅して職務に復帰した場合には、年次有給休暇の残日数を限度に取得することができます。

特に私傷病を理由に休職となった場合には、治療の必要から通院のために年次有給休暇を取得する必要性は高いのですが、休職前にすべての年次有給休暇を取得し尽くしていると、この必要に応じることができません。

休職するにあたって、復帰の可能性が高いのであれば、通院のための年次有給休暇を残しておく必要性も高いといえます。

 

<解決社労士の視点から>

休職者が、復帰できるかできないかは結果論です。

企業の方から「年次有給休暇を◯日残しておいたほうが良い」といったアドバイスをするのは適切ではありません。

あくまでも、本人の意思で年次有給休暇の取得を申し出るようにしてもらうべきです。

また、病気休暇の制度があれば、業務外の傷病による休職の場合には、病気休暇の取得も併せて考えます。

年次有給休暇も病気休暇も本人の権利ですから、企業側から不確実な見込みでアドバイスすることは避けましょう。

2021/07/02|1,398文字

 

<法定の権利という性質>

年次有給休暇は、労働基準法によって法定された労働者の権利です。

労働基準法は、労働者を守るため基準を定めて使用者に遵守を求めます。

違反については、罰則が定められ、刑事事件として書類送検されることもあります。

 

<年次有給休暇取得届>

労働基準法は「使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない」と規定していて、会社側の承諾については何も規定していません。〔労働基準法第39条第5項本文〕

ところが「申請」「承認」という運用をしている企業もあります。

これは、日付さえ指定して請求すれば簡単に取得できるはずの年次有給休暇に、会社側の承諾という条件を加えているわけですから、労働基準法よりも一段高い基準を設けて年次有給休暇の取得を不当に制限していることになります。

また慶弔休暇など、企業独自の法定外の休暇と同じフォーマットに「申請」「承認」の欄が設けられている場合もあります。

法定外の休暇については、就業規則で独自の取得ルールを設けても構わないのですが、年次有給休暇にも同じ「申請書」などを使ってしまうことにより、誤った運用をしているのでしょう。

年次有給休暇は、時季指定の「届」が正しい形となります。

 

<届出の期限>

労働基準法は、年次有給休暇の取得について「何日前までに届出」といった制限をしていません。

しかし、年次有給休暇の届出期限を「原則前日まで」としている企業がある一方で、「1週間前まで」とする企業もあります。

労働者が指定した取得日では、事業の正常な運営を妨げることになる場合には、企業側が労働者に取得日の変更を求めることができます(時季変更権)。〔労働基準法第39条第5項但書〕

労働者から年次有給休暇の取得届が提出されると、会社側は他の従業員の勤務調整を行う必要があるかも知れません。

このために時間を要し、結局調整が困難な場合には時季変更権の発動ということになります。

ですから、何日前までに年次有給休暇取得届を提出するルールとするかは、その企業や職場によって異なってくるでしょう。

もちろん、前日の届出でも認めることが、労働基準法の趣旨に適うことは言うまでもありません。

また、各個人から年次有給休暇の年間予定表を提出してもらうなど、事業の正常な運営を妨げる可能性について、予め検討しておける制度を運用することも考えられます。

 

会社による年次有給休暇の取得日変更https://youtu.be/NtEUlordpKU

 

<取得の理由>

殆どの場合、年次有給休暇を取得する理由はプライベートなものです。

年次有給休暇の本来の趣旨は、仕事による疲労の蓄積を解消しリフレッシュすることにありますが、実際には、病院で診察を受ける、役所で手続する、子供の学校の行事に参加するなど、疲労回復とは異なる理由のことが多いものです。

労働者から年次有給休暇の届出があった場合に、企業はこれを拒否できません。

事業の正常な運営を妨げることになる場合に、企業側が労働者に取得日の変更を求めることができるに過ぎません。

年次有給休暇取得の理由を申告させ、理由次第で取得を拒否したり、取得日の変更を求めたりはできないのです。

ということは、年次有給休暇の取得理由を申告させることは、不当なプライバシーの侵害になります。

年次有給休暇取得届に理由欄を設けたり、上司が部下の取得の理由を詮索したりは、人権侵害になります。

無用なプライバシー侵害が発生しないよう十分に注意しましょう。

2021/06/27|1,901文字

 

<休暇の通勤手当>

通勤手当は、労働基準法などにより、企業に支払が義務付けられているものではありませんが、支払われる場合には、通勤に必要な経費や負担を基準にその金額が決められているのが一般です。

休暇の場合には、出勤しないわけですから、年次有給休暇を取得した場合の賃金に通勤手当が含まれるというのは、矛盾があるようにも思われます。

  

<労働基準法の定め>

「就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない」〔労働基準法第39条第7項本文〕

つまり、解雇予告手当などを計算する場合に用いられる法定の平均賃金、または、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金が原則となります。

ただし、労使協定を交わせば、健康保険法第40条第1項の標準報酬月額の30分の1を、1日分の年次有給休暇の賃金として支給することもできます。

また、この金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これに従います。〔労働基準法第39条第7項但書〕

 

<労働基準法施行規則>

労働基準法の規定だけでは明確にならない場合は、次の規定が適用されます。

 

労働基準法施行規則

第二十五条 法第三十九条第七項の規定による所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金は、次の各号に定める方法によつて算定した金額とする。

一 時間によつて定められた賃金については、その金額にその日の所定労働時間数を乗じた金額

二 日によつて定められた賃金については、その金額

三 週によつて定められた賃金については、その金額をその週の所定労働日数で除した金額

四 月によつて定められた賃金については、その金額をその月の所定労働日数で除した金額

五 月、週以外の一定の期間によつて定められた賃金については、前各号に準じて算定した金額

六 出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、その賃金算定期間(当該期間に出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金がない場合においては、当該期間前において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金が支払われた最後の賃金算定期間。以下同じ。)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における総労働時間数で除した金額に、当該賃金算定期間における一日平均所定労働時間数を乗じた金額

七 労働者の受ける賃金が前各号の二以上の賃金よりなる場合には、その部分について各号によつてそれぞれ算定した金額の合計額

2 法第三十九条第七項本文の厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金は、平均賃金若しくは前項の規定により算定した金額をその日の所定労働時間数で除して得た額の賃金とする。

3 法第三十九条第七項ただし書の厚生労働省令で定めるところにより算定した金額は、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)をその日の所定労働時間数で除して得た金額とする。

 

<解決社労士の視点から>

年次有給休暇の賃金の計算方法には、次の3つがあるということです。

1.労働基準法第12条で定める「平均賃金」

2.所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金

3.健康保険法第99条で定める「標準報酬日額」

 

このうち、1.3.に通勤手当が含まれていることは明らかです。

しかし、2.に通勤手当が含まれるか否かは不明確です。

これについては、次の規定があります。

 

「使用者は、年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」〔労働基準法附則第136条〕

 

この条文について、通勤手当を支給しないことが「賃金の減額」にあたると解釈すれば、通勤手当を支給しなければなりません。

 

さて基本に戻って、通勤手当は労働基準法などにより企業に支払が義務付けられているものではありません。

ですから、就業規則に「通勤手当は実際に出勤した日についてのみ支給する」という規定があれば、年次有給休暇の賃金についても、通勤手当を計算に含めなくて良いことになります。

反対に、こうした規定が無ければ、不明確なことは労働者の有利に解釈するのが労働法全体の趣旨ですから、通勤手当を計算に含める必要があるでしょう。

2021/06/26|1,029文字

 

ブラック就業規則https://youtu.be/fUVYZrve4OU

 

<通常の場合>

年次有給休暇を取得する場合には、労働者から取得する日を指定するのが原則です(時季指定権)。

一方、労働者が指定した日の年次有給休暇取得が、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社からその日の取得を拒むことができます(時季変更権)。

労働者から、いきなり「今日休みます」と言われたのでは、会社は時季変更権を使う余地がありません。

ですから、前もっての指定が必要なのです。

 

<円満退職の場合>

転職先が決まっている、家族と共に転居するなど、労働者の都合により、退職日が決まっていて変更できない場合があります。

この場合、退職日より後の日に年次有給休暇を取得することはできませんから、一般には退職日までの間の出勤予定日に取得することになります。

しかし、会社に長い間貢献した人が退職していくにあたって、それが円満退社であれば、せめて最後に残った年次有給休暇をすべて取得させてあげたいところです。

この場合、残った年次有給休暇の日数が多ければ、日付を遡って取得させることもありえます。

ただし、前年度にさかのぼると、労働保険料の計算や税金の計算などがやり直しになりますので注意が必要です。

場合によっては、社会保険料の計算もやり直しとなります。

そこで、お勧めしたいのは、年次有給休暇の買上げです。

通常は、買上げは許されないのですが、退職にあたって買上げることは、休暇取得の妨げにならないので許されています。

それでも、年次有給休暇の取得は労働者の権利ですから、退職者と会社とで話し合って決めることが必要です。

 

<円満ではない退職の場合>

会社と感情的に対立していて、退職にあたって様々な要求をしてくる労働者がいます。

年次有給休暇については、「普段あまり取得できなかったので、退職にあたっては、残さずすべてを取得させてほしい」「残った年次有給休暇を買い取ってほしい」という話が出てきます。

年次有給休暇をすべて取得し尽くすというのは、退職日との関係で日程的に

無理が無ければ可能な話ですし、労働者としての正当な権利を行使するに過ぎません。

しかし、年次有給休暇の買上げは、「会社が残日数の一部または全部の買上げを行うことができる」に過ぎず、労働者の側から権利として主張することはできません。

ただ、引継ぎをきちんと終わらせない恐れがある、あるいは未払残業代やパワハラを理由とする慰謝料を請求してくる可能性が高いなどの事情があれば、経営判断で年次有給休暇の買上げをすることも考えられます。

2021/05/10|1,642文字

 

<年次有給休暇の制度趣旨>

年次有給休暇は、労働者が心身の疲労を回復し、明日への活力と創造力を養い、ゆとりある勤労者生活を実現するための制度です。

この趣旨から、対象者は正社員に限られず、国籍や会社の規模に関係なく適用されます。

会社側は、年次有給休暇を取得しやすい職場環境を作り、休暇の取得促進を図ることが求められています。

 

<時季変更権>

とはいえ、たとえば同じ店舗のメンバーが一斉に年次有給休暇を取得するようなことがあれば、通常、その日は閉店せざるを得ません。

こうした不合理なことが起こらないように、従業員が年次有給休暇を請求しても、それを会社側で変更することができる場合があります。

これが時季変更権であり、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社側は年次有給休暇の取得そのものは否定できないものの、他の日に変更するよう求める権利が与えられています。〔労働基準法第39条第4項但書〕

しかし、客観的に事業の正常な運営を妨げる場合に当たらなければ、会社側が時季変更権を主張しても、それは権利の濫用ですから、年次有給休暇を他の日に変更することはできません。

たとえば同じ店舗のメンバーが一斉に年次有給休暇を取得する場合でも、同じ会社の近隣店舗や本部からの応援で、その日の店舗運営に支障がないのであれば、会社側は時季変更権を使えないことになります。

 

<事業の正常な運営を妨げる場合>

一般的な判断基準としては、その労働者の所属する事業場を基準として事業の規模・内容、その労働者の担当する作業の内容・性質、作業の繁閑、代行者の配置の難易、労働慣行等、諸般の事情を考慮して判断するものとされています。〔電々公社此花電報電話局事件最高裁判決(昭和 57318日)〕

そして会社側には、労働者が指定した日に年次有給休暇を取得できるように配慮する義務があるとされています。〔弘前電報電話局事件最高裁判決(昭和62710日)、横手統制電話中継所事件最高裁判決(昭和62922日)〕

少し厳しいですが、人手不足で代行者の調達が難しい場合であっても、年次有給休暇の取得に配慮して十分な人員を確保していなかったような事情があれば、会社側は正当に時季変更権を使えないというのが、これらの判例の考え方です。

つまり、年次有給休暇の取得は労働者の法的権利なので、会社側は取得率100%を想定しての採用計画が求められるということになるのでしょう。

 

