正社員の人手不足と昇給

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2019年2月26日、日本政策金融公庫総合研究所が「中小企業の雇用・賃金に関する調査」結果を発表しました。

これは、2018年10-12月期の特別調査の結果です。

以下、枠内は、この調査結果をそのまま引用しています。

 

【正社員の過不足感】

・2018年12月において、正社員が「不足」と回答した企業割合は、全業種計で60.8%となり、前年(58.0%)から2.8ポイント上昇した。「適正」は34.5%、「過剰」は4.7%となった。業種別にみると、運送業、建設業、情報通信業などで「不足」と回答した割合が高くなっている。

 

「正社員」というのは、法律用語ではありませんから法令には定義がありません。

各企業が独自の定義を定めていたり、あいまいにされていたり、定義が無かったりというのが実態です。

ですから、この調査の中の「正社員」には様々な雇用形態が含まれています。

「限定正社員」「多様な正社員」と呼ばれる人たちも含まれるでしょう。

とはいえ典型的なのは、フルタイム勤務で人事異動を受け入れ簡単には辞めない社員というイメージでしょうか。会社にとって都合よく働いてくれる人材です。

こうした人材が不足している場合に、社外から調達するよりは、社内で育てた方が安上がりで安全です。会社のニーズに合った育て方もできます。

非正規社員を育てて正社員に転換する動きは、働き方改革の推進というだけでなく、企業にとって合理的な行動なのです。

 

【正社員の増減】

・2018年12月に正社員数を前年から「増加」させた企業割合は32.1%、「減少」させた企業割合は19.5%となった。前年と比べると、「増加」は1.3ポイント上昇、「減少」は0.8ポイント上昇した。業種別にみると、情報通信業、運送業、製造業などで「増加」と回答した割合が高くなっている。

 

全体で正社員が増加していることになります。

社会全体で「正社員」が増加しなければ、「増加」させた企業割合が「減少」させた企業割合を大きく上回ることはありません。

やはり、非正規社員を育てて正社員に転換する動きが盛んなのでしょう。

 

【正社員の昇給】

・2018年12月に正社員の給与水準を前年から「上昇」させた企業割合は、57.4%となり、前年(54.5%)から2.9ポイント上昇した。賃上げ企業割合は、2年連続で上昇となった。上昇の背景をみると、「自社の業績が改善」(36.2%)の割合が最も高く、次いで「採用が困難」(25.4%)となっている。2019年についても51.8%の企業が「上昇」すると回答している。

 

大手企業を中心に推進されている働き方改革の本質は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革に関する現在までの動向をもとに考えると、その本質は「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえるでしょう。

それぞれの企業にとっては、「働き方の効率と社員の向上心を高めて、企業の利益を伸ばす改革」ともいえます。

長期的に見れば企業の安定と成長を促す施策ばかりですが、目先にとらわれると企業の負担が強く意識されますので、関係法律の整備により政府が推進する形がとられています。

中小企業であっても、従業員の希望を少し叶えて、会社の利益を伸ばす作戦であることを納得し、積極的に働き方改革に取り組まなければなりません。

 

さて、「採用が困難」で昇給した場合には、一時的かもしれませんが企業の業績が悪化する恐れがあります。

やはり「自社の業績が改善」されたので、社員への還元として昇給を実施するというのが、望ましい形です。

やり方としては、会社の業績の推移を社員に説明し、生産性が上がってきたので昇給するのだということを念押ししておくのが良いでしょう。この説明をきちんとしておけば、社員はさらに発奮するでしょうし、危機感を失いません。

 

場合によっては、生産性の向上に期待して前倒しで昇給するという方法もあります。

たとえば、残業時間を減らしてもらう代わりに、基本給を上げて、収入が減らないようにするやり方です。

このとき、残業の減らない社員については、賞与支給の人事考課で低い評価が与えられ、賞与支給額が低額になることで調整されるでしょう。

 

2019.03.08.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームでご依頼を受けております。