有給休暇の記事

<年次有給休暇は労働者の権利> ※以下、年次有給休暇を年休と表示します。

年休は、労働基準法に定められた労働者の権利です。〔労働基準法391項〕

週1日の勤務でも、法定の年休を取得する権利があります。〔労働基準法393項〕

会社が法定以上の年休を与えるのはかまいませんが、一時的にせよ法定の基準を下回ることはできません。〔労働基準法12項〕

こうして与えられた年休を、退職時にまとめて取得するのも労働者の権利です。〔労働基準法395項本文〕

会社は、一定の条件のもとで、年休の取得日を変更できるのですが、退職日よりも後の日に変更することはできません。〔労働基準法395項但し書き〕

 

<権利の濫用ではないのか>

会社は、労働者から退職の申し出があるとともに、何日もの年休取得を言われると、業務の引継ぎについて懸念が生じます。そもそも、引継ぎの相手となる人材がいなければ、新たに採用する必要も出てきます。

退職希望者から、何日もの年休取得を言われた場合、会社はそれを権利の濫用として拒否できるのでしょうか。客観的に見て、会社が対応不可能なのに、労働者が権利を主張してくるのは、権利濫用と言わざるを得ません。

しかし、会社は日常の業務についても、労働者にマニュアルの作成と改善を指示することができます。これを元に、複数の労働者が業務を共有したり、計画的な人事異動を行ったりということも、会社の指揮命令によって行うことができます。つまり、客観的に見て、会社が対応不可能とは言えません。

少し厳しい話ですが、労働基準法が労働者に年休取得の権利を認めている以上、会社は様々な事態を想定して、予め対応しておく必要があります。法律が、それを会社に求めているのです。

 

<就業規則による対処>

就業規則によって、会社に発生する不都合を減少させることもできます。たとえば、次のような規定を設けてはどうでしょうか。

・退職にあたっては、後任者に対し、従来の任務を遂行するのに必要なマニュアルの引継ぎを完了し、上長の確認を受けなければなりません。

・自己都合により退職する人は、退職予定日が決定次第、その理由を申し出て、少なくとも14日前に「退職願」を提出しなければなりません。

・最終出勤日は、退職の理由や引継ぎの内容を考慮して、退職する人と会社とで協議のうえ決定します。

また、懲戒処分の対象に、「正当な理由なく、退職にあたって引継ぎを放棄し、あるいは、引継ぎに必要な出勤を拒んだとき」を加えておくことも考えたいです。退職金減額の理由とすることも可能です。

 

<礼儀として>

十分な引継ぎもできないほどの突発的な退職というのは、労働者が急死するなどの例外的な場合にしか発生しません。

退職する人は、きちんと引継ぎを済ませたうえで、円満退社すべきです。世間は狭いもので、知り合いの知り合いを通じて、悪いうわさが流れたりするものです。ネット上に、あることないこと書かれることもありえます。

会社も、きちんと引継ぎが済むように、年休の一部を買い上げて引継ぎに必要な日数は出勤してもらえるように、丁寧に頼むなど礼儀を尽くすことが必要です。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

急に誰かが退職を申し出ても困らない体制づくりは必要です。具体的に何をどうすべきか、迷ったら信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.03.28.解決社労士

<通常の場合>

年次有給休暇を取得する場合には、前もって取得する日を指定するのが通常です(時季指定権)。

指定された日の年次有給休暇取得が、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社からその日の取得を拒むことができます(時季変更権)。

労働者から、いきなり「今日休みます」と言われたのでは、この時季変更権を使う余地がありません。ですから、前もっての指定が必要なのです。

 

<遡ってでも年次有給休暇を取得させたい場合>

会社のために長い間貢献してくれた人が退職していくにあたって、それが円満退社であれば、気持よく送り出したいし、送別会も盛大にやりたいです。

今まで、ろくに休暇が取れていないのならば、せめて最後に残った年次有給休暇をすべて取得させてあげたいと思います。

しかし、退職までの間にきちんと引継ぎを終わらせて欲しいし、すべて取得させるのはむずかしい…。そして思いつくのは、遡っての取得です。

 

<遡っての年次有給休暇取得に問題は無いか>

会社が時季変更権を放棄するのでしょうから、基本的には遡っての取得に問題は無さそうです。

ただし、前年度に遡ると、労働保険料の計算や税金の計算などがやり直しになりますので注意が必要です。社会保険料の計算も、やり直しが必要になるかもしれません。

また、元々の休日に年次有給休暇を取得させることもできませんから、遡ることには限界があります。

そこで、お勧めしたいのは、年次有給休暇の買い取りです。通常は、買い取りは許されないのですが、退職にあたって買い取ることは、休暇取得の妨げにならないので許されています。

いずれにせよ、退職者と会社とで話し合って決めることが必要です。

 

ちょっとした裏技と思っていたことが、実は労働法違反ということは、よくある勘違いです。本当に大丈夫か迷ったら、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。 

 

2016.10.30.