<連続して年次有給休暇を取得する場合>

労働者が長期にわたり連続して年次有給休暇を取得しようとする場合は、それが長期のものであればあるほど、会社側が代替勤務者を確保することの困難さが増大するなど、事業の正常な運営に支障を来たす蓋然性が高くなるので、会社側の業務計画、他の労働者の休暇予定等との事前の調整を図る必要が生ずるという判例があります。〔時事通信社事件最高裁判決(平成4623日)〕

この判例は、労働者がこうした調整を経ることなく長期にわたり連続して年次有給休暇の時季指定をした場合には、これに対する会社側の時季変更権の行使については、それが事業運営にどのような支障をもたらすか、休暇の時季や期間につき、どの程度の修正・変更を行うかに関し、会社側にある程度の合理的な範囲内で裁量的判断の余地を認めざるを得ないとしています。

このように労働者側に落ち度があれば、会社側は時季変更権を行使し、時季の変更や年次有給休暇の分割を求めることができる場合もあるということです。

 

<解決社労士の視点から>

このように法的権利の行使について、具体的な事情に応じて、労働者側の主張が認められたり、会社側の主張が認められたりする場合には、「常識」に頼らず、過去の裁判例やその変化に注意しつつ対応することが必要です。

従業員から年次有給休暇取得の申し出があり、その日に休ませることに不都合を感じた場合には、上司が安易に判断するのではなく、社会保険労務士などの専門家に判断を求める必要があります。

2021/05/03|1,569文字

 

<厚生労働省の対応>

厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症対策として妊娠中の女性労働者等について、企業に対し職場での配慮を呼びかけています。

また、妊娠中の女性労働者の母性健康管理を適切に図ることができるよう、「新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置」を設けるとともに、この措置により休業が必要とされた妊娠中の女性労働者のために有給の休暇制度を設けて取得させる事業主を支援する助成制度を設けています。

これらの措置及び助成金の期限は、令和4(2022)年1月末までとなっています。

 

<母性健康管理措置>

新型コロナウイルス感染症が拡大する中、妊娠中の女性労働者は、職場の作業内容等によって感染の不安やストレスを抱える場合があります。

こうした人の母性健康管理を適切に図ることができるよう、男女雇用機会均等法に基づく母性健康管理上の措置として、新型コロナウイルス感染症に関する措置が規定されています。

妊娠中または出産後1年以内の女性労働者が保健指導・健康診査の際に、心理的なストレスが母体または胎児の健康保持に影響があるとして、主治医や助産師から指導を受け、事業主に申し出た場合、その指導事項を守ることができるようにするために必要な措置を講じることが事業主に義務付けられています。

主治医等から指導があった場合に備え、指導事項は母健連絡カード(母性健康管理指導事項連絡カード)に書いてもらい、事業主に提出するよう妊娠中の女性労働者にご案内しておきましょう。

具体的な措置としては、感染の恐れが低い作業への転換や出勤の制限(在宅勤務・休業)などがあります。

本措置の対象期間は、令和2(2020)年5月7日から令和4(2022)年1月31日までです。

 

<新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇制度導入助成金>

令和3(2021)年度について助成内容が変更されています。

支給額は15万円で、1事業場につき1回限りとなっています。

 

【主な支給要件】

・新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置として、医師又は助産師の指導により、休業が必要とされた妊娠中の女性労働者が取得できる有給の休暇制度(年次有給休暇を除き、年次有給休暇の賃金相当額の6割以上が支払われるものに限る)を整備すること

・有給休暇制度の内容を新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置の内容とあわせて労働者に周知すること

・令和3(2021)年4月1日から令和4(2022)年1月31日までの間に、この休暇を合計して5日以上労働者に取得させること

 

平均賃金ではなく、年次有給休暇を取得した場合の賃金を基準として、また全額ではなく6割以上の支払が基準となっています。

 

<両立支援等助成金(新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース)>

支給額は、対象労働者1人当たり28万5千円で、1事業所当たりの上限は5人までとなっています。

 

 【主な支給要件】

・新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置として、医師または助産師の指導により、休業が必要とされた妊娠中の女性労働者が取得できる有給の休暇制度(年次有給休暇を除き、年次有給休暇の賃金相当額の6割以上が支払われるものに限る)を整備すること

・有給休暇制度の内容を新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置の内容とあわせて労働者に周知すること

・令和2(2020)年5月7日から令和4(2022)年1月31日までの間に、この休暇を合計して20日以上労働者に取得させること

 

 

なお、令和2年度(令和3年3月31日まで)に取得した有給休暇について、令和2年度の新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援助成金を申請する場合は、5月31日が申請期限となります。

2021/03/26|1,010文字

 

YouTube年次有給休暇と出勤率

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<管理監督者の特例>

労働基準法第41条第2号に、管理監督者には休日に関する規定が適用されない旨の規定があります。

 

第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者

二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

 

<休日に関する規定>

労働基準法には、休日に関する規定として次のようなものがあります。

 

第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。

2 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

 

この規定は、管理監督者には適用されません。

つまり、管理監督者には週1回の休日を与えなくても良いのです。

ただ、会社は過重労働にならないよう配慮する義務は負っています。

 

<年次有給休暇の規定>

一方で、労働基準法には年次有給休暇の規定があります。

 

第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。(以下省略)

 

この規定は、休日に関する規定ではなくて休暇に関する規定ですから、管理監督者にも適用があります。

 

<休日と休暇>

同じではありません。

 

休日(holiday)は、もともと労働義務のない日です。休むのに、会社に申告したり手続をしたりは不要です。

休日の前日に会社を出るとき、「すみません。明日は休ませていただきます」などと挨拶するのは、少々行き過ぎでしょう。

 

休暇(vacation)は、もともと労働義務のある日について、届出などの手続を行うことによって、労働が免除される日です。

休暇の前日に「明日から休暇をいただきます。よろしくお願いいたします」と上司や同僚に挨拶するのは、良識ある社会人のマナーです。

 

<解決社労士の視点から>

休日と休暇の違いなど、社会保険労務士にとっては基本中の基本なのですが、世間一般では休日と休暇が混同されがちです。

労務管理は専門性の高いことですから、少しでも引っかかるところがあれば、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

2021/03/16|1,652文字

 

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<付与日数は年功序列>

労働基準法第39条第1項によると、全労働日の8割以上出勤したことを前提に、年次有給休暇が下の表のように付与されます。

週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日の欄が適用されます。

ここの部分については、就業規則に誤った規定を見つけることが多いです。

週所定

労働日数

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年 6月 2年 6月 3年 6月 4年 6月 5年 6月

6年

6月以上

5日

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日

169日から216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

121日から168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

73日から 120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

48日から72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

この表の「労働日数」の欄は、厳密には「5日以上」「4日以上」…ということになります。

シフト制で、週平均4.5日なら「4日」の欄を適用します。

これは最低限の付与日数ですから、これを下回ることは、一時的なことであっても許されません。

反対に、この基準を上回って付与することは問題ありません。  

さて、勤続期間が6年半までは、勤続期間が長いほど付与日数が増えていきます。

これは完全に年功序列であって、個人のニーズや会社に対する貢献度とは無関係です。

ここがとても不思議です。  

会社として、この年功序列を不満に感じるのであれば、就業規則で勤続期間に関係なく「66か月以上」の欄を適用することにすれば良いの

ですが。

 

<週30時間の壁>

繰り返しですが、週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日の欄が適用されます。  

週4日出勤で週30時間勤務ならば、1日平均7時間30分ということになります。

ということは、週所定労働日数が4日で、1日の所定労働時間が7時間29分ならば、年次有給休暇は原則通り4日の欄の日数が付与されます。

もちろん、法定通りの最低限の付与日数ならばという前提です。  

実際には、7時間29分勤務なんて怪しすぎて警戒されてしまいます。

それにしても、なぜ週30時間が基準になっているのか不思議です。  

 

<週休1日の場合>

週6日出勤で16時間40分勤務であれば週40時間勤務ですから、残業が発生しなければ所轄の労働基準監督署長に三六協定書の届出をしなくても違法ではありません。

先に掲げた年次有給休暇の日数の表には、「週所定労働日数6日」の欄はありません。

週休1日でも、隔週週休2日でも、5日の欄が適用されます。  

週所定労働日数が1日から4日までについては、比例付与という考え方で、週所定労働日数に応じて年次有給休暇の日数が決められています。

ところが、週6日の場合に週5日よりも多くの年次有給休暇を付与するわけではないのです。

ここが不思議です。

もちろん、法定通りの最低限の付与日数ならばという前提です。

 

<産業の種類に関係なく>

労働基準法の定める最低限の年次有給休暇付与日数は、産業ごとの特性を配慮せずに一律のものです。

これも不思議です。  

たとえばパチンコ店であれば、ほぼ年中無休でしょうからシフト制での勤務が主流のはずです。

人によって、休日が曜日固定であったり、曜日が特定されない形で休日が組まれたりという状態です。

一方、銀行の場合には、土日祝日が休みで平日は休日ではないというパターンが多いでしょう。

すると、平日に市区役所で相談しながら手続したいなどという場合には、銀行勤務の人は年次有給休暇を取得したくなりますが、パチンコ店ではそれほど年次有給休暇取得のニーズは高くないでしょう。

土日祝日の混雑を避けて…という場合にも、平日に休みを取りたいものです。  

年次有給休暇の定めは労働基準法にあって、最低限の基準とされているわけですから、産業の種類に関係ないということなのでしょう。

ニーズの高い業種では、就業規則で年次有給休暇を多めに付与しても良いわけですから。

 

解決社労士

2021/03/10|2,173文字

 

YouTube年次有給休暇と出勤率

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<年次有給休暇を使わせる義務>

年5日以上の年次有給休暇を取得させる義務が規定される前から、労働基準法には次の規定があります。

 

(年次有給休暇)

第三十九条 5 使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない

 

この規定の中の与えなければならないというのは、文脈からすると、権利を与えるということではなく、使わせるという意味であることが明らかです。

そして、この義務に違反した場合の罰則としては、次の規定があります。

 

第百十九条 次の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

 

たとえば、「再来週の水曜日に年休を使いたいのですが」と申し出た従業員に対して、使用者が「有給休暇を使うなんてダメだ」と答えれば、法律上は懲役刑もありうるということになります。

それが悪質であって、労働基準監督官が使用者を逮捕し送検して有罪判決が下されれば、その使用者が前科者となるわけです。

 

しかし、刑罰の存在と、年次有給休暇請求の効力とは別問題です。

刑罰は国家権力と使用者との関係で規定されるもので、年休請求により年休が使えることになるかどうかという使用者と労働者との間の民事的な関係には、直接的には影響しないのです。

 

ということは、「再来週の水曜日に年休を使いたいのですが」と申し出た従業員に対して、使用者が「有給休暇を使うなんてダメだ」と答えた場合、その従業員が当日会社を休んだ場合にどうなるかは別に考える必要があります。

結論としては、年次有給休暇を使ったことにはなりません。

無断欠勤になってしまいます。

 

従業員としては、使用者に対して年次有給休暇を取得させるように説得を試み、それでもダメなら、所轄の労働基準監督署やその他の相談機関に相談するしかありません。

 

<年次有給休暇を使った人の解雇>

年次有給休暇を使ったことを理由に解雇するなど、不利益な取扱いをすることは、次の規定によりやんわりと禁止されています。

 

第百三十六条 使用者は、第三十九条第一項から第四項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

 

この条文の解釈については、最高裁判所が次のような判断を示しています。

 

労基法第136条それ自体は会社側の努力義務を定めたものであって、労働者の年休取得を理由とする不利益取扱いの私法上の効果を否定するまでの効力を持つとは解釈されない。

また、先のような措置は、年休を保障した労基法第39条の精神に沿わない面を有することは否定できないが、労基法第136条の効力については、ある措置の趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度年休の取得に対する事実上の抑止力の強弱等諸般の事情を総合して、年休を取得する権利の行使を抑制し、労基法が労働者に年休権を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められるものでない限り、公序に反して無効(民法第90条)とはならない

沼津交通事件 最二小判平5.6.25

 

