有給休暇の記事

<管理監督者の特例>

労働基準法41条2号に、管理監督者には休日に関する規定が適用されない旨の規定があります。

 

第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者

二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

 

<休日に関する規定とは>

労働基準法には、休日に関する規定として次のようなものがあります。

 

第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。

2 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

 

この規定は、管理監督者には適用されません。

つまり、管理監督者には週1回の休日を与えなくても良いのです。

ただ、会社は過重労働にならないよう配慮する義務は負っています。

 

<年次有給休暇の規定>

一方で、労働基準法には年次有給休暇の規定があります。

 

第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。(以下省略)

 

この規定は、休日に関する規定ではなくて休暇に関する規定ですから、管理監督者にも適用があります。

 

<休日と休暇>

同じではありません。

 

休日(holiday)は、もともと労働義務のない日です。休むのに、会社に申告したり手続きをしたりは不要です。

休日の前日に会社を出るとき、「すみません。明日は休ませていただきます」などと言ったら、冗談だと思われてしまいます。

 

休暇(vacation)は、もともと労働義務のある日について、届け出などの手続きを行うことによって、労働が免除される日です。

休暇の前日に「明日から休暇をいただきます。よろしくお願いいたします」と上司や同僚に挨拶するのは、良識ある社会人のマナーです。

 

休日と休暇の違いなど、社会保険労務士にとっては基本中の基本なのですが、世間一般では休日と休暇が混同されがちです。

労務管理は専門性の高いことですから、少しでも引っかかるところがあれば、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

 

2017.11.13.解決社労士

<付与日数は年功序列>

労働基準法391項によると、全労働日の8割以上出勤したことを前提に、年次有給休暇が下の表のように付与されます。

週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日の欄が適用されます。  

週所定

労働日数

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年 6月 2年 6月 3年 6月 4年 6月 5年 6月

6年

6月以上

5日

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日

169日から216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

121日から168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

73日から 120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

48日から72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

これは最低限の付与日数ですから、これを下回ることは、一時的なことであっても許されません。

反対に、この基準を上回って付与することは問題ありません。  

さて、勤続期間が6年半までは、勤続期間が長いほど付与日数が増えていきます。

これは完全に年功序列であって、個人のニーズや会社に対する貢献度とは無関係です。ここがとても不思議です。  

会社として、この年功序列を不満に感じるのであれば、就業規則で勤続期間に関係なく「66か月以上」の欄を適用することにすれば良いのです。

 

<週30時間の壁>

繰り返しですが、週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日の欄が適用されます。  

週4日出勤で週30時間勤務ならば、1日平均7時間30分ということになります。

ということは、週所定労働日数が4日で、1日の所定労働時間が7時間29分ならば、年次有給休暇は原則通り4日の欄の日数が付与されます。

もちろん、法定通りの最低限の付与日数ならばという前提です。  

実際には、7時間29分勤務なんて怪しすぎて警戒されてしまいます。

それにしても、なぜ週30時間が基準になっているのか不思議です。  

 

<週休1日の場合>

週6日出勤で16時間40分勤務であれば週40時間勤務ですから、残業が発生しなければ所轄の労働基準監督署長に三六協定書の届出をしなくても違法ではありません。

先に掲げた年次有給休暇の日数の表には、「週所定労働日数6日」の欄はありません。

週休1日でも、隔週週休2日でも、5日の欄が適用されます。  

週所定労働日数が1日から4日までについては、比例付与という考え方で、週所定労働日数に応じて年次有給休暇の日数が決められています。

ところが、週6日の場合に週5日よりも多くの年次有給休暇を付与するわけではないのです。ここが不思議です。

もちろん、法定通りの最低限の付与日数ならばという前提です。

 

<産業の種類に関係なく>

労働基準法の定める最低限の年次有給休暇付与日数は、産業ごとの特性を配慮せずに一律のものです。これも不思議です。  

たとえばパチンコ店であれば、ほぼ年中無休でしょうからシフト制での勤務が主流のはずです。

人によって、休日が曜日固定であったり、曜日が特定されない形で休日が組まれたりという状態です。

一方、銀行の場合には、土日祝日が休みで平日は休日ではないというパターンが多いでしょう。

すると、平日に市区役所で相談しながら手続したいなどという場合には、銀行勤務の人は年次有給休暇を取得したくなりますが、パチンコ店ではそれほど年次有給休暇取得のニーズは高くないでしょう。

土日祝日の混雑を避けて…という場合にも、平日に休みを取りたいものです。  

年次有給休暇の定めは労働基準法にあって、最低限の基準とされているわけですから、産業の種類に関係ないということなのでしょう。

ニーズの高い業種では、就業規則で年次有給休暇を多めに付与しても良いわけですから。

 

