年金改革法案の附帯決議

LINEで送る

2020/05/15|2,230文字

 

<年金改革法>

令和2年5月12日、衆議院本会議で年金改革法(年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案)の審議が行われ、これに先立ち5月8日の厚生労働委員会で付された附帯決議を踏まえた修正案が可決されました。

この附帯決議には、今後の年金制度改革の方向性が示されており、大変重要な内容を含んでいます。

 

<短時間労働者の社会保険加入基準>

短時間労働者に対する被用者保険の適用については、被用者には被用者保険を適用するとの考え方に立ち、更なる適用拡大に向け、検討を促進すること。特に、当分の間の経過措置となっている企業規模要件については、できる限り早期の撤廃に向け、速やかに検討を開始すること。

現在は、元々の基準での被保険者数が501名以上の企業で、短時間労働者の社会保険加入基準が緩和されています。

この加入基準は、より規模の小さな企業にも、順次適用されていく方向で法改正が重ねられます。

附帯決議は、すべての企業で短時間労働者の社会保険加入基準が緩和されるよう、急ぐべきであると提言しています。

 

<中小企業の支援>

被用者保険の適用拡大により保険料負担が増加する中小企業に対しては、各種の支援措置の充実を検討すること。

社会保険料は、労使折半が基本ですから、小規模な企業にも社会保険加入基準の緩和が適用されれば、保険料負担が大きくなります。

これに対する助成金などの支援拡大を提言しています。

 

<年金制度の検討>

今後の年金制度の検討に当たっては、これまでの財政検証において、国民年金の調整期間の見通しが厚生年金保険の調整期間の見通しと比較して長期化し、モデル年金の所得代替率に占める基礎年金の額に相当する部分に係るものが減少していることが示されていることを十分に踏まえて行うこと。

年金制度の検討方法でも、検討結果でも、国民年金と厚生年金保険との間にアンバランスが見られるので、これを是正するように提言しています。

 

<国民年金の支給額引き上げ>

将来の所得代替率の低下が見込まれる基礎年金の給付水準の引上げ等を図るため、国民年金の加入期間を延長し、老齢基礎年金額の算定の基礎となる年数の上限を45年とすることについて、基礎年金国庫負担の増加分の財源確保策も含め、速やかに検討を進めること。

将来的には、国民年金(老齢基礎年金)の支給額が、老後の生活を支えるのに不十分となることが見込まれるため、国民年金保険料の納付期間を40年間から45年間に延長すべきではないかと提言しています。

 

<繰下げ受給>

年金の繰下げ受給については、年金額が増額される一方で、加給年金や振替加算が支給されない場合があること、社会保険料や所得税、住民税の負担が増加する場合があることについても、国民にわかりやすい形で周知徹底すること。

年金の繰下げ受給は、受給額が増額される点ばかりが強調されていますが、いくつかあるデメリットについても、国民に周知すべきことが提言しています。

 

<年金積立金の管理>

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)等が管理・運用する年金積立金については、専ら被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うことから、市場の動向等を踏まえた適切なリスク管理を行うこと。また、会計検査院から開示を求められていたストレステスト等の中長期のリスク情報については、GPIFの業務概況書に記載するなど少なくとも年一回は公表すること。

年金積立金の適正なリスク管理は、常に求められているところですが、情報開示の改善が新たに提言しています。

 

<プラスアルファの年金>

国民が高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を行うに当たって、これに対する支援を公平に受けられるようにする等その充実を図る観点から、個人型確定拠出年金および国民年金基金の加入の要件、個人型確定拠出年金に係る拠出限度額および中小事業主掛金を拠出できる中小事業主の範囲等について、税制上の措置を含め全般的な検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。

国民皆年金に相当する部分だけでは、老後の生活費が不足する懸念があるため、国民が自主的に努力するための必要な措置を講ずるよう提言しています。

 

<年金生活者支援給付金>

年金生活者支援給付金の額その他の事項については、低所得である高齢者等の生活状況、低所得者対策の実施状況および老齢基礎年金の額等を勘案し、総合的に検討すること。

年金生活者支援給付金は、消費税率引上げ分を活用し、年金を含めても所得が低い人の生活を支援するために、年金に上乗せして支給するものです。

これについても、総合的に検討すべきことを提言しています。

 

<産前産後・育児休業期間の保険料の免除制度>

今後、社会保障の支え手である現役世代の負担増が見込まれる中、特に子育て世代の負担軽減を図るため、被用者保険には産前産後・育児休業期間の保険料の免除制度が設けられていることを踏まえ、財政負担の在り方にも留意しつつ、国民年金の検討と併せて国民健康保険の保険料における配慮の必要性や在り方等についても検討すること。

産前産後・育児休業期間の保険料の免除制度は、順次拡大されてきています。

それでも、国民健康保険料については制度が無いため、免除制度の導入検討を提言しています。

 

社会保険の財源は、主に税金と保険料です。

しかし、企業の負担も大きくなっています。

今後も年金制度改革から目が離せません。

 

解決社労士