年次有給休暇を使ったことを理由に解雇するというのは、解雇により労働者が失う経済的利益の程度、年休の取得に対する事実上の抑止力は甚だしいですし、労基法が労働者に年休権を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められるものですから、公序に反して無効(民法第90条)になるでしょう。

 

それにしても、年次有給休暇を使わせておいて、後から解雇を言い出すのはおかしな話です。

 

<年次有給休暇の使い過ぎを理由とする契約更新の拒否>

下の方に示すように、労働契約法に有期契約労働者の契約更新についての規定があります。

この規定では、何回か契約が更新されている人と、契約更新に対する期待が客観的に是認できる人に限定されていますが、前回と同じ条件での契約更新を権利として認めています。

 

この規定の解釈にも、先ほどの沼津交通事件判決の趣旨が及びます。

たとえば、契約更新にあたって「あなたは年次有給休暇の残日数が少ない。年休の使い過ぎなので、契約は更新できない」などという理由で、契約更新を拒否できないということになるでしょう。

 

(有期労働契約の更新等)

第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

 

解決社労士

2021/01/04|984文字

 

YouTube労働条件を確認しましょう

https://youtu.be/QzMHmif7cgY

 

<残業時間の繰越>

建設業で働くある男性が、月80時間を超える時間外労働をしたのに、将来代休を取る予定にしてその時間分を差し引くことで、80時間未満と申告していました。

この方法は、この職場で長年の慣習だったようです。

本来、適法な三六協定を交わし、かつ、所轄の労働基準監督署長への届出をしていなければ、法定労働時間を超える残業は、たとえ1分間でも違法です。

 

<違法な慣習の発生メカニズム>

社内のある部門で、会社のルール通りにやっていては上手くいかないときに、その部門の部長や事業部長などが「いいこと考えた」とばかりに、少しルールを曲げて運用し、上手くいったつもりになってしまうことがあります。

これが会社目線の素人判断であり、労働法の中のある法令のある規定に違反して違法であったとしても、偉い人の言うことには逆らえませんから、これがその部門での新たな慣習として定着してしまうのです。

もし「いいこと考えた」のが社長であれば、人事部門の責任者も逆らえない可能性があります。

 

<違法な慣習の例>

違法な慣習は、一部の部門だけでなく会社全体に蔓延していて、就業規則に違法な規定が置かれていることもあります。

所轄の労働基準監督署は就業規則の届を受付けているわけですが、細かいチェックまではできないのです。

違法な慣習としては、次のような例があります。

・正社員には年次有給休暇を取得させない。

・臨時アルバイトには労災保険を適用しない。

・軽いケガであれば労災にも健康保険証を使わせる。

・妊娠したら退職するルールがある。

・日給制、年俸制で残業手当を支給しない。

・その日の仕事が終わった時点が終業時刻としている。

・会社で決められた制服への着替え時間が勤務時間外とされている。

・遅刻に対する「罰金」の定めがある。

・会社の備品を壊すと新品を弁償させられる。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

今日までは何事も起こらなくても、明日には事件が起きてマスコミが大々的に報じ、違法な慣習があったことについて深く反省させられるかもしれません。

たとえば、国が少子高齢化対策を強化している今、「パパママ育休プラス」「子の看護休暇」を知らない経営者の方は、基本的なことだけでも確認しておくことをお勧めします。

面倒でしたら、信頼できる社労士を顧問に置いておくという手もありますので、お近くの社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/11/24|882文字

 

<週休を増やす>

会社の方針により、週休1日あるいは隔週週休2日から完全週休2日に変更したら、従業員の休日は増加しますから、年次有給休暇を多少減らしても良いのではないかという話です。

昔から週休1日あるいは隔週週休2日のルールだった会社が、採用難などを理由に、完全週休2日として応募者を増やそうとすることもあります。

また、事業の成長が見込めず、従業員も高齢化していることから、人員を削減するのではなく、休日を増やして対応することもあります。

要は、「休日も休暇も同じ休み」なので、合計の日数が増えるなら問題ないのではないかという考え方です。

 

<休日と休暇>

労働基準法の定義によると、休日は労働義務のない日、 休暇は労働義務のある日に労働が免除される日です。

休日は、従業員から会社に対して申請や届出をしなくても、最初から当然に休みです。

一方で、休暇は、従業員から会社に対し届出をして休みます。

そして労働基準法は、休日と休暇のそれぞれに基準を定めて、この基準を下回ることを許しません。

結局、休日を大幅に増やしても、年次有給休暇が基準を下回るのは違法です。

たとえ、年次有給休暇が法定の基準を上回っている会社であっても、これを減らすことは不利益変更となりますから、厳格な条件を満たした場合にのみ許されます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

休日が増えれば、労働時間が減る可能性が高いでしょう。

この場合に、月給を減らすことに問題は無いのか、減らせるとしてどの程度まで可能かは、それぞれの具体的なケースに応じた判断が必要です。

これは、かなり専門的な話になります。

許される減給であっても、その手続や手順が誤っていると、月給の変更が無効となり、会社は変更前の月給を支払う義務を負うことになります。

一般に、人は変化を嫌います。

労働条件の改善であっても、上手に行わなければ従業員の反感を買い、退職者が出てしまいます。

良かれと思った変更で、労働基準法違反の犯罪が成立し、刑事罰の対象となることもあります。

労働条件や人事制度の変更は、その検討段階から、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/10/12|1,004文字

 

YouTube年次有給休暇と出勤率

https://youtu.be/UHsJHrJymP0

 

<所定労働日数が不明>

年次有給休暇の付与日数は、原則として、1週間の所定労働日数と勤続期間によって決まります。

所定給付日数が何日なのか不明であれば、そもそも年次有給休暇が何日付与されるのかも決まりません。

また年次有給休暇は、入社後最初の半年間、その後は1年ごとの出勤率が8割以上の場合に付与されます。

この出勤率というのは、予め決まっている労働日に対する実際に出勤した日の割合です。

しかし、所定労働日数が不明であれば、出勤率を計算することはできません。

つまり、付与する/しないの判断がつかないのです。

所定労働日数などの労働条件は、入社時に、会社から従業員に書面で通知されていなければ違法です。

これは、会社の規模とは無関係です。

それでも、年次有給休暇を取得させる気の無い会社では、「労働条件通知書」などを交付していません。

 

<人件費の削減>

年次有給休暇を取得させないというのは、不当に人件費を削りたいわけです。

ですから、従業員の数もギリギリあるいは不足しています。

「人手が足りないから有給休暇を取得させられない」という言い訳が聞かれます。

しかし、年次有給休暇は労働基準法による国全体の制度ですから、会社の状況に左右されて内容が変わることはありません。

むしろ、会社は従業員が100%年次有給休暇を取得する前提で、人材を確保しておかなければなりません。

ウイルス感染症の流行などに備えて、多めに人員を確保しておくという会社独自の政策的な配慮は、その会社に任されていることです。

しかし、年次有給休暇を取得させるのに十分な人員を確保しておくことは、事業を展開する以上、会社に法的に義務付けられていることです。

人件費を削りたいのは経営者です。

お客様、従業員、取引先、出資者、金融機関は喜びません。

ライバル会社は少し喜ぶかもしれません。

当たり前ですが、会社の評判は口コミ情報によって低下していきます。

経営者が、人件費を削減するのではなく、売上を伸ばす努力を進めるべきだと気付かなければ、その会社の未来はありません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

「ブラック」を経営理念に掲げる経営者はいないでしょう。

ブラック企業というのは、経営者が意図せずに、いつの間にかブラックになっているものです。

会社がブラックな方向に向かっていないかのチェックには、労働条件審査が役立ちます。

信頼できる社労士にご相談してみてはいかがでしょうか。

 

解決社労士

2020/08/28|1,540文字

 

<申請の意味>

会社の中で「申請」というのは、労働者が自分の希望を申し出て、会社の許可を得ようとする行為です。

会社からの命令に応じて行う業務や、労働者としての権利の行使は、会社の許可を必要とするものではありませんから、申請の対象とはならない筈です。

 

<出張申請書>

自ら出張を希望して、出張申請書を起案し上司に提出するということもあるでしょう。

役職者であれば、出張の必要性を判断する権限を与えられていることもあるからです。

しかし、担当者であれば上司から出張命令を受けるのが一般です。

この場合でも、その担当者は出張申請書を起案します。

出張申請書を起案するのは、出張したいからではなく、出張の目的や業務内容、交通手段、経費などを明らかにして、会社の決裁を得るためです。

出張そのものは上司からの命令であっても、出張の具体的な内容については、上司を通じて会社の決裁を得る必要があるので出張申請書を起案するのです。

出張を終えて帰社すれば、出張申請書の内容との差異や、出張の効果を明らかにするために、出張報告書を提出するのが一般です。

 

<残業申請書>

残業というのは、本来、労働者が会社側からの命令に応じて行うものです。

だからこそ、時間外労働は労働基準法により規制され、違反に対しては使用者に罰則が適用されることもあるわけです。

労働者が、時間外労働の制限をオーバーしたからといって、罰則が適用されるようなことはありません。

それなのに、労働者側から残業を希望する「申請」というのは不合理です。

しかし管理職が、部下の業務内容や進行状況を、すべて具体的に把握できているわけではありません。

残業の必要性について、いつも上司が把握しているとは限らないのです。

このことから、部下は上司に対して、「これこれの業務で2時間の残業が必要と思われます」といった打診をして、上司からの残業命令を促す必要が生じます。

これを文書で行っているのが、残業申請書という名の「残業命令お伺い書」です。

万一、所轄の労働基準監督署の臨検監督が入り、残業申請書の運用が明らかになれば「残業申請書というのはおかしい。申請が却下されたら、サービス残業になるのですか」などという指摘を受けるかもしれません。

この場合には、「残業申請書という名称ですが、実態は残業命令を打診するための書類であって、決して申請書ではありません」という説明をすることになるでしょう。

ですから、申請書のタイトルを「残業申請書 兼 残業命令書」として、申請とこれに対する命令の形式を整えておくのが無難でしょう。

むしろ、出張の場合と同様に、事後の報告をする「残業報告書」を運用し、不必要と思われる残業を減らすよう指導していくのが得策ではないでしょうか。

 

<年休申請書>

出張や残業が、会社から労働者に対する命令であるのとは異なり、年次有給休暇の取得は労働者の権利です。

そして、年次有給休暇の取得は、労働者から会社に対して一方的に時季を指定することによって行います。

ですから、会社に許可を求める「申請」というのは、あり得ないことになります。

会社としては、年次有給休暇の取得日を指定する届が提出されれば、理由を問わずこれを受けなければなりません。

例外的に、会社の事前準備や努力によっても、その日に年次有給休暇を取得させることが、事業の正常な運営を妨げることになってしまう場合には、取得日を変更させることができるに過ぎません。〔労働基準法第39条第5項〕

「人手不足」「忙しい」というだけの理由で、取得日を変更できるわけではないのです。

こうして、年次有給休暇については、「年休申請書」ではなく「年休取得届」を運用するのが正しく、また、「理由欄」も設けてはならないということになります。

 

解決社労士

2020/08/10|1,378文字

 

<年次有給休暇は労働者の権利>

年次有給休暇は、労働基準法に定められた労働者の権利です。〔労働基準法第39条第1項〕

週1日の勤務でも、法定の年次有給休暇を取得する権利があります。〔労働基準法第39条第3項〕

会社が法定以上の年次有給休暇を与えるのは構いませんが、一時的にせよ法定の基準を下回ることはできません。〔労働基準法第1条第2項〕

こうして与えられた年次有給休暇を、退職時にまとめて取得するのも労働者の権利です。〔労働基準法第39条第5項本文〕

会社は、一定の条件のもとで、年次有給休暇の取得日を変更できるのですが、退職日よりも後の日に変更することはできません。〔労働基準法第39条第5項但書〕

 