2017.11.01.解決社労士

<年次有給休暇を使わせる義務>

労働基準法には、年次有給休暇について次の規定があります。

 

(年次有給休暇)

第三十九条 5 使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない

 

この規定の中の与えなければならないというのは、文脈からすると、権利を与えるということではなく、使わせるという意味であることが明らかです。

そして、この義務に違反した場合の罰則としては、次の規定があります。

 

第百十九条 次の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

 

たとえば、「再来週の水曜日に年休を使いたいのですが」と申し出た従業員に対して、使用者が「有給休暇を使うなんてダメだ」と答えれば、法律上は懲役刑もありうるということになります。

 

しかし、刑罰の存在と、年次有給休暇請求の効力とは別問題です。

刑罰は国家権力と使用者との関係で規定されるもので、年休請求により年休が使えることになるかどうかという使用者と労働者との間の民事的な関係には、直接的には影響しないのです。

 

ということは、「再来週の水曜日に年休を使いたいのですが」と申し出た従業員に対して、使用者が「有給休暇を使うなんてダメだ」と答えた場合、その従業員が当日会社を休んだ場合にどうなるかは別に考える必要があります。

結論としては、年次有給休暇を使ったことにはなりません。無断欠勤になってしまいます。

 

従業員としては、使用者に対して年次有給休暇を取得させるように説得を試み、それでもダメなら、所轄の労働基準監督署やその他の相談機関に相談するしかありません。

 

<年次有給休暇を使った人の解雇>

年次有給休暇を使ったことを理由に解雇するなど、不利益な取扱いをすることは、次の規定によりやんわりと禁止されています。

 

第百三十六条 使用者は、第三十九条第一項から第四項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

 

この条文の解釈については、最高裁判所が次のような判断を示しています。

 

労基法136条それ自体は会社側の努力義務を定めたものであって、労働者の年休取得を理由とする不利益取扱いの私法上の効果を否定するまでの効力を持つとは解釈されない。

また、先のような措置は、年休を保障した労基法39条の精神に沿わない面を有することは否定できないが、労基法136条の効力については、ある措置の趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度年休の取得に対する事実上の抑止力の強弱等諸般の事情を総合して、年休を取得する権利の行使を抑制し、労基法が労働者に年休権を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められるものでない限り、公序に反して無効(民法90条)とはならない

沼津交通事件 最二小判平5.6.25

 

年次有給休暇を使ったことを理由に解雇するというのは、解雇により労働者が失う経済的利益の程度、年休の取得に対する事実上の抑止力は甚だしいですし、労基法が労働者に年休権を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められるものですから、公序に反して無効(民法90条)になると思います。

 

それにしても、年次有給休暇を使わせておいて、後から解雇を言い出すのはおかしな話です。

 

<年次有給休暇の使い過ぎを理由とする契約更新の拒否>

下の方に示すように、労働契約法に有期契約労働者の契約更新についての規定があります。

この規定では、何回か契約が更新されている人と、契約更新に対する期待が客観的に是認できる人に限定されていますが、前回と同じ条件での契約更新を権利として認めています。

 

この規定の解釈にも、先ほどの沼津交通事件判決の趣旨が及びます。

たとえば、契約更新にあたって「あなたは年次有給休暇の残日数が少ない。年休の使い過ぎなので、契約は更新できない」などという理由で、契約更新を拒否できないということになるでしょう。

 

(有期労働契約の更新等)

第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

 

2017.10.21.解決社労士

<過労死等防止対策白書とは>

平成29年10月6日に、政府が過労死等防止対策推進法に基づき、「過労死等防止対策白書」(正式には「平成29年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」)を閣議決定しました。

その具体的な内容は、厚生労働省ホームページからダウンロードできます。

政府刊行物センターなどで販売されるのは、10月下旬からの予定となっています。

 

過労死等防止対策推進法(平成26年法律第100号)

(年次報告)

第6条 政府は、毎年、国会に、我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況に関する報告書を提出しなければならない。

 

この条文によると、行政府である内閣が、国民の代表者で構成される国会に対して、我が国における過労死等の状況と政府が講じた対策を報告するものであることがわかります。

 

<過労死等防止対策>

厚生労働省では、「過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会」の実現に向け、引き続き過労死等防止対策に取り組んでいくとしています。

ここで「過労死等」というのは、業務における過重な負荷による脳血管疾患もしくは心臓疾患を原因とする死亡、もしくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡またはこれらの脳血管疾患、心臓疾患、精神障害と定義されています。

マスコミなどで報道されている場合には、「過労死」という言葉が使われていても、必ずしも定義が明確ではないので注意が必要です。

 

