付加金

2020/10/24|1,340文字

 

<付加金の規定>

付加金は、労働基準法に規定されています。

 

【労働基準法第114条:付加金の支払】

第百十四条 裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第九項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から五年以内にしなければならない。

 

このような形で規定されていますから、ついつい具体的な内容を確認せず、見逃してしまいがちです。

第二十条(解雇予告手当)、第二十六条(休業手当)、三十七条(割増賃金)、第三十九条第九項(年次有給休暇の賃金)と書いてあれば、大変わかりやすいと思います。

解雇予告手当、残業代などの割増賃金、年次有給休暇の賃金は、退職者から会社に対して請求されることがあったのに加えて、最近では新型コロナウイルスの影響による休業の影響で、休業手当の請求が増えてきています。

特に休業手当は、支払実績がほとんど無いことから、会社側が計算方法を誤ってしまい、退職者から不足分を請求される恐れがあります。

 

<支払義務の発生>

条文の本文が「裁判所は」から始まり、「命ずることができる」で終わっています。

このことから、付加金が登場するのは、訴訟となったときに限定されることが分かります。

また、必ず付加金の支払が命ぜられるわけではなく、命ずる場合があるという規定になっています。

さらに、「労働者の請求により」という規定ですから、労働者が請求しなければ、裁判所は付加金の支払を命ずることができません。

 

<付加金の性質>

付加金は「使用者が支払わなければならない金額についての未払金」について発生しますから、全く支払われない場合だけでなく、金額が不足する場合にも支払が命ぜられます。

そして、その金額は未払金と「同一額」です。

労働基準法によって、労働者の権利が100%守られるというレベルを超えて、会社側に支払義務が生じてしまうことから、付加金は会社に課せられた義務の違背に対する制裁であると解されます。

 

<支払わずに済ませる方法>

裁判の口頭弁論が終結する前に、会社側が未払金と遅延損害金を支払ってしまえば、会社の未払は解消してしまいますから、裁判所が付加金の支払を命ずることはできなくなります。

また、第1審の判決を不服として、会社が控訴した場合には、控訴審の口頭弁論終結時までに、会社側が未払金と遅延損害金を支払ってしまえば、会社の未払は解消してしまいますから、やはり裁判所が付加金の支払を命ずることはできなくなります。

ただし、この場合には、遅延損害金が増額しますから、第1審が確定した場合よりも、訴訟費用や人件費などと合わせて、会社の負担が増えてしまうことがあります。

 

<実務的には>

付加金の制度は、「付加金を支払うくらいなら、残業手当や休業手当をきちんと支払ったほうが得だ」と思わせるために存在すると考えられます。

退職者が身勝手な態度をとることもあります。

会社の経営が苦しいこともあります。

それでも、付加金の趣旨を思い出して、正しく支払っていただきたいものです。

 

解決社労士

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