<権利の濫用か>

会社は、労働者から退職の申出があるとともに、何日もの年次有給休暇取得を言われると、業務の引継について懸念が生じます。

そもそも、引継の相手となる人材がいなければ、新たに採用する必要も出てきます。

退職希望者から、何日もの年次有給休暇取得を言われた場合、会社はそれを権利の濫用として拒否できるのでしょうか。

客観的に見て、会社が対応不可能なのに、労働者が権利を主張してくるのは、権利濫用と言わざるを得ません。

しかし、会社は日常の業務についても、労働者にマニュアルの作成と改善を指示することができます。

これを元に、複数の労働者が業務を共有したり、計画的な人事異動を行ったりということも、会社の指揮命令によって行うことができます。

つまり、客観的に見て、会社が対応不可能とは言えません。

少し厳しい話ですが、労働基準法が労働者に年次有給休暇取得の権利を認めている以上、会社は様々な事態を想定して、予め対応しておく必要があります。

法律が、それを会社に求めているのです。

 

<就業規則による対処>

就業規則によって、会社に発生する不都合を減少させることもできます。

たとえば、次のような規定を設けてはどうでしょうか。

・退職にあたっては、後任者に対し、従来の任務を遂行するのに必要なマニュアルの引継を完了し、上長の確認を受けなければなりません。

・自己都合により退職する人は、退職予定日が決定次第、その理由を申し出て、少なくとも14日前に「退職願」を提出しなければなりません。

・最終出勤日は、退職の理由や引継の内容を考慮して、退職する人と会社とで協議のうえ決定します。

また、懲戒処分の対象に、「正当な理由なく、退職にあたって引継を放棄し、あるいは、引継に必要な出勤を拒んだとき」を加えておくことも考えたいです。

退職金減額の理由とすることも可能です。

 

<礼儀として>

十分な引継もできないほどの突発的な退職というのは、労働者が急死するなどの例外的な場合にしか発生しません。

退職する人は、きちんと引継を済ませたうえで、円満退社すべきです。

世間は狭いもので、知り合いの知り合いを通じて、悪いうわさが流れたりするものです。

ネット上に、あることないこと書かれることもありえます。

会社も、きちんと引継が済むように、年次有給休暇の一部を買上げて引継に必要な日数は出勤してもらえるように、丁寧に頼むなど礼儀を尽くすことが必要です。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

急に誰かが退職を申し出ても困らない体制づくりは必要です。

具体的に何をどうすべきか、迷ったら信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/05/26|1,056文字

 

<慶弔休暇についての社内規定>

社員本人や社員のお子さんの結婚式については、慶弔休暇の規定があって休暇が認められる職場は多いでしょう。

しかし、兄弟姉妹や友人の結婚式となると、慶弔休暇が与えられる職場は少ないものです。

こんなときは、年次有給休暇を取得できるのでしょうか。

 

<年次有給休暇取得の理由>

年次有給休暇の取得にあたって、その理由づけに悩んでいる人は多いものです。

しかし、誰かが休暇を取ったとき、休暇を取った理由によって、会社の仕事が上手く回ったり停滞したりということはありません。

実際、年次有給休暇について「使用者は、年次有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」というように、法律の条文には「理由」のことなど何も書かれていないのです。〔労働基準法第39条第5項〕

 

<調整が必要な場合>

このように、年次有給休暇の取得理由が基本的には問題にならないとはいえ、同じ部署で特定の日に休暇を取得する人が集中すると「事業の正常な運営を妨げる」ことになりますから、やはり調整が必要になります。

この場合には、誰が休暇を取得するかについて使用者が決めるのではなく、部署内のメンバーで話し合って決めるのが望ましいでしょう。

こんな時のためにも、職場内でのコミュニケーションは良好に保っておかなければなりません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

年次有給休暇について、労働基準法の規定をそっくりそのまま写したような就業規則では、同じ日に複数の社員が休暇を希望した時に対応できません。

とはいえ、使用者が休暇取得の理由を詮索すると、休暇取得の妨害が疑われて労働紛争の火種ともなりかねません。

やはり、それぞれの職場に合った年次有給休暇のルールは必要です。

困ったら、ぜひ信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

<同一労働同一賃金の視点から>

大企業では令和2年4月1日から、その他の企業では令和3年4月1日から、同一労働同一賃金の法規制が入ります。

正社員には慶弔休暇があり、パート社員には無い、あるいは日数が違うというルールの場合、何故そうなのが合理的な説明ができないのであれば、統一する必要があります。

慶弔見舞金の金額に差がある場合についても同様です。

客観的に合理的な説明をすることは、かなり困難ではないでしょうか。

これについても、ぜひ信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/02/11|811文字

 

<通常の場合>

年次有給休暇を取得する場合には、労働者が前もって取得する日を指定するのが通常です(時季指定権)。

指定された日の年次有給休暇取得が、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社からその日の取得を拒むことができます(時季変更権)。

労働者から、いきなり「今日休みます」と言われたのでは、この時季変更権を使う余地がありません。

ですから、前もっての指定が必要なのです。

 

<遡ってでも年次有給休暇を取得させたい場合>

会社のために長い間貢献してくれた人が退職していくにあたって、それが円満退社であれば気持よく送り出したいし送別会も盛大にやりたいです。

今まで、ろくに休暇が取れていないのならば、せめて最後に残った年次有給休暇をすべて取得させてあげたいと思います。

しかし、退職までの間にきちんと引継ぎを終わらせて欲しいし、すべて取得させるのはむずかしい。

そこで思いつくのは、遡っての取得です。

 

<遡っての年次有給休暇取得に問題は無いか>

過去に欠勤日があって、その日に年次有給休暇を充てる場合、会社が時季変更権を放棄するのであれば、基本的には遡っての取得に問題は無さそうです。

ただし、前年度に遡ると、労働保険料の計算や税金の計算などがやり直しになりますので注意が必要です。

社会保険料の計算も、場合によっては、やり直しが必要になるかもしれません。

それでも、元々の休日に年次有給休暇を取得させることはできませんから、遡ることには限界があります。

やはり、お勧めしたいのは、年次有給休暇の買い取りです。

通常は、買い取りが許されないのですが、退職にあたって買い取ることは、休暇取得の妨げにならないので許されています。

いずれにせよ、退職者と会社とで話し合って決めることが必要です。

 

ちょっとした裏技と思っていたことが、実は勘違いであって、労働法違反になることがあります。

本当に大丈夫か迷ったら、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2019/12/02|638文字

 

<フレックスタイム制の前提>

「残業時間が8時間たまると1日休める」というような、労働者に不利な「名ばかりフレックス」も横行しています。

しかしここでは、きちんと労使協定を交わして適法に運用されているフレックスタイム制を前提として考えます。

 

<不足する労働時間を年休で埋める場合>

清算期間の労働時間が基準の総労働時間に達しない場合、このままでは欠勤控除が発生しうるので、これを防ぐために事後的に年次有給休暇の取得を認めるのは、よい運用だと思います。

ただし、就業規則や労使協定に運用ルールを定めておくことが必要でしょう。

また、つじつま合わせで、出勤日に年次有給休暇を重ねて、形式的に基準の総労働時間を超えるように計算するというのは、明らかに不合理な運用です。

仕事を休んだ日に年次有給休暇を取得する形にしましょう。

 

<残業時間が多すぎるので年休を取り消す場合>

清算期間の最初のほうで年次有給休暇を取得したところ、その後の期間で想定外の残業が発生したために、労働時間が基準の総労働時間を大きく上回ってしまうことがあります。

この場合に、労働者のほうから年休の取得を取り消して、別の機会に使うことを申し出た場合に、これを認めるのもよい運用だと思います。

ただし、就業規則や労使協定に運用ルールを定めておくことが必要でしょう。

しかし、「今回は残業時間が多いから取り消しなさい」という話を、使用者である上司のほうから言うのは、労働者の年次有給休暇取得権を侵害することになるのでダメです。

 

解決社労士

2019/11/03|1,721文字

 

<モデル就業規則>

年次有給休暇について、モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。

 

【年次有給休暇】

第22条 採用日から6か月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、10日の年次有給休暇を与える。その後1年間継続勤務するごとに、当該1年間において所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、下の表のとおり勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。 

勤続

期間

6か月

1年

6か月

2年

6か月

3年

6か月

4年

6か月

5年

6か月

6年

6か月

以上

付与

日数

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

 

2 前項の規定にかかわらず、週所定労働時間30時間未満であり、かつ、週所定労働日数が4日以下(週以外の期間によって所定労働日数を定める労働者については年間所定労働日数が216日以下)の労働者に対しては、下の表のとおり所定労働日数及び勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。

 

週所定

労働日数

1年間の

所定労働日数

勤    続    期    間

6か月

1年

6か月

2年

6か月

3年

6か月

4年

6か月

5年

6か月

6年6か月以上

4日

169日~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

121日~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

73日~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

48日~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

(以下省略)

 

週所定労働日数が5日以上の従業員のみの職場では、上段の簡単な表だけが適用されます。

そして、週所定労働日数が4日以下の従業員がいる職場では、下段の複雑な表が必要になってきます。

 

<誤りやすいポイント>

モデル就業規則第22条第2項の「前項の規定にかかわらず、週所定労働時間30時間未満であり、かつ、週所定労働日数が4日以下(週以外の期間によって所定労働日数を定める労働者については年間所定労働日数が216日以下)の労働者に対しては、」という規定が、分かりにくいのかも知れません。

原則として、上段の簡単な表が適用されます。

しかし例外的に、次の2つの条件の両方を満たしている従業員については、下段の複雑な表を適用します。

 

・週所定労働時間が30時間未満・週所定労働日数が4日以下

 

裏を返せば、週所定労働日数が4日であっても、週所定労働時間が30時間以上であれば、上段の簡単な表が適用されるということです。

 

<運用の誤りと対処法>

週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上のパート社員に、下段の複雑な表を適用してしまっているパターンがあります。

これは運用上の誤りですから、すぐに運用を改める必要があります。

また、年次有給休暇の付与日数が誤っていた従業員には、付与日数が少なかったことのお詫びとともに正しい残日数を通知しなければなりません。

 

<規定の誤りと対処法>

もっと重症なのは、就業規則そのものに、「週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上のパート社員には、上段の簡単な表が適用される」という規定が漏れているパターンです。

残念ながら、弁護士の先生や、同業の社労士の先生が作った就業規則にも、こうした誤りを発見することがあります。

これは、労働基準法第39条第3項に違反していますから、就業規則を変更し、就業規則変更届を所轄の労働基準監督署長に提出する必要があります。

しかも、変更届を見れば、これまでの運用が誤っていたことが明らかですから、運用の誤りを是正したうえで、変更届を提出するという手順にしなければなりません。

 

<複雑なルールは避けたい>

場合分けのある複雑なルールは、定着しにくいものです。

社内に独自のルールを定める場合には、なるべく単純なものをお勧めします。

労働基準法は、最低限の基準を定めて使用者に守らせ、労働者を保護する趣旨です。

逆に、基準を上回るルールを定めることは禁止されていません。

ですから、社内の混乱を避けるため「週所定労働日数が4日の従業員には、週所定労働時間にかかわらず、一律に上段の簡単な表を適用する」という規定にすることは許されます。

社内の実情に応じ、こうしたことも検討されてはいかがでしょうか。

 

解決社労士

<労働基準法の規定>

年次有給休暇を付与した場合は、①平均賃金、②所定労働時間働いたときに支払われる通常の賃金、③健康保険法第40条第1項に定める標準報酬月額の30分の1に相当する額(1の位は四捨五入)のいずれかの方法で支払わなければなりません。

ただし、③については労働者代表との書面による協定が必要です。

また、これらのうち、いずれの方法で支払うのかを就業規則等に定めなければなりません。〔労基法第39条第7項〕

この①~③の中で、最も多く用いられているのは②の方法で、就業規則に次のような規定が置かれているのを目にします。

 

【年次有給休暇の賃金】

第〇条  年次有給休暇の期間は、所定労働時間労働したときに支払われる通常の賃金を支払う。

 

ここで「通常の賃金」とは、通常の出勤をして、その日の所定労働時間だけ労働した場合に支払われる賃金です。

 

