非正規労働者の正社員への転換

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<正社員への転換>

短時間・有期雇用労働者として働き始めると、なかなか正社員にはなれないという実態があり、正社員として働くことを希望していても、そのチャンスに恵まれず、やむを得ず短時間・有期雇用労働者として働いている人もいます。

このような状況は、労働者個人の働く意欲の維持、キャリア形成の観点からも問題ですし、会社にとっても社会にとっても損失となっていると考えられます。

しかし、短時間・有期雇用労働者の正社員への転換について、具体的にどうすべきなのかは、必ずしも明確ではありませんでした。

これを明確にするため、2020年4月1日に施行される改正「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に先立ち、2019年1月30日に詳細な通達が出されています。

ここでは、この通達に沿って、正社員への転換について確認したいと思います。

 

<事業主の義務>

この法律の第13条は、正社員(通常の労働者)への転換を推進する措置を事業主に義務付けています。

これは、同じ職場で正社員に転換することを前提としていて、子会社など別の職場に移るとともに正社員に転換するようなケースを想定していません。〔法第3条第1項〕

ただし、短時間・有期雇用労働者の正社員としてのキャリア形成を支援する等の観点から、他の職場で正社員への転換を推進する措置を併せて実施することは望ましいとされています。

また、例えば、短時間労働者から有期雇用フルタイム労働者への転換制度を設け、さらに有期雇用労働者には正社員への転換制度が設けられているような、複数の措置の組み合わせにより正社員への転換の道が確保されている場合も本条の義務の履行と考えられます。

さらに、勤務地、職務内容、勤務時間などが限定され、ライフスタイル等に応じた働き方が可能な「多様な正社員」への転換を推進するのも、本条の義務の履行と考えられます。

 

<具体的な措置>

具体的には次のような措置を講ずることが求められています。

 

【求められる措置】

イ 正社員の募集を行う場合に、業務の内容、賃金、労働時間その他の事項を、採用を予定している職場の短時間・有期雇用労働者に周知すること。

ロ 正社員の配置を新たに行う場合に、その職場の短時間・有期雇用労働者にも、その配置の希望を申し出る機会を与えること。

ハ 正社員への転換のための試験制度を設けること。

ニ この他、正社員として必要な能力を取得するための教育訓練を受ける機会を確保するための必要な援助を行う等、通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずること。

 

イは、正社員を募集しようとするときに、企業外からの募集と併せて、その雇用する短時間・有期雇用労働者に対しても募集情報を周知することにより、正社員への応募の機会を付与するものです。もちろん、最終的に採用するかどうかは、公正な採用選考である限り事業主の判断に委ねられます。

また、他の企業で実績を有する者等をヘッドハンティングする場合など、個人的資質に着目して特定の個人を正社員として採用するような場合には、この措置の対象外となります。

ロは、企業外に正社員の募集を出す前に、企業内の短時間・有期雇用労働者に配置の希望を申し出る機会を与えるものです。つまり、優先的な応募機会の付与をいいます。「社内公募」制度のようなものも、これに該当します。もちろん、優先的な採用まで義務付けるものではありません。

ハは、短時間・有期雇用労働者を対象として、正社員への転換のための試験制度を事業所内に設けるものです。一定以上の勤続年数や、その職務に必要な特定の資格の保有を条件とすることも可能です。しかし、対象者がほとんど存在しないような厳しい条件を設定するのは、ハの措置を取ったとはいえません。

ニの「必要な援助」としては、自ら教育訓練プログラムを提供することのほか、他で提供される教育訓練プログラムの費用の経済的な援助や、参加するための時間的な配慮を行うことなどが考えられます。

 

<義務の履行にはならない措置>

この法律で事業主に義務付けられている措置は、制度として行われるものであることが求められています。

従って、次のような措置では義務の履行にはなりません。

 

【不適切な措置】

・合理的な理由なく、事業主の恣意により正社員の募集情報を周知するときとしないときがあるような場合。

・転換制度を規程にするなど客観的な制度とはせずに、事業主の気に入った人物を正社員に転換するような場合。

 

なお、長期間にわたって正社員に転換された実績がない場合には、転換を推進するための措置を講じたとはいえない可能性があり、周知のみで応募はしにくい環境になっているなど、措置が形骸化していないかを検証しなければなりません。

 

2019.02.18.解決社労士