大正大学の叱られ方研修

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<叱られ方研修>

大正大学(東京都豊島区西巣鴨)で、就職内定者を対象に叱られ方研修が行われ、ネットでも話題になりました。

研修当日にNHKの取材があり、その様子は「首都圏ネットワーク」や「おはよう日本」でも紹介されています。

 

<研修の内容>

研修の内容は、大正大学のホームページで次のように紹介されています。

 

 本学では入社を間近に控えた4年生向けに、卒業直前特別プログラム「内定者研修」を2月14日に開催しました。それは、4月からスムーズな社会人生活を送るため身に着けておきたいビジネスマナーやタイムマネジメントに加え、新人社員が上司やお客様と接する社会人生活の中で起こりうるケースを想定した「叱られ方」を考えるロールプレイングを行いました。

 この内定者研修を受けたことにより、同期生の中でも1歩リードしたスタートを切り、今後の社会人生活で大いに活躍してくれることを期待しています。

 

上司から叱られるというとパワハラ、お客様から叱られるというとカスハラ(カスタマーハラスメント)が想起されます。

こうしたことから、叱られ方研修というのは、ハラスメントに耐えるための研修であるかのように誤解されがちです。

しかし、大学がハラスメントを助長するような研修を実施するはずがありません。

 

<パワハラの構造>

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

 

【パワハラの2要素】

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

 

行為者は、パワハラをしてやろうと思っているわけではなく、立場上必要な注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

業務上必要な行為と同時に行われる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

 

【無用な人権侵害】

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

 

刑事上は犯罪となる行為が、同時に民事上は不法行為にもなります。つまり、刑罰の対象となるとともに、損害賠償を請求される対象ともなります。〔民法709条〕

これは、行為者が経営者でも一般の従業員でも同じです。

 

<カスハラの構造>

カスハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

 

【カスハラの2要素】

・顧客の店員などに対する正当な請求・要求(不良品の交換請求、交換できないときの返金請求、適正な接客要求など)

・顧客としての正当な範囲を超える請求・要求による人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

 

顧客としては、正当な主張をしているつもりが、客観的には店員などの人権侵害になっているわけです。

顧客として正当な主張と同時に行われる「人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

 

【無用な人権侵害】

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、恐喝、強要、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、過度の要求、不可能なことの強制、私的なことに過度に立ち入るなど

 

ネットには、コンビニの店員が顧客から土下座を要求され(強要罪)、たばこ1カートンをサービスさせる(恐喝罪)などの動画が流れることもあります。

 

<不思議なご相談>

柳田事務所にも、パワハラのご相談が数多く寄せられます。

パワハラにより勤務できなくなるなど、深刻なご相談が多いのは事実です。

しかし、パワハラやセクハラという言葉が一般化するにしたがって、ハラスメントに当たらないことについてのご相談が増加しています。

たとえば、「店長が突然お店の方針を変更した」「マネージャーからお店にスマホを持ち込まないように言われた」「商品を陳列するときは日付の新しいものを奥に詰めるよう注意された」などです。

状況を聞くと、どなられたわけでもなく、人権侵害になるようなことは行われていません。

ただ、ご本人としては、突然のことであったり、「そこまでしなくても」という不満があったりと、感情を害する行為があったと感じるわけです。

 

<入社後の研修も大切>

学生が入社する前に、上司やお客様にきちんと向き合えるように、叱られ方研修を受けるのは良いことだと思います。

ただ入社後に、社内研修でパワハラやカスハラの構造が説明され、何がハラスメントに当たるのかを理解させるのでなければ、ただハラスメントに屈するだけの社員になってしまうかもしれません。

あるいは、上司やお客様に対して、パワハラやカスハラの言いがかりをつけてしまう恐れもあります。

大学での研修だけに頼らず、企業の立場で行うべき研修はきちんと実施することが大切です。

 

2019.02.27.解決社労士