<通勤手当の問題>

「通常の賃金」の中に通勤手当は含まれるのでしょうか。

一般には、通常の出勤・勤務を想定した賃金ですから、通勤手当も含まれます。

特に、月給制で1か月定期代を前払いで支給しているような場合には、一部分だけ定期代の払い戻しを受けることができませんから、通勤手当を削るのは不合理です。

ある会社で、年次有給休暇を取得した場合に精皆勤手当を不支給とする就業規則について、裁判で争われました。

裁判所は、こうした就業規則は「労働者が現実に出勤して労働したことの故に支払われる実費補償的性格の手当でない限り、年休制度の趣旨に反する」と述べています(大瀬工業事件 横浜地判昭和51年3月4日)。

ということは、「実費補償的性格の手当」であれば、年次有給休暇取得日に不支給とすることも制度趣旨に反しないことになります。

たとえば、就業規則で通勤手当の支払いについて「実費を後払い」と規定しているような場合には、「実費補償的性格の手当」と考えられますので、実際の出勤日数に応じた通勤手当を支給することにも十分な合理性があります。

いずれにせよ、他の規定との整合性を踏まえつつ、労使の話し合いのもとに、年次有給休暇取得日の通勤手当について、就業規則に定めておくことがトラブル予防のためには必要です。

 

<夜勤がある場合>

毎週特定の曜日に夜勤があって、夜勤手当が付いている場合、この日に年次有給休暇を取得すると、夜勤手当も支給されるのかという問題があります。

しかし、「通常の賃金」とは、通常の出勤をして、その日の所定労働時間だけ労働した場合に支払われる賃金です。

やはり夜勤手当を付けて計算するのが、一般的には合理的でしょう。

ただ、当日誰か別の人が夜勤に入り、後日、その埋め合わせで、いつもと違う曜日に夜勤に入ったとすると、夜勤予定日に年次有給休暇を取得したとき1回多く夜勤手当をもらうことになります。

これが特定の曜日ではなく、シフト制で個人ごとに夜勤が割り当てられるような場合には、話がもっと複雑になります。

こうした場合にも、他の規定との整合性を踏まえつつ、労使の話し合いのもとに、年次有給休暇取得日の夜勤手当について、就業規則に定めておくことがトラブル予防のためには必要です。

 

<日によって労働時間が違う場合>

パート社員などでは、特定の曜日だけ所定労働時間が長い雇用契約の人もいます。

いつもその曜日に年次有給休暇を取得すれば、給与の支給額が増えてお得だということになります。

本人が特定の曜日ばかり時季指定をしても、これを不当として使用者が時季変更権を使うことはできません。

これが特定の曜日ではなく、シフト制で月に何回か所定労働時間の長い日があるということになると、話がもっと複雑になります。

こうした場合には、所定労働時間の加重平均で年次有給休暇の賃金を計算することにも、それなりの合理性があると思われます。

法令に規定の無い、変則的な内容を就業規則に定める場合には、所轄の労働基準監督署と相談のうえ、内容を決定することをお勧めします。

 

<平均賃金という方法>

上記に現れた変則的なケースでは、「②所定労働時間働いたときに支払われる通常の賃金」ではなく「①平均賃金」で計算することを、就業規則や労働条件通知書に規定しておいた方が妥当な場合もあります。

これによってトラブルは防げるのですが、残業手当が多い場合には、「①平均賃金」が「②通常の賃金」を大きく上回る恐れもあります。

また、過去3か月の平均値を計算する手間もかかりますから、給与計算を担当する人との話し合いも必要でしょう。

 

2019.10.09. 解決社労士 柳田 恵一

<厚生労働省の広報>

毎年10月は、年次有給休暇取得促進期間ですが、今年は9月18日に、厚生労働省雇用環境・均等局職業生活両立課から次のような広報が出されています。

 

~ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて年次有給休暇の取得を促進~

 厚生労働省では、年次有給休暇(以下「年休」)を取得しやすい環境整備を推進するため、次年度の年休の計画的付与※について労使で話し合いを始める前の10月を「年次有給休暇取得促進期間」として、集中的な広報活動を行っていきます。

 年休については、ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議で策定された「仕事と生活の調和推進のための行動指針」において、2020年(令和2年)までに、その取得率を70%とすることが目標として掲げられています。しかし、2017年(平成29年)に51.1%と18年ぶりに5割を超えたものの、依然として政府が目標とする70%とは大きな乖離があります。

 このような中、労働基準法が改正され、今年4月から、使用者は、法定の年休付与日数が10日以上の全ての労働者に対し、毎年5日間、年休を確実に取得させることが必要となりました。年休の計画的付与制度を導入することは、年休の取得を推進するとともに、労働基準法を遵守する観点からも重要になります。

 厚生労働省では、この制度改正を契機に、計画的付与制度の一層の導入が図られるよう、全国の労使団体に対する周知依頼、ポスターの掲示、インターネット広告の実施などを行い、周知広報に努めていきます。

 

※「年次有給休暇の計画的付与制度」・・・年次有給休暇の付与日数のうち5日を除いた残りの日数について、労使協定を結べば計画的に年次有給休暇の取得日を割り振れる制度。(労働基準法第39条第6項)

 

<年休取得5日についての勘違い>

使用者は、時季指定をしてでも、年最低5日間は年次有給休暇を取得させる義務を負うこととなりました。

この対象者は、法定の年休付与日数が10日以上の全ての労働者です。

しかし、法定の年休付与日数が10日未満であれば、取得させなくても良いということではありません。

また、取得義務の対象者について、年5日を超える年休は取得させなくて良いということにはなりません。

年休の残日数がある労働者からの時季指定があれば、会社は理由を問わず取得させるのが基本です。

これは、年次有給休暇が労働基準法によって労働者に与えられた権利だからです。

 

<取得率目標70%についての勘違い>

政府が令和2(2020)年までに、年休取得率を70%とすることを目標として掲げたからといって、このことが会社に義務付けられたわけではありません。

あくまでも努力目標です。

ましてや、労働者に年休の70%以上取得が義務付けられたわけではありません。

年休取得率70%を会社の方針として掲げるのは素晴らしいことですが、労働者に年5日を超えて取得を強制することはできません。

年次有給休暇は、労働者の権利であって義務ではないからです。

法定の5日間を超えて会社から一方的に年休の時季指定をしてしまうことは、労働者の時季指定権を侵害することになり許されないのです。

 

労働者の権利である年次有給休暇の取得があまりにも進まないため、使用者は、時季指定をしてでも、年最低5日間は年次有給休暇を取得させる義務を負うこととなりました。

これは「権利を行使させる義務」という例外的なものですから、会社は慎重に対応する必要があるのです。

 

2019.09.20. 解決社労士 柳田 恵一

<年次有給休暇の確実な取得>

使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日については毎年時季を指定してでも与えなければなりません。

年次有給休暇は、労働者に与えられた権利ですから、本来的にはその権利を使うかどうかは、労働者の自由に任されています。

しかし、年次有給休暇の取得を促進しても、取得率が50%前後で伸び悩んだことから、働き方改革の一環で労働基準法が改正され、企業に時季指定を義務付けることになったのです。

これには例外があって、労働者の方から取得日を指定した日数と、労使協定によって計画的付与がされた日数は、年5日から差し引かれます。

つまり、基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

本来は、労働者の権利である年次有給休暇の取得について、労働基準法が使用者を通じて間接的に義務付けたことになります。

しかし、労働者の時季指定権を確保するため、5日を超える日数を指定することはできません。

労働基準法が年5日と法定している以上、会社の方針で年10日以上など5日を超える日数を基準に時季指定することはできないのです。

 

<年次有給休暇の取得を嫌う労働者>

年次有給休暇の取得を嫌がる人もいます。理由はさまざまです。

休んでいる間に仕事が溜まることを、極端に恐れるというのが多いようです。

反対に、仕事が溜まらないように同僚や上司が業務を代行した場合に、普段の仕事ぶりが明らかになってしまうことへの不安もあります。

こうした労働者についても、使用者は法定の範囲内で年次有給休暇を取得させなければならないわけですから、労働者から見たら「年次有給休暇を取得させられる」ということになります。

この関係は、定期健康診断の実施義務にも似ています。

義務を果たさない場合について、使用者側には罰則が適用されうるのですが、労働者側に罰則はありません。

 

<年次有給休暇取得率70%に向けて>

内閣府が発表している「仕事と生活の調和推進のための行動指針」は、2020年までに年次有給休暇取得率70%を目指すとしています。

これを受けて、年次有給休暇取得率70%以上を目標に掲げる企業もあります。

年次有給休暇は労働者の権利ですから、取得を強制する、取得しないと人事考課で評価が下がるなどの運用は許されません。これらは、権利の侵害になるからです。

休んでも仕事が溜まらない仕組み、各社員の普段の仕事ぶりの見える化など、年次有給休暇を安心して取得できる環境を整えることによって、目標を達成したいものです。

 

2019.08.21. 解決社労士 柳田 恵一

<50%以上の割増賃金>

月60時間を超える法定時間外労働に対して、使用者は50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

これは、労働者が健康を保持しながら、労働以外の生活のための時間を確保して働くことができるよう、平成22(2010)年4月1日に労働基準法が改正され、1か月に60時間を超える法定時間外労働について、法定割増賃金率が5割以上に引き上げられたものです。

なお、深夜(22:00~5:00)の時間帯に1か月60時間を超える法定時間外労働を行わせた場合は、 深夜割増賃金率25%以上 + 時間外割増賃金率50%以上 = 75%以上となります。

1か月60時間の法定時間外労働の算定には、法定休日(例えば日曜日)に行った労働は含まれませんが、それ以外の休日(例えば土曜日)に行った法定時間外労働は含まれます。

 

【法定休日】

使用者は1週間に1日または4週間に4回の休日を与えなければなりません。これを「法定休日」といいます。法定休日に労働させた場合は35%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

 

なお、労働条件を明示する観点や割増賃金の計算を簡便にする観点から、法定休日とそれ以外の休日を明確に分けておくことが望ましいものです。

 

<代替休暇>

1か月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するため、引上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。

代替休暇制度導入にあたっては、過半数組合、それがない場合は過半数代表者との間で労使協定を結ぶことが必要です。

 

【労使協定で定める事項】

①代替休暇の時間数の具体的な算定方法

②代替休暇の単位(1日、半日、1日または半日)

③代替休暇を与えることができる期間(法定時間外労働が1か月60時間を超えた月の末日の翌日から2か月以内)

④代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日

 

この労使協定は、各事業場で代替休暇の制度を設けることを可能にするものであって、個々の労働者に対して代替休暇の取得を義務づけるものではありません。

個々の労働者が実際に代替休暇を取得するか否かは、労働者の希望により決定されます。

 

なお、中小企業については、令和5(2023)年4月まで、60時間を超える法定時間外労働に対する50%以上の率で計算した割増賃金の支払いが猶予されていますから、代替休暇制度の導入もこれ以降となります。

 

2019.08.05. 解決社労士 柳田 恵一

<年次有給休暇を取得させる義務>

年次有給休暇は、労働者の所定労働日数や勤続年数などに応じた法定の日数以上を与えることになっています。

与えるというのは、年次有給休暇を取得する権利を与えるということです。

かつては、実際に労働者の方から「この日に年次有給休暇を取得します」という指定が無ければ、使用者の方から積極的に取得させる義務は無かったのです。

 

ところが、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになりました。

つまり、年次有給休暇が新たに付与される日数が10日以上の労働者に対しては、年次有給休暇のうち5日以上について、基準日から1年以内の期間に労働者ごとにその取得日を指定しなければなりません。

これには例外があって、労働者の方から取得日を指定した日数と、労使協定によって計画的付与がされた日数は、年5日から差し引かれます。

結局、基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

<就業規則に必要な規定>

年次有給休暇など法定の休暇だけでなく、会社で設けている休暇については就業規則に必ず定めることが必要です。

年次有給休暇については、新たに取得日を指定してでも取得させる義務が発生したわけですから、これも就業規則に定めなければなりません。

その職場の就業規則により、また前後関係から、表現の違いはあるものの内容的には次のようになります。

 

【新たに規定する内容】

年次有給休暇が新たに10日以上与えられた従業員に対しては、従業員があらかじめ請求する時季だけでなく、付与日から1年以内に、その従業員の有する年次有給休暇日数のうち5日について、会社が従業員の意見を聴取し、その意見を尊重した上で、あらかじめ時季を指定して取得させる。