<時季指定権と時季変更権>

同じ会社の同じ部署で、一度に多数の労働者が相談のうえ、同じ日を指定して年次有給休暇を取得しようとするのは権利の濫用です。

このように事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は時季変更権を行使することができます。〔労働基準法39条5項〕

 

<権利の濫用とは?>

出勤日当日の朝に、従業員が上司にメールで「休みます」と連絡し、後から「あれは有給休暇です」と言っても、多くの場合、会社は有給休暇の取得を拒否できます。なぜなら、会社の時季変更権を侵害してしまうからです。

そもそも年次有給休暇などの権利を保障する労働基準法は、憲法に基づいて制定されました。〔日本国憲法27条2項〕

そして憲法自身が、権利を「濫用してはならない。常に公共の福祉のために利用する責任を負う」と定めています。〔日本国憲法12条〕

ここで、「公共の福祉」というのは、時季指定権と時季変更権のような対立する権利間の調整を意味します。

自分の権利の主張が、相手の権利を侵害する場合には、権利の濫用とされることがあるのです。

 

<権利の濫用とは言えない場合>

出勤日当日の朝に、従業員が上司に電話で「母が自宅で意識を失い救急車で病院に運ばれました。私も救急車に同乗して今病院にいます。有給休暇の取得ということにできませんか」と連絡した場合は、権利の濫用とは言えないでしょう。

従業員は有給休暇の取得にあたって、理由を述べる必要は無いのですが、みずから特別な理由を明らかにして申し出た場合には、会社も取得を認めるルールが必要でしょう。

たとえば、就業規則に「私傷病により勤務できない場合の欠勤、その他やむを得ない事情による欠勤は、申請によってこれを年次有給休暇に振り替えることを認める場合があります。振替は所定用紙に記入するものとします」というような規定を置くと良いでしょう。

 

2016.03.13.

<繰り越しか消滅か>

退職金の請求権は5年間、その他の請求権は2年間で時効消滅します。〔労働基準法115条〕

パート社員などを正社員に登用した場合、登用前に持っている年次有給休暇も、発生してから2年間で消滅します。正社員登用と共に消滅することはありません。

会社によっては、正社員になると共に年次有給休暇が10日間付与されます。この場合には、未消化の年次有給休暇が40日を超えることもあります。

また、付与日数の計算基準となる勤続年数も通算されます。

正社員に登用されなかった場合よりも、不利にならないように配慮が必要です。

 

<所定労働日数が変化した場合>

正社員登用前は週3日勤務、登用後は週5日勤務という場合、年次有給休暇付与の条件としての出勤率は、次回の年次有給休暇付与の日からさかのぼって1年間で計算します。

登用前が4か月、登用後が8か月であれば、登用前の出勤率の4倍と登用後の出勤率の8倍を合計して、12で割って求めます。これが8割以上なら付与されることになります。

また付与日数は、週5日勤務が基準となります。

ただし就業規則などに、労働者にとってより有利なルールがあれば、それに従います。

 

<給与計算システムとの整合性>

正社員と正社員以外とで、給与計算に異なるシステムを使用している会社もあります。

単純に移動してしまうと、年次有給休暇の勤続年数がリセットされてしまい、せっかく正社員に登用されたのに不利になってしまうことがあります。

これは労働基準法違反にもなりますので、対応できないシステムの場合には、一部手作業で対応することになるでしょう。

特に勤続6年半以上のパートさんなどが、正社員に登用された場合には注意が必要です。

 

2016.02.29.

<勤続期間が短い場合>

最初から半年以内の契約期間で働く約束であったり、長く勤めてもらう予定だったとしても入社から半年以内に退職すると、年次有給休暇は付与されません。〔労働基準法39条1項〕

 

<休みがちの場合>

就業規則や雇用契約で決まっている全労働日の8割以上出勤しなければ、年次有給休暇は付与されません。〔同上〕

 

<出勤回数が少ない場合>

隔週1日の出勤というように、出勤日数が年48日未満の雇用契約で働く場合にも、年次有給休暇は付与されません。〔労働基準法39条3項、厚生労働省令〕

 

<就業規則による修正>

法律上は上記のとおりですが、その会社の就業規則に「入社とともに10日の年次有給休暇を付与する」など、労働者に有利な規定があれば法律に優先して適用されます。

 

<やってはならないこと>

勤続期間は、試用期間を設けた場合であっても、試用期間の初日から計算しなければなりません。本採用になってから半年後に、年次有給休暇を付与するのでは違法です。

また懲戒処分で、年次有給休暇を減らしたり付与しなかったりするのも、無効とされますので注意しましょう。

 

2016.02.09.