<政府の設定した目標>

政府は平成27年7月24日に、過労死等の防止のための対策を効果的に推進するため、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」を閣議決定しました。

その中で、具体的な目標が次のように設定されています。

 

週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下にする(平成32年まで)

一般の事業では、法定の週労働時間が40時間ですから、1週間の法定外残業時間を20時間未満にしようということです。

 

・年次有給休暇取得率を70%以上にする(平成32年まで)

労働基準法に定められている年次有給休暇について、付与された日数の70%以上を取得させるということです。

 

・メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上にする(平成29年まで)

大企業では対策が進んでいますが、80%以上というのは頭数が基準ではなく事業場数が基準ですから、中小企業にも対策が求められていることになります。

 

これらの目標が、行政府である内閣から、国民の代表者で構成される国会に対して示されたということは、もし目標が達成できなければ、政府は国民に対して政治責任を負うということです。

 

政府が労働関係の政策を推進する場合、一般には次の手順で行っていると思います。

1. 国民に周知するための広報を強化する。

2. 国会に企業の努力義務を定める法案を提出して成立させる。

3. 罰則付きの法的義務を定める改正法案を提出して成立させる。

4. 指導と取締りを強化し、罰則の適用を厳格にしていく。

 

今回のように目標の期限がタイトな場合には、手順が省略されて急ピッチで進められることもあります。

各企業は法改正の動向に敏感に反応し、ある程度先回りして対応の計画・準備をすることが必要になります。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

各企業が法改正に先回りして対応するというのはむずかしいと思います。

現状で、次のような問題を抱えている企業は、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

・月間80時間以上の残業が当たり前になっている社員がいる。

・労働時間の把握が不正確な社員がいる。

・社員が年次有給休暇を取得できていない。

・経営者がメンタルヘルス対策について具体的な宣言をしていない。

 

2017.10.07.解決社労士

<無断欠勤なら>

多くの会社には、正当な理由なく無断欠勤を続けた場合には懲戒解雇とする旨の規定があります。

こうした規定を置かずに行う懲戒解雇は不当解雇となり、解雇が無効となるので、会社が大きな痛手をこうむります。

たとえ規定があったとしても、実質的な欠勤の有無、回数、理由が問題となります。

 

<年次有給休暇の取得なら>

「きょうは会社休みます」というのが、年次有給休暇取得の意図なのか、欠勤のつもりなのか、どちらとも取れる場合があります。

就業規則などに、年次有給休暇取得の手続きについての具体的な規定があれば、その手続きに従わない申し出はダメだという言い分も、一応は筋が通ります。

しかし、口頭で年次有給休暇取得の申し出を受けている職場では、「きょうは会社休みます」と言ったのが、年次有給休暇取得の意図だったという主張を退けることができません。

ましてや、病欠を後から年次有給休暇に振り替えることができるルールの職場なら、年次有給休暇扱いにせざるを得ないでしょう。

少なくとも、年次有給休暇取得の意図を主張されたら、「正当な理由なく」欠勤したという扱いはむずかしくなります。

 

<年次有給休暇取得の拒否>

同僚や上司の迷惑も顧みず、「きょうは会社休みます」と言って休んでしまう社員に対しては、年次有給休暇取得を拒否したくなるかもしれません。

しかし、ご存知の通り、年次有給休暇は労働基準法が認めた労働者の権利です。〔労働基準法39条〕

週1回しか勤務しないアルバイトにも、この労働基準法に基づく厚生労働省令によって、年次有給休暇が与えられています。

「この日に年次有給休暇を取得します」という申し出に対して、「ダメ」と言ったら1回につき6か月以下の懲役刑または30万円以下の罰金刑が定められています。〔労働基準法1091号〕

これとは別に、社員から慰謝料を請求されることもあります。

結局、会社側は「取らせない!」とは言えないことになります。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

従業員が少ない会社でも就業規則を作成し、年次有給休暇のルールを規定しておくべきです。

また、社員教育をきちんとして、労働者の権利を振りかざすことが、場合によっては権利の濫用になることを説明しておくべきです。

就業規則の作成・改定・運用も、社員教育も社労士の得意分野ですから、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.07.31.解決社労士

<週休を増やすとは>

会社の方針により、週休1日から週休2日に変更したら、従業員の休日は倍増しますから、年次有給休暇を多少減らしても良いのではないかという話です。

昔から週休1日で運営してきた会社が、採用難などを理由に、週休2日として応募者を増やそうとすることもあります。

また、事業の成長が見込めず、従業員も高齢化していることから、人員を削減するのではなく、休日を増やして対応することもあります。

要は、休日も休暇も同じ休みなので、合計の日数が増えるなら問題ないのではないかという考え方です。

 

