残業代の不正受給への対応

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2019/12/12|1,021文字

 

<労働時間の把握義務>

使用者は、労働安全衛生法第66条の8の3に基づき、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に則って、従業員の労働時間を適正に把握する義務を負っています。

そして、大半の企業では、タイムカードやICカードを用いた客観的な記録を基本に、自己申告による修正を加える形で、労働時間を把握しています。

このように、使用者が労働時間を把握する義務を負っていることと、労働者がこれに協力する義務を負っていることについて、企業は繰り返し教育を行う必要があります。

また、会社が把握している労働時間が、実態とかけ離れたものとなっていないか、定期的なチェックも怠ることができません。

 

<過少申告の問題>

従業員が労働時間を過少に申告する場合があります。

上司が、実情を踏まえることなく、残業時間を制限している場合には、サービス残業を余儀なくされることがあります。

ミスが多く、やり直しが多いことに引け目を感じて、自主的にサービス残業を行う従業員もいます。

喫煙やトイレの時間が長いと自覚している従業員、若い頃に比べて生産性が低下していると自覚している従業員などにも、過少申告が見られることがあります。

これらの場合、従業員が不正を行ったことによって、会社に損失がもたらされるわけではありません。

ですから、ほとんどの場合、不正を行った従業員への指導と教育が正しい対応であって、懲戒処分を行うことは見当違いとなります。

ただし、上司が部下に圧力をかけて、過少申告を促していたようなケースでは、この上司を懲戒処分の対象とする必要が出てきます。

 

<過大申告の問題>

従業員が労働時間を過大に申告する場合があります。

手口としては、複数の従業員で残業していたところ、最後の一人となり、これをいいことに私用を始め、適当なところでタイムカードを打刻して帰るというのが多いでしょう。

外出先から帰社するにあたって、交通渋滞などを理由に中抜けし、私用を果たしてから帰社するというのもあります。

たった一人で休日出勤した場合などは、やりたい放題になってしまうこともあります。

これらは、会社に損失をもたらすものであり、一種の詐欺でもありますから、指導や教育では足らず、懲戒処分が相当と考えられます。

いずれのパターンでも、過失ということはなく、故意に会社に損失をもたらす一方で、自分自身の不当な利益獲得を目指しているわけですから、情状酌量の余地はありません。

 

解決社労士