<年次有給休暇の取得促進>

労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持を図るための年次有給休暇は、その取得率が50%を下回る水準で推移しています。

こうした現状を踏まえ、有給休暇取得促進のため、1日単位にこだわらない取得が認められるようになってきています。

 

<半日単位の取得>

労働者が希望し、会社が同意した場合であれば、半日単位で有給休暇を消化することが認められています。

ただし、「午前中で終わる用事のためなら、1日休まなくても半日有給でいいですね」と会社側から働きかけるような、日単位での有給休暇の消化を阻害する行為は認められません。

 

<実際のところ…>

午後1時までの半日も、午後1時からの半日も、同じ半日有休とされている職場で働いていたことがあります。

これだと当たり前ですが、皆さん、午後1時からの半日有休を消化します。私もそうでした。

不合理であることを感じつつ、みんなでこの制度を活用していました。

 

<時間単位の取得>

現在では、5日以内なら労使協定を交わすことによって、時間単位の有給休暇取得も可能です。〔2010年4月施行の改正労働基準法39条4項〕

また、労使協定の定めによって対象者の範囲を限定することもできます。

ただしこの場合には、異動などによって対象者から外れた場合の取り扱いについて、あらかじめ労使で取り決めておく必要があります。

 

2016.01.31.

<休日とは?>

休日とは、雇用契約や就業規則の取り決めで、労働義務を負わない日をいいます。

もともと決まっている休みですから、従業員の方から会社に申し出なくても当然に休みです。

週休二日制というのは、休日が1週間に2日あるという制度です。

 

<休暇とは?>

休暇とは、本来は労働義務を負っている日について、従業員から会社への申し出によって、労働義務が免除される日をいいます。

もともと休む権利が与えられていて、従業員の方から届け出をすると、休むことができるようになります。

年次有給休暇が代表的ですが、会社の規則で慶弔休暇が定められていることも多いですね。

 

<休日と休暇はダブりません>

休日に休暇をとることはできません。たとえば、土曜日と日曜日が休日と決まっている従業員は、土曜日や日曜日に年次有給休暇を使うことができないのです。

ですから、退職にあたって、年次有給休暇がたくさん余っているからといって、休日にあてはめて無理やり消化するということはできません。これでは、実質的に有給休暇が消えてしまいます。退職にあたっては、有給休暇を買い上げることも禁止されていませんので、買い上げてはいかがでしょうか。

 

2016.01.23.

<年次有給休暇の趣旨>

年次有給休暇とは、一定期間継続勤務した従業員に、疲労回復を目的として会社が付与する有給の休暇です。

 

<買い上げが禁止される理由>

時間給で働くアルバイトなどは、有給休暇をとると給料が増えるという感覚を持つでしょう。

しかし、有給休暇の趣旨は「給料が減らないので安心して休める」というところにあります。

ですから、「対価を支払うから休むのは我慢してください」という、有給休暇買い上げは、休息を与えるという本来の趣旨に反してしまうので、原則として禁止されるのです。

 

<例外的に許される買上げは?>

年次有給休暇のうちでも、会社が法定の日数を上回って与えている場合の法定を上回る日数、2年の消滅時効にかかってしまい消えた日数、退職によって使い切れなかった日数については、買上げが許されます。

これらの場合、会社は法定の日数分の有給休暇を与えていますし、権利の消滅を救済する意味での買上げは、制度の趣旨に反しないからです。

 

<退職時の買上げ>

特に退職時の買上げは、安心して充分な引継ぎをすることに役立つでしょう。

有給休暇の消化期間だけ、退職日を後ろにずらすことも考えられますが、転職先の入社日よりも後に退職するのは不自然ですし、社会保険料が余計にかかったりしますのでお勧めできません。

 

2016.01.22.

<従業員の時季指定権>

会社は、従業員が請求する「時季」に、有給休暇を使わせなければなりません。請求する「時季」というのは、請求する日という意味です。海外では、長期休暇をとる場合が多いので、日本の法律でも「時季」という言葉が使われます。

 

<とはいうものの…>

「来月の最初の日曜日は、全員でバーベキュー大会だ!」ということで、店長を除く全員が、同じ日に有給休暇を使おうとしたのでは、お店の営業ができません。これって、権利の濫用です。

 

<使用者の時季変更権>

ということで、請求された日に有給休暇をとらせることが、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社から従業員に対して「有給休暇は、別の日にしなさい。」と言えるのです。

「変更権」とは言いますが、「では、明日にしなさい。」というように指定するのではなくて、従業員から、もう一度別の日を指定してもらうことになります。

 

<人手不足で有給休暇なんてとても…>

では、従業員から有給休暇を使いたいという申し出があったとき、慢性的な人手不足を理由に、これを拒めるでしょうか。

いいえ、拒めません。

もし、これが許されるのであれば、会社側は、有給休暇を全く使えないような、ギリギリの人員で、運営すれば、従業員の権利を正当に否定できることになってしまいます。

会社には、有給休暇の消化を前提とした人員確保が、義務付けられているわけです。

 

<さらに法改正の動きが!>

今までは、従業員が、有給休暇を使おうとしない限り、会社の方から積極的に使わせる義務は、ありませんでした。

ところが、年5日については、会社に対して、有給休暇の消化を義務付ける方向で、法案が準備されています。

これは、国の政策ですから、逆らっても仕方ありません。今から、ある程度は、有給休暇を消化できる体制を整えていく必要があるでしょう。

 

2016.01.12.