ただし、従業員があらかじめ請求する時季に年次有給休暇を取得した場合、および労使協定を結んで計画的に休暇取得日を決定した場合には、その取得した日数分を5日から控除する。

 

<働き方改革との関係>

年次有給休暇の取得率は、平均50%前後で伸び悩んできました。

こうした事態を解消するために、働き方改革の一環で、使用者に年次有給休暇の取得日を指定させてでも、取得率を向上させようということです。

働き方改革というのは、働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な改革ですから、会社が従業員の意見を聴取し、その意見を尊重した上で進めることが必要です。

残業が減った分だけ給料が減り、残業手当の付かない役職者に仕事が集中するのは、働き方改革の弊害だと言われますが、進め方を誤った結果にすぎません。

年次有給休暇の取得についても、働き方改革の本質から外れない運用を心がけましょう。

 

2019.07.12. 解決社労士 柳田 恵一

<労働基準法の規定>

労働基準法には、次の規定があります。

 

【労働基準法第39条第5項】

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

 

会社は、従業員が指定した日に、年次有給休暇を与える義務があるということです。

上司の許可が必要であったり、会社の決裁が必要であったりするルールは無効です。

「有給休暇申請書」というのは誤りであって、「有給休暇届」が正しいことになります。

 

もっとも、但し書きにあるように、従業員が請求した日に年次有給休暇を与えると、事業の正常な運営を妨げることになる場合は、従業員が指定した日を会社側から変更することが認められています。

たとえば、従業員の半数以上が同じ日に年次有給休暇を取得したら、「事業の正常な運営を妨げる」ことになりますから、一部の従業員について変更を求めることができます。

 

とはいえ、特定の部署や店舗で多数の従業員が同じ日に年次有給休暇を取得しようとした場合に、会社は他部署や他店舗、あるいは本部の応援をもってしても対応できない場合に限り、変更を求めることができるにすぎません。

ましてや、「今は忙しいから」「人手が足りないから」ということで、安易に変更できるものではありません。こうした事情は、特殊な場合を除き、会社が年次有給休暇の取得を前提とした対応をしていない、努力不足であると判断されてしまいます。

 

<許可制の就業規則>

年次有給休暇の許可制を定めた就業規則であっても、その届が所轄の労働基準監督署に提出され、受付印が捺されることもあります。

この場合でも、労働基準法の規定が優先的な効力を持ちますから、許可制の規定は無効です。

それどころか、こうした規定が見つかった場合には悪質と判断されますので、法令違反の規定を置かないよう十分に注意する必要があります。

 

<年次有給休暇取得日の変更>

労働基準法には、従業員側の時季変更権について規定がありません。

しかし取得日の変更が、会社に実害をもたらすような特別な場合に限り、許可制にすることが許されると考えられます。

根拠としては、次の規定が挙げられます。

 

【労働契約法】

(労働契約の原則)
第三条 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。

4 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。

5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

 

<計画的付与>

年次有給休暇のうち、5日を超える部分については、労使協定を結んで計画的に休暇取得日を割り振ることができる計画的付与の制度があります。

これは、個々の従業員の許可を得ることなく、会社と労働組合や労働者の代表との間で労使協定を交わすことによって、年次有給休暇を取得させるものです。

それだけに、一部の従業員からは不満が出やすい制度ではあります。

しかし、年次有給休暇の取得を促進する制度ですから、従業員への十分な説明を行ったうえで有効に活用したいものです。

 

<時季指定義務>

平成31(2019)年4月から、全ての使用者に対して「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられています。

多くの企業では就業規則を変更し、会社が時季指定する規定を置くなどして対応しています。

これはもちろん働き方改革の一環で行われていることです。

働き方改革は、働き手の不安を解消し満足度を高める施策ですから、従業員の許可なく年次有給休暇の取得を強制するという運用は許されません。

個々の従業員の意向を踏まえつつ、年次有給休暇を取得させることが求められていることを忘れないようにしましょう。

 

2019.07.11. 解決社労士 柳田 恵一

<法の規定>

労働基準法は、年次有給休暇の取得日について、次のように定めています。

 

【労働基準法第39条第5項】

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

 

「時季」は、長期の連休をイメージしますが、「取得日」という意味です。

「労働者の請求する時季」なのだから、これから先の日付でも、過去の日付でも良さそうに思えます。

しかし、この条文の但し書きは、一定の場合には、使用者が別の日に年次有給休暇を与えることができると言っています。

過去の日を取得日に指定したのでは、使用者が取得日を変更できなくなってしまいます。

このことから、論理的に考えて、年次有給休暇の取得日の指定は、翌日以降の日でなければならないことになります。

 

<就業規則の規定>

就業規則には、次のような規定が置かれることがあります。

 

【欠勤の年次有給休暇への振替】

私傷病による欠勤は、申請によってこれを年次有給休暇に振り替えることを認める場合があります。この申請は、所定の書式により上長に提出することによって行います。

 

私傷病など特定の原因による欠勤が発生した場合に、事後の申請で年次有給休暇に振り替えることを認めるわけです。

労働基準法は、労働者の権利について最低限の基準を定めているわけですから、労働者にとって労働基準法よりも有利な制度を設けることを禁止してはいませんから、こうした規定を置くことも可能です。

 

<フレックスタイム制での配慮>

フレックスタイム制を運用していると、仕事と生活の調整が容易ですから、年次有給休暇を取得するチャンスが捉えにくくなります。

なるべく残業時間が発生しないように勤務していたところ、清算期間の終了間際になってから、勤務の都合がつかず、清算期間の所定労働時間に満たない勤務しかできない期間が生じたら、事後的に年次有給休暇を取得できる仕組みにしてはいかがでしょうか。

反対に、業務が少ない時期だと思って、清算期間の途中にまとめて年次有給休暇を取得したところ、清算期間の終了間際になって、長時間の勤務が続くと、思わぬ残業が発生してしまいます。この場合、使用者の方から、年次有給休暇の取得を取り消させるわけにはいきません。しかし、労働者側から、これから先のために年次有給休暇を取っておきたいなどの希望で、年次有給休暇の取得を取り消せる仕組みも必要ではないでしょうか。

 

2019.04.13.解決社労士

YouTube

https://youtu.be/UHsJHrJymP0

 

<年次有給休暇の付与日数>

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上
217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

<出勤率の問題>

年次有給休暇の付与について、労働基準法に次の規定があります。

 

(年次有給休暇)第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

○2 使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。

 

法律上は、出勤率が八割以上なら【図表1】か【図表2】で定められた年次有給休暇が付与され、八割未満なら全く付与されないということになります。

 

この出勤率は、大雑把に言うと 出勤した日数 ÷ 出勤すべき日数 で計算されます。

しかし、シフト制で、しかもそのシフトの変更が激しい職場などでは、出勤すべき日数(全労働日)を確定するのが困難です。

 

また、出勤率が八割未満ということは、年次有給休暇をフルに取得したうえ、さらに欠勤も発生している状態だと考えられます。

何らかの事情があって、そうなってしまったのでしょう。

翌年度も、同じ事情があるのなら、少しは年次有給休暇を付与してあげたいというのが人情です。

 

<出勤率を計算しないで付与する方法>

【図表2】の年間所定労働日数の欄を、年間出勤日数に変え、数値をその八割に置き換えたのが次の【図表3】です。

 

【図表3】

年間出勤日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

173日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

135~172日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

96~134日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

58~95日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

38~57日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

【図表3】は、【図表2】で出勤率八割をギリギリの日数でクリアした状態を想定して作ってあります。

ですから、実際の年間出勤日数だけをカウントし、面倒な出勤率を計算せずに、年次有給休暇を付与した場合には、労働者に少しだけ有利となり、労働基準法違反とはなりません。

具体的には、欠勤がほとんど無い場合に、1行上の日数が付与されることになります。

そして、出勤率が低くても、それなりの日数だけ年次有給休暇が付与されます。

 

この仕組みなら、積極的にシフトに入ろうとするでしょうし、なるべく欠勤しないように頑張れるのではないでしょうか。

 

2019.04.08.解決社労士

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の意味>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数で計算されるのが一般です。

 

<月間所定労働日数を決めるときの端数>

就業規則に従って、カレンダーで年間の休日数を数え365日から引いて年間の労働日数を確定します。

うるう年と平年でも違いますし、同じ平年でも日曜日と祝日の重なる回数などによって変動があります。

そして、月間所定労働日数 = 年間の労働日数 ÷ 12 の計算式によって、月間所定労働日数を決めることが多いと思います。

このとき、22.51日、23.16日など、端数が出るのが通常です。

こうした場合に、切り上げると月給の時間単価は安くなり、切り捨てると高くなります。今までの運用実績があるのなら、切り上げると厳密には不利益変更となりますので、切り捨てるのが無難です。

月間所定労働日数に小数点以下の端数があっても、給与計算には困らないのですが、一般には整数で決められています。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上

5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上

4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上

3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上

2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになったのに、対応できないので困ったことになってしまいます。

やはり、明確に確定することが求められているのです。

 

2019.04.07.解決社労士

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の意味>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数 で計算されるのが一般です。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月

1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上

5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上

4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上

3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上

2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

週あたり

労働日数

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月

1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

5日

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日

169日から

216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

121日から

168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

73日から

120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

48日から

72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになったのに、対応できないので困ったことになってしまいます。

やはり、明確に確定することが求められているのです。

 

2019.04.06.解決社労士

<法改正のポイント>

年次有給休暇は、労働者の所定労働日数や勤続年数などに応じた法定の日数以上を与えることになっています。

与えるというのは、年次有給休暇を取得する権利を与えるということです。

実際に労働者の方から「この日に年次有給休暇を取得します」という指定が無ければ、使用者の方から積極的に取得させる義務は無いのです。

これが現在の労働基準法の規定内容です。

ところが、平成31(2019)年4月1日からは、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになりました。

これが年次有給休暇についての、今回の労働基準法の改正内容です。

 

<対象となる労働者>

年次有給休暇の付与日数が10日以上である労働者が対象です。

付与された日数が少ない労働者の場合には、自由に取得日を指定できる日数が少なくなってしまうことに配慮されています。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表】のとおりです。週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日の欄が適用されます。

 

【図表】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

5日

10

11

12

14

16

18

20

4日

7日

8日

9日

10

12

13

15

3日

5日

6日

6日

8日

9日

10

11

2日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

 

この【図表】の中で、「年次有給休暇の付与日数が10日以上である」のは、赤文字の部分です。

これをまとめると、次のようになります。

 

年次有給休暇の付与日数が10日以上のパターン

 

・週5日出勤の従業員が勤続6月以上になった場合

・週4日出勤で週所定労働時間が30時間以上の従業員が勤続6月以上になった場合

・週4日出勤で週所定労働時間が30時間未満の従業員が勤続3年半以上になった場合

・週3日出勤の従業員が勤続5年半以上になった場合

 

ここで勤続期間は、最初の入社から通算しますから、パート社員などで期間を区切って契約する有期労働契約であっても、契約更新でリセットされません。

 

<使用者に求められること>

労働者が6か月間継続勤務したときに年次有給休暇が付与され、その後1年間勤務するごとに年次有給休暇が付与されるというのが労働基準法の定めです。

この基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

こうしたことは、多くの企業にとって不慣れですから、ともすると次の基準日の直前にまとめて年次有給休暇を取得させることになりかねません。

これでは業務に支障が出てしまいますので、計画的に対処することが必要になります。

 

基準となるのは週所定労働日数と週所定労働時間です。これが確定できないと、年次有給休暇の付与日数も決まりません。未確定ならば、必要に応じ専門家に相談して確定させてください。

 

2019.04.05.解決社労士

【労働基準法39条1項】

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

 

全労働日は、その期間の所定労働日数の合計です。

出勤日を予め決めておかず、出られるときに出てもらうなどしていると、全労働日が計算できないので、「八割以上出勤」したかどうか分からなくなります。

この場合には、従業員全員が「八割以上出勤」したことにすれば、労働基準法に違反しません。

 

【労働基準法39条2項】

使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。

 

