従業員のコロナ感染

2021/02/04|1,606文字

 

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<労災保険の手続>

従業員が勤務中に新型コロナウイルスに感染したと思われる場合には、労災保険の適用が考えられますので、会社はその手続に協力する義務を負います。

労災認定を行うのは労働基準監督署(労働局)の権限ですから、会社側で安易に判断することは避けなければなりません。

新型コロナウイルス感染症の労災認定に関する判断はむずかしいですから、所轄の労働基準監督署と相談しながら手続を進めるのが得策です。

 

<新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の労災認定基準>

「医師、看護師、介護従事者等の医療従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合は、業務外で感染したことが明らかな場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる」という基準があります。

この基準は、「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱い」(令和2年4月 28 日基補発0428第1号通達)に示されているものです。

医療従事者が、新型コロナウイルスに感染した場合には、一般に「業務上」である可能性が高いですから、こうした基準が適用されるわけです。

一方で、医療従事者以外の人が新型コロナウイルスに感染した場合には、一般に「業務上」である可能性が低いですから、同じ基準は適用されません。

医療従事者以外の人については、この通達で「感染源が業務に内在していることが明らかな場合は、労災保険給付の対象となる」という基準が設けられています。

原則と例外が逆になっているわけです。

また、この通達では「感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる業務(複数の感染者が確認された労働環境下での業務や顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務など)に従事し、業務により感染した蓋然性が高いものと認められる場合は、労災保険給付の対象となる」という基準が設けられていて、医療従事者以外であっても、感染リスクが高い環境下での業務については、中間的な基準が適用されることになっています。

 

<安全配慮義務>

労働契約法には、安全配慮義務について次の規定があります。

 

【労働者の安全への配慮】

第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

 

労働契約法は、最高裁判所の判決の理由中に示された判断を中心にまとめられた法律です。

ですから、この法律ができる前から、安全配慮義務は認められていたことになります。

そもそも信義則上、債権者(使用者)は債務者(労働者)がうまく債務を履行できるよう(働けるよう)配慮する義務を負っています。

ここで、「信義則」というのは、民法第1条第2項に定められた「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」という原則のことです。

こうして債権者(使用者)は、債務者(労働者)に対して、安全配慮義務などを負うことになります。

 

<新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する安全配慮義務の内容>

従業員に感染拡大予防のための教育指導を行う必要があります。

正しい手洗い、うがいの励行、正しいマスクの着用、顔に手で触れない、三密を避けるなどを指導し、守れない従業員には個別指導を行います。

また、在宅勤務を拡大する、座席の間隔を空ける、アクリル板などで飛沫の飛散を防止するなど職場環境への配慮も必要です。

会社が安全配慮義務を尽くしていれば、感染者が発生した場合に、本人や家族から不法行為責任や債務不履行責任を問われても、反証は容易になります。

 

<解決社労士の視点から>

速やかで正しい労災保険の手続や、感染拡大防止に向けて安全配慮義務を尽くすことは、会社が損害賠償責任を負わないという消極目的だけでなく、お客様やお取引先の信頼を高め、従業員の定着率を高めるなど積極目的でも行うべきです。

是非とも、前向きに取り組んでいただきたいと思います。

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