<休日と休暇>

労働基準法の定義によると、休日は労働義務のない日、 休暇は労働義務のある日に労働が免除される日です。

休日は、従業員から会社に対して申請や届出をしなくても、最初から当然に休みです。一方休暇は、従業員から会社に対して申請や届出をして休みます。

そして労働基準法は、休日と休暇のそれぞれに基準を定めて、この基準を下回ることを許しません。

結局、休日を大幅に増やしても、年次有給休暇が基準を下回るのは違法です。

たとえ、年次有給休暇が法定の基準を上回っている会社であっても、これを減らすことは不利益変更となりますから、厳格な条件を満たした場合にのみ許されます。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

休日が増えれば、労働時間が減る可能性が高いでしょう。

この場合に、月給を減らすことに問題は無いのか、減らせるとしてどの程度まで可能なのかということは、それぞれの具体的なケースに応じた判断が必要です。これは、かなり専門的な話になります。

また、許される減給であっても、その手続きや手順が誤っていると、月給の変更が無効となり、会社は変更前の月給を支払う義務を負うことになります。

人は変化を嫌います。労働条件の改善であっても、上手に行わなければ従業員の反感を買い、退職者が出てしまいます。また、良かれと思った変更が、実は違法だったということもあり得ます。

労働条件や人事制度の変更は、その検討段階から、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.06.27.解決社労士

<所定労働日数が不明>

年次有給休暇の付与日数は、原則として1週間の所定労働日数によって決まります。これが何日なのか不明であれば、そもそも年次有給休暇が何日付与されるのかも決まりません。

また年次有給休暇は、入社後最初の半年間、その後は1年ごとの出勤率が8割以上の場合に付与されます。この出勤率というのは、予め決まっている労働日に対する実際に出勤した日の割合です。しかし、所定労働日数が不明であれば、出勤率を計算することはできません。つまり、付与する/しないの判断がつかないのです。

所定労働日数などの労働条件は、入社時と変更の都度、会社から従業員に書面で通知されていなければ違法です。それでも、年次有給休暇を取得させる気の無い会社では、「労働条件通知書」などを交付していません。

 

<人件費の削減>

年次有給休暇を取得させないというのは、不当に人件費を削りたいわけです。ですから、従業員の数もギリギリあるいは不足しています。

「人手が足りないから有給休暇を取得させられない」という言い訳が聞かれます。しかし、年次有給休暇は労働基準法による国全体の制度ですから、会社の状況に左右されません。むしろ、会社は従業員が100%年次有給休暇を取得する前提で、人材を確保しておかなければなりません。

インフルエンザの流行などに備えて、多めに人員を確保しておくという、会社独自の政策的な配慮は、その会社に任されていることです。しかし、年次有給休暇を取得させるのに十分な人員を確保しておくことは、事業を展開する以上、会社に法的に義務付けられていることです。

人件費を削りたいのは経営者です。お客様、従業員、取引先、出資者、金融機関は喜びません。ライバル会社は少し喜ぶかもしれません。

当たり前ですが、会社の評判は口コミ情報で低下していきます。

経営者が、人件費を削減するのではなく、売上を伸ばす努力を進めるべきだと気付かなければ、その会社の未来はありません。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

「ブラック」を経営理念に掲げる経営者はいないでしょう。ブラック企業というのは、経営者が意図せずに、いつの間にかブラックになっているものです。

会社がブラックな方向に向かっていないかのチェックには、労働条件審査が役立ちます。信頼できる社労士にご相談してみてはいかがでしょうか。

 

2017.05.27.解決社労士

<年次有給休暇は労働者の権利> ※以下、年次有給休暇を年休と表示します。

年休は、労働基準法に定められた労働者の権利です。〔労働基準法391項〕

週1日の勤務でも、法定の年休を取得する権利があります。〔労働基準法393項〕

会社が法定以上の年休を与えるのはかまいませんが、一時的にせよ法定の基準を下回ることはできません。〔労働基準法12項〕

こうして与えられた年休を、退職時にまとめて取得するのも労働者の権利です。〔労働基準法395項本文〕

会社は、一定の条件のもとで、年休の取得日を変更できるのですが、退職日よりも後の日に変更することはできません。〔労働基準法395項但し書き〕

 

<権利の濫用ではないのか>

会社は、労働者から退職の申し出があるとともに、何日もの年休取得を言われると、業務の引継ぎについて懸念が生じます。そもそも、引継ぎの相手となる人材がいなければ、新たに採用する必要も出てきます。

退職希望者から、何日もの年休取得を言われた場合、会社はそれを権利の濫用として拒否できるのでしょうか。客観的に見て、会社が対応不可能なのに、労働者が権利を主張してくるのは、権利濫用と言わざるを得ません。