【図表1】週5以上勤務または週4勤務で30時間以上勤務

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

【労働基準法39条3項】

次に掲げる労働者(一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者を除く。)の有給休暇の日数については、前二項の規定にかかわらず、これらの規定による有給休暇の日数を基準とし、通常の労働者の一週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数(第一号において「通常の労働者の週所定労働日数」という。)と当該労働者の一週間の所定労働日数又は一週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数とする。一 一週間の所定労働日数が通常の労働者の週所定労働日数に比し相当程度少ないものとして厚生労働省令で定める日数以下の労働者

二 週以外の期間によつて所定労働日数が定められている労働者については、一年間の所定労働日数が、前号の厚生労働省令で定める日数に一日を加えた日数を一週間の所定労働日数とする労働者の一年間の所定労働日数その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める日数以下の労働者

 

所定労働日数が週4日で所定労働時間が週30時間未満の場合と、所定労働日数が週4日未満(週3日以下)の場合には、次の計算により付与日数が決まります。

 

上の表の付与日数 × 1週間の所定労働日数 ÷ 5.2

 

※1日未満の端数は切り捨てです。

 

所定労働日数に比例して付与されるので、「比例付与」と呼ばれています。

計算結果は、次の表のようになります。

 

【図表2】比例付与

週所定

労働日数

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

5日

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日

169日から

216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

121日から

168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

73日から

120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

48日から

72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

週により所定労働日数にバラツキがある場合には、年間所定労働日数(1年あたりの所定労働日数)で計算します。

 

【労働基準法39条4項】

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第一号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前三項の規定による有給休暇の日数のうち第二号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。一 時間を単位として有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲

二 時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(五日以内に限る。)

三 その他厚生労働省令で定める事項

 

年次有給休暇の取得は1日単位が本来の形です。

たとえば、子供の学校行事に参加したい、病院に行きたいなどの場合に、丸々1日休むのではなくて、必要な時間だけ休むというのでは、ゆっくりと休めません。

ただ、場合によっては年次有給休暇を、何回かに分けて取得した方が便利なこともあります。

そこで、労働者と使用者とで話し合って協定を交わせば、時間単位の年次有給休暇を取れるルールにできることになっています。

労働者と使用者とで話し合って交わした協定は、「労使協定」と呼ばれます。

 

【労働基準法39条5項】

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

 

「時季」というのは、長期間連続して年次有給休暇を取得する場合の表現のようです。1日だけであれば、「その日」という意味です。

「事業の正常な運営を妨げる場合」というのは、厳しく限定して解釈されています。

「人手が足りないからダメ」というわけにはいきません。年次有給休暇は労働基準法で定められた全国共通のものですから、使用者は全従業員が年次有給休暇を100%取得することを想定して、人員体制を整えておくことが求められています。

この厳格な前提に立ったうえで、なお想定外の事情が発生してしまい、どうしても事業の正常な運営ができなくなる場合には、別の日に年次有給休暇を取得させることができます。

 

【労働基準法39条6項】

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項から第三項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち五日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。

 

労使協定を交わせば、予め取得日を決めておくことができます。

ただ、全員一斉に休暇とする場合、年次有給休暇が付与されていない従業員を欠勤扱いにして無給とするわけにはいきません。一般には、有給の特別休暇を与えるなどの配慮がされています。

 

【労働基準法39条7項】

使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間又はその時間について、それぞれ、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。

 

年次有給休暇を取得した場合には、賃金が支払われます。年次有給休暇を取得したことによって、賃金が減ったのでは、年次有給休暇の仕組みを作った意味がありません。

具体的な計算方法については、就業規則などで定めることになります。計算方法は、この条文にいくつか示されていますので、このうちどれかを決めて定めることになります。

ですから、「労働基準法の定めるところによる」というわけにはいきません。

 

【労働基準法39条8項】

労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第二条第一号に規定する育児休業又は同条第二号に規定する介護休業をした期間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業した期間は、第一項及び第二項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす。

 

全労働日の八割以上出勤」か「全労働日の八割未満」かを判断する場合の話です。

法律により、労働者が休む権利を与えられている日は、休んでも出勤したものとして計算します。

労災で休んだ場合には、業務災害であれば出勤扱いになりますが、通勤災害であれば出勤扱いにはなりません。業務災害は勤務が原因の労災、通勤災害は通勤が原因の労災です。

 

2019.04.04.解決社労士

YouTube

https://youtu.be/UHsJHrJymP0

 

<年次有給休暇の付与基準>

年次有給休暇の付与について定める労働基準法第39条第2項の末尾には、「出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、(中略)有給休暇を与えることを要しない。」と書かれています。

全労働日に対する出勤日の割合は、出勤率と呼ばれ、これが8割未満であれば年次有給休暇を付与しなくても良いということです。

 

<出勤率が基準に満たない社員の状況>

出勤率が8割未満ということは、年次有給休暇をフルに取得したうえ、さらに2割の欠勤が発生している状態だと考えられます。

時々遊びに行きたくなって、繰り返し仕事を休んでいたら、欠勤が2割を超えてしまったなどということは、そうそうあるものではないでしょう。

学生なら学業の都合で、主婦なら家族の都合で、やむを得ず欠勤を重ねてしまったというケースが多いのではないでしょうか。

 

<正しい出勤率の計算>

年次有給休暇の付与基準に使われる出勤率の計算は、実際には複雑です。

単純に考えると、出勤日数 ÷ 全労働日 ということになりますが、これには、休業しても出勤したものと取り扱う例外と、全労働日から除かれる例外があります。

 

【出勤したものと取り扱う日数】

(1)業務上の負傷・疾病等により療養のため休業した日(2)産前産後の女性が労働基準法第65条の規定により休業した日

(3)育児・介護休業法に基づき育児休業または介護休業した日

(4)年次有給休暇を取得した日

 

【全労働日から除外される日数】

(1)使用者の責に帰すべき事由によって休業した日(2)正当なストライキその他の正当な争議行為により労務が全くなされなかった日

(3)休日労働させた日

(4)法定外の休日等で就業規則等で休日とされる日等であって労働させた日

 

こうした例外をきちんと加味して出勤率を計算することは、意外と手間がかかるうえ間違えやすいものです。

 

<会社独自の制度として>

労働基準法は、「出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、(中略)有給休暇を与えることを要しない。」と規定しているのであって、「与えてはならない。」とは規定していません。

普通に出勤していれば、そうそう出勤率が8割を切ることはありません。

たまに見られるのは、週5日出勤で契約したアルバイトが、実際には週4日のシフトで働いていたような場合です。こうした場合には、勤務の実態が変更するたびに、雇用契約書を交わし直すのが確実なのですが、実際にはできていないことがあります。

いろいろと手間を考えてみると、出勤率はノーチェックで8割以上あるものとして、年次有給休暇を付与することにも十分な合理性があるといえるでしょう。

 

2019.03.22.解決社労士

<年次有給休暇を取得させる義務>

年次有給休暇は、労働者の所定労働日数や勤続年数などに応じた法定の日数以上を与えることになっています。

与えるというのは、年次有給休暇を取得する権利を与えるということです。

実際に労働者の方から「この日に年次有給休暇を取得します」という指定が無ければ、使用者の方から積極的に取得させる義務は無いのです。

これが現在の労働基準法の内容です。

ところが、平成31(2019)年4月1日からは、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになります。

 

法改正後は、年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者に対し、年次有給休暇のうち5日については、基準日から1年以内の期間に労働者ごとにその取得日を指定しなければなりません。

これには例外があって、労働者の方から取得日を指定した日数と、労使協定によって計画的付与がされた日数は、年5日から差し引かれます。

つまり、基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

<姑息(こそく)な手段>

従業員に年次有給休暇を取得させていなかった企業は対応に困ります。

これまで、お盆休みや年末年始休みとしていた日を出勤日に変更し、これらの日に年次有給休暇を取得させようかなどと考えます。

元々の休みである「休日」に「休暇」を取らせることはできないので、こんなことを思いつくわけです。

これは、対象となる従業員の合意があれば、合意した従業員についてのみ可能です。

また、就業規則がある企業なら、一定の条件の下、就業規則の変更により可能です。

ただし、「本心による合意ではなかった」「不合理な変更だった」などと民事訴訟を提起される恐れはあります。

こうしたことは、後掲の労働契約法8条から10条に定められています。

 

<働き方改革の趣旨>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「従業員満足度向上により、労働意欲と健康状態を回復させて、労働生産性を高める急速かつ多面的な施策」といえるでしょう。

働き方改革の手段は、従業員の満足度を高めるものであることが必要です。

 

<趣旨に反する対応の結果>

「来年度から、各企業には年次有給休暇を取得させる義務が課される」

このことは、ニュースや口コミで多くの従業員が知っています。

この期待に反して、元々の休日を出勤日に変更し、これらの日に年次有給休暇をあてるような対応をすれば、従業員は「うちの会社らしい対応だ」「あの社長ならやると思った」など不満たらたらです。

労働意欲や会社への帰属意識は低下し、労働生産性が下がることは目に見えています。

これは、働き方改革の目的に反する結果が生じることになるわけです。

やはり真面目に働き方改革に取り組むべきでしょう。

 

【参考】労働契約法

(労働契約の内容の変更)

第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

 

(就業規則による労働契約の内容の変更)

第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

 

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

 

2018.12.05.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

<時季指定権と時季変更権>

同じ会社の同じ部署で、一度に多数の労働者が相談のうえ、同じ日を指定して年次有給休暇を取得しようとするのは権利の濫用です。

このように事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は時季変更権を行使することができます。

 

【労働基準法第39条第5項】

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

 

<権利の濫用>

出勤日当日の朝に、従業員が上司にメールで「休みます」と連絡し、後から「あれは有給休暇です」と言っても、多くの場合、会社は有給休暇の取得を拒否できます。なぜなら、会社の時季変更権を侵害してしまうからです。

そもそも年次有給休暇などの権利を保障する労働基準法は、憲法に基づいて制定されました。

 

【勤労条件の基準】

第二十七条 2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

 

そして憲法自身が、権利を濫用してはならないと定めています。

 

【権利濫用の禁止】

第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

 

ここで、「公共の福祉」というのは、時季指定権と時季変更権のような対立する権利間の調整を意味します。

自分の権利の主張が、相手の権利を侵害する場合には、権利の濫用とされることがあるのです。

 

<権利の濫用とは言えない場合>

出勤日当日の朝に、従業員が上司に電話で「母が自宅で意識を失い救急車で病院に運ばれました。私も救急車に同乗して今病院にいます。有給休暇の取得ということにできませんか」と連絡した場合は、権利の濫用とはいえないでしょう。

従業員は有給休暇の取得にあたって、理由を述べる必要は無いのですが、みずから特別な理由を明らかにして申し出た場合には、会社も取得を認めるルールが必要でしょう。

たとえば、就業規則に「私傷病により勤務できない場合の欠勤、その他やむを得ない事情による欠勤は、申請によってこれを年次有給休暇に振り替えることを認める場合があります。振替は所定の用紙に記入するものとします」というような規定を置くと良いでしょう。

 

2018.11.30.解決社労士

<繰り越しか消滅か>

退職金の請求権は5年間、その他の請求権は2年間で時効消滅します。

民法の規定によると消滅時効の期間が短いので、労働基準法が労働者を守るために期間を延長しています。

 

【労働基準法の時効の定め】

第百十五条 この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によって消滅する。

 

パート社員などを正社員にした場合、前から持っている年次有給休暇も、発生してから2年間で消滅します。正社員になると共に消滅することはありません。

会社によっては、正社員になると共に年次有給休暇が10日間付与されます。この場合には、未消化の年次有給休暇が40日を超えることもあります。

また、付与日数の計算基準となる勤続年数も通算されます。

正社員にならなかった場合よりも、不利にならぬよう注意が必要です。

 

<所定労働日数が変化した場合>

正社員登用前は週3日勤務、登用後は週5日勤務という場合、年次有給休暇付与の条件としての出勤率は、次回の年次有給休暇付与の日からさかのぼって1年間で計算します。

登用前が4か月、登用後が8か月であれば、登用前の出勤率の4倍と登用後の出勤率の8倍を合計して、12で割って求めます。これが8割以上なら付与されることになります。

また付与日数は、週5日勤務が基準となります。

ただし就業規則などに、労働者にとってより有利なルールがあれば、それに従います。

 

