社内での捺印省略

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2020/09/19|1,472文字

 

<印鑑の盗用>

会社の中で、勝手に上司の印鑑や代表印を捺せば、問題とされ、懲戒処分を受けることもあります。

また、勝手に他人の印鑑を使って文書を作成すれば、犯罪となることもあります。

 

【刑法第159条第1項:私文書偽造等】

行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。

 

これは、印鑑に対する世間一般の信頼を保護するための規定です。

 

<署名の偽造>

同様に、会社の中で、勝手に上司や代表者の署名を偽造すれば、やはり問題とされ、懲戒処分を受けることもあります。

また、上に示した刑法の条文も、「印章」と「署名」を同等に扱っています。

こうしたことからすると、署名に対する世間一般の信頼も保護されており、必ずしも印鑑にこだわる必要はないといえます。

実際、国や地方公共団体から「押印廃止ガイドライン」「押印見直しガイドライン」などが相次いで出され、行政手続での押印省略が進んできました。

 

<押印原則の見直し>

最近では、令和2(2020)年8月27日に開催された第163回労働政策審議会労働条件分科会で、労働基準法に基づく届出等における押印原則の見直しが検討されています。

この中で、方針(案)として、次のものが示されています。

 

【押印原則の見直し】

36協定届を含め、押印を求めている法令様式等については、押印原則を見直し、使用者および労働者の押印欄の削除ならびに法令上、押印または署名を求めないこととする。

押印原則の見直しを踏まえ、電子申請における電子署名の添付も不要とする。

また、押印を求めている法令様式のうち、過半数代表者の記載のある法令様式については、36協定届も含め、様式上にチェックボックスを設けることとする。

 

「押印原則の見直し」とは言うものの、押印だけでなく署名も省略する内容となっています。そして、押印廃止後は、36協定の法令様式に、協定当事者が適格であることについてのチェックボックスを設け、使用者がチェックした上で、労働基準監督署長に届け出るという方針(案)となっています。

チェックボックスにチェックを入れれば、捺印や署名の代わりになるということです。

 

<新型コロナウイルス感染拡大の影響>

新型コロナウイルス感染拡大の中で、各企業は不要不急の出勤を自粛するよう求められました。

そうした中で、「書類に印鑑を貰わないと仕事が回らない」ということで、捺印する社員も、捺印される社員も出勤を余儀なくされるというのが、問題視されていました。

確かに、ハンコを貰うために、感染リスクを冒して出勤するというのは不合理です。

捺印や署名の電子化が進んだのも当然です。

 

<捺印・署名の廃止>

労働保険や社会保険の手続で、請求者の「記名・捺印または自筆の署名」で足りることになったにも関わらず、10年以上にわたって、民間側がついて行けない状態が続いていました。

たとえば、労災保険の請求書に被災者の自筆の署名があっても、病院の担当者から「本人の印鑑が無い」という理由で受け取りを拒否されることも、しばしばありました。

押印原則の見直しについては、行政の動きに民間がついて行けなかったわけです。

民間では、捺印や署名の電子化が進められているわけですが、行政では、捺印や署名の廃止が進められます。

社内での捺印や署名が、本当に必要なのか、一つひとつ検討してみてはいかがでしょうか。

 

解決社労士