しかし、会社は日常の業務についても、労働者にマニュアルの作成と改善を指示することができます。これを元に、複数の労働者が業務を共有したり、計画的な人事異動を行ったりということも、会社の指揮命令によって行うことができます。つまり、客観的に見て、会社が対応不可能とは言えません。

少し厳しい話ですが、労働基準法が労働者に年休取得の権利を認めている以上、会社は様々な事態を想定して、予め対応しておく必要があります。法律が、それを会社に求めているのです。

 

<就業規則による対処>

就業規則によって、会社に発生する不都合を減少させることもできます。たとえば、次のような規定を設けてはどうでしょうか。

・退職にあたっては、後任者に対し、従来の任務を遂行するのに必要なマニュアルの引継ぎを完了し、上長の確認を受けなければなりません。

・自己都合により退職する人は、退職予定日が決定次第、その理由を申し出て、少なくとも14日前に「退職願」を提出しなければなりません。

・最終出勤日は、退職の理由や引継ぎの内容を考慮して、退職する人と会社とで協議のうえ決定します。

また、懲戒処分の対象に、「正当な理由なく、退職にあたって引継ぎを放棄し、あるいは、引継ぎに必要な出勤を拒んだとき」を加えておくことも考えたいです。退職金減額の理由とすることも可能です。

 

<礼儀として>

十分な引継ぎもできないほどの突発的な退職というのは、労働者が急死するなどの例外的な場合にしか発生しません。

退職する人は、きちんと引継ぎを済ませたうえで、円満退社すべきです。世間は狭いもので、知り合いの知り合いを通じて、悪いうわさが流れたりするものです。ネット上に、あることないこと書かれることもありえます。

会社も、きちんと引継ぎが済むように、年休の一部を買い上げて引継ぎに必要な日数は出勤してもらえるように、丁寧に頼むなど礼儀を尽くすことが必要です。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

急に誰かが退職を申し出ても困らない体制づくりは必要です。具体的に何をどうすべきか、迷ったら信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.03.28.解決社労士

<慶弔休暇についての社内規定>

社員本人や社員のお子さんの結婚式については、慶弔休暇の規定があって休暇が認められる職場は多いでしょう。

しかし、兄弟姉妹や友人の結婚式となると、慶弔休暇が与えられる職場は少ないものです。

こんなときは、年次有給休暇を取得できるのでしょうか。

 

<年次有給休暇取得の理由>

年次有給休暇の取得にあたって、その理由づけに悩んでいる人は多いものです。しかし、誰かが休暇を取ったとき、休暇を取った理由によって、会社の仕事が上手く回ったり停滞したりということはありません。

実際、年次有給休暇について「使用者は、年次有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」というように、法律の条文には「理由」のことなど何も書かれていないのです。〔労働基準法395項〕

 

<調整が必要な場合>

このように、年次有給休暇の取得理由が基本的には問題にならないとはいえ、同じ部署で特定の日に休暇を取得する人が集中すると「事業の正常な運営を妨げる」ことになりますから、やはり調整が必要になります。

この場合には、誰が休暇を取得するかについて使用者が決めるのではなく、部署内のメンバーで話し合って決めるのが望ましいでしょう。

こんな時のためにも、職場内でのコミュニケーションは良好に保っておかなければなりません。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

年次有給休暇について、労働基準法の規定をそっくりそのまま写したような就業規則では、同じ日に複数の社員が休暇を希望した時に対応できません。

とはいえ、使用者が休暇取得の理由を詮索すると、休暇取得の妨害が疑われて労働紛争の火種ともなりかねません。

やはり、それぞれの職場に合った年次有給休暇のルールは必要です。困ったら、ぜひ信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2017.01.29.解決社労士

<通常の場合>

年次有給休暇を取得する場合には、前もって取得する日を指定するのが通常です(時季指定権)。

指定された日の年次有給休暇取得が、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社からその日の取得を拒むことができます(時季変更権)。

労働者から、いきなり「今日休みます」と言われたのでは、この時季変更権を使う余地がありません。ですから、前もっての指定が必要なのです。

 

<遡ってでも年次有給休暇を取得させたい場合>

会社のために長い間貢献してくれた人が退職していくにあたって、それが円満退社であれば、気持よく送り出したいし、送別会も盛大にやりたいです。

今まで、ろくに休暇が取れていないのならば、せめて最後に残った年次有給休暇をすべて取得させてあげたいと思います。

しかし、退職までの間にきちんと引継ぎを終わらせて欲しいし、すべて取得させるのはむずかしい…。そして思いつくのは、遡っての取得です。

 

