労災補償業務の運営についての通達

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<通達の重要性>

平成31(2019)年2月19日、厚生労働省大臣官房審議官(労災、建設・自動車運送分野担当)から都道府県労働局長に宛てて通達が出されました。

「労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について」というタイトルの通達です。

通達というのは、上級行政機関から下級行政機関への指示ですから、直接、企業を拘束するものではありません。

しかし、行政機関が企業を指導する場合の基準になりますから、企業に対する影響は大きいのです。

この通達は、都道府県労働局長に宛てられた通達ですから、各労働基準監督署の指針となります。

 

 <意気込みの表明>

通達は、「この問題については、この基準で対応しなさい」というのが多いように思われます。

この通達では、冒頭で次のように述べられています。

平成31年度における労災補償業務の運営に当たっては、特に下記に示したところに留意の上、実効ある行政の展開に遺憾なきを期されたい。

「平成30年度までとは違う」という意気込みが感じられます。

 

<現状認識>

厚生労働省からすると、現状は次のように認識されています。

労災補償行政を巡る状況をみると、過労死等に係る労災請求件数は2,500件以上に上り、石綿関連疾患に係る労災請求件数も1,100件以上に上るなど、多くの複雑困難事案の処理を求められている状況にある。

つまり、現状は過去に例を見ないほど深刻であるということが述べられています。

 

<過労死の問題>

過労死というのは、たとえ本人が望んで働いていたとしても、あってはならないことです。仕事をするのは、生活のためであり、自己実現のためであり、家族を養うためであり、将来の夢に向かっているためです。

今現在の必要や、将来を見据えての頑張りが、生命を失うことによって、すべてムダになってしまいます。

通達は、次のように述べています。

過労死等を巡る国民の関心は高く、とりわけ過労死等の発生を防止するための取組強化に対する社会的要請が強まっており、長時間労働の是正を大きな柱として、政府を挙げて推進する「働き方改革」に労働基準行政として実施することが求められている中、労災補償行政においては、過労死等の労災請求事案に引き続き適切に対応していくことが肝要である。

働き方改革の定義は、明確に示されてはいません。

しかし、働き方改革に関する現在までの動向をもとに考えると、その本質は「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえるでしょう。

それぞれの企業にとっては、「働き方の効率と社員の向上心を高めて、企業の利益を伸ばす改革」ともいえます。

長期的に見れば企業の安定と成長を促す施策ばかりですが、目先にとらわれると企業の負担が強く意識されますので、関係法律の整備により政府が推進する形がとられています。

中小企業であっても、従業員の希望を少し叶えて、会社の利益を伸ばす作戦であることを納得し、積極的に働き方改革に取り組まなければなりません。

 

<外国人労働者>

外国人労働者の受入れ拡大については、次のように述べられています。

「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が成立し、本年4月から施行されることに伴い、今後外国人労働者の増加が見込まれることから、これまで以上に外国人労働者に対する労災保険制度の周知、請求勧奨等の取組について的確に実施する必要がある。

しかし、労働基準法などの労働法が、日本人に適用されるものではなく、日本で働く人に適用されるのだということの理解が不十分であるように思われます。

 

<重点項目>

平成31年度は、特に次の事項を重点的に推進することになっています。

1.過労死等事案などの的確な労災認定

2.迅速かつ公正な保険給付を行うための事務処理等の徹底

3.労災補償業務の効率化と人材育成

 

こうしてみると、国は体制を整えるので、企業はこれに応えなさいという気持ちが読み取れます。

たとえ中小企業であっても、国の想いを受け取れない企業は、平成の次の時代に生き残ることはできないという警告のように感じられます。

 

2019.02.28.解決社労士