<給与計算システムとの整合性>

正社員と正社員以外とで、給与計算に異なるシステムを使用している会社もあります。

データを単純に移動してしまうと、年次有給休暇の勤続年数がリセットされてしまい、せっかく正社員に登用されたのに不利になってしまうことがあります。

これは労働基準法違反にもなりますので、対応できないシステムの場合には、一部手作業で対応することになるでしょう。

特に勤続6年半以上のパートさんなどが、正社員に登用された場合には注意が必要です。

 

2011.11.19.解決社労士

YouTube

https://youtu.be/UHsJHrJymP0

 

<年次有給休暇の付与日数>

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

<出勤率の問題>

年次有給休暇の付与について、労働基準法に次の規定があります。

 

(年次有給休暇)第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。○2 使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。

 

法律上は、出勤率が八割以上なら【図表1】か【図表2】で定められた年次有給休暇が付与され、八割未満なら全く付与されないということになります。

 

この出勤率は、大雑把に言うと 出勤した日数 ÷ 出勤すべき日数 で計算されます。

しかし、シフト制で、しかもそのシフトの変更が激しい職場などでは、出勤すべき日数(全労働日)を確定するのが困難です。

 

また、出勤率が八割未満ということは、年次有給休暇をフルに取得したうえ、さらに欠勤も発生している状態だと考えられます。

何らかの事情があって、そうなってしまったのでしょう。

翌年度も、同じ事情があるのなら、少しは年次有給休暇を付与してあげたいというのが人情です。

 

<出勤率を計算しないで付与する方法>

【図表2】の年間所定労働日数の欄を、年間出勤日数に変え、数値をその八割に置き換えたのが次の【図表3】です。

 

【図表3】

年間出勤日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

173日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

135~172日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

96~134日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

58~95日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

38~57日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

【図表3】は、【図表2】で出勤率八割をギリギリの日数でクリアした状態を想定して作ってあります。

ですから、実際の年間出勤日数だけをカウントし、面倒な出勤率を計算せずに、年次有給休暇を付与した場合には、労働者に少しだけ有利となり、労働基準法違反とはなりません。

具体的には、欠勤がほとんど無い場合に、1行上の日数が付与されることになります。

そして、出勤率が低くても、それなりの日数だけ年次有給休暇が付与されます。

 

この仕組みなら、積極的にシフトに入ろうとするでしょうし、なるべく欠勤しないように頑張れるのではないでしょうか。

 

2018.10.09.解決社労士

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の意味>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数で計算されるのが一般です。

 

<月間所定労働日数を決めるときの端数>

就業規則に従って、カレンダーで年間の休日数を数え365日から引いて年間の労働日数を確定します。

うるう年と平年でも違いますし、同じ平年でも日曜日と祝日の重なる回数などによって変動があります。

そして、月間所定労働日数 = 年間の労働日数 ÷ 12 の計算式によって、月間所定労働日数を決めることが多いと思います。

このとき、22.51日、23.16日など、端数が出るのが通常です。

こうした場合に、切り上げると月給の時間単価は安くなり、切り捨てると高くなります。今までの運用実績があるのなら、切り上げると厳密には不利益変更となりますので、切り捨てるのが無難です。

月間所定労働日数に小数点以下の端数があっても、給与計算には困らないのですが、一般には整数で決められています。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになるのに、対応できないので困ったことになってしまいます。

やはり、明確に確定することが求められているのです。

 

2018.10.08.解決社労士

 

働き方改革関連法についての通達「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について(平成30年9月7日基発0907第1号)」が公表されました。

 

第3 年次有給休暇(新労基法第39条及び新労基則第24条の5等関係)

1 趣旨 年次有給休暇の取得率が低迷しており、いわゆる正社員の約16%が年次有給休暇を1日も取得しておらず、また、年次有給休暇をほとんど取得していない労働者については長時間労働者の比率が高い実態にあることを踏まえ、年5日以上の年次有給休暇の取得が確実に進む仕組みを導入することとしたものであること。

 

2 年5日以上の年次有給休暇の確実な取得(新労基法第 39 条第7項及び第 8項並びに新労基則第 24 条の5関係)  

 

⑴ 使用者による時季指定(新労基法第39条第7項及び第8項関係)

 使用者は、労働基準法第39条第1項から第3項までの規定により使用者が与えなければならない年次有給休暇(以下「年次有給休暇」という。)の日数が10労働日以上である労働者に係る年次有給休暇の日数のうち、5日については、基準日(継続勤務した期間を同条第2項に規定する6箇月経過日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期 間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下同じ。)から1年以 内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならないものであること。

 この場合の使用者による時季指定の方法としては、例えば、年度当初に労働者の意見を聴いた上で年次有給休暇取得計画表を作成し、これに基づき年次有給休暇を付与すること等が考えられるものであること。

 ただし、労働基準法第39条第5項又は第6項の規定により年次有給休暇を与えた場合においては、当該与えた年次有給休暇の日数(当該日数 が5日を超える場合には、5日とする。)分については、時季を定めることにより与えることを要しないこと。すなわち、労働者が自ら時季指定して5日以上の年次有給休暇を取得した場合や、労働基準法第39条第6項に基づく計画的付与により5日以上の年次有給休暇を取得した場合には、使用者による時季指定は不要であること。 

 

 ⑵ 年次有給休暇を基準日より前の日から与える場合の取扱い(新労基則 第24条の5関係)

 

ア 10労働日以上の年次有給休暇を前倒しで付与する場合の取扱い(新労基則第24条の5第1項関係) 使用者は、年次有給休暇を当該年次有給休暇に係る基準日より前の日から10労働日以上与えることとしたときは、当該年次有給休暇の日数のうち5日については、基準日より前の日であって、10 労働日以上の年次有給休暇を与えることとした日(以下「第一基準日」という。) から1年以内の期間に、その時季を定めることにより与えなければならないものであること。  

 

イ 付与期間に重複が生じる場合の特例(新労基則第24条の5第2項関係)

上記アにかかわらず、使用者が10労働日以上の年次有給休暇を基準日又は第一基準日に与えることとし、かつ、当該基準日又は第一基準日から1年以内の特定の日(以下「第二基準日」という。)に新たに10 労働日以上の年次有給休暇を与えることとしたときは、履行期間(基準日又は第一基準日を始期として、第二基準日から1年を経過する日を終期とする期間をいう。)の月数を12で除した数に5を乗じた日数について、当該履行期間中に、その時季を定めることにより与えること ができること。

 

 ウ 第一基準日から1年以内の期間又は履行期間が経過した場合の取扱い(新労基則第24条の5第3項関係)

第一基準日から1年以内の期間又は履行期間が経過した場合においては、その経過した日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日を基準日とみなして新労基法第39条第7項本文の規定を適用するものであること。

 

エ 年次有給休暇の一部を基準日より前の日から与える場合の取扱い(新労基則第24条の5第4項関係)

使用者が年次有給休暇のうち10労働日未満の日数について基準日以前の日(以下「特定日」という。)に与えることとした場合において、特定日が複数あるときは、当該10労働日未満の日数が合わせて10労働日以上になる日までの間の特定日のうち最も遅い日を第一基準日とみなして新労基則第24条の5第1項から第3項までの規定を適用するものであること。この場合において、第一基準日とみなされた日より前に、労働基準法第39条第5項又は第6項の規定により与えた年次有給休暇の日数分については、時季を定めることにより与えることを要しないこと。

 

 ⑶ 半日単位の年次有給休暇の取扱い

年次有給休暇の半日単位による付与については、年次有給休暇の取得促進の観点から、労働者がその取得を希望して時季を指定し、これに使用者が同意した場合であって、本来の取得方法による休暇取得の阻害とならない範囲で適切に運用される限りにおいて、問題がないものとして取り扱うこととしているが、この取扱いに変更はないものであること。 この現行の取扱いに沿って、半日単位の年次有給休暇を労働者が取得した場合については、新労基法第 39 条第8項の年次有給休暇を与えた場合として取り扱って差し支えないものであること。 また、新労基則第 24 条の6第1項の規定により労働者の意見を聴いた 際に半日単位の年次有給休暇の取得の希望があった場合においては、使用者が新労基法第 39 条第7項の年次有給休暇の時季指定を半日単位で行うことも差し支えないものであること。 これらの場合において、半日単位の年次有給休暇の日数は 0.5 日として 取り扱うものであること。

 

3 労働者からの意見聴取(新労基則第 24 条の6関係)

 使用者は、新労基法第 39 条第7項の規定により、労働者に年次有給休暇を時季を定めることにより与えるに当たっては、あらかじめ、当該年次有給休暇を与えることを当該労働者に明らかにした上で、その時季について当該労働者の意見を聴かなければならないものであること。 また、使用者は、年次有給休暇の時季を定めるに当たっては、できる限り 労働者の希望に沿った時季指定となるよう、聴取した意見を尊重するよう努めなければならないものであること。

 

4 年次有給休暇管理簿(新労基則第24条の7及び第55条の2関係)  

 使用者は、新労基法第 39 条第5項から第7項までの規定により年次有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日(第一基準日及び第二基準日を含む。)を労働者ごとに明らかにした書類(以下「年次有給休暇管理簿」と いう。)を作成し、当該年次有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後 3年間保存しなければならないこと。

 また、年次有給休暇管理簿については、労働者名簿又は賃金台帳とあわせて調製することができるものであること。  

 なお、年次有給休暇管理簿については、労働基準法第 109 条に規定する重要な書類には該当しないものであること。

 

5 罰則(新労基法第 120 条関係)

 新労基法第 39 条第7項に違反した使用者に対しては、新労基法第 120 条第1号の罰則の適用があること。

 

6 施行期日(整備法附則第1条関係)  

 年次有給休暇に係る改正規定の施行期日は、平成 31 年4月1日である こと。

 

7 経過措置(整備法附則第4条関係)  

 整備法の施行の際4月1日以外の日が基準日(年次有給休暇を当該年次有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとした場合はその日)である労働者に係る年次有給休暇については、整備法の施行の日後の最初の基準日の前日までの間は、新労基法第 39 条第7項の規定にかかわらず、なお従前の例によることとし、改正前の労働基準法第 39 条が適用されるものであること。

 

 

<時季指定義務>

年次有給休暇を取得するにあたって、労働者は時季を指定できます。この権利が時季指定権です。「○月○日に」と指定するわけですから、意味としては「取得日指定権」です。しかし欧米では、長期連休を取る習慣がありますから、労働基準法では、これに倣って「時季」という言葉が使われています。

さて、平成31(2019)年4月1日からは、労働基準法の規定により、年次有給休暇が10日以上付与される労働者については、実際に5日以上取得させる義務が使用者に課されます。年間で4日以下の労働者がいると、1人につき30万円の罰金が科されうるようになります。この5日間については、使用者側が時季指定義務を負うという形になります。

労働者が自主的に年次有給休暇を取得しないのなら、使用者はこれを放置しておいても良かったのが、法改正によって、労働者の意見を聞きながら積極的に年次有給休暇を取得させる義務が生じたわけです。

 

<中小企業では>

上記の通達の中の2(2)と(3)は、労働基準法の規定を超えて労働者の権利を拡大する場合の話ですから、中小企業ではあまり参考になりません。

むしろ、今まで年次有給休暇の取得に目が行かなかった会社では、4に示されている「年次有給休暇管理簿」は必須だと思われます。これが無ければ、うっかり年次有給休暇の取得が1日足りない労働者が出てしまうかもしれません。

 

<法改正への対応のためにやるべきこと>

業務を減らすしかありません。社内で知恵を絞り、取引先とも相談して、あるいは外部の専門家の力を借りて徹底的に行いましょう。

これができないと、人員を増やして対応せざるを得ませんが、どうしても人件費が増えてしまいます。

過去の習慣にとらわれず、思い切った改革が必要になると思われます。

 

2018.10.06.解決社労士

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の意味>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数で計算されるのが一般です。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになるのに、対応できないので困ったことになってしまいます。

やはり、明確に確定することが求められているのです。

 

2018.09.29.解決社労士

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