<遡っての年次有給休暇取得に問題は無いか>

会社が時季変更権を放棄するのでしょうから、基本的には遡っての取得に問題は無さそうです。

ただし、前年度に遡ると、労働保険料の計算や税金の計算などがやり直しになりますので注意が必要です。社会保険料の計算も、やり直しが必要になるかもしれません。

また、元々の休日に年次有給休暇を取得させることもできませんから、遡ることには限界があります。

そこで、お勧めしたいのは、年次有給休暇の買い取りです。通常は、買い取りは許されないのですが、退職にあたって買い取ることは、休暇取得の妨げにならないので許されています。

いずれにせよ、退職者と会社とで話し合って決めることが必要です。

 

ちょっとした裏技と思っていたことが、実は労働法違反ということは、よくある勘違いです。本当に大丈夫か迷ったら、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。 

 

2016.10.30.

<正しいフレックスタイム制の前提>

「残業時間が8時間たまると1日休める」というような、労働者に不利な「名ばかりフレックス」も横行しています。

しかしここでは、きちんと労使協定を交わして適法に運用されているフレックスタイム制を前提として考えます。

 

<不足する労働時間を年休で埋める場合>

清算期間の労働時間が基準の総労働時間に達しない場合、このままでは欠勤控除が発生しうるので、これを防ぐために事後的に年次有給休暇の取得を認めるのは、よい運用だと思います。

ただし、就業規則や労使協定に運用ルールを定めておくことが必要でしょう。

また、つじつま合わせで、出勤日に年次有給休暇を重ねて、形式的に基準の総労働時間を超えるように計算するというのは、明らかに不合理な運用です。仕事を休んだ日に年次有給休暇を取得する形にしましょう。

 

<残業時間が多すぎるので年休を取り消す場合>

清算期間の最初のほうで年次有給休暇を取得したところ、その後の期間で想定外の残業が発生したために、労働時間が基準の総労働時間を大きく上回ってしまうことがあります。

この場合に、労働者のほうから年休の取得を取り消して、別の機会に使うことを申し出た場合に、これを認めるのもよい運用だと思います。

ただし、就業規則や労使協定に運用ルールを定めておくことが必要でしょう。

しかし、「今回は残業時間が多いから取り消しなさい」という話を、使用者である上司のほうから言うのは、労働者の年次有給休暇を取得する権利を侵害することになるのでダメです。

 

2016.08.28.

<所定労働日数とは?>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

年次有給休暇など休暇の取得や欠勤の発生がありますので、実労働日数とは一致しません。

年間所定労働日数は、うるう年も平年と同じ日数とすることが多いようです。

月間所定労働日数は、大の月も小の月も同じ日数とすることが多いようです。

年間所定労働日数÷12=月間所定労働日数とするのが一般です。

 

<残業手当の計算>

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給×1.25などとして計算するのが一般です。

この場合、月間所定労働時間=1日の所定労働時間×月間所定労働日数で計算されます。

会社によっては、年間所定労働時間÷12を基準に直接月間所定労働時間を定めています。

月によって、月間所定労働日数が変動すると、残業手当の単価が月によって変動するなどの不都合が発生しうるので、同じ日数にするのが無難でしょう。

ここで勘違いしやすいのは、月間所定労働日数を超えて勤務したら残業が発生するのではないか、反対に下回ったら欠勤になるのではないかというものです。しかし、月間所定労働日数は月給から時間給を計算するために使っているので、直接に割増賃金や欠勤控除の基準となるものではありません。

 

<出勤率の計算>

労働基準法は、「全労働日の八割以上出勤」を年次有給休暇付与の条件としています。〔労働基準法39条1項〕

8割未満の出勤率なら、年次有給休暇を付与しなくてもかまいません。

ここで、「全労働日」とは所定労働日数を意味します。

つまり、所定労働日数が決まっていなければ、出勤率の計算ができませんから、年次有給休暇付与の可否が判断できません。「あの人は休みがちだから半分だけ付与しておこう」というアバウトなことはできないのです。

 

2016.03.26.

<時季指定権と時季変更権>

同じ会社の同じ部署で、一度に多数の労働者が相談のうえ、同じ日を指定して年次有給休暇を取得しようとするのは権利の濫用です。

このように事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は時季変更権を行使することができます。〔労働基準法39条5項〕

 

<権利の濫用とは?>

出勤日当日の朝に、従業員が上司にメールで「休みます」と連絡し、後から「あれは有給休暇です」と言っても、多くの場合、会社は有給休暇の取得を拒否できます。なぜなら、会社の時季変更権を侵害してしまうからです。

そもそも年次有給休暇などの権利を保障する労働基準法は、憲法に基づいて制定されました。〔日本国憲法27条2項〕

そして憲法自身が、権利を「濫用してはならない。常に公共の福祉のために利用する責任を負う」と定めています。〔日本国憲法12条〕

ここで、「公共の福祉」というのは、時季指定権と時季変更権のような対立する権利間の調整を意味します。

自分の権利の主張が、相手の権利を侵害する場合には、権利の濫用とされることがあるのです。

 

<権利の濫用とは言えない場合>

出勤日当日の朝に、従業員が上司に電話で「母が自宅で意識を失い救急車で病院に運ばれました。私も救急車に同乗して今病院にいます。有給休暇の取得ということにできませんか」と連絡した場合は、権利の濫用とは言えないでしょう。

従業員は有給休暇の取得にあたって、理由を述べる必要は無いのですが、みずから特別な理由を明らかにして申し出た場合には、会社も取得を認めるルールが必要でしょう。

たとえば、就業規則に「私傷病により勤務できない場合の欠勤、その他やむを得ない事情による欠勤は、申請によってこれを年次有給休暇に振り替えることを認める場合があります。振替は所定用紙に記入するものとします」というような規定を置くと良いでしょう。

 

2016.03.13.

<繰り越しか消滅か>

退職金の請求権は5年間、その他の請求権は2年間で時効消滅します。〔労働基準法115条〕

パート社員などを正社員に登用した場合、登用前に持っている年次有給休暇も、発生してから2年間で消滅します。正社員登用と共に消滅することはありません。

会社によっては、正社員になると共に年次有給休暇が10日間付与されます。この場合には、未消化の年次有給休暇が40日を超えることもあります。

また、付与日数の計算基準となる勤続年数も通算されます。

正社員に登用されなかった場合よりも、不利にならないように配慮が必要です。

 

<所定労働日数が変化した場合>

正社員登用前は週3日勤務、登用後は週5日勤務という場合、年次有給休暇付与の条件としての出勤率は、次回の年次有給休暇付与の日からさかのぼって1年間で計算します。

登用前が4か月、登用後が8か月であれば、登用前の出勤率の4倍と登用後の出勤率の8倍を合計して、12で割って求めます。これが8割以上なら付与されることになります。

また付与日数は、週5日勤務が基準となります。

ただし就業規則などに、労働者にとってより有利なルールがあれば、それに従います。

 

<給与計算システムとの整合性>

正社員と正社員以外とで、給与計算に異なるシステムを使用している会社もあります。

単純に移動してしまうと、年次有給休暇の勤続年数がリセットされてしまい、せっかく正社員に登用されたのに不利になってしまうことがあります。

これは労働基準法違反にもなりますので、対応できないシステムの場合には、一部手作業で対応することになるでしょう。

特に勤続6年半以上のパートさんなどが、正社員に登用された場合には注意が必要です。

 

2016.02.29.

<勤続期間が短い場合>

最初から半年以内の契約期間で働く約束であったり、長く勤めてもらう予定だったとしても入社から半年以内に退職すると、年次有給休暇は付与されません。〔労働基準法39条1項〕

 

<休みがちの場合>

就業規則や雇用契約で決まっている全労働日の8割以上出勤しなければ、年次有給休暇は付与されません。〔同上〕

 

<出勤回数が少ない場合>

隔週1日の出勤というように、出勤日数が年48日未満の雇用契約で働く場合にも、年次有給休暇は付与されません。〔労働基準法39条3項、厚生労働省令〕

 

<就業規則による修正>

法律上は上記のとおりですが、その会社の就業規則に「入社とともに10日の年次有給休暇を付与する」など、労働者に有利な規定があれば法律に優先して適用されます。

 

<やってはならないこと>

勤続期間は、試用期間を設けた場合であっても、試用期間の初日から計算しなければなりません。本採用になってから半年後に、年次有給休暇を付与するのでは違法です。

また懲戒処分で、年次有給休暇を減らしたり付与しなかったりするのも、無効とされますので注意しましょう。

 

2016.02.09.

<年次有給休暇の取得促進>

労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持を図るための年次有給休暇は、その取得率が50%を下回る水準で推移しています。

こうした現状を踏まえ、有給休暇取得促進のため、1日単位にこだわらない取得が認められるようになってきています。

 

<半日単位の取得>

労働者が希望し、会社が同意した場合であれば、半日単位で有給休暇を消化することが認められています。

ただし、「午前中で終わる用事のためなら、1日休まなくても半日有給でいいですね」と会社側から働きかけるような、日単位での有給休暇の消化を阻害する行為は認められません。

 

<実際のところ…>

午後1時までの半日も、午後1時からの半日も、同じ半日有休とされている職場で働いていたことがあります。

これだと当たり前ですが、皆さん、午後1時からの半日有休を消化します。私もそうでした。

不合理であることを感じつつ、みんなでこの制度を活用していました。

 

<時間単位の取得>

現在では、5日以内なら労使協定を交わすことによって、時間単位の有給休暇取得も可能です。〔2010年4月施行の改正労働基準法39条4項〕

また、労使協定の定めによって対象者の範囲を限定することもできます。

ただしこの場合には、異動などによって対象者から外れた場合の取り扱いについて、あらかじめ労使で取り決めておく必要があります。

 

2016.01.31.

<休日とは?>

休日とは、雇用契約や就業規則の取り決めで、労働義務を負わない日をいいます。

もともと決まっている休みですから、従業員の方から会社に申し出なくても当然に休みです。

週休二日制というのは、休日が1週間に2日あるという制度です。

 

<休暇とは?>

休暇とは、本来は労働義務を負っている日について、従業員から会社への申し出によって、労働義務が免除される日をいいます。

もともと休む権利が与えられていて、従業員の方から届け出をすると、休むことができるようになります。

年次有給休暇が代表的ですが、会社の規則で慶弔休暇が定められていることも多いですね。

 

<休日と休暇はダブりません>

休日に休暇をとることはできません。たとえば、土曜日と日曜日が休日と決まっている従業員は、土曜日や日曜日に年次有給休暇を使うことができないのです。

ですから、退職にあたって、年次有給休暇がたくさん余っているからといって、休日にあてはめて無理やり消化するということはできません。これでは、実質的に有給休暇が消えてしまいます。退職にあたっては、有給休暇を買い上げることも禁止されていませんので、買い上げてはいかがでしょうか。

 

2016.01.23.

<年次有給休暇の趣旨>

年次有給休暇とは、一定期間継続勤務した従業員に、疲労回復を目的として会社が付与する有給の休暇です。

 

<買い上げが禁止される理由>

時間給で働くアルバイトなどは、有給休暇をとると給料が増えるという感覚を持つでしょう。

しかし、有給休暇の趣旨は「給料が減らないので安心して休める」というところにあります。

ですから、「対価を支払うから休むのは我慢してください」という、有給休暇買い上げは、休息を与えるという本来の趣旨に反してしまうので、原則として禁止されるのです。

 

<例外的に許される買上げは?>

年次有給休暇のうちでも、会社が法定の日数を上回って与えている場合の法定を上回る日数、2年の消滅時効にかかってしまい消えた日数、退職によって使い切れなかった日数については、買上げが許されます。

これらの場合、会社は法定の日数分の有給休暇を与えていますし、権利の消滅を救済する意味での買上げは、制度の趣旨に反しないからです。

 

<退職時の買上げ>

特に退職時の買上げは、安心して充分な引継ぎをすることに役立つでしょう。

有給休暇の消化期間だけ、退職日を後ろにずらすことも考えられますが、転職先の入社日よりも後に退職するのは不自然ですし、社会保険料が余計にかかったりしますのでお勧めできません。

 

2016.01.22.

<従業員の時季指定権>

会社は、従業員が請求する「時季」に、有給休暇を使わせなければなりません。請求する「時季」というのは、請求する日という意味です。海外では、長期休暇をとる場合が多いので、日本の法律でも「時季」という言葉が使われます。

 

<とはいうものの…>

「来月の最初の日曜日は、全員でバーベキュー大会だ!」ということで、店長を除く全員が、同じ日に有給休暇を使おうとしたのでは、お店の営業ができません。これって、権利の濫用です。

 

<使用者の時季変更権>

ということで、請求された日に有給休暇をとらせることが、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社から従業員に対して「有給休暇は、別の日にしなさい。」と言えるのです。

「変更権」とは言いますが、「では、明日にしなさい。」というように指定するのではなくて、従業員から、もう一度別の日を指定してもらうことになります。

 

<人手不足で有給休暇なんてとても…>

では、従業員から有給休暇を使いたいという申し出があったとき、慢性的な人手不足を理由に、これを拒めるでしょうか。

いいえ、拒めません。

もし、これが許されるのであれば、会社側は、有給休暇を全く使えないような、ギリギリの人員で、運営すれば、従業員の権利を正当に否定できることになってしまいます。

会社には、有給休暇の消化を前提とした人員確保が、義務付けられているわけです。

 

<さらに法改正の動きが!>

今までは、従業員が、有給休暇を使おうとしない限り、会社の方から積極的に使わせる義務は、ありませんでした。

ところが、年5日については、会社に対して、有給休暇の消化を義務付ける方向で、法案が準備されています。

これは、国の政策ですから、逆らっても仕方ありません。今から、ある程度は、有給休暇を消化できる体制を整えていく必要があるでしょう。

 

2016.01.12.